昨今、高齢者が特殊詐欺の被害に遭うニュースが後を絶ちません。高齢者が特殊詐欺被害に遭わないためには、「よくある被害ケースを知る」「できる対策を取り入れる」といった対策が大切です。
そこでこの記事では、高齢者を狙う詐欺の現状や、代表的な特殊詐欺の手口を詳しく解説します。あわせて、被害事例から学べる防止策や、狙われやすい高齢者の特徴なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
高齢者への特殊詐欺の現状・被害件数
近年、高齢者を狙った特殊詐欺が増加しており、特に女性の被害が多い傾向にあります。
警察庁のデータによれば、令和6年(2024年)の高齢者における特殊詐欺の認知件数は13,707件で、このうち65歳以上の高齢女性の被害認知件数は9,241件となっています。
参照:警察庁 令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について
高齢者への特殊詐欺の種類と事例
高齢者を狙う特殊詐欺には、主に以下のような手口があります。
<高齢者特殊詐欺の種類(被害件数順)>
・還付金詐欺/融資保証金詐欺
・オレオレ詐欺
・キャッシュカード詐欺盗
・架空料金請求詐欺
・預貯金詐欺
第1位【還付金詐欺/融資保証金詐欺】
市区町村の職員などを装い、「医療費や保険料の還付がある」などと偽り、ATMの操作を指示して口座間送金をさせる手口です。99%以上が電話を通じた詐欺です。
【還付金詐欺の事例:信じた電話の代償】
70代のAさんは、役場職員を名乗る男から「介護保険料の払戻金がある」と電話を受けました。親切そうな口調に安心し、男の指示通りATMを操作した結果、407万円を振り込んでしまいました。
第2位【オレオレ詐欺】
家族や親族を装い、「事故を起こした」「借金の保証人になった」などと嘘をつき、現金を要求する手口です。被害者の多くが高齢者であり、巧妙な手口で金銭をだまし取られています。99%以上が電話を通じた詐欺です。
【オレオレ詐欺の事例】
70代の女性Bさんは、息子を名乗る男から「株の税金が払えない。証券会社の者が取りに行く」と言われました。心配したBさんは訪ねてきた男に125万円を渡してしまいました。
第3位【キャッシュカード詐欺盗】
金融機関の職員や警察官を名乗り、「あなたの口座が不正利用されている」などと伝え、キャッシュカードを預かると称してだまし取る手口です。
被害者のキャッシュカードをすり替えるなど、巧妙な方法が用いられます。
【キャッシュカード詐欺の事例】
80代の女性Cさんは「口座が不正利用されている」と警察官を装った人物から電話があり、自宅を訪問した男にキャッシュカードをすり替えられ、預金を引き出されてしまいました。
第4位【架空料金請求詐欺】
実際には利用していないサービスの未納料金を請求する手口です。
「有料サイトの利用料金が未納です」などと書かれたメールやハガキを送りつけ、支払いを迫ります。
以下のような媒体から詐欺へと誘導されるケースがあるため注意しましょう。
■媒体別の被害件数の割合
電話:37.4%
ポップアップ表示:31.7%
メール・メッセージ:25.9%
【架空料金請求詐欺の事例】
「有料サイトの未納料金があります」とのメールを受けた60代のDさんは、不安から指示通り電子マネーを購入し、番号を伝えてしまいました。
第5位【預貯金詐欺】
高齢者の預貯金を狙い、投資話や高利回りの金融商品を持ちかけて資金をだまし取る手口です。「確実に儲かる」などと甘い言葉で誘い、被害者を信用させます。
【預貯金詐欺の事例】
70代の男性Eさんは、老後資金を不安に感じていたところに「高金利の定期預金があります」と金融機関職員を名乗る人物から電話を受け、口座情報を伝えてしまい、預金を引き出されました。
その他
上記以外にも、「ギャンブルに必ず勝てる」といった誘い文句や異性との恋愛や結婚を名目にした「ロマンス詐欺」など、多様な手口が存在します。
【SNS型投資・投資詐欺の事例】
60代の男性Fさんは、SNSで知り合った投資家に「必ず儲かる」と誘われ、退職金1,200万円を振り込みましたが、配当金はなく、連絡も途絶えました。
【ロマンス詐欺の事例】
70代の独り身の男性Eさんは、SNSで知り合った女性から「渡航費が必要」と頼まれ、数百万円を送金し、その後連絡が取れなくなりました。
高齢者への特殊詐欺の連絡手段
詐欺の手口はさまざまで、以下のような連絡手段で実行されます。
<詐欺手口全体の連絡手段別割合>
・電話:79.1%(オレオレ詐欺や還付金詐欺は99%以上が電話)
・メール/メッセージ:9.7%
・ポップアップ表示:8.9%
・はがき・封書等:2.3%
【予兆電話に注意!】高齢者への特殊詐欺を未然に防ぐ
予兆電話とは、詐欺犯が住所や氏名、資産状況、利用している金融機関などを探る目的でかけてくる不審な電話のことを指します。
高齢者が被害に遭う特殊詐欺のほとんどが電話によるもの。以下のような電話には十分注意しましょう。
<予兆電話の具体的な手口>
①家族や親族を装う電話
「携帯番号が変わった」「電話帳をなくした」などと伝え、親密な関係を装って個人情報を聞き出します。
②金融機関や役所を名乗る電話
「口座の利用状況を確認したい」「還付金の手続きを進める」などと騙り、口座番号や暗証番号を尋ねます。
③アンケート調査を装う電話
「高齢者向けサービス調査です」と言って、資産額や預金先を聞き出します。
④警察を名乗る電話
「あなたの口座が犯罪に使われています」と不安を煽り、金融情報を引き出します。
このような電話を受けた場合は、すぐに電話を切り、家族や警察に相談することが大切です。
参照:警察庁 特殊詐欺対策ページ
特殊詐欺に狙われやすい高齢者の特徴
特殊詐欺の被害に遭いやすい高齢者には、以下の特徴が見られます。自分や家族が当てはまる場合は、事前の対策をしておくと安心です。
一人暮らしの人
一人暮らしの高齢者は、相談相手がいないため詐欺犯に狙われやすい傾向があります。特に、電話や訪問で「困っている」などと親切を装う手口に引っかかりやすく、冷静な判断が難しくなります。
地域の見守りネットワークや定期的な家族の連絡が、被害防止に効果的です。
判断力が低下している人
加齢による認知機能の低下で、詐欺手口を見抜けなくなることがあります。特に「至急」「秘密」といった言葉に動揺しやすく、冷静な対応ができなくなります。
詐欺事例の学習や、家族との合言葉設定が被害防止に役立ちます。
お金の不安が強い人
年金だけでの生活や将来の資金不足への不安から、「簡単に儲かる」などの甘い言葉に引っかかりやすくなります。詐欺犯は「高利回り投資」や「還付金がある」などで信用させます。
お金の相談は必ず家族や専門機関と行いましょう。
人を信じやすい人
親切な態度や公的機関を名乗る詐欺犯を簡単に信じてしまう高齢者は、ターゲットにされやすいです。特に、警察官や銀行員を装う詐欺が多発しており、注意が必要です。
詐欺防止には「不審な連絡は即確認」を心がけることが重要です。
家族を大切にしている人
「孫や息子が困っている」といった内容に心を動かされやすく、オレオレ詐欺の標的となりやすいです。家族間で合言葉を決めるほか、急な金銭要求は本人に直接確認することで被害を防げます。
【対策はこれ!】高齢者の特殊詐欺への備え方5つ
詐欺被害に遭わないようにするため、以下のような対策をおすすめします。
1. 留守番電話を活用する
知らない番号からの電話は、直接出ずに留守番電話で確認を。詐欺犯は録音を嫌うため被害を防ぎやすくなります。
2. 通話録音機能を活用する
通話録音アナウンスがあるだけで詐欺犯をけん制できます。
3. 金融機関や警察からの連絡は必ず再確認する
公的機関からお金の要求があった場合は、公式の連絡先に折り返し電話を。即座の振り込みは絶対に避けましょう。
4. 家族との合言葉を決める
オレオレ詐欺対策として、家族であらかじめ秘密の言葉を設定しましょう。緊急時の電話でも、合言葉で本人確認ができます。
5. 詐欺情報を定期的に学ぶ
巧妙化する詐欺を防ぐために、自治体や警察が主催する講習会に参加し、最新の詐欺手口を学習することをおすすめします。地域の回覧板や掲示板にも注意を払いましょう。
まとめ
高齢者を狙う特殊詐欺は巧妙化し、誰もが被害に遭う可能性があります。詐欺の手口を理解し、対策を取ることで被害を未然に防ぐことができます。
家族と協力し、日頃から情報を共有することで安心な暮らしを守りましょう。