2045年問題とは?
最近は、スマートフォンにも搭載されているAI。
このAI技術の発達によって起こるとされているのが、2045年問題と呼ばれるものです。
まずは基本的なこととしてAIとは何か、AIの発展による2045年問題とは何かについて、解説していきましょう。
AIとは
2045年に高知能AIが普及する
AIとは
AIとは、「artificial intelligence」「人工知能」のことです。
「将棋の棋士がAIと対局をする」等、AI関連のニュースを見たことがありますよね。
ところで、このAIという言葉は、実際には「何もってAIとするのか」という明確な定義がありません。
研究者や専門家によってもその定義は異なってきます。
現在では、そんな様々ある定義を総称して、AIと呼んでいるのです。
2045年に高知能AIが普及する
今後AI技術が発展すれば、2045年にはより高知能のAIが普及するだろうと言われています。
2045年になると、全人類の脳を集めた計算能力は、10万円程度のPC性能にも負けてしまう、と推測されているのです。これが2045年問題の焦点の一つです。
そのような高知能のAIが生まれれば、今までのように人がAIを開発するのではなく、AI自身がより高知能なAIを生み出すようになります。
そして、いずれ人では計り知れないような高知能AIが生まれるであろう、と予測されているのです。
このAIの技術的な特異点を、シンギュラリティと言います。
2045年問題の根拠は?
地方創生
ところで、どのような根拠で、2045年問題が起こるのでしょうか?
2045年問題、という言葉だけでは、SF映画の題材にしか聞こえませんよね。
どこに2045年問題の根拠があるのか、2045年問題についてより深く考えていきましょう。
AIの計算能力の飛躍的な成長
2014年のチューリングテスト
特化型AIのビジネスへの利用
AIの計算能力の飛躍的な成長
2045年問題は、AIの計算能力が飛躍的に伸びることが原因です。
このAI技術の発展には、ある法則があります。
一つの技術が生まれたら、次は他の技術と結びつき、より高度な技術が生まれるまでの期間が短縮される。
こうして加速度的に技術が発展する法則のことを、収穫加速の法則と言うのです。
収穫加速の法則の下では、計算能力の成長速度は比例グラフのようにはなりません。
ある時点を過ぎたとき突如として成長速度が急に早まり、2045年問題の引き金になるのです。
2029年には人間の脳の神経規模を超える可能性も
2029年になれば、AIの計算能力が人間の脳の神経規模を上回ると言われています。
これは2045年問題の提唱者である、レイ・カーツワイル博士の意見です。
2045年問題とは、未来に突然始まる事柄ではなく、発達するAI技術の延長上に起こる問題なのです。
2014年のチューリングテスト
2014年に行われたチューリングテストもまた、2045年問題が注目された理由に挙げられます。
このテストは、機械は人間的な存在といえるのか、という問題に対するテストです。
テストでは、隔離された部屋で、審査員が壁の向こうの人間またはAIと会話し、会話内容のみで相手が人間かAIかを判断します。
このテストによって、30%以上の審査員が、AIを人間だと判断しました。
これにより、AIは人間的な存在になれると証明されたのです。
AIは、計算能力だけでなく、人間性という面でも人との区別つかなくなる。
これも2045年問題の重要な事項の一つと言えます。
特化型AIのビジネスへの利用
2045年問題の根拠の一つとして、特化型AIのビジネス利用が既に始まっていることが挙げられます。
特化型AIとは、ある一定の分野に特化した能力を持つAIのことです。
囲碁をするAIも、特化型AIの一つですね。
現在、顔・画像認証を行うAIや音声認識を行うAIが、実際にビジネスの場で実際に活躍しているのです。
2045年問題への反論
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ここまで2045年問題の根拠を述べましたが、2045年問題はあくまでも未来に起こることです。
また議論の題材でもあるため、当然反対意見も存在します。
次は、2045年問題の反論について、考えていきましょう。
AIの汎用的な活躍の難しさ
人間らしさの再現性の困難
AIの汎用的な活躍の難しさ
2045年問題の反論の一つに、AIの汎用的活躍に関する課題が挙げられています。
汎用型AIとは、一つの分野ではなくあらゆる行為が可能なAIのことを指します。
現在、ビジネスで活躍しているAIは全て特化型のAI。
汎用型AIは現在でも実現しておらず、完成するまでまだ時間がかかると言われています。
汎用的に活躍するAIの実現が叶っていない現段階では、2045年問題が起こるとは考えにくいのです。
人間らしさの再現性の困難
2045年問題の反論は、他にも様々あります。
中でも、AIによる人間らしさの再現性が困難であることは、2045年問題の大きな反論理由の一つです。
チューリングテストにより、AIは人間的に振舞えると結論付けられました。
ですが、この結果は「AIはプログラミングによって人間らしさを表現できる」という証明であって、AIが本当に人間らしさを会得したとは言えません。
人間らしさの再現が出来なければ、AIが人より優れた存在になるという2045年問題自体が起こるとは考えにくいのです。
2045年問題と求められる仕事
PC パソコン
2045年問題では、もう一つ重要な議題があります。
2045年問題の通りにAIが発達すれば、人間の仕事の多くがAIに奪われるという点です。
現在、汎用型AIは実現していませんが、特化型AIは既に社会で活躍しています。
つまり、特化型AIの活躍によって、人間の労働力は必要なくなる事が2045年問題の焦点だと言えます。
人間に求められる仕事とは
特化型AIが活躍する世界では、人間は「人間にしかできない仕事」を行う必要があります。
2045年問題は未来論ですが、現在でも既にAIに取って代わられた仕事は存在します。
2045年問題が現実となった世界で、私たち人間は、どのような仕事に就くことができるのでしょうか。
マニュアル化が可能な仕事は減少傾向に
クリエイティブな仕事が求められる
マニュアル化が可能な仕事は減少傾向に
2045年問題が現実のものとなれば、マニュアル化が可能な仕事はAIが行う仕事になります。
例えば、事務仕事や経理、一部の接客業も、代替が可能です。
残念ながら、人間の計算能力ではAIには勝てません。
同じことを永遠と繰り返す仕事、決められたことを決められた通りに行う仕事は、AIが行う方が効率が良いのです。
その為、2045年問題でAIが高度に発達すれば、マニュアル化が可能な仕事が減少すると言われています。
クリエイティブな仕事が求められる
対して、2045年問題が起きた後、人間はどのような仕事に就くのか。
その答えは、クリエイティブな仕事です。
例えば、前例の全くない場所から何かを生み出すことはAIにはできませんので、人間の仕事といえます。
また、セラピストや教師のような人の感情を扱う仕事も、AIが行うのは難しい仕事です。
つまり2045年問題の先、人間はよりクリエイティブな能力に就くことが求められるのです。
2045年問題とAIの活用
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ここまで見てきたように、2045年問題とは私たちの生活が大きく変わるターニングポイントです。
ところが、実際には多くの場でAIの活用が求められていますよね。
これは、2045年問題同様に深刻となっている、労働力不足の問題があるからなのです。
人口が減少傾向の日本において、2045年問題と労働力の問題は切り離せない関係と言えます。
AIの活用が期待される分野
AI活用への課題
AIの活用が期待される分野
2045年問題によりAIに代替可能な仕事は、すなわちAIの活躍が期待されている分野でもあります。
例えば一般事務の中でも、同じ作業の繰り返しの業務は、人が行う必要がなくなります。
そういった分野でAIが活躍すれば、労働力不足の解消にも一役買うことができるのです。
また、農業の分野では、必要な野菜にのみピンポイントで農薬散布を行うAI、収穫時期となった作物を収穫するAI等が、既に活躍しています。
農業従事者の高齢化や農業人口の減少を考えると、このような実際の労働力を担えるAIは益々活用が期待されるのです。
AI活用への課題
このように、2045年問題でAIに取って代わられるであろう職業も、労働力不足解消の観点からすれば、良いことであるとも言えます。
ところが、AI活用を行う為には二つの大きな課題が残されています。
それは、AIを活用する為のAIエンジニアの不足と、規制緩和の問題です。
それぞれどういった問題を抱えているのか、見ていきましょう。
エンジニアの不足
規制緩和と信用度の問題
エンジニアの不足
ITに関わるエンジニアは現在でも数多く存在しますが、最先端の技術であるAIの開発や運用には、専門の技術者が不可欠です。
2045年問題によっても注目を浴びたAI技術ですが、現在そのエンジニアの数が絶対的に不足しています。
経済産業省が2019年にまとめた「IT人材需給に関する調査」によると、AIエンジニアの需要と供給の差は、2018年の段階で既に3万人を超えています。
また、2030年には、需給の差は最大で4倍にも膨れ上がるとも試算されているのです。
そのため、小学校からのプログラミング学習、大学の専門科の開設、企業の人材育成が求められているのです。
出典:経済産業省
規制緩和と信用度の問題
そして、もう一つの問題が、規制緩和と信用度の問題です。
AIを活用する為には、現状存在する様々な規制を緩和する必要があります。
例えば、あなたがクレジットカードを作るときは、国の規制により返済能力を第三者である信用情報機関が調査することが必須となっています。
この個人の返済能力の有無を調べる為に有効なのが、AIの活用です。
ところが、AIが弾き出した個人の信用度は信頼できるデータであるとは言えず、規制緩和するべきではない、という反論があります。
AIの情報がどこまで信用度があるのか、本当に規制を緩和して良いのか、が問題となっているのです。
こういった問題は、今後AI活用を進めていく上で、様々な分野で起こる問題でもあるのです。
2045年問題と労働力不足解消の取り組み、AI活用の現状は、様々な問題が複雑に絡み合っていると言えます。
2045年問題は既に影響が出始めている
今回の記事では2045年問題に関し、2045年問題の根拠、反論やその先に繋がる仕事についても解説をしてきました。
IT技術に疎い人にとって、2045年問題はSFの話のように現実味のない話です。
ですが、2045年問題は私たちの生活に直結する様々な問題も孕んでいました。
「2045年問題」なのだから、まだまだ先だと思いがちですが、既に私たちの生活の中で2045年問題は始まりつつあるのです。
AI発達による人間の減少、AIエンジニア排出の為の教育改革、労働力不足に対する取り組み、これらは既に始まっています。
そんな2045年問題を解決するのは、AIではありません。
あなたも含めた、私たち人間の成すべき仕事なのです。