水引きとは
御仏前 水引
水引きは、 こよりを紙にのり付けして乾燥させ、固めた帯ひものこと です。
主に冠婚葬祭関連の祝儀袋に使われたり、贈り物の包装紙にくくって結んだりします。
また、飾りひもだけでなく、ピアスやヘアアクセサリーなどのモチーフとしても注目されているのです。
水引きの由来・歴史
ここでは、水引きについて、以下の2つを詳しく説明していきます。
水引きの語源
水引きの歴史
語源
まず、水引きの言葉の由来について取り上げます。
言葉そのものには「まだ封を開けていない」という意味があるのです。
さらに、水引きの性質として、 ひもを結んでいくうちほどけにくくなり ます。
そこから、縁(えにし)を意味するようになったのです。
語源に関しては、以上の二説が有力とされています。
和紙を細長い棒状にして、水のりを引いて乾燥させ固めた
こよりを色つきの水に入れ、染めたことから
歴史
次は、水引きが現在のような使われ方になった歴史を見てきましょう。
水引きが今の形になったのは、諸説ありますが、代表的な説は以下の2つです。
遣唐使が持ってきた
航海のお守り
遣唐使が持ってきた
一つ目の説では、飛鳥時代から歴史が始まります。
遣隋使・小野妹子は隋(中国)から日本に戻る時、付き人を伴っていました。
その付き人は隋の品物を手土産として持っていったのですが、その贈り物には 紅白の麻ひも が結ばれていたのです。
これ以降、日本の朝廷では天皇に捧げものに同じ色のひもを使うようになりました。
室町時代に入ると、水引きの材料が麻ひもからこよりに変化するのです。
この頃から、 こよりはのり水を引いて乾燥と凝固が施され ます。
そのこよりを、おめでたい色(紅白など)に染めて、水引きとして用いたのです。
まさに、現在に続く形の基礎が形成されたといえます。
航海のお守り
二つ目の説は、 人が海に出た際に携帯していたお守り です。
長距離の旅などで海を越えなければいけないとき、人は魔除けのものを用意します。
縄に黒色毒を塗り、ほどくと赤色に変化する からくりを施したのです。
不思議な力をもったこの縄は、航海の妨げとなるであろう海賊や事故を防ぐためにまつられました。
水引きの種類
水引 慶事
ここでは、水引きの種類に関して、以下の2つを説明します。
水引きの色
水引きの本数
水引きの色
水引 銀
水引きの色は、対象となる催し物ごとで異なります。
結婚祝いや出産祝いには、
赤×金
赤×白
金×銀
葬儀や法事には、
銀
青×白
白×黒
などの2パターンカラーの組み合わせが使われます。
色の配置は、右の輪に濃い色を、左の輪に薄い色が来るよう結ぶのです。
水引きの本数
水引き 本数
水引きを結ぶときのひもの本数について。
現代で浸透しているのは、 10本、7本、5本、3本 です。
厳密には、5本の水引きが正式とされています。
なぜ5本が正式かというと、手指(5本)や中国の五行説思想がもととなっています。
五行説とは、すべての物事は火水木金土の5要素から成り立っているという思想のことです。
ほかの本数は、
10本は5本を倍にし、婚姻において 「夫婦と両婚家が仲良くしている」 様子を表している
7本は5本を豪華にしたもので、 単に祝うというよりさらに深い思い をこめる
3本は5本の省略版で、 祝福の意味はあるけれど贈り物はシンプル
といった意味を示しています。
水引きの結び方の種類
水引き 種類 蝶結び 花結び あわじ結び 結び切り 梅結び
水引きを実際に結ぶ時は、冠婚葬祭によってさまざまな種類があります。
蝶結び(花結び)
結び切り
あわじ結び
梅結び
上の図の中のこれら4つの結び方について説明します。
蝶結び(花結び)
水引 蝶結び
水引きの結び方では、お祝いの意味を持っています。
蝶結びはいわゆるリボン結びのことです。
見栄えはしますが、 ほどけやすく結びやすい です。
この特徴から、進学、出産や開業祝いなど 「何度起きても縁起がいい」こと をお祝いします。
花結びという名称から、結婚祝いにも使えそうだと考えると思います。
しかし、実際にこの水引きの結び方で贈ると、「夫婦の別れが起きてほしい(何度も)」という意思表示になるので注意が必要です。
結び切り
水引 結び切り
結び切りは、 水引きではおめでたくないこと・悲しいこと を意味します。
一度結ぶとほどけないため、 「繰り返し起きてはいけない」こと に使われるのです。
冠婚葬祭では、葬儀や結婚などにこの結び切りを使います。
人が事故に遭ったり、入院した時などのお見舞いにも有効です。
あわじ結び
あわじ結びは、 一度結ぶとほどけない結び方 です。
水引きとしては、結び切りと同様「この先同じことが起きるのは避けたい」という意味です。
また、ひもの端を引っ張ると結び目がもっときつくなります。
暗に、 「相手と長く縁を保ってほしい」 という願いがこめられています。
名称の由来は、ひもの最終形態があわびに見えることです。
結び方では歴史が長く、最古の結び方といっても過言ではありません。
したがって、すべての催し物で通用します。
梅結び
水引 梅結び
梅結びは、水引きの種類でもかわいらしくデザイン性が高いです。
ベースになっているのは馴染みのある梅の花。
梅は 縁起物とみなされて いて、祝福を意味する「松竹梅」からもめでたいイメージが強いです。
梅結びは、花びらのような5つの輪をつくることで、ほどきにくくなっています。
これにも 「絆や縁がしっかりと結ばれるように」 という意味があるのです。
水引きの慶事と弔事での違い
水引 白と黄色
慶事と弔事ごとに、水引きの本数や色、結び方を説明します。
慶事における水引き
弔事における水引き
慶事における水引き
お祝い事では、水引きの本数は 9本、5本または7本 を使います。
祝福を表す水引きの色は、以下の通りです。
色 使用場面
金×銀 婚礼関係の催事、一生に一度規模の祝い事(長寿など)も含まれる
赤×白 慶事ではすべて。「紅白」と表現されることもあるが、不適当
また、慶事における水引の一般的な結び方は、
あわじ結び
蝶結び
これら2種類です。
あわじ結びは、前述したように一度結ぶとほどくのが困難になります。
そのため、結婚祝いなどに 「一度結ばれた縁が絶対に切れないように」 と願いをこめるのです。
反対に蝶結びは、何度もほどくことができます。
ほどけやすいため、不条理な結婚祝いなどでは避け、出産祝いや入学祝いなどに使います。
「何度学校に行っても/子どもを産んでも幸福になれる」という意思表示をします。
しかし、この「ほどけやすいと縁起が悪いという説」は不適切とする見方もあります。
水引きを贈り物に結び付けるのは、「あなたに贈るものはきれいですよ」ということを示すためなので、人によっては、「新品で未使用のもの」を意味しているのだから、水引きをほどくこと自体違うと言います。
弔事における水引き
お葬式や法要などのお悔やみ事では、水引きの本数は 6本、4本、2本 です。
また何色を選ぶかは、以下の一覧を参照してください。
色 使用場面
黒×銀 仏教の法事。会葬者の香典や供養品に使われる。
黒×白 黒銀と同義
双白 神道系の祭儀など。香典に使われる
双銀 法事での香典。仏教以外の宗教、キリスト教の葬儀でも使われる。仏事では女性が香典を贈る際に選ぶ
結び方は、 結び切りが主流 です。
これも上述したように、最後に水引きの真ん中できつく結びます。
何重にも輪が重なっているため、新たにほどこうとすると手こずってしまいます。
そんな結び切りには、 「(お悔やみ事であれば)誰かを失った悲しみをこれ以上繰り返さない」 という意味があります。
ですから、結び直しができてしまうと不謹慎に取られるのです。
対象になる催事は、法事や「一度結んだ縁が切れるのは大ごと」の婚礼になります。
また、人が事故や病気にかかって元気になったら、それをお祝いする「快気祝い」の水引きでも使われます。
【コラム】水引きを結ぶのし紙とは?
熨斗(のし)
水引きが結ばれた(印刷された)紙は、「のし紙」といわれていましたね。
のし紙の「のし」は、 慶事で使われるのし紙の右上についている絵 のことです。
のしのもとの意味は「あわび」で、 大昔の日本では、本物のあわびを薄く伸ばして干し、香典に添えていました。
あわびには、 「あなたの門出をお祝いしています」 というメッセージがこめられていました。
それを特別な催事で贈ることで、相手に真心を伝えたわけです。
今は、事前に紙に印刷されているので、根底にある意味を知ると印象が違ってきますよね。
その のしと水引きが印刷、またはかけられたものがのし紙 です。
のし紙が使われるのは、一般的にお祝い事です。
贈り物はすでに包装紙でくるんであり、その上からさらに白い紙をかけます。
伝統的には紙の上に水引きを結んで、右上部分にのしを飾るのですが、よく見る形はすべて印刷されています。
お悔やみ事では、のし紙ではなく掛け紙を使います。
のし紙との違いは、 水引きのみが印刷されていてのしがないことです。
のし袋に関しては以下をご覧ください。
のし袋の種類を水引の色・形ごとに解説!祝儀・不祝儀の表書きも
のし袋の種類を水引の色・形ごとに解説!祝儀・不祝儀の表書きも
お墓・霊園比較ナビ編集部
水引きの結び方は催事ごとで変わる
水引きは、その本数や色、結び方など、冠婚葬祭でかなり違います。
その認識がなければ、インターネットで「水引き」を検索した時も望まない情報に行き当たりかねません。
水引きの種類は、慶事と弔事で以下のように分かれます。
お祝い事: 色は赤白、本数は奇数(9、7、5)。結び方は蝶結びまたは結び切り
お悔やみ事: 色は黒白、本数は偶数(6、4、2)。結び方は結び切り
覚えるコツとしては、両者で特徴となるポイントをおさえます。
おめでたいことは、明るく(赤)、華やか(花結び)なイメージ。
お悔やみ事は静か(黒)で繰り返したくないこと(結び切り)とイメージします。
こうしたとらえ方だと、水引きの結び方を検討する時も迷わないですよ。
ご参考になれば幸いです。