熟年離婚とは?
熟年離婚とは、長年に渡り婚姻関係にあった夫婦が、様々な理由から離婚する事 を指します。
時期に正式な定義はありませんが、おおよそ 20年前後の婚姻関係にあった夫婦が想定 されています。
熟年離婚は、年々増え続けています 。
厚生労働省の調査によると、 全離婚件数は2004年の約30万件をピークに緩やかに減少しています 。
しかし婚姻年数別の統計では、 婚姻暦20年以上の夫婦の離婚は右肩上がりに増加 しています。
また、国立社会保障人口問題研究所の調査では、1990年に熟年離婚の割合が全体の 10% に達しました。
その後も増加し、2017年では 18% にも上っています。
全離婚数が減少しているのに対し、熟年離婚数だけは増え続けている のです。
熟年離婚は長年、妻側の希望者数が多いと言われていましたが、 近年では夫側が望む場合も増えています 。
次項より、熟年離婚の原因やメリットデメリットなどを解説していきます。
熟年離婚を望む理由【男性】
男性側 が熟年離婚を望む理由を一部ご紹介します。
夫婦間の性格の不一致
妻から精神的な虐待を受けた
他に交際・再婚を考える女性がいる
夫婦間の性格の不一致
男性の側からは、熟年離婚の理由として妻との 性格の不一致 が挙げられます。
結婚生活の上で、妻との性格の不一致には気付いていたが、離婚は我慢していた人が多いです。
日本では長年、離婚歴は社会的信頼が失われるなど、世間では避けるべき風潮がありました。
しかし近年、婚姻における価値観の変化から 離婚に抵抗がなくなった人が増えた 事が背景にあります。
妻から精神的な虐待を受けた
また、妻側からの 精神的な虐待 を熟年離婚の理由に挙げる男性もいます。
日常生活で妻が夫を 貶す、無視する、子供に夫の悪口を言う などです。
モラルハラスメントなど精神的虐待による熟年離婚は、 妻側からの訴えが圧倒的に多い です。
しかし近年、 男性側からの訴えも増加 しています。
他に交際・再婚を考える女性がいる
男性側からの熟年離婚の理由には、 他に交際・再婚を考える女性がいる 事も多いです。
50代~60代になり金銭的、精神的に余裕が出来たから、寂しさを感じたからなどがきっかけとして挙げられます。
熟年離婚を望む理由【女性】
熟年離婚を望む女性側の理由を一部ご紹介します。
子供が自立したため
夫の家事への不参加
夫からのモラルハラスメント・DV
子供が自立したため
子供がある程度成長し、自立した生活を送れるようになった 事で熟年離婚に踏み切る方がいます。
子供が幼いうちは、経済的にも精神的にも手が掛かる上、 親権 の問題もあり離婚を躊躇しがちです。
そうした問題がクリアになるのが子供が成人したタイミングといえます。
夫の家事への不参加
女性の熟年離婚理由に、 夫の家事への不参加 が挙げられます。
日本では長年、男性は仕事、女性は家庭、という風潮がありました。
しかし男女雇用機会均等法以降、 男女平等な社会進出が可能 になりつつあります。
しかしまだ、 家事や育児は女性の役目という価値観が蔓延し、女性の不満は溜まっています 。
家事全般に夫が参加しない事で、育児はおろか相手の親の介護まで女性の負担になる…。
そのような状況から脱するべく熟年離婚を決意する女性がいます。
モラルハラスメント・DV
モラルハラスメントやDV を理由に熟年離婚を希望する女性は、 男性の4倍にも上る と言われます。
モラルハラスメントとは倫理や価値観を基にした嫌がらせ です。
夫から妻への 家事などについての否定、見下した態度、暴言、無視な どがそれにあたります。
背景には、男性優位という根強い価値観があると言われています。
熟年離婚のメリット・デメリット
熟年離婚を希望する場合、メリット・デメリットを知っておく事は重要 です。
離婚後は、生活が大きく変わります。
勢いで熟年離婚に踏み出し、経済的に困窮するなど後悔をする人も多く 、慎重な検討が必要です。
熟年離婚のメリット・デメリットをご紹介します。
熟年離婚のメリット
熟年離婚のメリットとして、以下の点が挙げられます。
自由な生活
配偶者や親族との問題の解決
再婚を考えられる
自由な生活
熟年離婚をすると、自由な生活が送れる 事がメリットの一つです。
時間やお金が自分の為に使える などです。
婚姻関係にある時は、家族の都合に合わせて生活を送る必要があります。
家族とはいえ、個々の価値観を持つ他人なので軋轢が生まれストレスに感じる事もあるでしょう。
ストレスが過度に掛かる状況に置かれ、熟年離婚を望んだ方にとっては 自由が得られる事が利点 です。
配偶者や親族との問題の解決
熟年離婚におけるメリットとして、 配偶者やその親族との問題の解決 があります。
離婚する事により、 戸籍の上で関係がなくなるから です。
配偶者による支配的、屈辱的な言動や、親族とのトラブル、介護の押し付け等から逃れることが出来ます。
再婚を考えられる
離婚をすることにより、 再婚を考えられる 事をメリットに感じる方もいるでしょう。
ちなみに、 熟年離婚した人の再婚率は大変低い です。
国立社会保障人口問題研究所の2015年の統計によると、熟年離婚者の再婚率は 1~2% です。
熟年離婚のデメリット
熟年離婚のデメリットは以下の点が挙げられます。
老後のお金の不安
生活上での孤独感
健康上の不安
老後のお金の不安
熟年離婚のデメリットとして、 老後のお金の不安 があります。
特に職歴にブランクがある女性は 就職する事が難しく、経済的に困窮する場合が多い です。
ただし男性も例外ではなく、 財産分与などで老後の資金が不足する可能性 があります。
生活上での孤独感
生活上での孤独感 も、熟年離婚のデメリットの1つです。
家族との生活の上で、長年の我慢の結果離婚したものの、 一人の生活は意外と心細い ものです。
特に男性は、退職後などは近所や趣味などの交流も少ない人が多く、孤独感を感じる事が多いようです。
健康上の不安
熟年離婚後、 健康上の不安 を感じる人も多くいます。
バランスの良い食事や、清潔を保つ掃除は、健康の基本です。
熟年離婚後は 1人では家事がこなせない、疎かになる などが多く見られ、心身のバランスを崩す人も少なくありません。
また、一人暮らしの場合、突然の体調不良時のサポートがなく、孤独死する最悪のケースもあります。
実際のエピソード
この項目では熟年離婚に関して、メリットとデメリットの双方の側面を端的に述べてきました。
熟年離婚とは人生の大きな分岐点です。
実際に経験した方の意見の方も踏まえて考えるのも一手です。
その他の人の話も踏まえた上で判断したいという方は以下の記事も参考にして下さい。
熟年離婚のその後の良い|悪いエピソード!熟年離婚のメリット・デメリットと対策も!
第三人生編集部
熟年離婚で後悔しない為の方法
熟年離婚後の生活での心配は、大きく分けて、 経済面・人間関係・健康面 です。
熟年離婚で 後悔しない為の方法 としては以下の点が挙げられます。
しっかりとした老後の資金計画を建てる
社会的な繋がりを持つ
健康管理の為の環境を整える
しっかりとした老後の資金計画を建てる
まず熟年離婚で最も重要なのは、 老後の資金計画 です。
全ての離婚に言えることですが、離婚後は今までの生活資金の流れが大幅に変わります。
特に熟年離婚では、就業などが難しい場合が多いです。
以後の経済プランやそれらを達成する為の生活資金の調達方法 など綿密に計算しておく必要があります。
特に老後の資金計画に関しては予め老後に受け取れる金銭などを知っていく必要があります。
老後資金に関しては以下の記事もご覧下さい。
老後資金は2000万円で足りる?人生100年時代に備える老後資金の貯め方
第三人生編集部
熟年離婚に関連する金銭については後の項で詳しくご紹介いたします。
社会的な繋がりを持つ
熟年離婚の準備として、 家族親族以外の社会的な繋がりを持っておく と有用です。
離婚後しばらくして、 孤独感に苛まれる 人も多いです。
定年退職後や子供の独立とともに、今までのコミュニティから離れ、人と交流する場がない状況などが相当します。
また、もともと人間関係の構築が苦手な人や、趣味がない人なども孤独を感じやすいです。
その為、落ち込みが続き、 精神疾患に繋がる場合もあります 。
退職後も仕事を続ける、趣味を作るなど、社会的な繋がりを持っておきましょう。
人との交流があると、健康不安などいざという時の助けにもなります。
友人等を作るのが苦手な方は、 在住地域の制度 などを調べておくと良いでしょう。
健康管理の為の環境を整える
熟年離婚後、 自分で健康管理が出来るように環境を整えましょう 。
健康には、食事や衛生管理が重要です。
特に家事を妻に任せていた男性は、 独居になると家事に困り、生活に支障が出る 事があります。
例えば、スーパーやコンビニの総菜に頼り、栄養バランスが崩れるなどです。
また、衛生管理が行き届いていない事で、気管支などの疾患にもかかりやすくなります。
自分で生活できるよう、 家事について学んでおく 必要があります。
加えて、 体調不良の際の近隣医院 なども知っておきましょう。
熟年離婚した場合のお金・年金はどうなる?
熟年離婚に関するお金は、以下の4つが挙げられます。
財産分与
年金分割
婚姻費用
慰謝料
それぞれ解説いたします。
財産分与とは?
財産分与とは、離婚に際し、婚姻中に夫婦で得た財産を分ける事 です。
清算的財産分与 と呼ばれ、基本的には 折半 です。
清算的財産分与は、 財産形成の貢献度 により決められます。
以前は妻が専業主婦の場合、妻側の分与が少なくなる事がありました。
近年では、妻の家事労働があり、夫の働ける環境が整っていたと見なされ、 公平に分割する事が多い です。
しかし、一方に過度の浪費があるなど 過失があった場合は、公平な分割をしない 場合もあります。
また、財産分与には 扶養的財産分与 という分類もあります。
これは、離婚に際し 困窮する元配偶者に、一定期間生活に関する費用を支払う 事です。
病気や高齢など事情がある場合に限る事が多く、裁判などで決められます。
財産分与の対象は?
財産分与の対象は、大まかに以下のものが挙げられます。
預貯金(へそくり含む)
有価証券
不動産
私的年金
車
退職金
保険解約金
この際に、 名義が夫婦のどちらであるかは関係ありません 。
あくまで、婚姻期間中に築いた財産は両者のものであるという考えです。
しかし、 別居期間中に得たものは財産分与には含まれない のが基本です。
また、住宅ローンなどの マイナスのお金も分与の対象 となり考慮が必要です。
ただし、一方の浪費やギャンブルなどの 過失による借金は分与しなくても良い です。
年金分割とは?
年金分割とは、離婚に際し、一方の年金の一部を元配偶者が受け取れる制度 です。
婚姻期間中の厚生年金もしくは旧共済年金 が対象です。
年金分割には、2種類あります。
合意分割
3号分割
合意分割 とは、離婚に際し夫婦の話し合い、または裁判により年金の分割割合を決める方法です。
最大で2分の1 に分割出来ます。
決定後、 年金事務所 にて手続き、請求します。
3号分割 とは、平成20年4月1日以降の婚姻中に第3号被保険者である者が、元配偶者の年金を受け取れる制度です。
話し合いや裁判等は必要なく、 強制的に第三号被保険者期間の2分の1の年金を受け取れます 。
年金分割をする際の注意点
年金分割に際する注意点をご紹介します。
年金分割の対象は、 厚生年金と旧共済年金 です。
その為、自営業など、 勤務先に厚生年金がない場合は対象外 となります。
また、 合意分割と3号分割は併用できます 。
例えば、離婚時第3号被保険者である妻に婚姻期間中、正社員雇用期間があった場合などです。
加えて、年金分割には 時効 があり、 離婚した翌日から2年 を超えると申請が出来なくなります。
それまでに配偶者同士で話し合いや裁判を行い、申請をしましょう。
熟年離婚の年金分割に関しては以下の記事もご覧ください。
熟年離婚で考えたい年金分割!分割されても老後は厳しい?
第三人生編集部
婚姻費用とは
婚姻費用 とは、離婚に向けた話し合いや裁判の最中に、収入の高いほうが配偶者へ生活に関する費用を支払う義務です。
支払われない場合は、家庭裁判所へ調停を起こせます。
慰謝料とは
慰謝料 は、離婚の原因が夫婦どちらかの違法な行為にある場合に支払われます。
不倫、DV、ハラスメント行為などです。
相場は 50~300万円 ですが、夫婦間での金額決定が困難な場合、裁判所での調停が行われます。
熟年離婚時に子供がいる時の注意点
離婚時に決定しておかなければならない項目に 親権 があります。
熟年離婚においては子供が成人している事が多いので当てはまる人は少数です。
しかし子供がいた場合は 親権をどちらが持つかを決定してから離婚成立 となります。
親権の扱い
養育費について
解説いたします。
親権の扱いは?
親権とは、未成年の子供を養育する為に、親が子を監護し財産を管理する事 です。
親権には、 身上監護権 と 財産管理権 の2つの内容があります。
身上監護権とは、子が将来、自立して社会で暮らせるように教育保護する権利 です。
財産管理権とは、子の財産の管理や法律行為の代理の権利 です。
離婚の際には 単独親権 となる為、 夫婦どちらか一方に親権を決める必要 があります。
また、親権者がすべての権利を一括する事が基本ですが、 場合によっては身上監護権のみ夫婦一方が持つ場合もあります 。
養育費について
養育費とは、監護権を持たない側の親が、未成年の子供を育てる為の費用を監護権のある親に支払うもの です。
離婚の際に、父母両者の収入や、養育費の負担能力、生活費などより金額を決めます。
養育費は、 支払い義務 があり、支払われない場合は裁判所より支払い命令を出してもらえます。
熟年離婚をする際の流れ
熟年離婚をする際の流れを解説いたします。
離婚に当たっては、まず夫婦間の 協議(話し合い) で財産分与など必要事項を決定します。
その際は 離婚協議書 を作成する事をお勧めします。
記録しておく事で後のトラブルを防げます。
もし夫婦の間で同意が得られず、離婚が成立しない場合は 調停 、もしくは 裁判 を行えます。
調停とは家庭裁判所に申し立てをし、夫婦関係調整調停を行います 。
俗に 離婚調停 と呼ばれるものです。
申立書 を提出することで夫婦間に 調停委員 が入り、離婚についての話をまとめます。
調停においても離婚に関する決定事項に折り合いがつかない時は、 裁判 を行います。
地方裁判所 に 訴状 を提出、 訴訟提起 を行います。
また裁判においては、 民法770条に則った離婚理由が必要 です。
不貞行為や3年以上の生死不明、悪意の遺棄などが挙げられています。
調停や裁判を行う際は、専門家のサポートをお願いすると良いでしょう。
熟年離婚について良く知り、慎重に進めましょう
今回は 熟年離婚 について解説いたしました。
熟年離婚の原因には、 性格や価値観の不一致 が多く挙げられます。
また、 DVやモラハラ に長年悩んでいた方も少なくありません。
熟年離婚において、重要なのは 経済的な面 です。
お互いの老後が出来るだけ不足なく暮らせるよう、 財産分与 や 年金分割 について細かく決めておきましょう。
その際は 記録を取る 事をお勧めします。
折り合いがつかない場合は、 調停 や 裁判 になります。
専門家に相談しましょう。
熟年離婚の メリットデメリット も良く考え、慎重に決定しましょう。