地蔵盆の由来
水子地蔵
8月の終わりに近畿地方を中心として、街角で行われる地蔵盆という行事はどのようにして始まったのでしょうか。
地蔵盆には主に2つの言い伝え があります。
賽の河原説
地蔵盆のいわれとして 仏教歌謡「西院河原地蔵和讃」 にて言い伝えられています。
親よりも先に亡くなった子供は三途の川のある賽の河原で石を積み上げるのですが、そこに鬼がやってきて棒や鞭を使って子供が積み上げた石を何度もなんども崩してしまうのです。
その姿を哀れに思った地蔵菩薩が子供たちを見守り、鬼から守ったとされています。
そのことから 「地蔵菩薩は鬼から子供を守る」 とされているのです。
地蔵盆には子供の健やかな成長を願い、慈悲深い地蔵菩薩を供養するとされています。
小野篁説
小野篁は平安時代に京都に住み、宮廷に使える役人でした。
小野篁は才知に富んだ優秀な人材であるにもかかわらず、かなり苦労を強いられてきた人でもありました。
そんな小野篁ですが、一方で、夜にはあの世に行き、閻魔大王の補佐を務めていたといわれています。
小野篁は京都市東区の六道珍皇寺の寺にある井戸からあの世へと行き来したとされています。
なんと、その井戸は今もお寺の一角にあります。
ある日、いつものように井戸からあの世にいった小野篁は、閻魔大王が死者の代わりに自ら炎に包まれ苦しんでいる姿をみて、たいそう心を打たれました。
そして 閻魔大王を救済するために供養を行ったのが地蔵盆の始まり という説です。
どうして閻魔大王の話から地蔵盆になるかと言いますと、 実は閻魔大王は地蔵菩薩の化身とされており、地蔵盆ではそんな閻魔大王の化身である地蔵菩薩を供養しているのです。
なお、小野篁は地獄で会った地蔵(閻魔大王の化身)を再現し、6体の地蔵を作り、六地蔵という地域のお寺に安置したあと、京都市内の6つの寺に安置したと言われています。
地蔵盆はそんな 慈悲深い閻魔大王の化身である地蔵菩薩を供養するため なのです。
地蔵盆の目的
お盆 灯籠流し
地蔵盆は 子供が主役 になります。
地蔵盆の当日は町内のお地蔵さんを供養するお祭りです。
地蔵盆でお地蔵様を供養することで、
子供の健やかな成長を祈る
町内に悪いものが入り込まないようにする
町内の火災などが起こらないように祈願する
これらがかなうといういわれです。
京都ではお地蔵さんは町内ごとにあり、街角におかれたお地蔵さんがその町を守ってくれると強く考えられていました。
しかし、明治時代に入り、仏教を排除する排仏毀釈という運動が起こり、京都市内のお地蔵さんの多くが川に沈められたり、山に埋められたりしました。
その後、この運動が収まった頃に、町の人たちによりひっそりお地蔵さんは取り戻され、また街角にお地蔵さんが戻ってくることができたそうです。
このことからも、 町の人たちのお地蔵さんに対する思いや信仰心がいかに強いかをうかがい知ることができます。
地蔵盆ですること
盆踊り
当日の地蔵盆には町のお地蔵さんに子供たちが大勢集まってきます。
どのようなことを行っているのでしょうか。
お地蔵さんをきれいにする
お地蔵さんにお供えをする
提灯を飾る
数珠回しをする
お供えのお菓子やジュースを子供達に配る
お地蔵さんをきれいにする
当日は主に子供の手によりお地蔵さんをきれいにし、白く化粧をしたり、赤い前掛けを新しいものの取り替えます。
お地蔵さんの前掛けが赤いのは、あの世で子供が迷子にならないようにと言われています。
お地蔵様に関しては、こちらの記事を参考にして下さい。
お地蔵様とは?赤い前掛けと地蔵信仰、お墓にいる意味を解説!
お地蔵様とは?赤い前掛けと地蔵信仰、お墓にいる意味を解説!
お墓・霊園比較ナビ編集部
お地蔵さんにお供えをする
主なお供え物については後ほどご案内します。
提灯を飾る
当日は紅白の提灯を飾り、その提灯には子供の名前が書かれています。
提灯に書かれた子供と地蔵菩薩との縁を結ぶ という意味です。
その年に生まれた子供の名前を書いた提灯を作り、毎年地蔵盆に飾る地域もあります。
数珠まわし
大きな数珠(直径2~3CM)を僧侶の読経のなか、当日参加する大人と子供が輪になって回します。
数珠を回すことで無病息災を祈るのです。
数珠をまわすことにより、 みんながつながっていることに感謝する という意味もあります。
また、数珠を回すことで、 邪気を払って身を清めることができる とのことです。
お供えのお菓子やジュースを子供達に配る
お地蔵さんにお供えされたお菓子やジュースは子供達に配られます。
地蔵盆が行われる時期
カレンダー
地蔵盆が行われるのは旧暦の7月25日の前後2~3日です。
現在では 現在の暦の8月25日前後2~3日前後 が多いようです。
地蔵盆はいろいろな地域で行われているので、地域により時期は変わってきます。
地蔵盆は地域ごとに独自の特徴をもつ
灯篭・灯籠
地蔵盆は京都だけでなく、近畿地方を中心に行われています。
地蔵盆は京都から派生して広がっていったため、地域ごとに独自の特徴を持つようになりました。
その一部を紹介します。
あなたの近くで行われている地蔵盆はどうでしょうか?
関東地方には定着していない
子供の健やかな成長のために毎年行われている地蔵盆ですが、 関東地方では定着をしませんでした。
近畿地方では室町時代よりお地蔵さんを祀る風習がありましたが、関東地方では江戸時代までほとんどお地蔵さんが祀られていなかったのです。
その理由の一つには、関東地方では稲荷信仰が浸透しており、地蔵菩薩信仰がなかなか広まらなかったのが理由の一つであるようです。
近畿地方の方が上京をすると、夏の終わりに地蔵盆がないことに違和感を感じる方が多いとききます。
関西
奈良の一部の地域では、地蔵盆の日に合わせて貴重な仏像の特別拝観なども行われ、老若男女が地蔵盆に集まります。
子供たちはゲームやくじ引きをして過ごすのです。
近畿地方
和歌山の一部の地域では、地域全体で夕方からお地蔵さんに念仏供養をし、数珠回し子行い最後に餅巻きをします。
地蔵盆は宴となり、参加者全員に赤飯と団子と御神酒が振る舞われます。
地蔵盆が行われている寺院
寺院
それでは地蔵盆を行っている寺院の様子をご紹介します。
竹の寺(京都)
京都の市街地から少し離れた西の方面に位置したお寺です。
アニメでも有名になった 一休さんのお寺 として有名です。
このお寺では一般の小学生以下のお子さんが地蔵盆に参加できます。
お子さんは600円付き添いの親御さん1人につき400円です。
参加をすると、お子さんには一休さんの装束を着付けしてもらえます。
地蔵盆で体験できるのは
健康祈願のご祈祷
一休禅師母子像へのお参り
数珠回し
座禅
紙芝居鑑賞
などができます。
参加したお子さんは、挨拶と本堂でお地蔵さんに手を合わせてお参りができるとお菓子をもらえます。
【住所】
〒615-8285
京都府京都市西京区山田北ノ町23
【アクセス】
地下鉄谷町線 四天王寺前夕陽ヶ丘駅徒歩12分
一心寺(大阪)
悪霊をふさぐための安全祈願祭として地蔵盆が行われます。
かつては町内の子供をあつめてお地蔵様に提灯、お供えをして大数珠くり(数珠送り)をしていましたが、近年は地蔵盆フェスティバルとして盛大になり、人形劇や紙芝居、盆踊りなどをするようになりました。
参加者の子供には子供守護祈願をし、お守りを授与しています。
【住所】
〒543-0062 大阪市天王寺区逢阪2丁目8-69
【アクセス】
天王寺駅から徒歩15分
立江寺(兵庫)
先祖を供養し、家内安全を祈願する地蔵盆です。
太子堂の参道に10メートルにわたって300本のろうそくが並び、火がともされます。
ろうそくがともされた幻想的な雰囲気の中、読経が執り行われ、境内では子供たちによる歌や踊りが披露されるのです。
【住所】
〒652-0053 兵庫県神戸市兵庫区北山町12-5
【アクセス】
神戸市バス停留所から三宮駅方面7系統 石井町 徒歩7分
神戸駅方面11系統 夢野町3丁目 徒歩7分
霊現寺(和歌山)
境内の提灯をともし、供養をし、当日は法話や加持(行者が印を結び、真言を唱え、祈ること)が行われます。
【住所】
〒649-6302 和歌山県和歌山市湯屋谷152
【アクセス】
和歌山バス那賀「紀伊駅前」近畿大学行き
粉河駅行き
紀泉台ロータリー(循環)
のいずれか乗車し「池の川」下車、徒歩約15分
宝山寺(奈良)
宝山寺の地蔵尊の法要が盛大に行われ、当日は住職の宝山寺の歴史などありがたい法話が聞けるのです。
【住所】
奈良県生駒市門前町1-1
【アクセス】
近鉄奈良線「生駒駅」からケーブル宝山寺下車、徒歩10分
地蔵盆のお供え物
お供え物
地蔵盆に行くにはお供えとして何を用意すればいいのでしょうか。
ここではお供えとして代表的なものをご紹介します。
お花
地蔵盆に一番使われる植物は ほおずき です。
ほおずきが実ったときの形が提灯に似ているからなんだそうです。
そういえば、地蔵盆の提灯は赤または赤字に白ですね。
お菓子
お菓子はお地蔵さんにお供えしますが、 お供えした後は子供たちが分けて持って帰ります。
お供えのお菓子は子供が喜ぶようなお菓子が良さそうです。
子供が喜べば、きっとお地蔵さんも喜ぶはずです。
地蔵盆が盛んな地域では、スーパーなどの小売店で1,000円~2,000円くらいのお菓子とジュースの詰め合わせを販売しています。
あらかじめ詰め合わせになっているので、大変便利です。
夏の暑いときなので、子供達の大好きなアイスなどと考える方もいますが、アイスなどはすぐに溶けて取り扱いが難しいため、なるべく避けましょう。
飲み物
夏の終わりとは言え、かなり暑い時期の行事ですので、キャップがついた飲み物だと、子供が急にジュースをほしがっても対応することができて便利です。
暑いので、スポーツドリンクが喜ばれることも多いようです。
地蔵盆ののし袋の選び方
地蔵盆ののし袋は法事用の白黒の水引ではなく、 赤白または近畿地方特有の黄色白の水引を選びます。
地蔵盆では子供の健やかな成長と安全を祈願するものなので、水引も蝶結びでいいのです。
赤白の水引には赤は女の子、白は男の子を意味しているという解釈もあります。
地域により、仏事用ののし袋を使うところもありますので、事前に事前に聞いておいた方が無難です。
上記の黄色白ののし袋は近畿地方で仏事に使うのし袋です。
【図解解説】地蔵盆の表書きの書き方
お供え 御供 のし紙
地蔵盆は仏教の行事ですが、赤白の水引や水引を蝶結びにするなど、慶事の扱いをするところが多いですが、のし袋の書き方に決まりはあるのでしょうか。
上段
一般的には 「お供」、「御供」、「灯明料」 と書きます。(赤白の水引の場合)
仏事ののし袋を使う場合は 「志」 と書きます(主に黄色白の水引の場合)
下段
子供名前を書きます。
子供のいないお宅では、世帯主の名前を書きます。
どなたの名前を書くのかは地域により、独自の決まりがありますので、事前に確認してから書いた方がいいでしょう。
地蔵盆のお供えの金額相場
お墓掃除代行 費用
地蔵盆のお供えの相場は2,000円~3,000円 ですが、地域により事前に取り決めがあるところもあります。
これもまた、地域のよく知っている人に聞いておいた方が間違いが無いでしょう。
地蔵盆に参加して子供の成長を祈願しましょう
子供達の健やかな成長は親だけで無く、近隣に住む人たちにとっても切なる思いだと思います。
こうした行事に参加した子供達は大人になるまでに地域の大人達に大事にされている自覚を持ち、安定した情緒が育っていくのではないでしょうか。
地蔵盆とはどういう行事なのか
地蔵盆の意義
地蔵盆の地域による違い
地蔵盆の決まりとしきたり
上記などをご案内しました。
あなたも次の夏に機会があれば地蔵盆をのぞいてみてはいかがでしょうか。
そこには昔懐かしい地域の温かさと、いつの時代も変わらない子を思う大人の思いに触れることができることでしょう。