「余命宣告」と聞くと、多くの方が不安や戸惑いを感じるのではないでしょうか。自分や家族がつらい現実に直面したとき、どのように寄り添って支えるべきかを考えるのは難しいものです。
この記事では、余命宣告について解説し、家族が今やるべきことや検討したい4つの治療方針を詳しくお伝えします。
また、具体的な終活の進め方についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
余命宣告とは?
余命宣告とは、深刻な病気や末期状態にある患者やその家族に対して、医師が「今後どのくらいの期間、生きられる可能性があるのか」を伝えることです。
主に末期がんや深刻な疾患の進行段階で行われ、「〇ヶ月」「〇年」といった具体的な期間で説明されます。
余命宣告は、単なる医学的情報の伝達ではありません。患者や家族が今後の治療方法を選択し、これからの時間をどのように過ごすかを考えるための一助となるものです。
生存期間中央値
余命を導き出す際の指標として「生存期間中央値」があります。
これは同じ種類・進行度の患者群の生存期間をデータ化し、ちょうど真ん中の値を算出したものです。
生存期間中央値は、あくまで統計的な数値です。患者一人ひとりの状況や治療の反応により、異なる結果となることも少なくありません。
余命宣告のルール
余命宣告に明確なルールはありません。そのため、医師によって判断基準や伝え方が異なります。統計データに基づく生存率、医師の経験や過去の症例など、さまざまな要素を組み合わせて総合的に判断されます。
余命宣告は、非常に繊細な内容です。本人の希望や状況によっては家族にのみ伝えられる場合や、逆に本人だけに告げられ、家族には共有されないケースがあります。
余命宣告のメリット・デメリット
余命宣告には、患者やその家族にとってメリット・デメリットがあります。
メリット
・ 残された時間を有意義に過ごせる
・ 患者や家族が心の準備をする時間を持てること
・ 今後の治療方針を明確にできる
デメリット
・ 過去のデータや経験をもとにしているため予測に誤差が出る
・ 精神的ショックや絶望感を感じる可能性がある
余命宣告を受けた患者の家族ができること
余命宣告を受けた後の生活は、大きな試練です。しかし、家族のサポートがあれば、この困難な時期を少しでも前向きに乗り越えることができるでしょう。
ここでは、患者の家族が知っておきたい、患者とのコミュニケーションのポイントを紹介します。
患者本人に伝えるべきか考える
家族が余命宣告を受けた際に最初に直面する課題の一つが、「この事実を患者本人に伝えるべきかどうか」という判断です。
余命宣告を本人に伝えることは、とても難しい選択です。
本人に伝える・本人に伝えない。
どちらの選択をするにしても、家族全員が覚悟を持って向き合うことが大切です。
病気に対する正しい知識を得る
家族が余命宣告を受けた際は、患者の病気に関する正しい知識を得ることが欠かせません。主治医からしっかりと病気の説明を聞き、できるだけ正確な情報を集めてください。
病気や治療の知識を深めることで、患者とスムーズに意思疎通ができるようになります。
患者の感情を否定せず受け入れる
患者に余命宣告を伝えた場合、本人は深い悲しみや不安に包まれ、怒りや孤独を感じるでしょう。
家族は、患者が感じる感情を否定せず、そのまま受け止めてあげてください。そばに寄り添い、静かに時間を共有する。あえてこれまで通りに接することで、患者は安心感を得られます。
「つらいよね」「一緒に乗り越えよう」とやさしく声をかけ、患者の気持ちに寄り添ってあげることが大切です。
本人の好きなこと、やりたいことをサポートする
限られた時間があると分かったとき、本人らしく楽しく過ごせるようにサポートするのは、とても意義のあるものです。
行きたい場所や食べたいもの、一緒にやりたいことなど、患者の希望をしっかり聞いてみましょう。
ただし、体調や病状が最優先です。医師と相談しながら、無理のない範囲で計画を立てましょう。
余命宣告後に検討すべき医療とケア・4つの選択肢
ここからは、余命宣告後に患者と家族が検討すべき医療とケアの4つの選択肢を詳しく説明します。
1.延命治療
延命治療とは、病気を治すことを目的とする治療ではなく、患者の余命を少しでも延ばすことを目指した医療行為です。主に人工呼吸・人工栄養・人工透析が行われます。
延命治療を選択する場合、患者本人に判断能力がなく、家族が判断する場面がほとんどです。そのため、延命治療の副作用や、治療によって得られる延命期間をよく理解した上で選択することが非常に重要です。
患者の意向で延命治療を行う場合は、しっかりとした話し合いと意思決定が必要です。
2.完治を目指す
余命宣告を受けた後でも、新薬や新しい治療法が残されている場合は完治を目指せる可能性があります。
これは患者と家族にとって希望となりますが、その治療が身体に与える影響や経済的な負担を十分に考慮する必要があります。医師とよく話し合い、今後予想される効果とリスクについて理解を深めましょう。
3.緩和ケア
緩和ケアは、病気による苦しみを和らげ、患者ができるだけ快適に過ごせるようにサポートする医療です。病気の完治を目的とせず、患者の身体的、精神的な痛みの軽減、心理的サポートがメインです。
緩和ケアを選択することで、患者のQOL(生活の質)が上がります。
場合によっては、自宅で過ごせる可能性もあり、家族との時間が増えることが期待できます。
4.セカンドオピニオンを受ける
セカンドオピニオンは、別の医療機関の医師に意見を求め、治療法の選択肢を広げる方法です。2011年に行われた厚生労働省の調査によると、約30%の患者がセカンドオピニオンを受けています。
セカンドオピニオンのメリットは、異なる視点からの意見や治療方針が得られることです。これにより、患者の不安や疑念を解消する手助けになるでしょう。
ただし、必ずしも余命宣告の結果が変わるわけではありません。患者自身が納得のいく選択をすることが、もっとも重要です。
家族が余命宣告を受けたときの終活の進め方
余命宣告は家族の人生を大きく変える出来事です。患者の気持ちを大切にしながら、残された時間を意味あるものにするための準備が大切です。
ここでは、家族が余命宣告を受けたときにする終活の具体的な進め方を紹介します。
患者の友人知人に伝える
患者の友人や知人に余命宣告のことを伝える際は、患者の気持ちを最優先に考えます。
誰に・いつ・どのように伝えるかを慎重に検討しましょう。
友人知人に「もっと会っておけばよかった」という思いが残らないよう、内容を慎重に選んで伝えることが重要です。
保険会社へ連絡
保険契約者が生命保険に加入している場合は、保険会社への連絡が必要です。
特に、リビングニーズ特約が付加されている生命保険に加入している場合は、余命が6カ月以内と診断されると、生前に保険金の一部または全部を受け取ることができます。
生命保険や医療保険の中身をしっかり確認し、必要な手続きを早めに行いましょう。
財産を調査する
個人が所有する財産には、家・土地・車・預金・株などが含まれます。これらの財産整理をしておくことで、後の手続きがスムーズに進みます。
また、金融機関の口座やクレジットカード、各種契約の内容についても整理しておきましょう。
特に、本人しか知らない暗証番号や契約情報については、家族が把握できるようにすることが大切です。
遺言書・エンディングノートを作成する
患者の最後の希望や思いを記録する、遺言書やエンディングノートの作成を進めましょう。
本人が負担を感じないよう、さりげなく話を持ちかけ、手伝える部分は家族がサポートするようにしてください。
遺言書は法的効力を持った文書で、エンディングノートは死後に家族に伝えたいことを記したものです。
これらを作成することで、相続などに関するトラブルを未然に防ぎ、家族がスムーズに手続きを進めることができます。
葬儀プランを調べる
葬儀のプランを事前に調査し、見積もりを取っておくことをおすすめします。
この準備をしておくことで、家族が突然の出来事に直面したときでも、落ち着いて手続きを進めることができます。
デジタルデータの整理
デジタルデータを整理しておくことで、家族の手間や負担を減らすことができます。
PCやスマートフォンに保存した写真や動画データは「デジタル遺品」となり、遺族が取り扱いに困るケースが増えています。
重要なデータはバックアップを取り、不要なデータは削除します。パスワードやアカウント情報をメモして、家族と共有できるように準備しましょう。
まとめ
余命宣告は決して人生の終わりではありません。むしろ、残された人生をどう生きるかを考える重要な時間と言えるでしょう。
家族が余命宣告を受けた際には、感情的な負担だけでなく、実際的な準備も重要です。患者がおだやかに過ごせるような医療やケアを検討し、必要な手続きを整えましょう。