ホスピスとは?後悔ない最期を迎えるための基礎知識と探し方
ホスピスは、「人生の最期を穏やかに迎えるためのケアを提供する施設」として、痛みの緩和や精神的なサポートを行います。本記事では、ホスピスの特徴や病院・介護施設との違い、費用相場について詳しく解説します。
大切な家族が終末期を迎えたとき、「どのようなケアが最適なのか?」という悩みを抱えることは少なくありません。
そのような時、ホスピスは「人生の最期を穏やかに迎えるためのケアを提供する施設」として、痛みの緩和や精神的なサポートを行います。しかし、ホスピスの選択肢や費用などについては理解が難しく、何を基準に選べばよいか悩む方も多いでしょう。
本記事では、ホスピスの特徴や病院・介護施設との違い、費用相場について詳しく解説します。
最適な療養先を見つけるための参考にしてみてください。
ホスピスは人生の最期を穏やかに迎えるためのケアを提供する施設
ホスピスとは、人生の最期を迎えるにあたり、延命治療ではなく、患者ができるだけ痛みや苦しみを感じず穏やかに過ごすための専門的なケアを提供する施設です。
ホスピスでは、治療や延命措置は行わず、病気の進行を抑えるためではなく、残された時間を充実させることを目的としています。患者本人だけでなく家族へのサポートも行い、死別後のグリーフケア(遺族支援)も特徴のひとつです。
もともとホスピスとは、「ホスぺス(hospitium)」というラテン語が語源であり、「疲労した人のための歓待や休息と保護の場」を意味しています。日本ではそこから、最期のときを穏やかに過ごすために行われる、苦痛を緩和する治療やケアをする施設のことを「ホスピス」と呼ぶようになりました。
ホスピスの対象者は苦痛を緩和し最期を迎えたいすべての人
ホスピスは、最期の時間を穏やかに過ごしたいと願うすべての人を対象としています。
重い病気や治療が難しい状態にある患者が抱える身体的、心理的、社会的な苦痛を和らげることを目的とし、患者本人だけでなく、その家族にも寄り添うケアが特徴です。
ホスピスの目標は「延命」ではなく、「生活の質(QOL)の向上」です。
痛みや不安、孤独感などを取り除き、その人らしい時間を過ごせるよう支援します。
がんや進行性の神経疾患、心不全など、治療の効果が見込めない状態になった場合に選ばれることが多いですが、基本的には年齢や病気の種類、医療行為の有無によってホスピスへの入居を断られることはありません。
ただし、その施設の種類やスタッフの状況などによって、受け入れが困難な場合もあります。
このほか、病気のことや今後のことなど本人としっかりと相談して双方が同意したうえで入居してもらう施設が多いです。
これは、ホスピスでは病気の治療は行っていないため、入居する本人が自身の状況を理解していないとホスピスで受ける治療やケアに不信感や疑問を抱きかねないからです。
ホスピスでは精神や経済面のサポートも行う
ホスピスでは、病気を完治させるためのケアではなく、病気からくる苦痛を和らげる治療やケアを行います。
例えば、がん患者さんが痛みを訴えるのであれば、鎮痛剤や医療用麻薬を投薬します。
また、ホスピスでは身体的なケアだけでなく、精神的・経済的なサポートも含まれているのがポイントです。
患者が最期を迎えるにあたり、痛みや身体的な症状だけでなく、精神的な負担や不安も大きな問題となります。
ホスピスでは、精神的な支えを提供する専門スタッフが患者に寄り添い、心理的なケアを行います。
また、家族へのサポートにおいても重要な役割を果たします。
病気で苦しんでいるのは患者さん本人だけではありません。
ご家族も「もっとそばにいてあげたいけど現実的にいられない」と多くの不安を抱えています。
どのように声をかけるべきか、どう接すれば良いのかと迷うこともあるでしょう。
ホスピスでは、患者の家族が抱える負担やストレスにも配慮し、必要に応じてカウンセリングを提供したり、介護方法のアドバイスを行ったりします。経済的な面でも、ソーシャルワーカーが保険や公的支援制度について説明し、家族が無理なくケアを受けられるよう支援します。
これにより、患者とその家族は最期の時間安心して過ごすことができるのです。
病院や介護施設との5つの違い
ホスピスでは、入居した方の病気を治すことを目的としておらず、穏やかに最期を迎えるための環境を提供しています。
そのため、病院や介護施設との違いが主に5つあります。最良の選択ができるよう、それぞれについて確認していきましょう。
治療を目的としていない
ホスピスの主な役割は、終末期を迎えた方が快適に過ごせるよう支援することです。
病院では病気を治すことを最優先に治療や手術が行われますが、ホスピスではそのような医療行為は基本的に行いません。
日常を楽しむためのイベントがある
一般的な病院は治療に専念する場所ですが、ホスピスは住まいのような環境を提供しているため、レクリエーションやイベントを行う施設もあります。
患者が穏やかな時間を過ごせるよう工夫されているのが、ホスピスの特徴です。
幅広い専門職によるサポート
病院では主に医師や看護師、薬剤師などが治療にあたります。
ホスピスではそれに加え、心理士や宗教家、ボランティアスタッフなど、多職種の専門家が連携してサポートします。
また患者本人だけでなく、家族の精神的ケアを重要視している点も病院との違いです。
家族と過ごす時間を大切にできる
ホスピスでは、患者の家族がケアに関わりやすい環境が整っています。
家族が宿泊できる設備を備えた施設もあり、患者と一緒に過ごす時間を確保しやすくなっています。
ただし、近年は新型コロナウイルス感染症の流行により、一時的に使用できなくなっているケースもあります。利用を考えている方は、一度施設に確認するようにしましょう。
一人ひとりのケアを重視
ホスピスでは患者一人ひとりの状況に合わせた個別ケアが重視されます。
介護施設ではイベントやレクリエーションが多く、集団での活動が中心ですが、ホスピスでは患者の体調や希望に応じて柔軟に対応し、穏やかな日々を過ごせるよう配慮されています。
ホスピスでもこれらの活動を実施することがありますが、目的はあくまでも「穏やかに過ごすこと」が目的であるため、ご本人が希望しない場合には、参加を無理にすすめることはしません。
ホスピスの費用相場施設によって異なる
一口にホスピスといっても、入居する施設の種類によって費用が異なります。
保険が適用される医療機関の緩和ケア病棟と、民間が運営するホスピス施設では、費用の内訳や負担額に違いがあります。
また、選ぶ施設によって、サービスの内容や料金体系が異なるため、事前に確認することが大切です。
緩和ケア病棟の場合は入院料+食事やベッド代がいる
緩和ケア病棟に入院した場合には、通常の病院と同じように、入院料や食事代、ベッド代が必要です。
ホスピスの入院費は厚生労働省により、1日あたり47,910円と定められています(一部加算を除く)。入院費については健康保険が適用され、入院期間や所得額によって異なってきます。
その他の施設(ホスピスプラン)では、平均20~55万円程度
ホスピスプランを提供する有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅では、月額35万円〜65万円程度が相場となっています。
これには、居住費や食費、介護サービス費、医療費が含まれており、入居者の状態に合わせた個別のケアが提供されます。
また、入居一時金については、ホスピスへの入居期間が他の施設に比べて短いことから、求められないことが多いです。
施設ごとによって料金やサービス内容は異なるため、複数の施設を比較し、最適な選択となるよう慎重に見極めましょう。
ホスピスへの入居を希望する場合はかかりつけの病院へ相談
本人が終末期の残された時間をどのように過ごし、そういったケアを望んでいるのか、早めに聞いておくようにしましょう。そのうえで、ご家族間で相談の場を設けます。
ホスピスへの入居を希望する場合、まずはかかりつけの病院へ相談します。
かかりつけ医は、患者の現在の健康状態や治療経過を把握しており、ホスピスへの適応が可能かどうかを判断してくれます。
また、ホスピスに入院するための手続きや必要な書類、医療的なアドバイスも提供してくれるため、スムーズに移行するためのサポートが受けられます。
介護サービスを受けているのであれば、そこでのケアマネージャーに聞いてみるのも良いでしょう。
ホスピスを理解して大切な家族に最善の選択をしよう
ホスピスは、患者が穏やかに最期の時を迎えるためのサポートを提供する施設です。
治療ではなく、痛みや苦しみを緩和するケアに重点を置き、身体的だけでなく精神的、社会的なサポートも行っています。
家族として、最良の選択をするためには、ホスピスの仕組みや費用についてしっかり理解することが不可欠です。
大切な家族にとって最適なホスピスを選ぶために、今一度そのケア内容と費用相場を確認し、どの施設が最も適しているのかを検討してみましょう。