遺言・遺言書とは?その重要性と役割
遺言とは、自分が亡くなった後の大切な願いを言葉にして残すことです。主に「家やお金などの財産を、誰にどれだけ譲りたいか」を表明します。遺言を書面にして残したものを遺言書といい、遺言書は法的効力を持ちます。
自分の意志を遺言書という形にしておくことで、家族間のトラブルを避けられます。遺言書を通じて自分の想いをしっかりと伝えておくことで、残された家族も迷うことなく、故人の願いを実現できるでしょう。
遺言書の法的効力
遺言書は、亡くなった後に自分の財産をどのように分けるかを決めておく大切な書類です。法律で規定されているので、遺言書に書かれた内容は必ず実行されます。例えば「家は長男に、預金は長女に」というように、誰に何を譲りたいのかを具体的に書いておくことができます。
ただし、遺言書を作るときには守らなければならないルールがあり、間違った作り方をすると、せっかく書いた遺言書が無効になってしまうことがあるので注意が必要です。特に自分で書く遺言書(自筆証書遺言)の場合は、パソコンは使えず、全部自分の手で書かなければいけません。
また、書いた日付と名前を書いて、判子も押す必要があります。公証役場で作る遺言書(公正証書遺言)の場合は、公証人という専門家が内容をチェックしてくれるので、より法的な安全性が高まります。
遺言書がない場合どうなるのか
遺言書を残さずに亡くなってしまうと、法律で決められた順番や割合で財産を分けることになります。ただし、家族全員がその分配方法に納得しないと先に進めません。そのため、話し合いがまとまらずに困ってしまうことがよくあります。
特に家業を引き継ぐ場合や、土地・建物の相続では、遺言書がないとトラブルになりやすいです。家族同士で話し合いがつかないときは、家庭裁判所に行って解決を図ることになりますが、時間も手間もかかってしまいます。
家族が仲良く暮らしていても、お金の話になると気持ちがすれ違うことがあります。そんなとき、遺言書があれば「これが本人の希望だった」と分かるので、スムーズに話を進めることができるのです。
エンディングノートは法的に有効?遺言書との違いは?
終活では「遺言書」と「エンディングノート」という2つの重要な書類を残すことができます。この2つは似ているようで、大きく性質が異なります。
遺言書は法律に基づいた正式な文書で、書かれた内容には法的な強制力があります。主に財産の分け方について「誰に」「何を」「どれだけ」譲るかを具体的に指定します。例えば、「預貯金3,000万円は長男に相続させる」「マンションは長女に相続させる」といった具合です。
一方、エンディングノートは法的な力を持たない個人的な記録です。葬儀の希望や延命治療についての考え、思い出の品々の譲り先、そして家族への感謝の言葉など、様々な想いを自由に書き記すことができます。
この2つを組み合わせることで、財産の承継をスムーズに進めながら、同時に自分の人生の想いや希望も大切な人たちに伝えられます。遺言書で「形あるもの」の行き先を定め、エンディングノートで「想いの伝え方」を残す。このように使い分けることで、より充実した終活の準備となります。
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エンディングノート |
遺言書 |
法的効力 |
なし |
あり |
形式 |
自由 |
決まりがある |
記載事項 |
自由 |
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取り扱う内容 |
● 医療・介護の希望
● 葬儀について
● 暗証番号
● 保険内容
● メッセージ など
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● 財産分与
● 相続に関する内容 など
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遺言書の種類と特徴
遺言書には大きく分けて、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。秘密証書遺言は数が多くないため、ここでは前者2つについて紹介します。
どちらを選ぶかは、財産の種類や金額、家族関係など、それぞれの事情によって変わってきます。それぞれの特徴をふまえて、自分に合う遺言書を作成しましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、文字通り自分の手で書く遺言書です。次のような人におすすめです。
・ 遺言書作成に費用をかけたくない
・ 誰にも内容を知られたくない
ただし、作成するときには守らなければいけないルールがあります。守られていないと無効になってしまうため、よく確認しましょう。
・ すべての文章を自分の手で書いている。
パソコンで作ったり、誰かに代わりに書いてもらったりできない
(財産目録についてはパソコンや代筆でも可)
・ 記載した日付、指名、押印が必要
・ 訂正・変更する場合の様式も指定されている
また、気をつけるべきポイントとして以下のものがあります。
・ 紛失、盗難の危険性
・ 他者による改ざん
・ 法律で定められた形式に沿っていなければ無効となる
このようなリスクを避けるために、法務局で遺言書を預かってもらえる制度(自筆証書遺言書保管制度)を利用するとよいでしょう。
遺言書の紛失や書き換えを防ぐことができるだけでなく、保管申請時に民法の定める自筆証書遺言の形式に適合しているかのチェックが受けられます。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人(専門家)と証人2名の立ち会いのもとで作成する遺言書です。作成に費用はかかりますが、専門家がしっかりチェックしてくれるので、法的な安全性が高まります。公証役場で大切に保管してくれるので、紛失や書き換えの心配もありません。
・ 高齢、病気療養中などで手書きでの記載が困難な方
・ 財産が多い方
・ 家族関係が複雑な方
・ 内容について専門家に相談しながら書きたい方
費用がかかる
相談は全て無料だが、財産の額により手数料が数万円程度かかる。
証人を2人手配する
適切な人がいない場合は公証役場から紹介もできる。
印鑑登録証明書、戸籍謄本など各種書類の準備
自筆証書遺言、公正証書遺言それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、ご自身に最適な方法を選択してください。
遺言書の作成方法と執行の方法
遺言書を作るときは、しっかりとした準備と正確な手続きが大切です。また、亡くなった後に確実に遺言を実施するため「遺言執行人」を指定しておくと安心です。
遺言書作成の手順(自筆証書遺言)
①財産の把握
まずは、現在の財産の把握から始めます。具体的に以下のものを確認しましょう。
・ 土地や建物(不動産)
・ 銀行や郵便局の預金
・ 株式などの資産
・ 生命保険
・ その他の財産
②相続人の確認と相続分
次に、誰に相続する権利があるのか(相続人)を確認します。法律で決められた相続人の範囲と、それぞれが受け取れる分け前(相続分)を理解しておく必要があります。もし法律と違う分け方をしたい場合は、その内容をはっきりと書いておきます。
③記載事項
遺言書には、以下の情報を必ず書き入れます。また、全文手書きの必要があります。
さらに、財産の詳しい情報(例:不動産なら所在地と登記番号、預金なら銀行名と口座番号)もつけくわえておきましょう。 財産の目録だけはパソコンで作ったものを添付できます。財産目録の各ページにも署名・押印が必要なので注意してください。
このように準備をしっかりすることで、遺言書の内容が明確になり、後々の混乱を防ぐことができます。
遺言の執行方法
①遺言書の検認
遺言者が亡くなり、自筆証書遺言が見つかった場合、遺言書が有効なものかどうか家庭裁判所で検認する必要があります。ただし、公正証書遺言、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要です。
②遺言執行者の有無確認
遺言書中に遺言執行者の指定があるかを確認します。遺言執行者とは「遺言の内容を実現するために必要な行為を行う人」です。
指定できる人に制限はありませんが、財産が大きい、家族関係が複雑などの事情がある場合は、弁護士などの専門家を指定していると安心です。
もし指定がない場合は、法律で定められた相続人が遺言に沿って進めていきます。家庭裁判所に遺言執行者の選定を申し立てることも可能です。
③遺言執行~完了
遺言執行者は、まず相続人全員に対して遺言執行人への就任と遺言の内容を伝えなければなりません。続いて、遺言に基づいて相続財産の管理に入ります。
具体的な作業として、「預金は長男に」「不動産は長女に」といった遺言の指示通りに、財産を指定された人へ引き渡していきます。この過程で、名義変更などの法的な手続きも進めていきましょう。また、財産の目録を作成し、相続人への経過報告も欠かせません。
全ての財産の引き渡しを終えたら、最後に相続人へ完了報告を行って執行が終わります。
遺言の執行には、慎重さと公平性が求められます。また、必要な書類も多く手続きも複雑なため、弁護士などの専門家に遺言執行者を依頼するのも一つの選択肢でしょう。
遺言書作成時の注意点
法的に有効な遺言書にするため、作成時にいくつか気を配る項目があります。また、作成後の取り扱いや、通知の仕方などまで気を配っておくと、確実に遺言書を執行できるでしょう。詳しく説明しますので、参考にしてください。
作成形式
遺言書は民法第968条に定められたルールに従って作る必要があります。ルールを守らないと、せっかく作った遺言書が無効になってしまうことがあるのです。
自筆証書遺言は自分で書くという性質上、不備が起こりやすくなるため、下記の項目について必ず確認してください。
・ 遺言書全文、遺言者氏名、遺言書の作成日時を自筆で書いている
・ 遺言書に押印している
・ パソコンで作成した財産目録はすべてのページ
(両面の場合は両面とも)に署名・押印している
・ 遺言書の訂正、変更は遺言者が該当箇所を指摘し、
変更したことを記載する。さらに変更箇所に署名・押印する
遺言書の様式の他に気をつけることとして、遺言書の内容は、できるだけ具体的に書くことを推奨します。例えば「息子に家を譲る」ではなく「長男の〇〇に、〇〇市〇〇町1-2-3の土地建物を相続させる」というように、はっきりと書いておくと、トラブルの原因を避けられます。
遺言書を作るときは細かな注意が必要です。不安な点がある場合は、専門家に相談することも考えましょう。
遺言書の保管方法
自筆証書遺言は自宅で保管する場合と、法務局で保管してもらえる自筆証書遺言書保管制度があります。
公正証書遺言は作成後、公証役場で保管されます。
第三者機関で預かってもらうと、自宅で管理するよりも紛失や盗難、改ざんのリスクを減らせます。
注意すべきポイントとして、死亡後に遺書の存在を知らせる手段をあらかじめ決めておく必要があります。せっかく作成しても遺言書を見つけてもらえなければ、希望する形での財産分配ができません。
自宅で保管する自筆証書遺言と公正証書遺言は、相続人へ通知する仕組みがないため、信頼できる家族もしくは遺言執行人に保管場所を伝えておきましょう。公正証書遺言の場合は、相続人が公証役場に申し出て検索してもらうこともできますので、覚えておきましょう。
自筆証書遺言保管制度を利用する場合は、希望すれば死亡後にあらかじめ指定した人に通知を発行できます。
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自筆証書遺言 |
公正証書遺言 |
保管場所 |
自宅 |
法務局 (自筆証書遺言書保管制度)
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公証役場 |
メリット |
いつでも修正・変更できる |
● 紛失・盗難・改ざんリスクなし
● 預ける際に民法の定める形式に合致しているか形式上チェックしてもらえる
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● 紛失・盗難・改ざんリスクなし |
相続開始後手続き |
家庭裁判所で検認の必要あり |
検認不要 |
検認不要 |
相続関係者への通知 |
なし (遺族が遺言書の存在に気づけない可能性)
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本人が希望すれば可能 |
なし |
専門家への相談について
遺言書の作成では、専門家に相談すると安心です。遺言書作成に携わる専門家は弁護士、司法書士、行政書士の3種類があり、それぞれ異なる専門性を持っています。
弁護士は、法律の専門家として複雑な相続問題に対応できます。とくに家族関係に課題がある場合や、法的な問題が予想される場合には、弁護士への相談が有効です。
司法書士は、不動産の権利関係や登記手続きを専門としています。土地・建物の相続で名義変更が必要な場合には、司法書士のサポートが適切です。
行政書士は、自筆証書遺言の作成支援やエンディングノートの作成アドバイスを得意としています。書類作成の実務に精通しているため、具体的な作成方法を指導してもらえます。
専門家への依頼時には、以下の点を確認しましょう。
・ 遺言関連の相談実績
・ 具体的な費用
・ 専門家としての信頼性
専門家の支援を受けることで、将来の相続手続きをより円滑に進めることが可能となります。
まとめ
遺言書は、自分の財産を誰にどう託すかを決める大切な書類です。きちんと準備しておけば、残された家族がもめることを防ぐことができます。
遺言書には主に2種類あります。
・ 自分で書く「自筆証書遺言」
・ 公証役場で作る「公正証書遺言」
どちらを選ぶかは、自分の状況に合わせて決めましょう。自筆証書遺言では記載様式を、公正証書遺言では相続人への通知方法が大切になってきます。メリット・デメリットを確認したうえで作成することが大切です。
また、遺言書と一緒に「エンディングノート」も作っておくと、財産のことだけでなく、自分の想いも家族に残すことができます。
遺言書を作るときは、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。専門家のアドバイスを受けることで、法的に安全な遺言書を作ることができます。
大切なのは、元気なうちから準備を始めることです。また、作った後も定期的に内容を見直すことで、より確実に自分の願いを実現できます。