エンディングノートとは?書き方・活用方法のコツから親への伝え方まで解説
エンディングノートとは、人生の最終段階において、自分の意志を残された人たちに託すための事柄を記載したノートです。本人の意向が分からなければ、家族はあなたの意志を推測するしかなく、決断を迷わせてしまいかねません。この記事では、エンディングノートの基本的な使い方に加え、親を傷つけずに伝える方法についても紹介しています。
エンディングノートとは?
エンディングノートは、人生の最終段階に向けた準備として、自身の希望や大切な情報を記録する文書のことです。
必要な情報を事前に記録しておくことで、残された家族が迷ったり困ったりせずにすむでしょう。また、エンディングノートをきっかけに、家族や大切な人と話し合う機会にもなります。
記載する項目は自由ですが、おもに下記の項目を整理して記載します。
・ 財産管理
・ 医療・介護の希望
・ 葬儀やお墓に関する要望など
高齢化社会が進む日本では、終活の一環としてエンディングノートの重要性が高まっています。
エンディングノートは遺言書の代わりになる?
エンディングノートは法的な効力を持たない私的な文書であり、遺言書の代わりにはなりません。
遺言書は、相続に関する法的な効力を持つ正式な文書で、財産分与や相続に関する具体的な指示を残しておくものです。法的な効力を持つがゆえに、記載する内容や様式にも厳格な決まりがあります。
一方でエンディングノートは、より広範な情報を自由に記録できるのが特徴です。医療や介護の希望、葬儀の形式、日常生活での留意点など、遺言書では扱えない事柄も含めて記録できます。
エンディングノートと遺言書の違い
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エンディングノート |
遺言書 |
法的効力 |
なし |
あり |
形式 |
自由 |
決まりがある |
記載事項 |
自由 |
決まりがある |
取り扱う内容 |
● 医療・介護の希望
● 葬儀について
● 暗証番号
● 保険内容
● メッセージ など
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● 財産分与
● 相続に関する内容 など
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エンディングノートを書くメリット
エンディングノートには、家族と自分という2つの側面でメリットがあります。
本人の意志を記し、情報が一元化されたノートがあれば、残された家族を助けることにもなります。大切な人へメッセージを伝える役目も果たしてくれるでしょう。
家族との絆を深め、自分らしい生き方を考えるための大切なツールであるエンディングノートの具体的なメリットについて説明します。
家族の負担軽減
突然の事態が起きても、必要な情報が1つにまとめられているため、残された家族の混乱や負担を最小限に抑えることができます。
家族の把握していない交友関係があれば、エンディングノートに記載しておくことで、葬儀の際にもれなく連絡できます。財産や契約関係、各種手続きに必要な情報を一箇所にまとめることで、残された家族が話し合うときに役立つでしょう。
自分の意思の明確化
医療や介護、葬儀などに関する具体的な希望を残し、自分の意思を家族に確実に伝えられます。
病院などで本人の意志が確認できない場合は、医療従事者と家族で本人の意志を推定しながら治療方針を決めることになります。家族への心理的負担は大変大きく「本当にこれでよかったのだろうか」と長年悩む人もいるほどです。
事前に「ここまでの医療行為はしたいが、これ以上はしなくてよい」などの意志を記載しておくと、判断の手助けとなります。
心の整理
人生を振り返り、大切な人へメッセージを残すことで精神的な充実感も得られます。
エンディングノートの作成過程で、これまでの人生で出会った人々との思い出を整理し、感謝の気持ちを言葉にできます。
また、自身の価値観や大切にしてきたことを改めて見つめ直す機会となり、残された時間をどのように過ごしたいか、今後の人生の方向性を考えることもできるでしょう。
問題把握の促進
エンディングノートをつけることで「自分が思っていたよりも準備が足りていなかった」と気づける側面もあります。
エンディングノートの項目に従って記載すれば、必要な項目をもれなく準備できるため「自分に何かあっても大丈夫」と思えるようになる人が多いようです。
エンディングノートはいつから書き始めるべき?
エンディングノートは、年齢や健康状態に関係なく、できるだけ早い段階から準備を始めることをおすすめします。特に以下のようなタイミングでの作成がよいでしょう。
・ 定年退職後の生活設計を考える時期
・ 年金受給が始まる時期
・ 持病の診断を受けた時
・ 配偶者との死別や離婚を経験した時
・ 子どもの独立や結婚を機に
早めに作成を始めることで時間をかけて丁寧に情報を整理でき、必要に応じて更新することも可能です。
エンディングノートの書き方と書くべき項目
エンディングノートは法的な書類ではないため、基本的な書き方や項目は自由です。しかし、エンディングノートの「自分の意志を残しておくため」「家族の負担を減らすため」という役割を考えると、記載しておいた方がよい項目がいくつかあります。
書くべき項目について詳細を説明しますので、参考にしてください。一度に全てを埋める必要はないため、時間をかけて少しずつ完成させてみましょう。
基本情報
・ 氏名
・ 生年月日
・ 住所
・ 血液型
・ 既往歴
・ 保険証の情報
・ かかりつけ医療機関
財産情報
・ 預貯金口座
・ 不動産
・ 有価証券
・ 生命保険
・ クレジットカード
・ ローン
これらの情報を整理します。併せて口座番号や契約番号なども記録しておくと、手続きがスムーズになります。
医療・介護の希望
終末期医療に関する希望を具体的に記載します。
延命治療の要否、人工呼吸器の使用、胃ろうなど、医療処置に関する意思を明確にします。また、介護が必要になった場合の希望(在宅介護か施設介護かなど)についても記載しておくと良いでしょう。
葬儀・お墓の希望
葬儀の形式(宗教、規模、場所など)や、お墓に関する希望(既存の墓所、新規購入、散骨など)を記載します。会費や香典返しについての考えも含めると、遺族の判断の助けになります。
緊急連絡先リスト
親族、友人、職場の同僚など、緊急時に連絡が必要な人のリストを作成します。
名前、続柄、連絡先(電話番号、メールアドレス)を明記します。連絡する優先順位も付けておくと良いでしょう。
定期支払い情報
公共料金、家賃、保険料など、定期的な支払いの情報を整理します。支払い方法(口座引き落とし、クレジットカード払いなど)や支払い時期も記載しましょう。
大切な人へのメッセージ
家族や友人への感謝の言葉、これまでの人生で大切にしてきた価値観、将来への希望など、伝えたい思いを自由に記述します。写真や思い出の品についての説明を添えると、より心のこもったメッセージになります。
エンディングノートの書き方のポイントと注意点
エンディングノートを書くときには、残された人が読んで理解しやすいように配慮するとより良いものになるでしょう。
また、個人情報や資産情報などのプライバシーに関わる大切な書類のため、その管理方法も大切です。
どのようなことに気をつけるべきかまとめましたので、参考にしてみてください。
記入日を必ず記載し、定期的に内容を更新する
エンディングノートの情報は、引っ越しや家族構成の変化、資産状況の変化などに応じて更新が必要です。記入日を明記することで、情報がいつ時点のものか分かりやすくなります。年に1回など、定期的な見直しの機会を設けることをおすすめします。
文字は読みやすく丁寧に書く
記入内容は家族が理解できるよう、はっきりとした文字で記載します。特に数字や固有名詞は間違いを防ぐため、楷書で丁寧に書きましょう。必要に応じてパソコンで作成するのも一つの方法です。誤読を防ぐため、略字は使わないようにします。
パスワードなど機密性の高い情報の取り扱いに注意する
銀行口座やクレジットカードの暗証番号、オンラインサービスのパスワードなどは、別途安全な方法で管理します。エンディングノート本体とは分けて保管し、信頼できる家族にのみ開示できるよう準備しておきましょう。
エンディングノート活用のコツ
エンディングノートを実用的なツールとして活用するには、情報の管理方法が重要です。記入後も定期的な見直しと更新を行い、常に最新の情報を維持することで、万が一の際により役立つ資料となります。
情報の更新方法
エンディングノートの情報は、生活環境の変化に応じて更新しましょう。具体的には以下のような機会に見直しすることをおすすめします。
・ 引っ越しや転職時:住所、勤務先、保険情報などの変更
・ 家族構成の変化時:結婚、出産、離婚などによる家族情報の更新
・ 資産状況の変化時:不動産取得、保険契約、投資開始などの記録
・ 年に1回の定期確認:預貯金残高、各種サービスの契約状況の確認
更新履歴を記録することで、最新の情報であることが一目で分かります。デジタル版を活用する場合は、バックアップの作成も忘れずに行います。
保管場所の決め方
エンディングノートの保管場所は、セキュリティと利便性のバランスを考慮して選びましょう。個人情報や口座情報を記載しているため、特に気をつけるべきポイントです。
・ 自宅保管:家族が知っている安全な場所(金庫や重要書類入れ)
・ 銀行の貸金庫:重要度の高い情報や原本の保管
・ デジタル保管:クラウドストレージやパスワード管理アプリの利用
・ 信頼できる親族や専門家への預託:写しの保管を依頼
保管場所は必ず家族に伝えておき、緊急時にすぐに見つけられるようにしておきます。
プライバシーへの配慮
個人情報の保護と必要な情報開示のバランスを取ることが重要です。具体的には以下のようなことに気をつけましょう。
・ 銀行口座やクレジットカードの暗証番号は別紙管理
・ SNSアカウントのパスワードは信頼できる人にのみ開示
・ 医療情報は必要最小限の範囲で記載
・ 第三者の個人情報は本人の同意を得て記載
エンディングノートを家族に書いてほしいときの伝え方
高齢の親にエンディングノートの作成をすすめたくても「縁起でもない!」などと言われて取り合ってもらえなかった……という経験はないでしょうか?
決して傷つけるつもりはないのですが、書いてもらえないと万が一のときに困ってしまいますよね。できるだけ尊厳を傷つけずにお伝えする方法をご提案しますので、参考にしてみてください。
自分自身も書いてみる
まずは自分もエンディングノートを作成してみてはいかがでしょうか。自身の経験を踏まえて「こんな項目が役立った」「ここは意外と考えることが多かった」など、具体的な体験談を交えながら話すことができます。実際に記入した自分のノートを見せながら話をするのもいいですね。
エンディングノートがなくて困った人の話をする
エンディングノートを実際に作成した人にインタビューした調査報告によると、エンディングノート作成のきっかけとして「身近な人の死を経験し、困った経験」があげられています。
そのような例を引き合いに「もしエンディングノートがあれば、こんなことが防げた」という視点で話をすることで、作成の必要性を自然に理解してもらえるのではないでしょうか。
ネガティブなものではないと伝える
エンディングノートは人生の集大成として、これまでの思い出や感謝の気持ちを残すものでもあります。日々の生活を振り返り、家族との絆を深める機会になることを説明しましょう。
「終活」というと重たく感じる方もいますので「家族への贈り物」「人生の記録」といった、より前向きな表現を使うのも効果的です。
ノートをプレゼントし、会話しながらともに作り上げていく
記入を手伝う姿勢を示しながら、一緒に考える時間を持ちます。
思い出話に花を咲かせながら、楽しく作成できる雰囲気づくりを心がけましょう。記入が難しい項目は後回しにして、まずは書きやすいところから始めるようにしましょう。
エンディングノートの選び方
エンディングノートには市販のものから無料で使えるものなど豊富な種類があります。書きやすく、気に入ったノートを選ぶと前向きな気持ちでエンディングノート作成に取り組めます。
無料でダウンロードできるテンプレート
自治体や金融機関が提供する無料テンプレートは、基本的な項目を網羅しています。「エンディングノート 無料 ダウンロード」などで検索してみて、気に入ったものを使いましょう。
市販のエンディングノート
書店やインターネットで購入できる製品は、用途に応じて選択できます。
・ 初心者向けに解説がついているもの
・ 指示に従って記入することで法的に有効な遺言書が作れるもの
・ 医師や税理士が監修したもの
様々なコンセプトのものが販売されています。
また、デザインも豊富なので「あまり暗い気持ちになりたくない」という方はキャラクターものや、本棚にあっても違和感のないデザインのものなどを選ぶとよいでしょう。
スマートフォンアプリ
デジタル管理を好む方向けに、アプリでエンディングノートを作成することもできます。必要事項の記入だけでなく健康管理や家族とデータ共有できる機能を搭載したものなどもあるので、自分に合うものを選択しましょう。
アプリで管理していることを家族へ伝える、アプリの暗証番号があれば信頼できる人に伝えておくことも忘れずにしましょう。
まとめ
エンディングノートは、人生の集大成として大切な情報を整理し、家族との絆を深めるツールです。
早めに準備を始め、定期的な更新を心がけることで、より充実した終活の一助となります。記入項目や方法は、自身の状況に合わせて柔軟に選択し、無理のないペースで作成することをおすすめします。