熟年離婚という言葉を耳にする機会が増えた現在、長年連れ添った夫婦が別れを選ぶ背景には、どのような理由があるのでしょうか。
熟年離婚は、残りの人生を自分らしく生きるための一つのステップとも言えます。
本記事では、熟年離婚に至る主な8つの原因を詳しく掘り下げ、さらに離婚後のメリットや後悔についても解説します。
人生の大きな決断である離婚を考える際、後悔しないために知っておくべき重要なポイントをお届けします。ぜひ参考にしてください。
熟年離婚にいたる8つの原因
近年、熟年離婚の件数は増加傾向にあります。長年連れ添った夫婦が離婚を選ぶ理由は、一言では語れない複雑な背景を持っています。
この章では、熟年離婚に至る主な8つの原因について、それぞれ詳しく解説していきます。
性格・価値観の不一致
熟年離婚に限らず、離婚原因として最も多く挙げられるのが「性格・価値観の不一致」です。
長年連れ添った夫婦であっても、金銭感覚、家事・育児に対する考え方、生活習慣など、些細な違いが積み重なることで、一緒に暮らし続けることが難しくなる場合があります。
特に、子育てや仕事に追われる忙しい時期は、お互いの違いを深く考える余裕がなく、不満を見過ごしてしまいがちです。
しかし、子どもが成長して独立し、夫婦二人だけの時間が増えると、それまで見えなかった不満や価値観の違いが表面化することがあります。
「共通の話題がない」「一緒にいる時間が苦痛」といった声が聞かれるのも、このような背景が影響していると言えるでしょう。
子どもが独立したら離婚するつもりだった
「子どもが成人するまでは」と子育てを最優先にし、離婚を先送りにしていた夫婦も少なくありません。
特に、子どもがまだ両親の存在を必要としている場合、夫婦間にすれ違いや不満があったとしても、「離婚したら子どもにどんな影響があるのか」と踏みとどまるケースが多く見られます。
しかし、子どもが独立すると、その我慢を続ける必要がなくなります。
家庭内での役割を終えたと感じたときに、結婚生活を続ける意味を見出せなくなり、離婚を選択する夫婦も多いのです。
このように、子どもの独立が熟年離婚のきっかけとなることは珍しくありません。
年金が分割できるようになった
2007年に導入された年金分割制度により、離婚後に夫婦間で年金を分配できるようになりました。
この制度は、専業主婦や収入が少ない女性の経済的な不安を軽減する役割を果たし、離婚に踏み切るケースを増加させる要因となっています。
従来、専業主婦が受け取れる年金は月額66,000円程度でしたが、この制度により、夫が積み立てた年金の原則半分を「妻が積み立てたもの」とみなして分配することが可能になりました。
これに基づいて年金支給が行われるため、専業主婦でも離婚後の生活費を一定程度確保できるようになったのです。
年金分割を適切に行うことで、離婚後の生活が安定しやすくなったことが、熟年離婚に踏み切りやすくなった要因の一つと言えるでしょう。
不倫が発覚した
不倫はどの世代においても離婚原因として多い問題ですが、熟年夫婦の場合、特有の背景があることが少なくありません。
パートナーの長年の裏切りに気づいたり、子どものために不倫を我慢し続けていたりするケースが見受けられます。また、「これ以上傷つきたくない」という思いから、離婚を決意する人もいます。
長年連れ添ったことで、愛情が冷め切ってしまい、他の相手と新しい人生を歩みたいと思う場合もあるでしょう。
不倫は夫婦間の信頼を大きく損ない、離婚を選ぶきっかけとなることが多い問題です。
義両親の介護に疲れた
義理の両親と馬が合わないという問題は、多くの夫婦にとって離婚原因の一つとなり得ます。
結婚当初から折り合いが悪い場合もありますが、特に義理の両親の介護が離婚の引き金となるケースが少なくありません。
特に妻側が夫の両親の介護を一手に引き受けることが多く、その結果、精神的・身体的な負担が蓄積し、限界に達して離婚を選ぶケースが見受けられます。
こうした状況では、「自分の人生を取り戻したい」という強い思いが、離婚の決断を後押しすることが多いようです。
相手の介護をしたくない
高齢化社会では、夫婦のどちらかが病気や介護を必要とするケースが増加しています。
しかし、介護を担う側にとって、その負担は非常に大きく、「自分だけの人生を生きたい」という気持ちが強くなることがあります。
特に、長年の結婚生活で夫婦関係がマンネリ化している熟年夫婦の場合、介護に対する拒否感が強まり、それが離婚を決断するきっかけとなることも少なくありません。
こうした背景が、熟年離婚の一因となっています。
離婚への偏見が減った
かつては「離婚=失敗」という考えが一般的でしたが、現代ではそのような偏見は薄れつつあります。
一昔前までは、「バツイチは恥ずかしい」というイメージが根強く、離婚を我慢する人も少なくありませんでした。
しかし、現在では離婚件数自体が昭和時代と比べて倍増しており、特に熟年世代においても「新しい人生を歩む」という選択が広く受け入れられるようになっています。
こうした社会的な意識の変化が、熟年離婚の増加を後押ししていると言えるでしょう。
自分らしい人生を選び取ることが、今では多くの人にとって自然な選択肢となっています。
女性の社会進出が進んだ
女性の社会進出が進み、経済的に自立する女性が増えたことも、熟年離婚の背景の一つです。
終身雇用が主流だった時代には、「男性が働き、女性は家庭を守る」というスタイルが一般的でした。しかし現在では、共働き世帯が専業主婦家庭を大きく上回っています。
また、働くことで自信をつけた女性が「自分らしい人生」を求めて離婚を決意するケースも少なくありません。経済的な自立が進んだことで、夫に対する不満が生じても我慢せず離婚を選びやすくなったのです。
こうした時代の流れによる価値観の変化が、熟年離婚に踏み切る大きな要因となっていると言えるでしょう。
熟年離婚をしてよかったこと3つ
熟年離婚にはデメリットもありますが、「離婚してよかった」と感じる人も多くいます。
ここでは、その理由を3つ挙げます。
自由を手に入れた
熟年離婚の最大のメリットは、何といっても「自由」を手に入れられることではないでしょうか。
結婚生活では、パートナーや家庭のために多くの時間とエネルギーを費やすため、自分の時間が制限されることが少なくありません。
しかし、離婚後は自分の好きなように時間を使えるようになり、趣味に没頭したり、新しいことに挑戦したりすることが可能になります。
自分自身のために時間を使えるこの自由が、離婚後の大きな魅力となるでしょう。
わずらわしい人間関係がなくなった
結婚生活において、義理の両親や親族との関係がストレスの原因となっている方は少なくありません。
そのような場合、離婚によってこれらの煩わしい人間関係から解放されることは、大きなメリットと言えるでしょう。
自分自身の生活に集中できる環境を手に入れることで、精神的な負担が軽減され、より快適な暮らしを実現できる可能性があります。
意外と不自由なく暮らせている
年金分割制度の導入や働く環境の改善により、女性が離婚後も安定した生活を送るケースが増えています。
昭和時代に離婚率が低かった背景には、女性の経済力不足が一因とされますが、現在では女性が1人でも安定した生活を送りやすい社会になっていると言えるでしょう。
また、離婚後に「精神的に楽になった」と感じる女性も多く、経済的な自立に加えて、精神的な自由を得られることが熟年離婚を選ぶ理由の一つとなっています。
こうした社会的な変化が、女性が離婚後の人生を前向きに切り開く後押しをしています。
熟年離婚をして後悔したこと3つ
一方で、熟年離婚をして後悔するケースもあります。ここでは、その理由を2つ挙げます。
孤独や寂しさに気づいた
熟年離婚後、多くの人が「孤独の寂しさ」に直面します。
長年連れ添ったパートナーとの別れは、新たな自由を感じさせる一方で、日常的な会話や人の温かさが失われることに気づく瞬間があります。
特に、子どもが独立している場合、一人暮らしの孤独感が一層強く感じられることも少なくありません。
家に帰っても誰もいない寂しさが心に響き、自由を手に入れて幸せになったと思っても、孤独と向き合う難しさに直面することがあります。
自由と引き換えに得た新しい生活の中で、この孤独をどのように受け止め、乗り越えるかが重要な課題となるでしょう。
収入減が苦しい
離婚後、生活費や年金だけでは十分な収入を確保できず、経済的に困窮するケースも少なくありません。
特に、離婚前に収入や資産の計画を立てていない場合、予想以上の苦労を強いられることがあります。
専業主婦など、長期間働いていなかった場合は、スキルや経験の不足から再就職が難しくなる可能性もあります。
そのため、財産分与や年金分割だけに頼るのではなく、一定の生活ができる見通しを立てたうえで離婚を決断することが大切です。
離婚後の生活を安定させるためには、事前に収入や生活費をしっかりと計画し、必要であればスキルアップや収入源の確保に向けた準備を進めることをおすすめします。
熟年離婚を考える前に、原因に慎重に向き合おう
熟年離婚にはさまざまな原因と影響があり、離婚に踏み切る前に冷静に状況を振り返ることが重要です。原因を整理し、自分自身の気持ちや将来の生活について慎重に判断しましょう。
また、専門家に相談し、経済的な計画や生活の見通しを立てることが、後悔のない選択につながります。
熟年離婚は人生における大きな決断です。一度立ち止まり、自分や家族にとって最善の選択は何かをじっくり考えてください。焦らず、冷静に向き合うことが大切です。