孤独死とは
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孤独死とは、主に独居者が誰にも気付かれる事無く、自宅など室内で亡くなる事 を指します。
孤立死 や 独居死 とも言われます。
孤独死における法律上の定義はありませんが、亡くなる特徴として以下の点が挙げられます。
一人、もしくは夫婦や兄弟、親子など若干名の家族が対象
誰にも看取られず、室内にて亡くなる
死後数日間、他者に気付かれない
自殺は含まれない
日本において孤独死の数は 年間3万人 とも言われています。
しかし、 法的に正確な定義が無い事から、全国で統計を取っている都道府県はほぼありません 。
孤独死の捉え方が難しく、正確に判断出来ないのがその理由です。
実際統計を取っている鹿児島県と北海道の定義も、「65歳以上で死後2日」「死後1週間以上」など違いがあります。
孤独死は年間約3万人
年間3万人という数字は、東京23区の孤独死データを取っている東京都監察医務院の統計からの予測です。
孤独死の事例は更に多いのではないか と言われています。
また孤独死は 男性が圧倒的に多く、死後発見されるまでの時間も長い とされます。
以下の画像は東京都監察医務院が推定した、単身一人世帯での死亡者数です。
2014年のデータでは、 男性が3091人 、 女性は1375人 となっています。
孤独死件数(2017) 社会問題
参考:東京都監察医務院
男性は女性の倍以上 である事が分かります。
また、 女性は70%近くが死後3日以内に発見される のに対し、 男性は半数以下 に留まります。
割合としては 高齢者 が多くを占めますが、近年では現役世代の孤独死も問題視されています。
孤独死の原因や傾向など、次項より順に解説いたします。
孤独死が増加する社会的原因
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孤独死が増加する 社会的原因 には以下の点が挙げられます。
一人暮らしの高齢者の増加
地域コミュニティの希薄化
以下に解説いたします。
一人暮らしの高齢者の増加
孤独死の増加の一因として、 一人暮らしの高齢者が増えた 事が挙げられます。
単身高齢者は体調の変化が周囲に分かりにくく、孤独死になりやすいと言えます。
内閣府の調査によると、単身高齢者(65歳以上)の数は 1980年に88万人 でした。
しかし 2010年には470万人 を超え、以後も右肩上がりに増加し続ける予測です。
背景には、 核家族化 や 都市部への企業集中 など社会的変化が挙げられます。
一人暮らしの高齢者に関しては孤独死以外にも様々な問題があります。
以下の記事もご覧ください。
一人暮らしの高齢者が抱える問題とは?孤独死や認知症など超高齢化社会の問題点
第三人生編集部
地域コミュニティの希薄化
地域コミュニティの希薄化 も、孤独死の増加の原因に挙げられます。
近所との交流が無い事で、亡くなった後しばらく誰にも気付かれない事例が多発しています。
内閣府の調査によると、 1975年頃から近所付き合いの程度が低下 しています。
昔は地域の繋がりが強固であった地方や自営業者でも同様です。
背景には少子高齢化など社会的環境の変化に加え、 暮らしが便利になった 事も挙げられます。
困った事があっても、民間のサービスなども多く、自分で解決出来るようになりました。
また、 就業者が増加し町内会などの地域活動が衰退している 事も背景にあります。
孤独死しやすい人の傾向
高齢者 杖
孤独死しやすい人の傾向としては以下の点が挙げられます。
家事が苦手
人付き合いが苦手
貧困、持病など暮らしに困難がある人
家事が苦手
調理、掃除、洗濯など 家事が苦手である と孤独死するリスクがあります。
栄養バランスの悪さや衛生管理不足は体調不良を招く為です。
現代は24時間店舗などいつでも食事が手に入る時代です。
しかし、外食ばかりだと塩分過剰やミネラル不足など栄養バランスが偏ります。
生活習慣病やネグレクトになる恐れも
糖尿病や高血圧など、 生活習慣病 を患う怖れもあります。
2004年の厚生労働省の調査によると、 死因の6割が生活習慣病が要因 となっている事が分かりました。
脳血管性障害など、突然倒れる症状もあり、孤独死においては危険度が高いです。
また、掃除や洗濯など 衛生面の管理不足 も健康を損ねます。
行き過ぎると精神的な不調も来し、中には セルフネグレクト に陥る方もいます。
セルフネグレクトとは、 生活を維持する能力や意欲が欠如し、支障が出る事 を指します。
近年話題に上がる ゴミ屋敷 などはこの典型例といえます。
心身不調に陥り、自宅に籠る事が増えると孤独死の危険性が高まります。
人付き合いが苦手
人付き合いが苦手な場合 も、孤独死のリスクといえます。
人との関わりが無い事で、家で倒れた際の発見が遅れがちだからです。
近年、 地域コミュニティの希薄化 でただでさえ人との交流の場が減っています。
町内会や子供会、地域でのイベントも全国的に縮小傾向 にあります。
その上で、定年退職などで会社を離れた方が 新たに居場所を作ることが難しくなっています 。
また、もともと人付き合いが苦手な方は、退職などをきっかけに人との交流を避ける傾向にあります。
加えて 家族親族などと折り合いが悪い 為に、一人暮らしをしている方も近年増加しています。
病気になってもサポートをしてくれる血縁者がおらず、不安から受診が遅れる事も孤独死の要因です。
貧困、持病など暮らしに困難がある人
独居の上、 貧困、持病など暮らしに困難がある 場合も、孤独死の可能性が高まります。
暮らしに困難があると、生活も不安定になりやすく、また家に籠る傾向にある為です。
近年の経済状況のあおりを受け、 正規雇用が困難 、また リストラ 等で、 貧困層が増加 しています。
その上、少子高齢化により 年金制度の縮小が懸念 され、今後も不透明です。
金銭面に不安があると、病院に行かない、治療を勝手に止めるなど、健康面でも不具合が出がちです。
生活する上での 健康、経済、人との交流のバランスが崩れると孤独死のリスクが高まる と言えます。
孤独死の原因に関しては以下の記事も参考にして下さい。
孤独死の原因・死因と社会背景とは?対策と特殊清掃も解説!
第三人生編集部
孤独死への対策・予防策
高齢者 介護
全国的に孤独死が増加する中、 独自に対策をしている自治体 もあります。
以下にご紹介します。
事例①地域の見守り支援員の養成
広島県福山市では、2011年より 見守り支援員養成講座 を開講しています。
孤独死の一因である地域の繋がりが希薄になった事に着目し、 見守りボランティアの活動を推進 する為です。
見守り支援員養成講座のインストラクターは 福祉職 の方が行います。
地域や企業で出張講座を開き、孤独死の現状や、交流を拒否する方への対応などを教えています。
専門職の方が講座を行うことで、 ボランティアの資質が向上 し、難しい事例に穏やかに対応出来るなど利点があります。
またボランティアの質が高まることで、 民生委員など地域役員の負担が軽減 出来ます。
また 地域住民の意識が高まる 事で、地域全体で孤独死を防ぐ目的です。
事例②民間事業者との見守り連携
岩手県奥州市では、孤独死予防策として 民間事業者との連携 を図る取り組みをしています。
配達や訪問など 、業務上家を訪ねる単身者に気になる事があった時に、市へ連絡してもらう 方法です。
ガス水道、新聞社、宅配業者など協力企業は50以上にも上ります。
また、連携者の間で、 個人情報の取り扱いやプライバシーに注意する事を厳守 しています。
地域における孤立者であっても、周囲の「監視」にならぬよう、誰もが安心して暮らせる地域にする為です。
事例③県全体での孤独死防止対策
栃木県では、孤独死対策として 県全体の取り組み をしています。
まず孤独死防止見守り事業の為、 県 、 民生委員会 、 県警察本部 と 3者協定 を結んでいます。
次に、農協や郵便局、また大手企業など、 県全体をカバーする企業団体での協定 もあります。
その上で、異常を感じた場合の 連絡先を一本化 し、情報の共有を図っています。
これらが孤独死防止の為、異常の早期発見や早期対策に役立ちます。
個人情報の観点から、事例の報告はないですが、県によると成果を上げているとのことです。
若者の孤独死も増えている?
少し前まで孤独死は60代以降の高齢者が対象の問題とされていました。
しかし近年、 若い世代の孤独死 も増えています。
日本少額短期保険協会の調査によると、 近年は孤独死の4割が50歳以下 でした。
原因を解説いたします。
若者の孤独死が増えている原因
若者の孤独死が増加している原因は、 生活の不安定さ が挙げられます。
非正規雇用の増加 など、近年経済的に不安のある若者が増えています。
現代の日本の30代男性の平均年収は 約400万円 、女性はその 約3分の2 です。
また結婚、出産を経ると子育てなどで一方が仕事制限をせざるを得ず、 世帯の収入は減る家庭が多い と言われます。
先行きの見えない経済状況で、 未婚率も上がっています 。
金銭面の問題から食生活が偏り、健康に支障をきたす方も少なくありません。
孤独死において高齢者では男性が多くを占めるのに対し、 若い世代では女性が増えます 。
男性に比べ就職状況が不利な風潮や、 経済状況が安定しない 事が関係すると考えられています。
また、インターネット等の発達により、 人と会わなくても出来る仕事が増えました 。
個々の特性に合わせた働き方が出来る反面、人との交流が減り、異常に気付かれない事例があります。
孤独死と特殊清掃
檀家
孤独死をした場合、部屋の中が凄惨な状況になっている事が多くあります。
遺体の発見が遅れ、腐敗が進み、強烈な異臭と共に害虫が大量発生している事もあります。
その際は、 特殊清掃 が入ります。
特殊清掃とは、 孤独死を始め事故や自殺など変死において、遺体の腐敗により傷んだ部屋の現状回復をする作業 を指します。
事件現場清掃業 とも呼ばれます。
作業員は消臭や害虫処理の知識、薬品の使用法、感染症の防止手段など 高い専門性が必要 です。
感染や怪我の防止、また臭いに耐えられるよう 防護服と特殊マスク をして作業に当たります。
遺体から染み出した体液、頭髪などを片付け、床を剥がすなどし、 特殊な薬品で清掃 します。
同時にハエなどの 害虫を殺虫 します。
また、孤独死を迎えた人は部屋が荒れ、物が散乱している場合も多いです。
遺品清掃の業務を担う事も
遺族が居れば 遺品整理 の為に手を付けないようにしますが、身寄りがない場合それらも片付けます。
最後に次亜塩素酸などで徹底的に 消毒 し、機械により強力に 消臭 します。
費用は状況や業者により違いますが、トータルで 30~50万円 です。
近年、 特殊清掃の依頼は右肩上がりに増えています 。
その為、 悪徳な業者も横行し始め、トラブルも後を絶えません 。
法外な料金を請求される、業者に特殊清掃の知識がなく完全に清掃されずにいたなど問題になっています。
特殊清掃に関しては以下の記事もご覧ください。
遺品整理の料金相場を解説!特殊清掃は?料金を抑えるコツも
第三人生編集部
【コラム】孤独死保険が人気?
保険
近年増え続けている孤独死への対策として、孤独死保険が販売されるようになりました。
孤独死保険とは、孤独死による部屋の清掃や原状回復費用の負担、その間の家賃補填など、損失金を補償する保険です。
主に、アパートやマンションの家主に対する補償です。
入居者が孤独死後、万が一家族や親族などが見つからない場合、部屋の原状回復は家主の負担です。
近年、孤独死した人の血縁者が見つからない、または拒否される事例が増えています。
加えて部屋の清掃や清掃の間の貸出不可はおろか、清掃が済んでからも家賃を下げざるを得ない事が多いです。
孤独死保険には2タイプある
金銭面の負担への不安から孤独死保険の加入者が増えています。
孤独死保険には「家主型」と「入居者型」の2タイプがあります。
家主型は家主が定期的に保険料を払う単独保険です。
部屋の原状回復、遺品整理、家賃補填が補償内容です。
入居者型は、入居の際に家財保険と共に含まれます。
入居者が保険料を支払うので、家主の保険料負担はありませんが、万が一の際家賃補填がない事が多いです。
孤独死保険に関しては以下の記事もご覧ください。
孤独死保険とは?種類と選び方、孤独死保険の取り扱い会社を紹介
第三人生編集部
孤独死の背景について知り、対策を検討しましょう
今回は孤独死について解説いたしました。
孤独死とは、自宅などで誰にも気付かれず亡くなる事 を指します。
高齢の男性が多くの割合を占めますが、近年若者の事例も増加 しています。
背景には、一人暮らしの増加や、地域交流の減少が挙げられます。
独自に 孤独死の予防策の取り組みをしている自治体 も出てきました。
孤独死が起こった場合、 特殊清掃 を行います。
特殊清掃は消臭や消毒、薬品などの専門性の高い知識が必要です。
また近年孤独死対策として、家主に向けた 孤独死保険 も販売されるようになりました。
孤独死の背景について知り、自身や周りの方々などの防止策を検討しましょう。