年金を70歳から受け取る繰り下げ受給
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年金を70歳から受け取ることを、「繰り下げ受給」といいます。
繰り下げ受給には、一体どのような特徴があるのでしょうか。
ふたつのポイントを、おさえておきましょう。
年金は最大で42%増額可能
年繰り下げ受給することで、増える年金の割合は、ひと月にすると0.7%です。
1年繰り下げると8.4%増えることになります。
70歳まで繰り下げると、増額は42%です。
また 増額された年金は、そのあと下がることはなく、受給額はずっと変わりません。
65歳以降の増額率
65歳以降に年金受給を繰り下げる場合の、増額率 についてご説明していきます。
申請手続き時の年齢 増額率
66歳0ヵ月~66歳11ヶ月 8.4%~16.1%
67歳0ヵ月~67歳11ヶ月 16.8%~24.5%
68歳0ヵ月~68歳11ヶ月 25.2%~32.9%
69歳0ヵ月~69歳11ヶ月 33.6%~41.3%
70歳0ヵ月~ 42.0%
年金受給に関する年齢に関してですが、 法律的に年金を受給する権利を得るのはその方の誕生日の前日になります。
その為、年金を請求する際に提出する書類関係に関して、誕生日の前日以降に発行したものが基本必要になります。
たとえば、 4月1日に65歳の誕生日を迎えた場合は、前日の3月31日に発行した書類でもって申請をする と言う事です。
年金を70歳に繰り下げるメリット
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年金を受け取る年齢を繰り下げることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
具体的に説明していきます。
より多い金額で支給される
65歳で年金を受け取るよりも、 70歳で受け取る方が月々の支給額が割り増しされるため、より多くの年金を受け取れます。
現在日本では高齢化が進み、男女共に平均寿命は延びているため、長生きすればするほどその差は大きくなるでしょう。
しかし、万が一70歳を迎える前に亡くなってしまうと年金はもらえずに終わることになります。
70歳まで繰り下げたら、82歳まで年金を受けられたら元を取れる計算になります。
医療費に備えやすくなる
年を重ねると医療機関への受診が増え、医療費がかさみ不安を感じることも多いものです。
70歳になると、医療費の自己負担額は2割に下がりますが、いつ体調を崩して治療や入院が必要になるかもわかりません。
70歳から年金を受け取ると、給付額が割り増しされるので、その分、 病気やケガにかかる医療費に備えられます。
増額された金額は生涯変わらないので、その点も安心です。
老後に必要な金額は?
平均寿命が伸びている今、長い人生を不安なく過ごすためにも、お金はとても重要です。
各家庭によって、預貯金や退職金の額に差があり、生活にかかる費用も違うため一概には言えませんが、 老後を安心して過ごすために必要な金額は、夫婦世帯で2~3,000万円ほどと言われています。
定年退職以降の生活期間が長くなっているため、老後の生活資金に年金は欠かせません。
しっかりと支出をシミュレーションしたうえで、老後の生活にかかる費用を考えておく必要があります。
老後資金に関しては以下の記事も参考にして下さい。
老後資金は2000万円で足りる?人生100年時代に備える老後資金の貯め方
第三人生編集部
年金を70歳に繰り下げるデメリット
高齢者 資金
年金を70歳に繰り下げる場合のデメリットもあります。
繰り下げを検討をしている人にとって、とても重要なことですから、しっかりチェックしておきましょう。
繰り下げ中厚生年金がもらえない
障害年金を受け取ると繰り下げが停止に
老齢年金の繰り下げが不可能になる事も
早く亡くなると総額が減る
繰り下げ中は厚生年金がもらえない
会社員や公務員が加入している厚生年金ですが、年金を繰り下げ中は厚生年金がもらえません。
また 繰り下げて増えるのは、基礎年金のみです。
厚生年金の分は増額しません。
加給年金の受給条件
加給年金とは、厚生年金保険の制度の1つで、 一定の条件を満たしていないと受給されません。
受給条件は以下の通りです。
厚生年金の加入期間が20年以上であること
厚生年金の被保険者が65歳に到達していること
配偶者または子ども(18歳未満)の年収が850万円未満/所得が650万円未満であること
妻の年金がでるまでの間、夫の年金に上乗せする年金と覚えておくといいでしょう。
厚生年金の具体的な金額に関しては以下の記事もご覧ください。
企業年金と厚生年金の違いは?いくらもらえる?確認方法も解説
第三人生編集部
振替加算の受給条件
振替加算とは、基礎年金に加算される給付のことです。
受給される条件は以下の通りです。
大正15年4月2日~昭和41年4月1日の間に生まれていること
基礎年金を受給する資格があること
厚生年金または共済年金に加入していた期間が20年以上であること
配偶者が昭和20年生まれだと110,580円加算され、昭和40年生まれだと15,028円の加算 となります。
障害年金を受け取ると繰り下げが停止に
障害年金とは視覚・聴覚・精神の障害、肢体不自由や糖尿病など、普段の生活に支障がある方の生活保障年金です。
繰り下げしている間に、障害年金を受け取ることになった場合、その段階で繰り下げが停止になります。
老齢年金の繰り下げが不可能になる事も
老齢年金は、条件によって繰り下げできない場合もあります。
まず66歳までは、繰り下げ受給できません。
たとえば、 65歳10ヵ月だと繰り下げ受給は不可能です。
遺族年金の受給でも繰り下げ受給は不可能に
また、66歳までに遺族厚生年金を受け取った場合も、繰り下げ受給ができません。
繰り下げが可能なのは、老齢基礎年金の権利が発生するまでの間と言う事を頭に入れて置きましょう。
遺族年金に関しては以下の記事もご覧ください。
遺族年金の受給はいつから?手続きの方法や書類、受給条件を解説!
第三人生編集部
早く亡くなると総額が減ってしまう
日本人の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳で、過去最高と言われています。
長生きを前提に考えるなら、繰り下げ受給がお得ですが、 万が一早く亡くなると、結果として受け取れる年金受給額の総額は減ってしまいます。
平均寿命の年齢まで生きられるかは誰にもわからず、悩ましい問題だといえるでしょう。
年金受給開始が70歳からに改定される?
年金
今は原則65歳から年金を受け取ることができますが、 年金制度改正により70歳からに改定されるという案が国会に提出されました。
一体どういうことなのか、詳しい中身を見ていきましょう。
背景としてある少子高齢化の加速
少子高齢化 社会問題
日本では、 少子高齢化が深刻な問題となっています。
上の画像は日本の総人口と高齢率を示したものです。
2005年に高齢化率が20%を超え、国際的には超高齢社会に区分されるようになりました。
2007年には総人口が減少に転向し、現在も総人口は減少しています。
2050年には総人口が1億を切る状況に
2019年時点では日本の総人口は約1億2500万人と言われており、高齢化率は25%を超えています。
反対に子どもの出生率は低下し、女性が一生で生む子どもの割合も1.43人と、年々少なくなっています。
推計では2050年には人口は1億を切るとの事です。
年金制度は現在の働き世代が現在を高齢者を支える仕組みで成立してます。
少子高齢化は深刻な影響を及ぼしていくと言えるでしょう。
少子高齢化に関しては以下の記事もご覧ください。
少子高齢化の現状をわかりやすく解説!今後の少子高齢化社会に関する展望も!
第三人生編集部
日本の年金を支えるのは働き手の世代
日本の年金制度は今まで国に支払っていた分が返却されるという積立金額式ではありません。
年金の財源自体は働き世代が支払う保険料が多くを賄っています。
働き世代が保険料として国に支払い、その財源が現行の高齢者に向かって年金として支払われるのです。
将来的に働き世代が高齢者となって年金を受け取る場合は、また若い世代が支え手となるというように、後回しサイクル的な構造をとっているのが特徴です。
少子高齢化により年金制度の維持が困難に
以下の図は内閣府の「選択する未来」委員会が「高齢者を支える働き世代」に関して推計を含め提示したものです。
1960年には1人の高齢者を働き世代が11人近くで支えていたのに対し、2014年には2人程で支えている体制です。
高齢者 生産年齢人口
出典:内閣府「選択する未来」委員会
出生率が向上したとしても、ここ40年程は高齢者をほぼ1人が支える構図となります。
年金の主要な財源となる保険料の量が少なくなる事も具体的な事項の1つです。
年金の維持自体もこのまま少子高齢化が続けば難しくなっていく事が考えられます。
年金受給年齢引き上げも議論へ
今までは保険料の上昇等、働き世代の負担により年金制度自体を維持する政策がとられてきました。
少子化により、国を支える働き世代が減少すると、その分年金財政が苦しくなるので、年金を支給する年齢を引き上げることで対応する事が意見として提示されるようになりました。
働き世代の負担率が過剰という声が強まり、 若い世代の負担も限度がある事を踏まえ、高齢者側への負担まで年金制度維持政策に関して考慮されてきています。
改定されるかどうかは、まだ議論の段階であり、反発の声も多いです。
少子高齢化と共に、年金の支え手となる働き手の世代が少なくなったことにより、年金制度の維持は難しくなってきました。
仮に年金制度が改定されることがあれば、過去の年金改定のことを考えても、 いきなり引き上げるのではなく、支給年齢を徐々に引き上げていくことになるでしょう。
しかしながら、現状のままの年金制度の維持は苦しい状況にあるのも事実と言えます。
年金受給引き上げも含めた年金問題に関しては以下の記事もご覧下さい。
年金問題とは?老後2000万円問題や国の対策に関して解説
第三人生編集部
年金受給開始が70歳に改定されるメリット
高齢者
年金が70歳に改定された場合、どのようなメリットがあるのか を見ていきましょう。
70歳まで働く環境が整いやすくなる
人生100年時代という言葉が浸透しつつある現代。
医療が進歩したこともあり、 元気な高齢者がふえています。
60代であれば「まだまだ働きたい!」と思っている人も多いでしょう。
しかし現在は、60歳を過ぎて働きたいと思っても、良い就職先が見つからないケースもたくさん見られます。
また、健康寿命が上昇しているとの統計も出ており、働く意欲のある高齢者は多いのが実状です。
年金の受給年齢が引き上げられることで、税収などの制度が見直される事によりより高齢者の働く意力に応えるための環境が整いやすくなることが考えられます。
高齢者も働く時代に
今までは60歳を過ぎたら隠居生活、という人生設計が主流でした。
日本の働き方の大きな特徴として挙げられる物に、
定年廃止や再雇用制度など、年金がもらえる70歳まで働く環境が整うことは、大きなメリットといえるでしょう。
仕事で社会に関わる機会が増える
社会に出て仕事をしていたときは、大変な中にもやりがいを感じていた人は多いでしょう。
生活の中心にあった仕事がなくなることで、 仕事ロスに陥る方もいるようで1つの社会問題となっています。
家にこもりがちになり、外部との接触をシャットダウンするようになっては、心身共によくありません。
少しでも長く社会と関わることで、その分 人との繋がりも増え、疎外感を感じることもなくなるでしょう。
年金が70歳に改定されるデメリット
高齢者
年金が70歳に改定されることにより、デメリットも発生します。
こちらもしっかりと目を通しておきましょう。
老後資金の貯蓄や管理が必要に
年金を70歳から受け取るなら、それまでの期間は収入がないことになります。
定年退職してから、年金を受け取る70歳までの期間を無収入で過ごすことを念頭に置き、 特に老後資金に関しては 貯蓄の管理を計画的に行う必要があります。
老後資金の貯め方に関しては以下の記事もご覧下さい。
老後資金の貯め方を30代・40代・50代・60代別に紹介!老後資金はいくら必要?
第三人生編集部
年金中心の生活を離れざるを得ない
多くの人が、老後の収入源として、年金を頼りにしているでしょう。
ただ、年金の形態によってはもらえる金額も異なるため、 年金だけでは日々の生活が赤字だという人も多いようです。
年金をベースにして暮らせるのであれば、それが1番よいですが、年金中心の生活を離れざるを得ない状況が現実問題としてあります。
年金以外の収入源を持てるようにしておく
退職までに十分な貯蓄を用意しておく
このように、年金だけに頼らずに済むような人生設計を考えておくことも大切です。
70歳からの年金について改めて考えてみましょう
年金を繰り下げることで、支給額が増額されます。
メリットとデメリットを踏まえて、自分の生活に合った方法を選びましょう。
また、年金の受給年齢が引き上げられる可能性についても、考えておく必要があります。
年金が受給されるまでの期間をどのように過ごすのか、 ライフプランもふまえて、しっかりと準備しておきましょう。