高齢者に適したプロテインの効果的な摂取タイミング
昨今では「人生100年時代」と呼ばれていますが、ただ単に長生きするのではなく、いつまでも楽しく、アクティブに活動したいと考える人が多いのではないでしょうか。
行きたい場所へ行く、食べたいものを食べる、やりたいことをやる、どのようなことでも実現するためには自身が健康であることが前提となります。
高齢になるにつれ、筋力の低下や骨密度の減少など、年齢とともに身体機能の衰えが進みます。そこで健康寿命を延ばすためには、適切な栄養管理が鍵となります。
加齢によって食欲が低下し、食事だけでは必要な栄養素を摂取しにくくなるため、中にはプロテインを活用している人もいらっしゃいます。
本記事ではプロテインについて解説しますので、ぜひ健康維持にお役立てください。
高齢者にとってのプロテインの役割
高齢者にとって、栄養をバランスよく摂取することは健康維持の基盤となります。
年齢とともに食事の消化吸収機能が低下するだけでなく、飲み込む力も衰えていきます。
さらに、嗅覚や味覚の変化や歯のかみ合わせの変化など高齢期に入ると様々な変化があります。
このことから、高齢者は必要な栄養素を効率よく摂取する必要があります。
特にたんぱく質は筋肉、皮膚、内臓など、体のあらゆる部分の構成要素として必要です。
このタンパク質量の不足を補える栄養補助食品の一つにプロテインが挙げられます。
高齢者がプロテインを摂取することで得られる主なメリットには、筋肉量の維持・増強、サルコペニア(加齢性筋肉減少症)の予防、免疫機能の向上、骨密度の維持、代謝の促進などがあります。これらの効果により、より健康的で活動的な生活を送ることが可能になります。
プロテインとは
プロテインというとアスリートや若者が飲んでいるイメージがあるかもしれませんが、高齢者でもタンパク質不足を補うものとして最適です。しかし、プロテインについてあまり詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
ここではプロテインについて詳しく解説します。
プロテインは、たんぱく質の英語表現であり、体のあらゆる細胞の構成成分です。筋肉、内臓、皮膚、髪の毛、爪など、すべての組織や器官に含まれています。体内でアミノ酸に分解され、新しいたんぱく質の合成に利用されます。
配合されているタンパク質の種類は主に3種類あります。
プロテインの種類とそれぞれの特性
ホエイプロテイン
プレーンヨーグルトを水切りすると、黄色の透明な液体がでてきます。これがホエイと呼ばれるもので、ホエイに含まれているタンパク質を取り出したものがホエイプロテインです。ホエイプロテインは比較的水に溶けやすい性質があり、飲みやすいと感じる方が多いと言われています。
牛乳由来で吸収が速いので、運動後の栄養補給としても活用しやすいです。
カゼインプロテイン
こちらも牛乳由来のタンパク質です。カゼインは水に溶けにくく吸収が遅いことから、就寝前の摂取に適しています。
ホエイプロテインと同様に、必須アミノ酸をバランスよく多く含んでいます。
ソイプロテイン
名称通り大豆由来で、植物性たんぱく質の一種です。乳製品アレルギーのある人にも適しています。カゼインプロテインと同じく水に溶けにくい性質を持っており、消化吸収が緩やかです。
上記3種類の他、最近ではエンドウ豆や米、ヘンプなど、さまざまな植物由来のプロテインがでてきています。
いずれもパウダータイプでスポーツ用品店やドラッグストア等で購入することができます。自分にあったものを選びましょう。
高齢者に適したプロテインの摂取タイミング
プロテインの摂取は、1日分の量を一度に摂るのではなく、数回に分けることがポイントです。できれば食後がおすすめで、特にタンパク質の摂取量が低い朝食時にプロテインを摂取すると効率的です。
また、おやつ代わりにプロテインを利用して、食事で不足しがちなタンパク質を補うことも有効です。しかし、プロテインの過剰摂取は高齢者の身体に負担をかけるため、目安量を守ることが重要です。体重が増加した場合、摂取量を見直す必要があります。プロテインは食事の代替ではなく、あくまで不足分を補うものです。食が細くなってきたり、軽食で済ませたときに、不足した栄養素を補給するために活用してみてください。
プロテインの飲み方
プロテインの飲み方は、基本的には水や牛乳、豆乳などの液体で溶かして飲みます。
水で溶かすと味を損なわず手軽に飲むことができ、特にトレーニング後の迅速な栄養補給に適しています。一方、牛乳や豆乳で溶かすと味の相性が良く、吸収スピードがゆっくりになるため空腹感を感じにくくなります。間食や寝る前の摂取におすすめです。
最近ではフレーバーの種類が豊富になっており、自分好みの味を見つけることができます。それでも飲みにくいと感じる場合は、果汁100%のオレンジジュースやアップルジュース、スポーツドリンクと混ぜると飲みやすくなります。
柑橘系ドリンクに含まれるクエン酸は疲労回復に効果があり、ジュースやスポーツドリンクに含まれる糖質はタンパク質の吸収を助けます。ただし、酸性が強い飲み物と混ぜるとタンパク質が凝集しやすくなるため、ミキサーを使うなどの工夫が必要になります。
プロテインは自分が飲みやすいドリンクと合わせることで続けやすくなります。また、摂り方がマンネリ化している場合は、プロテインを使ったスイーツレシピを試してみるのも一つの方法です。ただし、プロテインは作り置きせず、飲む直前に作りましょう。長時間置くと微生物が繁殖しやすくなるため、注意が必要です。
様々なアレンジで、味に飽きることなくプロテインの摂取を続けてみてください。
プロテイン摂取の注意点
摂取量を調整する
タンパク質の必要量は個人差がありますが、推奨量は定められているのでこれを基準に自分にとって最適な摂取量を考えると良いでしょう。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」によると、成人男性で1日60g、成人女性で1日50gとされています。高齢者の場合はこれを超えることが推奨されており、具体的には65歳以上の男性で77〜138g、女性は58〜105gをタンパク質摂取の目標量(上限)としています。
個々の健康状態や普段の食事や活動、筋肉量などに応じて摂取量を調整することが重要です。目安量から日頃摂取できている量を差し引いた分をプロテインで摂取するように心がけてください。分からない場合は医師や栄養士と相談しながら、自分に最適な摂取量を見つけましょう。
過剰摂取によるリスクを避ける
プロテインを過剰に摂取すると、かえって健康に悪影響を及ぼします。
高齢者が必要な量以上にタンパク質を摂取してしまうと、基礎代謝量が減っているためエネルギーとして消費されず体に脂肪分として蓄積され、肥満体質を作ることになってしまいます。そして腸内環境が乱れ便秘になることもあります。
自身の健康状態、体質に合わせる
プロテインを摂りすぎると腸内環境が乱れ、便秘になる事があります。
特に高齢者は既存の疾患や服薬状況によって、プロテインの摂取に注意が必要な場合があります。
腎臓病や肝臓病を持つ場合は、腎機能など内臓に負担をかけてしまうためプロテイン摂取量を調整しなければなりません。
他にも、原料が牛乳タイプのプロテインを摂取した後、腹痛、お腹がゆるくなってしまう、下痢をしてしまう場合があります。これは乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素が体内に不十分な場合に起こる事象で、乳糖不耐症と呼ばれています。牛乳アレルギーをもっている人は避けるようにしましょう。
そもそも日本人の多くは乳糖を十分に分解することができないと言われているので、腹痛症状がみられた場合はソイプロテインなどを選ぶと良いでしょう。
まとめ
プロテインは、高齢者にとって不足しがちなタンパク質を手軽に摂取できる栄養補助食品です。高齢者はもちろん、第三人生読者のシニアにとっても健康寿命を延ばすうえで、おすすめです。
手軽に摂取できる半面、自分に合った飲み方や量を考慮する必要があります。
健康維持のためには日頃の食事でバランスよく栄養を摂取すること、そして適度な運動が基本です。
どうしても自炊が難しく軽食で済ませてしまった時など、日によって不足した栄養素を補うひとつの手段としてプロテイン摂取を考えてみてはいかがでしょうか。