身辺整理とは、自分の持ち物や財産、生活環境を整理することをいいます。特に高齢者が終活の一環として取り組むことが多く、人生をシンプルにし、残された家族への負担を減らす目的があります。
本記事では、身辺整理の基本、終活との違い、具体的なやり方を詳しく解説します。
身辺整理とは
身辺整理とは、自分の身の回りのものや情報を整理し、必要なものと不要なものを分ける作業です。物理的な整理だけでなく、金銭的・情報的な整理も含まれます。
高齢化社会に伴い、「終活」のワードが一般的になってきました。将来を見据えた身辺整理は終活の一環であり、最初に取り組む入口ともいえます。
近年は核家族化に伴い子どもが遠方に暮らすケースも多く、少しでも子どもへの負担を減らしておきたいと、早いうちから身辺整理を始める方が増えています。
身辺整理と終活の違い
身辺整理というとイメージは「断捨離」に近く、誰でも取り組めるものです。特に身の回りの持ち物や情報をすっきりとさせる作業を指します。
一方、終活は、もう少し幅広く、遺言状の作成など、人生の終わりを見据えて準備をしていく行為を指します。
死後を見据えた身辺整理は「生前整理」とも呼ばれ、終活の一環でもあります。
身辺整理
範囲:持ち物や生活環境の整理が中心
目的:生活のシンプル化、家族への負担軽減
対象:特に高齢者に限らず、幅広い世代が取り組める
終活
範囲:エンディングノート作成、葬儀やお墓の準備、相続計画など
目的:自分の死後についての準備を整える
対象:人生の最終章に向けた準備を考える人
身辺整理(生前整理)は、終活の一部として位置づけられることもありますが、生活の質を向上させるために、終活に限らず、誰でも、早い段階から始めることが可能です。
身辺整理の目的とメリット
身辺整理の目的は、生活のシンプル化や終活の一環として残された家族への負担軽減が主ですが、心の整理の目的もあります。
早いうちから定期的に身辺整理を行うことで、不安が軽減し、心のゆとりを得られます。
身辺整理の主なメリットとしては、以下があげられます。
■身辺整理のメリット
・ 空間が広くなり生活が快適になる
・ お金や時間の節約になる
・ 財産の把握が容易になり、相続トラブルを防げる
・ 過去の思い出を振り返り、未来への準備ができる
身辺整理を行うことで、物理的にも精神的にもすっきりして、快適に生活できるようになります。
自分の所有物や財産、状況を把握でき、結果として無駄な買い物をしなくなる、不要なサービスを解約するなど節約にもつながります。
また、財産が整理されていると、残された家族の負担を減らし、相続の際のトラブルを防ぐことができます。
終活の始めに行うことで、身辺整理での情報をもとに遺言状やエンディングノートを書きやすくなるなど、これからの終活をスムーズに進めることができますよ。
身辺整理を始めるタイミング
身辺整理を始める時期に決まりはありませんが、以下のようなタイミングで行うことが一般的です。
・ 退職後
・ 引っ越しや住み替え時
・ 家族から勧められたとき
終活の一環として身辺整理を行う場合、特におすすめのタイミングは「定年退職後」です。自由な時間が増えるため、整理に取り組みやすい時期といえます。
また、引っ越しや住み替えのタイミングも、引っ越しのついでに不用品の仕分けをしやすいでしょう。
これまでに身辺整理のタイミングをつかめずにいた方は、「思い立ったが吉日」といいます。この記事を読んでいただいたタイミングで始めてみるといいでしょう。
身辺整理の具体的な方法
①整理したいものをリストアップする
まずは整理したい項目を紙に書き出し、優先順位を考えてみましょう。
次章で整理すべき項目例のリストをご紹介するので参考にしてみてください。
②「必要」「不要」「迷う」の3つに分類する
具体物は「必要」「不要」「迷う」の3つに分けましょう。
必要なものは整理しながら残し、不用品は処分します。
迷うものは基本的に捨てることをおすすめしますが、さくさくと仕分けを進めるためにも一旦は仕分けだけ進め、あとから考えるといいでしょう。
③不要なものを処分する
不要品の処分は、「自分で捨てる・売る」ほか、「まとめて業者に頼む」方法があります。
自分で処分する場合、リサイクルショップに持ち込む、自治体の不用品回収サービスを活用するなどの方法で処分できます。
専門業者では不用品の回収・買取業者のほか、遺品整理サービスを提供する会社に「生前整理」のサービスを頼むこともできます。
④重要なものをまとめる
大切な書類や貴重品は、一箇所に保管します。必要に応じて子どもや相続人に保管場所を伝えておきましょう。
なお、一度整理しても時間がたつと物が増えていったり、重要なものの置き場所を忘れてしまったりすることもあります。
そのため、5年ごとなど定期的に見直すことをおすすめします。
身辺整理の注意点
①相続や税金に関する知識を持つ
財産を整理する際、相続や税金に関する基礎知識があると安心です。相続ではどのような書類が必要になるかなどを、先に調べておきましょう。
特に不動産や高価な品物の売却を検討する場合、税理士や専門家に相談することをおすすめします。
②重要なものは分かりやすく保管する
重要な書類や貴重品は、一箇所にまとめて保管し、分かりやすい場所に置いておきます。契約書など重要な書類を誤って捨ててしまわないよう注意が必要です。
一覧リストを作成し、重要なものをまとめておくと安全です。
万が一に備えて、家族や信頼できる人に保管場所を伝えておきましょう。
③自分の気持ちを大切にする
思い入れのある品物を整理する際、感情的になることがあります。無理に処分しようとすると、精神的負担になる可能性も考えられます。
そうした場合、無理に捨てる必要はありません。時間をかけてゆっくり判断しましょう。
身辺整理の相談先やサポート
身辺整理について誰かに相談したい場合、内容に応じて専門家やサポート機関に相談することができます。
以下に、具体的な相談先や利用できるサポートサービスを紹介します。
身辺整理業者(遺品整理業者)
身辺整理や遺品整理の専門業者は、生前整理のサービスを提供していることも多く、不要品の仕分けや処分、貴重品の整理をサポートしてくれます。
特に、遺品整理士認定協会に認定された業者は、身辺整理にも対応しており、信頼性が高いでしょう。
■主なサービス内容
・ 不用品の仕分け、回収
・ 貴重品や重要書類の選別
・ 不動産の整理や清掃
生前整理の料金の目安は部屋や家の広さによって変わりますが、1ルームだと5万円~20万円、一軒家だと30万円~70万円程度です。
行政や自治体のサポート窓口
地域の自治体は、不要品処分やリサイクルに関する情報を提供してくれる場合があります。
■主な提供サービス
・ 不用品回収やゴミの分別方法の案内
・ リサイクル施設の紹介
・ 地域で利用できる福祉サービスの情報提供
福祉団体や高齢者支援センター
地域包括支援センターや社会福祉協議会といった高齢者向けの福祉サービスや相談窓口も、身辺整理のサポートを提供している場合があります。
■主な提供サービス
・ 生活全般の相談(家事、片付けなど)
・ 地域のボランティア活動紹介
・ 高齢者向けの住み替え支援
リサイクルショップや不用品買取業者
価値のあるものや再利用可能なものを手放す際には、リサイクルショップや買取業者の利用が便利です。
■主なサポート内容
・ 家具、家電、衣類などの買取
・ 骨董品や貴金属の査定
終活カウンセラー
終活カウンセラーは民間資格ですが、終活全般に関するアドバイスを提供してくれます。身辺整理に関しても相談することができます。
■主なサポート内容
・ 身辺整理やエンディングノート作成のアドバイス
・ 葬儀や相続に関する準備サポート
・ 老後の生活設計の提案
まとめ
身辺整理は、生活をシンプルにし、家族への負担を減らすための大切な取り組みです。コツや具体的なやり方を理解し、スムーズに進めるための計画を立てましょう。
一人でなかなか進められない方は専門家への相談も検討し、適切なサポートを得ながら、自分に合ったペースで取り組んでいきましょう。
思い立ったが吉日、この記事を参考に、前向きな気持ちで身辺整理を進めていけることを祈っています。