親の老後資金がないときにはどうすればいい?子どもができるサポートや利用可能な制度を紹介
親の老後資金について考えたことはあるでしょうか?
できることなら、ゆとりのある老後生活を送ってほしいですよね。
本記事では、親の老後資金がなくなる理由、なくなった際に子どもがすべきこと、親のためにできるサポート、老後資金のない親が利用できる各種制度について解説します。
「老後資金がなくなった」「このままでは生活できない」とある日突然親から打ち明けられたらどうしますか?
そんなことはありえないと思うかもしれませんが、親の老後資金がなくなることは十分考えられる事態です。
本記事では、親の老後資金がなくなる理由、なくなった際に子どもがすべきこと、親のためにできるサポート、老後資金のない親が利用できる各種制度について解説します。
親の老後資金がなくなる理由
そもそもなぜ親の老後資金がなくなるのでしょうか。親も自分の老後資金がなくなるとは思っていなかったはずです。それでもなくなってしまう理由を解説します。
収入が減る
年をとると収入が減ります。会社員の多くは65歳以上になると退職します。自営業であれば定年はありませんが、体調面などから仕事を減らしたり、引退したりするケースも多いでしょう。
引退後は年金がおもな収入になる方が多くを占め、現役のときよりも収入が減るケースがほとんどです。収入が減れば、それに応じて生活レベルも落とさなければなりません。
生活レベルを落とせなければ家計を維持できなくなり、最終的に破産してします。
しかし、今までの生活レベルを急に落とすことは難しいもの。そのため、老後資金がなくなるケースがあるのです。
負債がある
老後になると収入が減るため、住宅ローンなどの負債が残っていると支払いが厳しくなります。しかし、晩婚化などの影響で、定年後もローンを支払わなければならないケースが増えているのが現状です。
負債があるときは、何歳まで支払わなければならないのかよく確認し、繰り上げ返済などで対応していかなければ、老後資金がなくなる可能性があります。
また、住宅ローンの返済が終わっていても、固定資産税や修繕費など住居に関する費用は負担になりがちです。賃貸の場合でも家賃は大きな出費となるでしょう。
医療・介護費用
75歳以上の高齢者の医療費の自己負担は1割負担、70歳から74歳も2割負担と安いため、医療費はそれほどかからないのではないかと思っている方もいるかもしれません。
しかし病気が長引き、通院回数が増えると負担も大きくなります。
また、大きな病気にかかり先進医療が必要になったときは、公的医療保険の対象外のため、全額自己負担で払わなければなりません。
医療費用だけでなく、介護費用も負担になります。自分自身や配偶者に介護が必要になったときは、介護施設への入居なども検討しなければならなくなります。
介護施設などは入居費用や月額費用が思ったよりもかかるケースが多く、老後資金がなくなってしまう可能性があるでしょう。
親の老後資金がなくなったときに子どもがするべきこと
親の老後資金がないとわかった際に、親をサポートするために子どもがしなければならないことがいくつかあります。ポイントを3つに絞って解説しましょう。
親が持っている資産状況を把握する
まず、親が持っている資産の現状を把握する必要があります。
通帳や保険などの資産整理によって、親自身も気付いていなかった口座や積立保険、不動産などが見つかる可能性もあります。一方で、意外な負債が見つかるケースも。
いずれにしても正確な資産がわからないと、適切なサポートもできないため、できるだけ正確な資産状況を把握しましょう。
親の毎月の収支を把握する
次に毎月の収支を把握します。親が現在も働いている場合の収入は、給与明細や確定申告書で確認可能です。
また、年金暮らしであれば、「年金振込通知書」や「ねんきん定期便」で年金の額も把握できます。
支出は、家計簿をつけていれば正確な内容を把握できます。
家計簿をつけていないときは、通帳から引き出している金額などにより、ある程度推測が可能です。
健康状態の把握
最後に、親の健康状態を把握しましょう。現在の健康状態が悪ければ、将来的に医療費や介護費が増える可能性が高くなるため、将来への備えが必要です。
場合によっては、親の資産を売却する必要も出てくるでしょう。
しかし、そのときに認知症になっていると売却が難しくなります。そのため、事前に任意後見制度などで備えておくとスムーズに売却が可能です。
老後資金のない親のためにできるサポート
親の状況を把握できたら、子どもとしてできるサポートをしていきましょう。ここでは、老後資金のない親のために子どもができるサポートをいくつか紹介します。
家計の見直しなど経済的なアドバイス
収入より支出が多いのであれば、家計を見直すようにアドバイスしてはいかがでしょうか。特に支出をきちんと把握していないときは、レシートの保管や家計簿の作成などをすすめてみましょう。
また、高齢者はインターネットの回線費用や携帯電話代、保険料などの固定費で、必要以上の支払いをしているケースがしばしばあります。このような節約しやすいポイントをアドバイスしてあげることも効果的です。
金銭的なサポート
サポートする子ども側に金銭的な余裕があれば、金銭でのサポートが効果的です。適切な仕送り金額を決めるためにも、先ほど説明したように親の資産や収支を把握しましょう。
生活費の仕送りであれば贈与税の対象外のため、税金はかかりません。また仕送りをしていれば、条件次第で親を子どもの扶養に入れることも可能になり、子どもの節税にもつながります。
公的制度を手続きする
お金に困っている高齢者が利用できる制度は意外とたくさんあります。しかし、制度自体が知られていないことが多く、手続きも複雑なことが多いため、高齢者だけでの対応は大変です。
そのため、親が利用できる制度を子どもが調べて、手続きも手伝ってあげれば、親へのサポートになるでしょう。
同居する
認知症があるなど健康面で不安がある場合は、同居も選択肢の一つになります。ただし、家事や介護の負担が増えるため、家族とよく話し合うことが必要です。
子ども側は問題がない場合でも、親側が負担に感じるケースもあります。例えば、誰も知人がいない町への引っ越しにより、家に引きこもったり足腰が衰えたりすることもあるからです。
扶養に入れる
定期的に仕送りをしていれば、同居していなくても生計が同一とみなされるため、収入などの条件を満たせば子どもの扶養に入れることができます。
もちろん同居の場合も扶養に入れることが可能です。親を扶養に入れると、扶養控除で子どもの税金が安くなるため、その分を金銭的なサポートに充てられます。
例えば、親が70歳以上で同居しているときは58万円、離れて暮らしているときは48万円が所得税から控除されます。
老後資金のない親が利用できる各種制度
先ほどお金に困っている高齢者が利用できる制度は意外と多く存在すると説明しました。ここでは、具体的な制度をいくつか紹介します。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、都道府県の社会福祉協議会からお金を借りられる制度です。
保証人は原則必要ですが、保証人がなしでも年利1.5%で借りられます。保証人がいるときは無利子です。
生活支援金であれば、単身なら月15万円で原則3ヵ月間、最長12ヵ月間借りられます。支給ではなく返済しなければならないため、一時的にお金が必要になった際に利用を検討するとよいでしょう。
老齢年金の繰り上げ受給
年金受給は65歳からですが、繰り上げ受給を申請すると60~64歳からでも受給できます。
ただし、受給年齢を早くするほど、もらえる年金は減額されるため注意が必要です。
また、いったん繰り上げ受給を始めると、取り消しができないところもデメリットでしょう。繰り上げ受給をする場合は、メリットとデメリットを十分に検討しておくこと必要があります。
生活保護
親に老後資金がなく、子どもにもサポートの余裕がないときは、生活保護も一つの手段として検討しなければならないかもしれません。
生活保護では「生活扶助」により生活費を受給できるほか、「医療扶助」「介護扶助」により自己負担なしで医療・介護サービスを受けられるようになります。
ただし、子どもなど親族に余裕があるにもかかわらず援助をしていない場合は、生活保護の申請が通らないケースも。
また、生活に利用していない土地や家屋などがあるときは売却する必要があります。
不動産の活用
持ち家などの不動産があれば、売却、賃貸、リースバック、リバースモーゲージなどで資金を用意できるかもしれません。
リースバックとは、自宅を売却して現金化し、売却後の自宅には賃貸の形で住み続けられるサービスです。リバースモーゲージは自宅を担保にお金を借ります。死亡時に自宅の売却金で、借りたお金を清算する仕組みです。
リースバックは自宅を売却するため固定資産税の支払いがなくなりますが、リバースモーゲージでは親が存命中は自宅を売却しないため固定資産税の支払いが必要です。
高額医療・高額介護合算制度
高額医療・高額介護合算制度とは、医療保険・介護保険の自己負担額の合計が一定以上になった場合、申請により超過分が支給される制度です。
自己負担の限度額は所得によって異なります。例えば、住民税が課税されない低所得者は19万円または31万円です。
申請制度のため、自分で手続きをしないと支給されないため注意が必要です。
まとめ
高齢者になると収入が減り、医療・介護費用などで出費が増えるため、老後資金がなくなるケースも十分考えられます。
もし、自分の親がそのような事態に陥ったら、まずは親の資産や収支、健康状態など現状を把握しましょう。
そして、経済的なアドバイスや仕送り、同居などできる範囲で親をサポートしてください。生活福祉資金貸付制度や生活保護、高額医療・高額介護合算制度など老後資金がなくなった高齢者が利用できる制度が各種用意されています。
自分の親が利用できそうな制度を検討して、少しでも余裕のある生活が送れるようにサポートしていきましょう。
金子 賢司(かねこ けんじ)
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード市場)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
<保有資格>CFP