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終活

2024.04.30

無縁社会とは?背景や問題、孤独死との関連も解説!

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無縁社会という言葉を聞いたことがありませんか?
文字通り誰とも縁(つながり)がない社会を指しています。

この誰とも繋がらない「無縁社会」が、これまでの弔いのあり方を大きく変えようとしています。
無縁社会が私たち日本人にどのようにして広まったのか?

そして、無縁社会から脱出する術があるのかについてお伝えします。

無縁社会とは
高齢者2
実は「無縁社会」という言葉は 昔からあった訳ではありません。
2010年にNHKで放送された番組のタイトルに由来する造語です。

人と人との繋がりが薄れつつあることで、自殺・孤独死が広まりつつある…という内容の番組でした。
この無縁社会について取り上げた番組が放映された当時、大変な反響を呼んでいます。

社会と「無縁」でいることによるリスクは何も自殺・孤独死のみならず、 少子化や貧困をもたらします。
無縁社会は日本における「お葬式」「お墓」などの弔いにも大きく影響しています。

墓じまい・永代供養・散骨等に関心が高いのもその表れです。
これまでの日本の社会は「無縁社会」ではありませんでした。

なぜなら、 否が応でも関らず誰かと繋がる必要がある社会だったからです。
近年、個人主義が叫ばれるようになると、繋がる人・集団を選ぶ自由が認められるようになります。

個々人の自由が尊重され、繋がる対象を選べるようになったのです。
しかし、それは同時に切り離してはいけない関係までも「個人の自由」のために切り離しました。

その結果、より一層「無縁社会」に陥る結果となったのです。
「無縁社会」は当時、流行語大賞に選ばれました。

しかし「無縁社会」という言葉は一時の「流行」に終わりませんでした。
放送から10年たった現在も無縁社会が深刻な問題であることに変わりません。


無縁社会の背景
高齢者 手押し車 シルバーカー
ではなぜ「無縁社会」が出現したのでしょうか?
その前にまず、 それまでの日本社会が無縁社会と「無縁」だった背景を知る必要があります。

かつて日本は有縁社会だった
かつての日本は無縁社会ではなく「有縁社会」でした。
血縁・地縁・社縁(職縁)・友縁があり、それぞれの縁に関わる人と接していました。

血縁は親子・親戚などの関係です。
地縁は近隣住民との関わりです。

自治会・町内会・社会福祉協議会(社協)などのコミュニティがこれに当たります。
もともと農耕文化であった日本の特徴を地縁が引き継いでいます。

社縁は社会的な縁、つまり会社・ビジネスにおけるつながりです。
戦後の日本は自営業よりもサラリーマンが圧倒的に増えます。

そのため、会社づきあいを通した人間関係が構築されました。
友縁は親しい友達・趣味仲間などのつながりです。

昨今はインターネットとりわけSNSを通じてのコミュニティーがトレンドです。
この4つの縁を通じて、さまざまな人々とのつながりを維持していました。

しかし、近年は個人主義が叫ばれ、それと共にこの4つの縁も薄れつつあります。

個人主義の浸透により縁が希薄に
個人主義は正確には、 どんな集団にあっても個々人の意見や考えを尊重し、共存することです。
欧米ではそういった意味合いで使用される個人主義ですが、日本ではやや異なります。

自分の意見・考えが尊重されるよりも、 面倒なしがらみから解放されるのが個人主義としている感があります。
これまでは、どんなに関わりたくなくても「4つの縁」を大切にするために、関わらざるをえませんでした。

しかし、時代が変わりこの4つの縁に対する考えも変化します。
「繋がりたい人とはつながり、繋がりたくない人とは関わらない」選択が容易になりました。

本来、生活していくためには繋がらなくてはならない縁も、イヤなら切り離すことが簡単になったのです。
そしてその切り離しが進んだ結果、無縁社会が広がっています。

具体例として挙げるなら、次のようなものがあります。

核家族化
離婚率・未婚率の上昇
リストラ等による社縁の喪失
核家族化
これまでの日本は複数世代の家族と一緒に同居するスタイルでしたが、 近年は核家族化が進んでいます。
嫁・姑の同居が避けられるようになったのも個人主義の一例といえるでしょう。

離婚率・未婚率の上昇
結婚観も大きく変化しました。
昨今の主な離婚理由は「性格の不一致」です。

また、結婚したくてもできない等の理由による未婚率も上昇しています。

リストラ等による社縁の喪失
企業の業績悪化から、どんなに働きたくてもリストラされるケースも増えています。
また、非正規雇用などで職場を転々とせざるを得ず、 1つの会社との縁が薄れやすくなっています。


無縁社会が抱える問題【孤独死】
高齢者
無縁社会は面倒な人のしがらみから解放されるという側面がある一方で、 孤独死というリスクも抱えています。

単身世代の数の増加
孤独死のリスクも
有効な解決策は?
単身世帯の数の増加
単身世帯の数が増加する背景として、次のようなものがあります。

結婚したくてもチャンスがない、経済的な事情からできない
結婚したくない、する必要がない
結婚しても性格の不一致・DV等で離婚する
高度成長期以前は「結婚していることが当たり前」という風潮でした。
結婚したいと思ったら、近隣の人がお世話をするケースもあれば、職場内で相手を見つけることも可能でした。

しかし、 1970年代に入ると、結婚に対する価値観が変化します。
女性の社会進出が増え、結婚せずとも経済的に不自由しなくなりました。

仮に離婚してもある程度の収入源が確保できます。
どんなに性格が合わなくても、無理して一緒に結婚生活を営む必要はない、と考える人が増えました。

これは男性側でも同様です。
個人主義が重んじられる時代になり、 結婚・離婚に対する考え方が多様化した為です。

以上のような経緯でもって、一人暮らしの高齢世帯は流布しましたが、様々な問題も孕んでいます。
一人暮らしの世帯の問題に関しては以下の記事もご覧ください。

一人暮らしの高齢者が抱える問題とは?孤独死や認知症など超高齢化社会の問題点
第三人生編集部

孤立しがちな中年男性
無縁社会の根底にあるのは 単身世帯の増加です。
その単身世帯の中でも 中年男性の孤立が目立ちます。

この世代は学校を卒業しても正規雇用にたどり着けなかった「就職氷河期」世代も含まれます。
正社員として働きたくても、働く機会が十分に与えられませんでした。

未だに非正規雇用で、経済的に不安定な人もいます。
結婚を考える女性側としては、やはり収入の安定した男性を求めます。

そういった結婚を考えていてもマッチングしにくい背景も存在します。
経済的な理由から家庭を持つことをあきらめ、孤立しやすい世代です。

以前からこの就職氷河期に社会人になった世代の支援が叫ばれてきました。
しかし、諸事情から新卒・若年層の採用が優先されやすく、対策は後手後手なのが現状です。

孤独死のリスクも
経済的理由から家庭が持てず、単身世帯となれば、 それだけ孤独死のリスクも高まります。
今はまだ体が自由に動きますが、年齢を重ねれば間違いなく体が不自由になります。

孤独死件数(2017) 社会問題
参考:東京都監察医務院
上のグラフデータは東京都監察医務院が算出した単身世帯の死亡者数の者です。

年々死亡件数は増加しており、特に単身世帯の男性の死亡者数はここ10年程で倍増しています。

少子高齢化の加速と共に無縁社会が広まりを見せれば、孤独死の件数は増加していく事が考えられます。

しかし、周囲の人々とのコミュニケーションがあるなら、体が不自由であってもサポートが期待でき、孤独死自体を防ぐことが可能です。
しかし、 そうでない場合には外出するにも億劫になり、ついには自宅で孤独死…の可能性も考えられます。

身寄りがないのはもちろん、家族・親戚が遠方にいる等で万が一の場合に発見が遅れるケースも考えられます。

孤独死に関しては以下の記事もご覧ください。

孤独死とは?孤独死の社会的原因や傾向と対策、特殊清掃の実態を解説
第三人生編集部

有効な解決策は?
孤独死を防ぐ手立ては、やはり 近隣住民とのコミュニケーションです。
自治体や町内会のイベントなどを通して、普段から交流を深めることが大切です。

また、シェアハウスのような共同住宅に住まうのも一つの手段です。
これらは孤独死以外でも、大きな災害の際に助け合えるといったメリットも期待できます。

また、 婚活などの結婚サービスも充実させることも大切です。
若年層の結婚を想定したサービスが多い中、この中年世代のニーズに沿ったサービスの提供が求められます。

また、結婚するなら「経済的に安定した人」という価値観を変える必要性もありそうです。

訪問型の見守りサービス等の利用
仕事の都合等で、どうしても 家族が遠方で生活しなくてはならない事もあるでしょう。
遠くで一人で暮らす高齢者向けの訪問型見守りサービスも存在します。

郵便局が実施している「みまもりサービス」がその一例です。
そのほかにもカメラやセンサーを使用しての見守りサービスが普及しつつあります。

しかし、想定されているほど浸透していません。
コストが高い、機器を使用したコミュニケーションに抵抗があるなどの理由が壁となっているようです。

ただ万が一のことがあってからでは遅いです。
利用者がもっと増えるよう、見守りサービスを利用しやすくする必要があります。

これから広がるであろう無縁社会の中にあっては、必要不可欠なものとなりそうです。


無縁社会と無縁墓
お墓
誰にも看取られないまま亡くなる「無縁社会」と切っても切り離せないのが 「無縁墓」の存在です。

無縁墓とは
無縁墓(むえんばか)とは、 誰からも管理されることのないお墓です。
近年、あちこちの墓地・霊園で無縁墓が増加傾向にあります。

普通、お墓は家族・血縁者で管理します。
ですが 少子高齢化の影響でお墓の管理・維持が難しく、無縁墓となる事例が増加しています。

家族・親戚がいても、遠方に居住している等の理由でお墓の管理・維持が難しいのも理由です。
無縁墓が増加している背景には、やはり無縁社会が大きく関わっています。

また、お墓の管理・維持が難しいと判断し、 「墓じまい」を行うケースも増えています。
お墓の遺骨を取り出して更地にし、遺骨は別の場所に移すことが「墓じまい」です。

墓じまいにかかる費用は全国平均で約15~20万円です。
あらかじめお墓の管理・維持が難しいと考え、お墓を造らずに永代供養や散骨を希望するケースも目立ちます。

無縁墓は、最終的にお寺・霊園管理者の判断で合祀します。
墓じまいにかかる費用は、まとまった金額になります。

多くの無縁墓の墓じまい・合祀を行うとなると当然、多額の費用が発生します。
自治体が管理する霊園なら、それだけ税金が投入されるのです。

無縁墓地に関しては以下の記事もご覧ください。

無縁墓地とは?理由や無縁墓地にしない方法!改葬・永代供養するには?
第三人生編集部

無縁社会から新たに縁を増やすには
高齢者
無縁社会が生み出す孤独死や自殺…これらを自己責任とする考えも存在します。
しかし、 当人の力ではどうすることもできないこともあります。

そういった部分を 周囲の人々がどれだけカバーできるかが焦点になります。
無縁社会から抜け出すきっかけにもつながります。

繋がる場の増加が必要
結婚率の上昇・離婚率の減少
自治体の事業の広報活動の強化
共同生活等の新たな縁を増やす
繋がる場の増加が必要
スマートフォンの普及により、ネット上やSNS上でさまざまな人々と繋がることが可能となりました。
日常生活で接触する人が少なくても、こういったスマートフォンを通じたコミュニケーションで寂しさを解消できます。

しかし、もし万が一のことがあったとしても、スマートフォンの先の人間が助けてくれるとは限りません。
そのような時はやはり、 近隣住民とのコミュニケーションが必要です。

病気・ケガで倒れた時以外でも、災害時にも大きく関わってきます。
自治体・町内会、民生委員といった周辺住民との繋がりができる場を作ることが大事です。

結婚率の上昇・離婚率の減少
結婚率を上昇させるには、 「結婚したくてもできない」人のサポートが必要です。
結婚相談所や結婚に付随するサービスの拡充が求められます。

特に氷河期世代は経済的な事情から、結婚したくでもできない人が少なくありません。
この世代の就職支援・経済的支援も必要です。

熟年での結婚の推進も政府が支援を行うべき一つの手段と言えます。
熟年結婚に関しては以下の記事もご覧ください。

熟年結婚が増加中?熟年結婚のメリットや注意すべきポイントを解説!
第三人生編集部

また離婚率を減少させるためには、結婚相手をよく見極めることを啓発する必要がありそうです。
離婚理由の第一位が「性格の不一致」であることを、結婚前に意識することが大切です。

自治体の事業の広報活動の強化
隣近所と親しいお付き合いをしたいという人は減っています。
そういった隣近所とのしがらみを嫌うのも無縁社会の特徴です。

しかし、近隣で何かの犯罪が起こる、あるいは災害等が発生した場合には協力関係が必要です。
そういった不測の事態に遭遇した際のことを考え、 ある程度の繋がりを保つことが大切です。

その為には自治体やコミュニティライン・ボランティア活動に参加することを考えましょう。
社会福祉協議会などの活動にも注目すべきです。

共同生活等の新たな縁を増やす
自治体などの地縁、交流関係による友縁以外にも新たな縁を増やすことが大切です。
欧米ではコレクティブハウスといって、身寄りのない人が共同生活を送る施設があります。

日本でいうところのシェアハウスのようなものでしょうか。
一緒に生活をしている者同士が役割分担をすることで、ハウスの運営が保たれています。

日本ではシェアハウスほど普及はしていません。
しかし孤独死を防ぐ手立てとしてのコレクティブハウスの今後の普及に期待したいところです。


個人レベルでも無縁社会から少しでも抜け出す努力を
無縁社会という言葉が使われるようになってから約10年が経過しています。
当時よりも 無縁社会や孤独死に対する意識は強まりました。

残念なことに少子高齢化はますます進んています。
行政・自治体の取り組みに今後期待したいところです。

しかし、一番大事なのは実際に無縁状態になっている本人が、 自分の将来に危機感を持つことです。
自分ではどうしようもないこともありますが、せめて自分でできることは自らの手で行うべきです。

誰かが・何かが魔法の様に解決してくれると期待せず、自分から行動することが大事です。
孤独死は体が動かなくなってしまう状態に陥ることも原因の1つです。

体が動く今のうちに、何らかの繋がりを構築することが大切です。
「社会がそのうち何とかしてくれる…」

そういった期待を持つよりも、自ら無縁社会から抜け出す努力を惜しまないことです。

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