iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
高齢者 夫婦
idecoとは、国民年金や厚生年金などの公的年金とは異なり、個人で任意に加入することができる年金制度です。
そもそも日本の年金の制度は、主に国民年金と厚生年金の公的年金から成ります。
階層のような仕組みになっており、国民年金は、20~59歳までの国民全員が加入します。
加えて会社や組織に努めている方は、大抵の場合、ご自身と組織掛金を負担する、厚生年金にも加入しています。
ここで考えたいのが、自営業などで生計を立てている方の場合です。
自営業の方などは、何も手続きしなければ国民年金に加入しているだけになります。
組織に所属している方に比べ、満期を迎えた時に受け取る金額が少なくなってしまいます。
そこで、積み立て額を柔軟に選べて、税制が優遇されるidecoという私的年金の存在があります。
老後の資産形成を計画的に行うために、idecoなどの私的年金に任意に加入するのが推奨されています。
iDeCo加入者が60歳前に死亡した場合
葬儀会場
idecoは税制優遇を受けることができる投資信託などで、資産を運用しながら資産形成していきます。
そのため、実際のidecoの申し込みは投資信託や保険商品などを扱う金融機関で行います。
仮にideco加入者が、年金を受け取る年齢に達する前に死亡してしまったら、手続きは各金融機関で行います。
idecoを扱う金融機関を、運営管理機関といい、加入者の選んだ運用商品によって変わります。
遺族が「死亡一時金」として受け取ることができる
仮にideco加入者が死亡してしまったら、遺族が代わって運用していた資産を受け取ることができます。
idecoで運用していた資産を全て「死亡一時金」として受け取れますが、運営管理機関での手続きが必要です。
もし死亡後に何も手続きをしないまま、5年が過ぎると相続の時にかかる税率が上がり、負担が増えてしまいます。
idecoの運用は、大まかに分けると元本が保証される商品・変動のリスクがある投資商品となります。
もし加入者が、投資信託の運用をしていた場合、遺族が受け取れるのは売却値の金額です。
投資信託は、idecoを通して専門家に運用してもらうため、投資の売却は日時の指定ができません。
遺族が手続きをした場合、投資信託の差額に加え手数料なども徴収されます。
これまでのidecoの運用資産が全額受け取れるわけではないことを覚えておきましょう。
必要な申請
死亡一時金の受け取りの手続きは、加入者が選んでいた商品を扱う、各運用管理機関で行います。
細かい手続きは、それぞれ異なりますが、一般的には裁定請求という手続きを取ります。
裁定請求は、死亡者に代わって受け取る権利のある遺族が、指定された方法で請求の申請を行うことです。
共通する手続きの流れは、以下の通りです。
指定されたフォーマットで裁定請求の申請を行う
裁定結果の通知が来る
資格が認められたら指定口座に振り込みが行われる
iDeCoの死亡一時金の受取人の順位は?
年金
死亡一時金の受け取りには、故人との関係性によって順位が異なると、法律で定められています。
以下は、受け取る親族の順位一覧です。
順位 故人との関係
1位 配偶者
2位 子ども、父母、祖父母、兄弟・姉妹
3位 死亡当時、故人の収入により生計を維持していた2位以外の親族
ここで言う配偶者は、戸籍上の配偶者でなくても事実上の婚姻関係にあるケースも含みます。
2位の親族は、前提として死亡した当時主に故人の収入により生計を維持していた親族に限ります。
また、父母や子どもが複数人いる場合など、同等の順位者が2人以上いる際は、1名が代表して受け取ります。
iDeCoの死亡一時金はいくら?
お金 相場
前述したように、遺族はideco加入者が所有していた資産を、死亡一時金としてすべて受け取ることが可能です。
ただし全額まるまる受け取れるというわけではありません。
法律によると、給付額は請求日以後に資産額によるとされています。
例として、死亡した故人のideco資産の内訳が、投資信託と保険商品に分かれていたとします。
投資信託だと、死亡一時金の請求日以降で専門家が株式や債券を売った時の額が、遺族の受け取れる資産となります。
保険商品も、管理手数料などを引かれた額が最終的に受け取る金額です。
そのためidecoでその人が、どの運用商品を選んでいるかによって、死亡一時金の金額は変わってきます。
iDeCoの生前手続き
高齢者 夫婦
ideco加入者が、受給する前に死亡してしまった時は、親族に受け取る権利があると前述しました。
なお、加入者自身が事前に受け取り人を指定することもできます。
その場合は、前述した受取り順位より指定された人の方が、優先されるという効力があります。
生前手続きの流れについて紹介します。
手順
あらかじめ、もし自身が亡くなった時の事を考えて受け取り人を指定するには金融機関に問い合わせると良いです。
自身のidecoの運営商品を扱う金融機関に問い合わせる
金融機関に指定された形式で、意思表示を記す
各金融機関によって手続きの方法は異なりますが、大抵の場合ideco加入後に手続きします。
iDeCo加入者が60歳後に死亡した場合
高齢者
idecoは年金のうちの一つのため、原則60歳までは引き出すことができません。
なお、60歳を迎えると受け取りたいタイミングを選んで受給することが可能です。
しかしここで気にかかるのは、60歳以降に受給者が死亡してしまった場合です。
その場合は2パターンに分かれるため、それぞれの死亡一時金の受け取りについて紹介します。
受け取り前に死亡した場合
受け取り期間中に死亡した場合
必要書類
受け取り前に死亡した場合
このケースは、前述した死亡一時金の請求手続きと流れは同じです。
通常idecoは、掛金の積み立てから10年以上経過していないと、受給は開始されない仕組みになっています。
そのため加入者が60歳を超えていたとしても、加入期間が10年に満たないなら、受給年齢が繰り下げられます。
しかし加入者が死亡した際は、それまで積み立てられた資産残高を、遺族が受け取ることが可能です。
受け取り期間中に死亡した場合
では、加入者が受給期間に入っており、既に年金の受け取りが始まっていた場合はどうでしょうか。
このケースも、遺族がidecoの資産残高を請求を行えば、受け取ることができます。
必要書類
遺族がidecoの資産を受け取る際に、必要となる書類を紹介します。
必要書類は、各人が運用していた金融機関の指定があるため、それに従って下さい。
死亡者に関する書類
まず死亡者にかかわる書類は、 死亡者の氏名・性別・住所・生年月日の分かる書類が必要です。
また、 基礎年金番号や死亡したことを証明する書類も必要となります。
ここでは、どの金融機関でも大抵必要となる書類を紹介します。
加入者(死亡者)の個人番号カード
死亡診断書やその他に死亡を証明する書類
個人番号カードがない時は、個人番号と身分証明ができる書類を用意して下さい。
個人番号は、通知カードのコピーや住民票で、身分証明は運転免許証のコピー・パスポートのなどで代用可能です。
遺族に関する書類
次に遺族が用意する書類については、死亡者と同様、氏名・性別・住所・生年月日の分かる書類が必要です。
また、 死亡者との身分関係を証明できる書類が必要です。
受け取り人の印鑑証明書(原本)
受け取り人の個人番号カード
戸籍謄本(原本)
裁定請求の申請書
死亡者と同様に、個人番号カードは別の物で代用できます。
また、 遺族側は受取人の身分によって追加で必要になる書類が変わります。
ですので、必ず各金融機関へ問い合わせて下さい。
iDeCo死亡一時金の相続税
税金
財産・資産と言っても、その種類は多岐にわたり、債券など負債も含まれます。
そういった財産や資産を受け取る際には、相続税がかかると法律で定められています。
idecoの死亡一時金も、故人の資産ですので、相続税の課税対象です。
死亡一時金
idecoの個人資産である死亡一時金は、相続するタイミングによって、税率が変わります。
申請期間別に、どの相続財産に当てはまるかを表にまとめたため、参考にしてみて下さい。
申請期間 対象課税
~3年 みなし相続財産
3~5年 一時所得(総合課税)
5年~ 一般の相続財産と同等
簡単に言うと、申請の時期が早いほど控除される金額が多くなります。
みなし相続財産は相続税法により、500万円に法定相続人数をかけた金額分は、非課税となります。
例えば、相続人数が2人いたとすると、死亡一時金が1000万円までは課税対象になりません。
また一時所得の場合は、最大で50万円までが非課税の対象となります。
5年を超えて申請すると、一般的な相続財産と同じ税率が課されます。
相続税は、決まった計算方法で基礎控除額が決まり、相続する総額からその分を引いた金額が課税対象です。
iDeCo加入者は家族に加入していることを伝えたほうが良い
家族
idecoは個人の自由で、加入するかどうか選ぶことができます。
そのため、家族にidecoへ加入していることを伝えておくのは、大切なことです。
重要なのは遺族が請求できるかどうか
idecoは加入者が死亡した場合でも、手続きを行わないと運用は続いていきます。
故人がidecoに加入していたことを家族が知らなければ、死亡一時金の額は徐々に下がっていきます。
遺族が、ideco資産の存在自体知らず、請求しないといった事態を引き起こさないようにしましょう。
また、あらかじめ伝えておけば、万が一の時に慌てず対処することににも繋がります。
伝えること
もしもの時を考えて、受給権利のある家族には、事前にidecoの資産があることを伝えておきましょう。
idecoは、早めに受給申請すれば非課税になる金額も大きくなります。
大切な家族にできる限り多くの財産を残すためにも、しっかり伝えて下さいね。
【コラム】iDeCoを60歳前に受け取れる「障害給付」
高齢者
前述したように、idecoは加入者が死亡したケースを除き、60歳まで引き出すことは原則できません。
しかし、加入者が存命で60歳前に受け取ることができる制度が一つあります。
それが「障害給付金」と呼ばれる制度です。
障害給付金制度は、予想できなかった緊急の事態に対処するための手段です。
以下で詳しく説明します。
条件
障害給付金は、国民年金法で定められている一定の病気やケガを患っている状態の方が対象です。
それには、一定の基準があります。
病気・ケガの初診日から1年6ヵ月が経過していること
障害認定日から70歳になる2日前までの間に国民年金法で定められている障害等級に該当している
以上の条件が満たされている場合、idecoで運用している資産を前倒して受給することが可能です。
障害給付金は、年金として受給できますが、支給方法は各金融機関に委ねられます。
また、病気やケガにより前倒してidecoの資産を受給することは予想がつかないことです。
本来の計画よりも、受給期間が長くなるパターンが多くなります。
idecoでは決定した受給方法(期間)は原則変更することができません。
しかし、障害給付金としてidecoの給付を受ける場合は、運用管理機関の許可がおりれば、5年ごとに変更できます。
裁定要求
障害給付金を請求するために必要な書類は、基本的に死亡一時金の書類と変わりありません。
氏名・性別・住所・生年月日・基礎年金番号が分かる書類
振込み希望金融機関情報
給付の支給方法
上記の書類と、idecoを取り扱う金融機関が定める申請書類などが必要です。
もしもの時を考えて知識を得ておくことが大切
idecoは将来を見据えて、計画的に資産形成をするための年金制度です。
しかし長い人生では、予想だにしなかった出来事が起こる可能性があります。
受け取る前に死亡してしまうという万が一の時にどうするかを知っておくことは、とても重要なことです。
また、idecoを始める前にどのような臨時の支給制度があるか知っておくともしもの場面で対処できます。
idecoは何十年という長いスパンで考える資産形成の方法です。
あらゆる不足の事態に対処できる方法は知っておいて損はないはずです。