「高齢者は賃貸を借りられないって本当?」
「このまま高齢になっても賃貸で暮らしていけるの?」
現在、賃貸で暮らしている方で、こんな不安をお持ちの方も多いと思います。
結論から言うと、60代を過ぎて新たに賃貸を探す場合は、借りにくい現状があることも事実です。ただし、高齢になったからといって現在住んでいる賃貸を追い出されることはありません。
本記事では、オーナーが高齢者に賃貸を貸したくない理由や、借りたいときの借り方のコツ・相談先などをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
高齢者が賃貸を借りられない理由とは?
高齢者が賃貸を借りられないという話はあながち嘘ではなく、そこには貸す側(オーナー)の心理的な背景が考えられます。
オーナーが高齢者に物件を貸したくない理由として、以下のようなリスクを考えている可能性があります。
・ 家賃滞納のリスク
・ 健康問題(孤独死)への懸念
・ 連帯保証人の不在
・ 物件価値の減少リスク
理由①家賃滞納のリスク
高齢者は収入源が年金に限定されることが多く、オーナーは家賃が安定して振り込まれるかどうかに不安を感じる場合があります。
理由②健康問題(孤独死)への懸念
入居中に健康問題が発生するリスクや、最悪の場合は孤独死の可能性を考えると、対応が難しいと感じるオーナーもいます。
理由③連帯保証人の不在
高齢者の場合、連帯保証人を確保するのが難しいことが多いです。家賃滞納や孤独死など万が一のことがあった場合を考え、貸し渋るオーナーもいます。
理由④物件価値の減少リスク
高齢者が住むことで、物件価値が下がると考えるオーナーもいるようです。特に、孤独死などがあると清掃・リフォーム費用も高額になる可能性が高いため、貸す側にはリスクが高くなります。
賃貸を借りにくい高齢者の特徴は「年金暮らしの独身者」
前章の貸す側の心理を踏まえると、賃貸を借りにくい高齢者の特徴は以下のようになります。
・ 収入が少ない
・ 保証人がいない
・ 高齢で健康リスクがある
・ 契約履歴が少ない
年金のみで他に収入源がない場合や、独り身で保証人がいない場合には、賃貸を借りにくい可能性があります。さらにいえば、年齢が高いほど、貸す側のリスクは高まるため、賃貸を借りにくくなるでしょう。
加えて、過去に賃貸契約の実績がない場合、信頼を得るのが難しくなります。
賃貸を借りにくなる高齢者の年齢は「60代~」
具体的な年齢としては、年金暮らしとなる60代以降、年齢が高いほど賃貸を借りにくくなる傾向があります。
60代前半:まだ比較的借りやすいが、年齢を理由に断られる場合も
60代後半~70代:体力や収入の不安が顕著になり、審査に通りにくくなる
80代以上:物件を借りることが非常に難しく、他の選択肢を考える必要がある
60代以降で新たに賃貸を借りることを考える場合は、借りにくくなる可能性が高いことを念頭に置いておきましょう。
高齢者が賃貸を借りるコツ
高齢者だから必ず賃貸を借りられないかというと、そうでもありません。
要は、貸す側(オーナー)の不安を払拭できれば、借りやすくなるのです。
高齢者でも安心して賃貸を借りられるようにするためのポイントとしては、以下があげられます。
・ 信用を高める資料を用意
・ 保証人代行サービスを利用
・ 地域密着型の不動産会社を活用
・ シニア向け物件を選ぶ
①信用を高める資料を用意
年金受給証明書や預貯金通帳のコピーなど、収入の安定性を示す資料を提出することで、借りやすくなる可能性があります。
②保証人代行サービスを利用
保証人となってくれる人がいない場合は、保証人代行サービスの利用を検討しましょう。
保証人代行サービスとは、賃貸を借りる際に必要となる身元保証人を、専門業者が代行するサービスです。保証人代行サービスの費用は、家賃の20~100%が相場で、費用はかかりますが保証人がいない高齢者でも賃貸を借りられる可能性があります。
③地域密着型の不動産会社を活用
地域に根差した不動産会社は、高齢者への理解があり、他よりも借りやすい場合があります。
④シニア向け物件を選ぶ
シニア専用の賃貸住宅というものもあり、そうした物件は高齢者でも借りやすくバリアフリーなどの設備も整っています。
高齢者の賃貸追い出しはある?
現在、賃貸物件に住む高齢者が追い出しにあうことは基本的にありません。なぜなら、正当な理由がない限り、追い出しは違法となるためです。
賃貸物件の契約更新の際も、オーナー側から更新拒否をするには正当な理由が必要です。
ただし、建物の老朽化などにより、退去が必要となるケースもありますので、物件の築年数などには注意が必要です。
高齢者が賃貸を借りられない場合の選択肢
もし賃貸を借りられない場合は、その他の選択肢を考えてみるのもいいでしょう。
例えば、高齢者の住まいとしては以下のような選択肢が考えられます。
・ シニア向け分譲マンション(自立型高齢者マンション)
・ サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
・ シェアハウス
シニア向け分譲マンション(自立型高齢者マンション)
シニア向け分譲マンションとは、高齢者が生活しやすいようにバリアフリー化された分譲マンションのことを指します。
シニア向けマンションは年齢制限を設けていない施設が多く、対象年齢は50歳から、60歳からなど、施設ごとに定められています。
入居条件は、自立した生活が送れる方です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、バリアフリー環境が完備された賃貸住宅です。要介護認定を受けていない方でも、60歳以上から利用できます。
サ高住には介護型と一般型があり、生活が自立している方で年齢要件を満たしている場合は一般型を利用できます。
なお、サ高住有料老人ホームではなく、あくまでも高齢者の住まいの場である賃貸住宅です。食事の提供などはありませんが、生活相談や安否確認サービスを受けることができます。
参考:
国土交通省 高齢者の居住の安定確保に関する法律
厚生労働省 高齢者に対する居住支援施策について
高齢者向けシェアハウス
高齢者向けシェアハウスとは、複数人の単身の高齢者が共同生活を送る住まいのことを指します。自立できる高齢者が対象で、サ高住よりも家賃や生活費を抑えることができる点が特徴です。
共同生活が苦手でない場合には、現代の選択肢のひとつといえます。
高齢者が賃貸を借りられなかったときの相談先
高齢者が賃貸を借りられなかったときの相談先としては、以下があげられます。
地域包括支援センター:高齢者の生活を支援する窓口
福祉事務所:住宅支援を含む福祉サービスの相談が可能
NPO法人や民間団体:高齢者向けの住宅支援を行う団体もある
これから先、住まいの悩みがある方は、一度相談してみるといいでしょう。
高齢者が賃貸を借りるときの支援制度
高齢者の住まい問題に関しては、自治体ごとに支援制度を設けている場合があります。
65歳以上の年金暮らしの高齢者が賃貸を借りる場合、地域の福祉事務所や住民窓口で相談することで、家賃補助を受けられる場合もあります。
例えば、大阪府摂津市では、月額家賃が5万円以下の世帯の場合、家賃の3分の1(上限1万円)までが補助されます。
条件は自治体ごとに異なるため、お住まいの市の情報をご確認ください。
参考:
摂津市 高齢者世帯民間賃貸住宅家賃助成
国土交通省 高齢者向け優良賃貸住宅制度
厚生労働省 高齢者に対する居住支援施策について
まとめ
高齢者が賃貸を借りる際には、借りられないトラブルが発生する可能性もあります。一般の賃貸が難しい場合には、シニア向けの住居も検討していきましょう。
本記事で紹介したヒントを参考に、各種相談先も利用しながら、老後も安心して住むことのできる住まいを探してくださいね。