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お金のこと

2024.04.30

60・65歳で在職老齢年金は違う?減額基準が47万円に引き上げ?

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現在では60歳を超えてもまだまだ働きたい人が多い中で、気になるのが働きながら受取ることができる在職老齢年金制度です。
この仕組みをしっかり理解しておけば、どんな働き方が自分にとってピッタリなのかが分かります。

後で後悔しないためにも、この機会に在職老齢年金制度について詳しく見て行きましょう。

在職老齢年金制度とは?導入目的は?
年金
60歳を超えても働き続ける人の内、老齢厚生年金額と給与などの額によって、年金の支給額がカットされたり停止になったりします。
これを 在職老齢年金制度 と言います。

在職老齢年金制度により、60歳代前半の人たちは、年金が減額されるのを嫌って あえて働かない人 もおり、就労意欲を削いでいるとの批判もあります。
低迷する日本経済を活性化するため、また人手不足の業界からの期待もあって、政府は 在職老齢年金制度の見直しが必要 と考えています。

在職中に受け取る老齢厚生年金を指す
導入目的
年齢で計算式が変わる
在職中に受け取る老齢厚生年金を指す
在職老齢年金制度とは、60歳を超えた人が働きながら年金を受け取る際に、 65歳以上かそうでないかや、給与収入によって、一部カットまたは支給停止 になる制度です。
在職老齢年金制度が影響するのは老齢厚生年金だけで、それ以外の基礎年金や加給年金は関係ありません。

導入目的
本来の厚生年金制度は、退職後の収入を保証するために創設されました。
在職老齢年金制度は、1965年に退職が支給の条件だった制度を見直しました。

見直しにより、高齢になって給与があまり多くない人のために、 在職中に年金を支給 できるようにしました。

年齢で計算式が変わる
在職老齢年金制度には、 65歳を境に計算式が異なり 、60歳代前半の方がより大きな影響を受けるという、特徴があります。
基になる計算式では、身体能力も勤労意欲もまだ十分に高い、 60歳から64歳までの勤労者所得に対する影響が大きく なっています。

在職老齢年金制度では、 年金と賞与(過去一年分)を含めた月収の合計額が28万円 を上回る場合に、上回った額の半分を支給額から減らします。
また、月収が47万円を上回る場合には、オーバーした分を年金支給額から更に減らします。

一方65歳以上になると支給される基礎年金は、在職老齢年金制度の影響を受けません。
従って65歳以上では、 老齢厚生年金と月収の合計が47万円以上 になったら、在職老齢年金制度に影響されます。

実際は在職老齢年金制度により、47万円を超えた額の半分が、老齢厚生年金から減額されます。
こうしてみると65歳を境に、高齢の勤労者には有利な制度になっていることが分かります。

在職老齢年金制度の廃止と減額見直し
お金 相場
在職老齢年制度が、労働意欲も能力もある高齢者、特に64歳までの高齢者に悪影響を与えているという意見があります。
そのため政府は、 在職老齢年金制度の廃止 が議論されました。

廃止は見送りに
60歳代前半の減額基準は引き上げの方向も
年金制度維持のため
廃止は見送りに
厚生労働省は在職老齢年金制度の廃止、または47万円の年金減額の基準額を62万円にする方針を出しました。
しかし、 高所得者優遇との批判を受けて廃止は見送られ ました。

在職老齢年金制度の基準額62万円に対しても、同様の理由で風当たりが厳しく、再度検討をすることとなりました。

60歳代前半の減額基準は引き上げの方向も
2019年11月に、厚生労働省から在職老齢年金制度の年金減額の基準額を、47万円から51万円に引き上げる案が出されましたが、この案も受け入れられませんでした。
結局 47万円ラインは維持 することになりました。

60歳代前半に対する基準額は、 28万円から47万円にアップ される見通しです。

これにより、在職老齢年金制度による年金の一部カットや停止が無くなる人数を推計すると、約46万人程度とみられています。
何よりも 60歳代前半の就労意欲が、大きく改善 すると見込まれます。

在職老齢年金制度の減額基準引き上げ措置により、増加する年金支給額は年間3000億円と試算されています。
増加分の財源ですが、この先10年で全ての人の厚生年金の支給が65歳からとなります。

対象者は年々減って行くことから、影響は少ないとしています。

年金制度維持のため
在職老齢年金問題とは直接結び付かないとされます。
年金の 支給開始年齢を更に引上げる 議論が、年金制度の維持のために進むと思われます。

また、厚生年金の加入条件を緩和・拡大して、パートなどを雇用している 中小企業にも、応分の負担 をさせる方向性も打ち出しています。

在職老齢年金の計算【60歳代前半】
金額
年齢によって計算式は変わりますが、基本報酬月額と総報酬月額相当額を用いて計算します。

用語の解説
在職老齢年金の計算式
計算例
用語の解説
基本報酬月額とは、もともと給付される老齢厚生年金を12で割って、一月分の金額にしたもの です。
総報酬月額相当額とは、毎月の給与(標準報酬月額)と、過去1年分の賞与を12で割った額の合計金額 のことです。

在職老齢年金の計算式
はじめに、 基本報酬月額+総報酬月額相当額=28万円以下の場合は、全額が支給 されます。
それ以外の場合は、以下の4通りの計算式によって決まります。

総報酬月額相当額=47万円以下、かつ基本報酬月額=28万円以下の場合
基本報酬月額-
(総報酬月額相当額+基本報酬月額-28万円)÷2
総報酬月額相当額=47万円以下、かつ基本報酬月額=28万円超の場合
基本報酬月額-総報酬月額相当額÷2
総報酬月額相当額=47万円超、かつ基本報酬月額=28万円以下の場合
基本報酬月額-
{(47万円+基本報酬月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}
総報酬月額相当額=47万円超、かつ基本報酬月額=28万円超の場合
基本報酬月額-
{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}
計算例
それでは在職老齢年金制度によって支給停止になる額について、計算例で見てみましょう。

基本報酬月額+総報酬月額相当額=28万円以下の場合
基本報酬月額+総報酬月額相当額=28万円以上の場合
基本報酬月額=28万円以下、同時に総報酬月額相当額=47万円以上の場合
1. 基本報酬月額+総報酬月額相当額=28万円以下の場合
基本報酬月額8万円、総報酬月額相当額18万円の場合をみてみましょう。
合計が26万円と28万円以下なので、支給停止額は0円となり、 老齢厚生年金8万円は満額が支給されます。

2. 基本報酬月額+総報酬月額相当額=28万円以上の場合
基本報酬月額12万円、総報酬月額相当額25万円の場合をみてみましょう。

12万円+25万円=37万円
(37万円-28万円)÷2=4.5万円
在職老齢年金制度により、12万円の老齢厚生年金が4.5万円カットされて、 7.5万円の支給となります。

3. 基本報酬月額=28万円以下、同時に総報酬月額相当額=47万円以上の場合
基本報酬月額25万円、総報酬月額相当額48万円の場合をみてみましょう。

(25万円+47万円-28万円)÷2=22万円
48万円-47万円=1万円
22万円+1万円=23万円がカット
在職老齢年金制度により、25万円の老齢厚生年金が23万円カットされて、 2万円の支給となります。

在職老齢年金制度【65歳以上・70歳以上】
高齢者
65歳以上の在職老齢年金制度の計算は、 減額の基準額47万円 を超えるかどうかだけで決まります。

計算式
在職老齢年金制度による支給停止額の計算例を以下に示します。

老齢厚生年金の基本報酬月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下の場合
基本報酬月額15万円、総報酬月額相当額30万円の場合をみてみましょう。
合計が45万円と47万円以下なので支給停止額は0円となり、 老齢厚生年金15万円は全額支給されます。

老齢厚生年金の基本報酬月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以上の場合
基本報酬月額18万円、総報酬月額相当額40万円の場合をみてみましょう。

18万円+40万円=58万円  
(58万円-47万円)÷2=5.5万円  
在職老齢年金制度により、18万円の老齢厚生年金が5.5万円カットされて、 12.5万円の支給となります。

留意事項
基本報酬月額は老齢厚生年金のみの金額で、 加給年金は含みません 。
在職老齢年金制度により、支給停止額が基本報酬月額を越えた場合、 老齢厚生年金は全額支給停止になり、同時に加給年金もストップ します。
70歳以上の勤労者は、厚生年金保険の被保険者ではないため、保険料の負担はありません。
在職老齢年金の手続き
手続き
在職老齢年金に限らず、 年金は請求手続きをしなければ、支給が始まりません 。
必ず自分自身で、在職老齢年金請求手続きをしましょう。

支給要件
請求書が事前送付
請求書の提出
必要書類
支給要件
60歳以降も働いている場合には、在職老齢年金制度により、所得に応じて 特別支給の老齢厚生年金 が支給または減額、場合によっては停止されます 。
特別支給の老齢厚生年金の支給要件は以下の通りです。

男性の場合、昭和36年4月1日以前の生まれであること
女性の場合、昭和41年4月1日以前の生まれであること
10年以上、老齢基礎年金の受給資格期間があること
1年以上、厚生年金保険等に加入実績があること
60歳以上であること
請求書が事前送付
在職老齢年金の支給手続きは、事前に日本年金機構から送られてくる、「 年金請求書 」によって行います。
請求書は、年金の請求が可能な年齢になる、だいたい3か月前には自宅に届きます。

請求書の提出
先ず、送られてきた年金請求書の内容を、年金定期便などと照らし合わせて確認しましょう。
予め印字されている項目もありますが、必要事項を記入して下さい。

請求書と並行して、提出の際に必要な書類を会社や役場で調達しましょう。
必要な書類が全て準備できたら、 請求書に添付して「年金事務所」などへ提出 すれば、手続きは完了です。

年金請求の手続きは、 誕生日の前日から可能 となっています。
なるべく早めに行動するとよいでしょう。

必要書類
在職老齢年金の手続きには年金請求書の他に、添付しなくてはならない書類などがあります。
以下に列挙しますので、漏れがないようにしっかりチェックして下さい。

年金手帳・基礎年金番号通知書
戸籍抄本・戸籍記載事項証明書
住民票
雇用保険被保険者証
雇用保険受給資格者証
高年齢雇用継続給付支給決定通知書
配偶者の所得証明書・課税(非課税)証明書
年金加入期間確認通知書
印かん
金融機関の預貯金通帳・キャッシュカード
1. 年金手帳・基礎年金番号通知書
本人分、配偶者が年金受給中の場合は配偶者の物も必要です。
コピーでも大丈夫、複数お持ちの場合は全て添付して下さい。

2. 戸籍抄本・戸籍記載事項証明書
戸籍謄本でも可能です。
受給権発生してから、6か月以内の物を添付して下さい。

3. 住民票
世帯全員分、マイナンバーの記載のない物が必要です。
受給権発生してから、6か月以内の物を添付して下さい。

4. 雇用保険被保険者証
コピーでも大丈夫、退職後7年以内は再交付可能です。
添付できない場合は理由書が必要 になります。

5. 雇用保険受給資格者証
コピーでも大丈夫、雇用保険の基本手当を受けている方は添付して下さい。

6. 高年齢雇用継続給付支給決定通知書
コピーでも大丈夫、高年齢雇用継続給付などを受給している方は添付して下さい。

7. 配偶者の所得証明書・課税(非課税)証明書
配偶者がいる場合は添付して下さい。

8. 年金加入期間確認通知書
共済組合に加入していた方は添付して下さい。

9. 印かん
認印でも大丈夫です。

10.金融機関の預貯金通帳・キャッシュカード
コピーでも大丈夫、本人名義の物を添付して下さい。

必要な書類を整えるには手間ひまがかかりますので、前もって準備をしておきましょう。
また 年金事務所へは、必ず事前に予約をしてから訪問 しましょう。

在職老齢年金を受給してる方が退職したら
お金
在職老齢年金を受給していた方が退職した場合、 1ヵ月を経過した時点で、退職した翌月からの年金額が見直されます。
退職後1ヵ月以内に再就職ができて、尚且つ厚生年金に加入した場合には、これまで通り在職老齢年金制度の下で支給されます。

退職すると老齢厚生年金の一部カットや停止が無くなり、全額が支給されます。
また、退職まで厚生年金に加入していた期間の内、 年金に反映されていない分を追加して、新たに年金額を計算し直します。

在職老齢年金の事をよく知って働こう
年金制度はルールがちょくちょく変わり、難解な言葉が多い ので、なかなか理解できずに、勝手に判断して働いている人が多いのではないでしょうか。
日本年金機構のホームぺージやWeb上の情報もありますが、やはり難しい内容が多く、また情報が氾濫しています。

在職老齢年金の事をもっともっと知りたい方は、時間が許すなら、 納得いくまで何度か年金事務所を訪ねる 事をお勧めします。
担当者が丁寧に対応してくれますので、自分の現状をしっかり把握する事ができます。

自宅に年金請求書が届いたら、是非お近くの年金事務所に予約の上訪問してください。
手続きをする際も、きっとスムーズに行きますので、本当にお勧めします。

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