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お金のこと

2025.04.28

定年後に家を買うという選択肢|後悔しないためにメリットとデメリットを確認しよう

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この記事では、定年後に家を購入する際のポイントや注意点をわかりやすく解説し、納得のいく住まい選びに役立つヒントをお伝えします。

定年後に住宅を購入するという選択は、多くの人にとって大きな決断です。

持ち家での生活は、安心して快適な老後を過ごせるというメリットがある一方、将来の生活費が不足しないよう、綿密な資金計画も欠かせません。

「定年後に家を買う」ことには、メリットとデメリットがあります。事前にそれらをしっかりと理解しておくことが、後悔しないための第一歩です。

定年後に家を買うメリットとは

専門家に相談するシニア夫婦
まずは、定年後に家を買うメリットを解説します。

老後の生活に合わせた間取りや設備、エリアを選べる

定年後は子どもが独立している家庭も多く、家族構成の変化に合わせて住まいの広さや間取りを選べる点がメリットです。

例えば、夫婦2人だけの生活では、部屋数の多い家からコンパクトな住まいへと住み替えることで、住宅の管理費用や光熱費を抑えられます。

部屋が少なくなれば掃除や家事の負担も軽減され、体力の衰えを感じ始める老後でも快適に暮らせるでしょう。

あらかじめバリアフリーの設備を備えておくことも、安心して長く暮らすうえでおすすめです。

さらに、定年後は職場への通勤がなくなるため、好きなエリアでの暮らしを実現できます。

生まれ育った地域へのUターンや、一度は住んでみたかった憧れの土地への移住など、ライフスタイルに合わせた自由な住まい選びが可能になります。

家賃負担のない安心感を得られる

定年後に家を購入することで、毎月の家賃負担から解放される安心感を得られます。

これは老後の生活設計を考えるにあたり、非常に大きなメリットです。

一方、賃貸暮らしの場合は、生涯にわたって家賃を払い続ける必要があり、年金収入や貯蓄だけの生活になると経済的な負担を感じる可能性があります。

しかし、現金での一括購入や、短期間での住宅ローン完済ができれば、その後の住居費を大幅に抑えることが可能です。

定年後の限られた収入のなかで、住居費という固定費が少なくなると、将来への不安が軽減されるでしょう。

毎月の固定費が減れば生活費全体の負担も軽くなり、趣味やレジャーなど、老後の時間をより自由に楽しむ余裕も生まれます。

資産として家族に残せる

賃貸住宅と異なり、購入した家は「資産」として家族に残せます。

特に、人気エリアにある資産性の高い物件や、地価が安定している地域、今後人口増加が予想されるエリアを選ぶことで、物件の資産価値を維持しやすくなるでしょう。

資産価値が高いエリアは、買い物施設や医療機関、公共交通機関などが充実しており、生活の利便性が高い傾向にあります。

そのため、将来的に物件を売却する場合や賃貸として貸し出す場合にも、有利な条件となる可能性が高いでしょう。

定年後、自分自身が快適に暮らせる環境を手に入れられると同時に、将来目に見える「住まいという資産」を家族へ残せることは、大きな安心材料となるはずです。

相続税対策になる可能性がある

定年後に家を買うことで、相続税対策につながる可能性があります。

例えば、持ち家があって「小規模宅地等の特例」を活用できる場合に、土地の相続税評価額が大幅な減額となるようなケースです。

この特例では、被相続人が居住していた土地について、330平米までの部分に対して最大80%の評価減が適用されるため、残された家族の相続税負担を大きく軽減できることがあります。

ただし、この特例を受けるには一定の条件を満たす必要があるため、事前に専門家に相談しておくことをおすすめします。

税理士や不動産の専門家からアドバイスを受けておくことで、家族へ資産を賢く残すための選択肢が広がるでしょう。

出典:国税庁「小規模宅地等の特例」

定年後に家を買うデメリットとは

次に、定年後に家を買うデメリットを解説します。

住宅ローンを借り入れできないケースや完済できないリスクがある

定年後に住宅ローンを組もうと思っても、健康上の問題などから団体信用生命保険に加入できず、結果として借り入れが難しくなる場合があります。

また、多くの金融機関では住宅ローンの完済年齢を「80歳未満」に設定しているため、定年後に組むローンだと返済期間は短くなる傾向にあります。

そのため、毎月の返済が高額になりやすく、年金収入のみで暮らす場合は大きな負担になることも考えられます。

もしローンの返済負担が想定よりも重く感じられるようになった場合、物件を売却して負担を軽減することも考えられますが、すぐに買い手が見つかるとは限りません。

住宅ローンを利用する場合は、長期的な資金計画を立てたうえで慎重に判断しましょう。

固定資産税や維持費の負担は続く

たとえ持ち家を現金で一括購入したり、住宅ローンを完済したりしたとしても、住まいに関する維持費は発生し続けます。

例えば、持ち家の場合は毎年「固定資産税」を支払う必要があります。

この税金は不動産を所有している限り毎年発生するため、老後の家計にあらかじめ組み込んでおきましょう。

また、長く住み続ければ、外壁や屋根の塗装、設備の交換など、大規模な修繕も必要です。

持ち家には家賃がかからない点で安心感はありますが、維持・管理のコスト発生は避けられません。

定年後は収入が限られることから、これらの費用を支払い続けるための資金管理が重要です。

手もとに残る貯金が少なくなる

定年後に家を購入する場合、退職金や長年の貯蓄を活用して一括購入したり、住宅ローンの頭金としてまとまった金額を支払ったりするケースが一般的です。

しかし、これにより手もとに残る現金が大きく減少し、老後の生活資金が不足する可能性があります。

日本における平均寿命は男性で平均約81歳、女性で平均約87歳とされており、定年後には20年以上の生活資金を見込まなければなりません。

そのため、医療費や介護費用といった突発的な支出に備えて、一定の資金を手もとに残すことが重要です。

また、住宅に要する費用だけでなく、趣味やレジャー、旅行など「楽しみのための支出」も老後の生活を豊かにする要素です。

家の購入にあたっては、今後の人生をどのように過ごしたいかという視点も含めて、総合的な資金計画を立てましょう。

新しい生活環境に慣れる必要がある

長年住み慣れた地域から引越す場合、新しい環境になじむまで時間を要することがあります。

これまでのご近所付き合いや地域のコミュニティがなくなり、新たな人間関係を一から築くことにストレスを感じる方もいるでしょう。

また、日常的に利用していたスーパーや飲食店、かかりつけの病院などを新たに探す作業にも手間や時間がかかります。

住環境は、生活の快適さや安心感に大きく影響する要素です。移住を検討する際は、住みやすさや利便性だけでなく、自分自身がその土地になじめるかどうかも考慮しなければなりません。

引越しのあとは、新天地での生活に慣れるまで時間がかかることを前提に、無理のないペースで生活を整えていく心構えも持っておきましょう。

定年後の住まいに最適なのは持ち家?それとも賃貸?

考えるシニア夫婦
定年後の住まい選びにおいて、「持ち家が良いのか、それとも賃貸が良いのか」と悩む方は多いでしょう。ここでは、賃貸のメリットおよびデメリットを解説します。

賃貸暮らしのメリット

賃貸のメリットは、ライフスタイルや状況の変化に応じた柔軟な住み替えができる点です。

例えば、「より便利な場所に住みたい」「老後の生活を見据えて子どもの近くに引越したい」といった希望が出てきた場合でも、比較的手軽に住まいを変えられます。

また、賃貸住宅であれば住宅ローンを組む必要がなく、固定資産税や修繕費などの大きな費用負担も発生しません。

建物の管理や設備の不具合については、基本的に管理会社が対応してくれるため、老後に負担となりがちな修繕の手間を軽減できる点も魅力です。

賃貸暮らしのデメリット

賃貸住宅には、自由度が低いというデメリットがあります。

好みの間取りや内装を選ぶのが難しく、リフォームやカスタマイズに制限がある場合が多いため、理想の住まいを実現しづらいと感じるかもしれません。

また、東京などの都心部では家賃が高額になりがちで、更新料が定期的に発生する可能性もあり、定年後の固定費として負担になるかもしれません。

また、高齢者との賃貸契約を敬遠する大家や管理会社も存在するため、年齢を重ねるにつれて希望する物件が見つかりにくくなるリスクもあります。

引越しの自由度が魅力とはいえ、高齢期には選択肢が限られる現実も考慮が必要です。

持ち家か賃貸かはライフスタイルと予算で決める

不動産流通経営協会「シニアの住宅に関する実態調査」では、現在の住まいが持ち家か賃貸かにかかわらず、多くの人が老後の住まいとして、持ち家への住み替えを希望しているという結果が出ています。

賃貸は固定資産税や修繕費といったコストの心配が少なく、住む場所を柔軟に選べる自由度が強みです。

一方、持ち家は資産としての価値や安心感がある反面、購入時の初期費用や維持費の負担が発生します。

ライフスタイル、希望する生活環境、そして将来的な資金計画なども考慮したうえで最適な選択をしましょう。

定年後の家の購入に住宅ローンは利用できる?

住宅ローン
定年後でも利用可能な住宅ローンは存在します。
ここでは、代表的なローン商品と、それぞれの特徴や注意点を解説します。

60歳からでも住宅ローンの利用は可能

60歳以上でも、条件を満たせば利用できる住宅ローンはあります。下記に、代表的な住宅ローンを2つ紹介します。
フラット35
申し込み時の年齢が満70歳未満であれば利用可能な、長期固定金利型ローンです。

金利が固定されているため、老後でも返済計画が立てやすく、将来の支出を見通しやすい特徴があります。

また、親子リレーローンを活用すれば、満70際以上の方でも申し込みが可能です。これは、契約者本人が返済しきれない場合に子どもがローンを引き継いで支払うことができる仕組みで、世代をまたいだ資金計画を立てられます。


リ・バース60
申し込み時の年齢が満60歳以上で利用可能な住宅ローンです。

毎月の支払いは利息のみで、元金の支払いは発生せず、契約者が亡くなった時点で元金の返済を行なう仕組みです。

返済方法としては、相続人が一括返済するか、家を売却して返済するかの2パターンから選べます。そのため、定年後でも生活資金への影響を抑えながら住宅を購入する選択肢が広がります。

定年後に住宅ローンを組む際の注意点

定年後に住宅ローンを利用する場合、申し込み時の年齢や健康状態によっては団体信用生命保険に加入できず、結果としてローン審査に通らないことがあります。

また、住宅ローンは35年などの長期返済が一般的ですが、定年後は返済期間が短くなります。

例えば、65歳でローンを組むと完済は80歳までに設定されることが多く、最長でも15年ほどしか返済期間がありません。

返済期間が短いと、毎月の返済が高額になり、借入可能額も制限される可能性があります。その結果、希望した金額でローンを組めないケースも出てきます。

このような場合は、頭金を多めに用意して借入金額を抑えることで、融資が受けやすくなります。

定年後に住宅ローンを組む際は、返済期間の短さや健康上の問題などを考慮して、慎重な計画を立てることが大切です。

事前に金融機関やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、無理のないプランを選択しましょう。

現金一括と住宅ローンのどちらで購入する?

定年後に家を購入する場合、退職金や貯金で一括購入するか、それとも住宅ローンを利用するかで迷う方もいるかもしれません。

将来の生活費や十分な医療費として、まとまった資金が確保できる場合は、利息負担のない現金一括購入を検討するのもよいでしょう。

しかし、退職金が減額傾向にあるなかでの一括購入は、慎重な判断が必要です。

また、冠婚葬祭などの突発的な出費に備えて手もとに現金を残しておきたい場合は、住宅ローンの利用も選択肢の一つです。

いずれの方法で購入するにしても、ライフプランに合った資金計画を立てることが重要です。
退職金や貯金をどう活用するか、事前のシミュレーションを行ない、無理のない購入方法を検討しましょう。

将来を見据えた住まいの選び方

定年後の住まい選びでは、ライフスタイルや将来の健康状態を見据えた判断が重要です。ここでは、老後の暮らしに適した住まいを選ぶ際のポイントを紹介します。

老後の生活に適したエリアを選ぶ

老後は車を手放すことを想定し、公共交通機関へのアクセスが良いエリアを選ぶと安心です。

例えば、日常生活に必要なバス停や駅、スーパーやドラッグストア、医療機関などが徒歩圏内にあるかどうかは重要なチェックポイントです。

生活圏内に必要な施設がそろっていれば、移動のストレスが少なくて済みます。

さらには、将来的に足腰に不安が出てきた場合のことを考え、階段や坂道が多いエリアを避けるなど、地形にも注意を払っておきましょう。

家族や頼れる人の近くを選ぶ

定年後の住まいを選ぶ際には、頼れる子どもや家族、親せきの近くに住むと安心感を得られます。

特に健康に不安が出てくる老後は、日常生活のサポートを受けられる環境が必要です。

体調不良や緊急時に頼れるほか、日々のコミュニケーションも取りやすく、孤独を感じにくくする効果も期待できます。

今後の生活スタイルや関係性も考慮しながら、「距離感の近さ」が生む安心感を大切にして、住む場所を検討するとよいでしょう。

ローン完済できる物件を選ぶ

定年後に住宅ローンを組んで購入する場合、おもな収入源が年金になることを想定して、無理のない返済が可能な物件を選びましょう。

毎月の年金額からローンの返済額を差し引いても、生活に支障が出ない資金計画を立てることが大切です。

また、退職金を頭金にしようと考えている場合も慎重な判断をしてください。

突発的な出費が発生した際に生活資金が不足しないよう、一定の余裕をもった資金を手もとに残しておくと安心です。

まとまった貯蓄を残しつつ、無理のない返済計画で購入できる物件を見つけることが、定年後の安定した暮らしにつながります。

バリアフリーに対応している家を選ぶ

老後の生活を快適にするために、最初からバリアフリー対応の住宅を選ぶことも選択肢の一つです。エレベーター付きの集合住宅や平屋住宅など、階段を使用せずに生活できる家を選ぶのもよいでしょう。

そのほかには、中古住宅を購入し、必要に応じてリフォームする方法も考えられます。この場合、安全性を考慮して手すりやスロープを設置するのがおすすめです。

築年数の古い物件を購入する際は、耐震性の確認も忘れずに行ないましょう。状況によっては、耐震補強工事が必要になるかもしれません。

定年後の生活を長期的な視点で考え、バリアフリー対応を含む安全な生活環境を整えることが大切です。

生活のしやすさを考えて戸建てかマンションを選ぶ

住まい選びでは、戸建てとマンションのどちらが老後の生活に適しているかも検討のポイントです。

マンションはエントランスがオートロックになっている建物も多く、セキュリティ面で安心感があります。さらに、設備のメンテナンスは管理会社が定期的に行なうため、自分たちの負担が少ないことも老後には魅力です。

ただし、隣接する住戸との距離が近いため、生活音などを巡るトラブルが発生しやすい傾向にあります。

一方、戸建ては隣家との距離が比較的離れており、マンションと比べると生活音のトラブルは発生しにくいでしょう。

また、駅の近くなど利便性の良い立地の場合は、土地の資産価値が残るというメリットもあります。ただし、戸建ては庭や階段がある物件が多く、老後は管理や掃除が大変に感じるかもしれません。

まとめ

定年後の住まいを選ぶ際には、老後生活に適したエリアや間取りであることを意識しましょう。
生活の利便性だけでなく、安心して長く暮らせるかどうかが重要なポイントです。

また、家を買う場合は生活に必要な資金を手もとに残せるか、住宅ローンを無理なく返済できるかをシミュレーションし、資金計画を慎重に立てるようにしてください。

定年後は新たなライフステージのスタートでもあります。

充実した毎日が送れるよう、将来を見据えて十分な準備を行ない、「ここに住んで良かった」と思える家を見つけましょう。

監修者
齋藤 彩(さいとう あや)

独立系FPとして資産運用や保険提案、ローン、住宅購入などの個人向け相談業務を中心に、中小企業への企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の導入支援も行なう。また、お金の知識をわかりやすく伝えるため、金融メディアへの執筆・監修活動もしている。
<保有資格>CFP、1級FP技能士

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