「このまま賃貸で大丈夫なのか不安……」
「50代になって賃貸って恥ずかしい?」
そんな疑問や不安をお持ちの方も多いかと思います。
結論から言うと、単身世帯が増加している現代では50代以降も賃貸という選択肢は一般的になってきており、恥ずかしいことではありません。
ただ、老後の住まい問題として考えると、年金暮らしになったときに家賃を払い続けられるかは、考えておいたほうがいいでしょう。
この記事では、賃貸と持ち家の割合や、どちらを選ぶべきかのメリット・デメリットを徹底解説します。 エリア別おすすめ選択肢や、老後を見据えた住宅のコスト比較もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
50代で賃貸って恥ずかしい?
50代で賃貸生活を送ることに対して、"恥ずかしい"と感じる人もいるかもしれません。しかし、現代では賃貸生活が一般的になりつつあります。
<賃貸生活が選ばれる理由>
・ ライフスタイルの変化に柔軟に対応できる
・ 維持費や修繕費がかからない
・ 引っ越しが容易
また、50代では仕事や家族構成が変わりやすいため、持ち家よりも賃貸のほうが便利な場合があります。
例えば、50代は仕事で昇進に伴う配置転換が生じやすい年代であり、引っ越しが必要になるケースもあります。
また、家族構成の変化により、「子どもが独立して広い家が不要になった」「離婚や再婚をした」「親の介護や同居が必要になった」といった状況で引っ越しを余儀なくされるケースも多いです。
現在、賃貸にお住まいの方は、比較的身軽にこうした状況にも対応できるといえるでしょう。
50代の賃貸と持ち家の割合
50代の住まいに関するデータを見ると、賃貸派と持ち家派の割合は地域や経済状況によって異なります。
総務省の調査では、65歳以上の単身世帯のおよそ30%が賃貸とのことです。
<賃貸と持ち家の全国的な傾向>
持ち家派:全体の約60%~70%(総務省統計局のデータ)
賃貸派:全体の約30%~40%
参考:総務省 平成30年住宅・土地統計調査
なお、地方や郊外では、持ち家率が高い地域が多く、都市部では賃貸率が高くなっています。
そのため、地方に住む50代では持ち家率が高いため、「賃貸だと恥ずかしい」と感じる方も多いようです。
50代で賃貸に住み続けるメリット・デメリット
次に、「このまま50代以降も賃貸でいいのか?」と悩まれている方へ、賃貸に住み続けるメリット・デメリットをご紹介します。
50代以降も賃貸のメリット
・ 引っ越しがしやすい
・ 固定資産税がかからない
・ 収入に応じて家賃を調整できる
・ 修繕費用が不要
賃貸に住んでいることで、ライフスタイルの変化等にも柔軟に対応できますし、持ち家にかかる固定資産税も不要となります。
住宅ローンを払い続ける必要もありませんし、収入に応じて家賃の低い住まいに住み替えが可能な点もメリットです。
また、賃貸では、修繕は原則としてオーナー側の負担になるため、住む人にとっては突然の大きな出費を避けられます。
50代以降は予期せぬ医療費や介護費用がかかる可能性もあるため、修理費を考えなくてすむことは安心感につながります。
50代以降も賃貸のデメリット
・ 家賃が一生かかる
・ 高齢になると契約が難しくなる場合がある
・ 住まいに対する資産形成ができない
賃貸住宅では、住み続ける限り家賃の支払いが必要です。これが50代以降の「老後破綻」の可能性として大きな問題となります。
今いる住まいで老後も家賃を払い続けられるかは考えておくといいでしょう。
また、60代を過ぎてから引っ越しを考える場合、収入源が限られる高齢者は賃貸を契約しにくくなる可能性があります。
その場合の選択肢としてシニア向けの物件などもありますが、定年後の住まいに関する情報は早めに調べておいたほうが安心でしょう。
50代から持ち家を買うメリット・デメリット
次に、50代からマンションや中古住宅など、持ち家を買うメリット・デメリットをご紹介します。
50代から持ち家を買うメリット
・ 住居に対する安心感をもてる
・ 資産になる
・ リフォームやカスタマイズが自由
持ち家を購入すれば、老後も安心して住み続けられる「自分だけの住まい」が手に入ります。この「安心感」が、持ち家の一番のメリットといえます。賃貸のように契約更新や退去リスクを考慮する必要もなくなります。
また持ち家は将来的に売却したり相続資産として残したりすることもでき、残された家族にとって資産となる可能性があります。
リフォームやカスタマイズを自由に楽しむことができるのも、持ち家ならではのメリットです。
50代から持ち家を買うデメリット
・ ローン返済が重くなる可能性
・ 固定資産税がかかる
・ 維持管理費が必要
50代で持ち家の購入を考える場合は、老後の収入や体力面も考慮する必要があります。
50代で住宅ローンを組む場合、借りられる額にも制限がある場合がありますし、返済期間が短いため月々の返済額が高くなります。無理のない返済計画が重要です。
持ち家は経年劣化に伴いメンテナンス費用がかかるケースも多いため、予期せぬ出費が重なるケースも考えられます。
賃貸・持ち家どちらがいいかはエリアによって異なる
住まいの選択肢は、住むエリアによって大きく影響を受けます。
都市部:利便性を重視するなら賃貸
地方:資産価値を重視するなら持ち家
自分に最適な住まいを探すには、収入と支出のバランスが重要です。
例えば、家賃が高い都心部では、収入が年金のみとなったときに、今住んでいるエリアでは家賃を払い続けられなくなる可能性があります。
また、都心部ではマンション等の資産価値は今後も上がる可能性がありますが、地方では持ち家の資産価値が下がる可能性もあります。
賃貸と持ち家、どちらがいいとは一概にはいえませんが、地域ごとの不動産価格や家賃相場を調べることで、自分に最適な選択肢を見つけられるでしょう。
【エリア別】50代からの住まいの選択肢
次に、都市部と地方で、50代以降にどのような住まいの選択肢があるかを解説します。
都市部の50代からの住まいの選択肢
・ マンション購入
・ 賃貸マンション
・ シニア向け住宅
都心では交通やアクセスなど生活利便性が高いマンションが豊富です。駅やスーパー、病院が近くにあるマンションを購入すれば、老後も快適に生活できます。また都心のマンションは資産価値が落ちにくい点もメリットです。
中古マンションであれば、比較的費用を抑えて購入が可能です。
賃貸マンションの場合も都心には多くの選択肢があり、交通の便が良い物件やバリアフリー対応の物件が見つかりやすいでしょう。 ただし、都心では家賃が高額になりがちなため、年金や収入に応じて無理のない範囲で選ぶ必要があります。
50代以降では、医療や介護サービスが充実したシニア向けの高級賃貸住宅やシニア向け分譲マンションもあるため、そうした住宅も選択肢に入れるのもひとつです。
郊外・地方の50代からの住まいの選択肢
・ 持ち家(戸建て住宅)
・ 賃貸住宅
・ サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
地方では土地や物件価格が比較的安いため、庭付き一戸建てなど広い家を手に入れることができます。
郊外や田舎の持ち家では、自然に囲まれた環境で落ち着いた生活を送ることができ、広い庭で家庭菜園を楽しむなど、ライフスタイルを充実させられるメリットがあります。
購入費を抑えられるため、購入の際に老後を見据えてバリアフリー改修を行う余裕があることも多いです。
賃貸も比較的安いところが多いですが、都心に比べ選択肢は少ない傾向があります。
老後が心配な場合は、60代ごろからサービス付き高齢者向け住宅の契約を視野に入れてもいいかもしれません。シニア専用住宅なら、郊外だとしてもサポートが充実しているため安心して住み続けられます。
50代からの【賃貸・一軒家購入・マンション購入】コスト比較
住まいにかかる費用は住んでいるエリアや物件によるため一概に言えませんが、あくまでも参考として、住まいにかかる費用のコスト比較をしてみました。参考にしてみてください。
賃貸の場合
家賃:10万~15万円/月(エリアによる)
更新料: 2年ごとに家賃1か月分
初期費用: 家賃の3~5か月分
【東京郊外・30年間住んだ場合のケースで総費用を計算】
家賃: 12万円/月
初期費用: 12万円 × 5 = 60万円
月額家賃: 12万円
更新料: 12万円 × 15回(30年間で2年ごと) = 180万円
総家賃: 12万円 × 12ヶ月 × 30年 = 4,320万円
総費用: 60万円(初期費用) + 4,320万円(総家賃) + 180万円(更新料) = 4,560万円
一軒家購入の場合
購入費用:3,000万円~5,000万円
諸経費:購入価格の10%(400万円)
固定資産税:年間20万円
維持管理費:年間15万円
住宅ローン:借入額3,600万円、金利1.5%、返済期間30年
【東京郊外・30年間住んだ場合のケースで総費用を計算】
購入価格: 4,000万円
購入諸費用: 400万円
住宅ローン総返済額:約4,480万円(毎月約12.4万円 × 360回)
固定資産税:20万円 × 30年 = 600万円
維持管理費:15万円 × 30年 = 450万円
総費用: 400万円(諸費用) + 4,480万円(ローン返済) + 600万円(固定資産税) + 450万円(維持管理費) = 5,930万円
マンション購入の場合
購入費用:2,500万円~5,000万円(東京/中古)
諸経費:購入価格の10%(350万円)
固定資産税:年間18万円
管理費・修繕積立金: 年間24万円
住宅ローン:借入額3,150万円、金利1.5%、返済期間30年
【東京郊外・30年間住んだ場合のケースで総費用を計算】
購入価格: 3,500万円
購入諸費用: 350万円
住宅ローン総返済額:約3,920万円(毎月約10.9万円 × 360回)
固定資産税:18万円 × 30年 = 540万円
管理費・修繕積立金: 24万円 × 30年 = 720万円
総費用: 350万円(諸経費) + 3,920万円(ローン返済) + 540万円(固定資産税) + 720万円(管理費等) = 5,530万円
50代で賃貸は【老後破綻】に注意
購入を検討したくても、仕事の都合や経済状況から賃貸を選択せざるを得ない方もいるかもしれません。
もしも、老後も賃貸生活を続ける場合、以下の点には注意が必要です。
・ 収入の減少に備える
・ 老後資金の計画を立てる
老後は現役と比べて収入が大幅に減少します。公的年金だけで家賃や生活費をまかなえるか、事前に確認することが重要です。例えば、家賃が月12万円の場合、年間で144万円の支出となります。これを年金収入でカバーできるか検討しましょう。
さらに、老後は加齢に伴い、医療費や薬代などの支出が増える可能性があります。これらを踏まえて、現役時代から計画的に貯蓄を行い、老後の家賃や生活費に充てる資金を確保しておくことが求められます。
決して賃貸が悪いというわけではありませんが、老後の家賃負担により生活が破綻しないよう、計画的な準備を進められるといいですね。
50代から持ち家やマンションを購入する場合の注意点
住まいの安心を求めて、マンションや持ち家の購入を検討している方もいるかもしれません。そうした場合は、以下の点に注意しましょう。
・ ローン返済期間を短く設定する
・ 修繕や管理費を見込んでおく
・ 資産価値を見極める
注意点①ローン返済期間を短く設定する
多くの金融機関では、住宅ローンの完済年齢を80歳未満と定めています。50代でローンを組む場合、返済期間はじっくりでも30年以内となります。老後の収入減少を考慮すると、より短い返済期間を設定する必要があるでしょう。
注意点②修繕や管理費を見込んでおく
持ち家は年月とともに修繕やリフォームが必要となります。 特にマンションでは、共用部分の修繕積立金が定期的に必要なケースが多いです。マンションの場合、毎月の管理費も念頭に置いて計算が必要です。
注意点③資産価値を見極める
不動産の資産価値は状況によって大きく左右されます。将来的に売却や賃貸を検討する場合、資産価値が下がりにくいエリアを見極める必要があります。
老後も家賃を払い続けられるか心配な方へ
老後を見据えた住まいの選択肢には、シニア向け物件(分譲マンション/賃貸)などもあります。シニア向け物件は、バリアフリーであったり、介護サポートが付いていたりなど、シニア世代でも安心して住み続けられることがメリットです。
<シニア向け物件の特徴>
・ バリアフリー設計
・ 見守りサービス付き
・ 家賃補助や自治体の支援が利用可能
シニア向け物件は物件ごとに年齢制限を設けており、50代やそれ以前から入れる物件もあります。
そうした選択肢に関しても、少しずつ情報収集を進めていくといいでしょう。
まとめ
50代以降の住まい選びでは、賃貸と持ち家のメリット・デメリットを理解し、ライフスタイルや経済状況に合わせた選択が重要です。地域の特性や将来の計画を考慮し、安心して暮らせる住まいを見つけていきましょう。
この記事によって、将来の住まいの選択肢を考えるきっかけになることを祈っています。