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お金のこと

2025.03.28

ゆとりある老後生活費はいくら?内訳は?世帯別の金額実態やおすすめ貯蓄方法もご紹介

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この記事では、老後の生活費の実態や、ゆとりある生活を実現するために必要な金額、さらに計画的に資金を準備する方法をご紹介します。安心して豊かな老後を迎えるために、今からできる備えについて一緒に考えていきましょう。

老後の生活には、どれくらいのお金が必要かご存じでしょうか。

現役時代の収入がなくなったあとも、生活費や医療費、趣味や旅行などにお金がかかります。特に「ゆとりある老後」を送るためには、余裕をもって老後資金を準備しておかなくてはなりません。

老後の月の生活費とその内訳、実態は?

通帳を眺めるシニア女性
老後の生活費は、実際にどのくらいかかるのでしょうか。

65歳以上の単身世帯と夫婦二人世帯では、毎月の生活費に大きな違いがあります。ここでは、それぞれの支出額と内訳を詳しく見ていきましょう。

単身世帯の支出および内訳

単身無職世帯で65歳以上(高齢単身無職世帯)の毎月の消費支出は、総務省の「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、平均14万5,430円です。
支出で最も多いのが食費で、平均40,103円となっています。

また、日々の生活費とは別に、税金や社会保険料などの非消費支出が、毎月平均12,243円かかります。
家計調査報告 平均結果の概要
*その他の消費支出……諸雑費、交際費、仕送り金など
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」をもとに作成

これらを踏まえ、単身で暮らす場合は、毎月15万円以上の生活費を見込んでおく必要があるといえるでしょう。

参考:総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」

夫婦二人世帯の支出および内訳

同じく総務省のデータによると、夫婦のみの65歳以上の無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の毎月の消費支出は、平均25万959円となっています。

最も大きな支出はやはり食費で、平均72,930円でした。そのほかに、税金や社会保険料などの非消費支出が、平均31,538円となっています。

また、生命保険文化センターによる「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」では、老後の最低日常生活費は夫婦二人でいくら必要だと思うか、という問いに対する回答は、平均で月額23.2万円でした。

夫婦で安心して暮らすためには、毎月約25万円以上の生活費を確保することが必要といえます。
家計調査報告 平均結果の概要 夫婦の場合
*その他の消費支出……諸雑費、交際費、仕送り金など
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」をもとに作成

参考:総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」
参考:生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」

ゆとりある老後生活に必要な金額は?その内訳は?

ゆとりある老後生活を過ごすためには、前述の支出額よりも多くの資金が必要であることが予想できます。

多くの人が、ゆとりある老後生活に必要と考えている金額について、生命保険文化センターの報告をもとに解説します。

ゆとりある老後生活に必要と考えられているのは38万円

ゆとりある老後生活を送るためには、生活費だけでなく、趣味や旅行などの楽しみも考慮する必要があります。

生命保険文化センターで行われた「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」において、ゆとりある老後を送るために、最低限の生活費に加えて毎月いくら必要かを尋ねたところ、「10~15万円未満」と答えた人が31.4%で最も多いという結果になりました。
次いで多かった回答は、「10万円未満」(19.3%)です。

この調査の結果を平均すると、老後に必要な追加費用は月額14.8万円となります。

これを、先述した最低限必要だと考える生活費(23.2万円)と合計すると、夫婦二人がゆとりある老後を送るには毎月約38万円が必要と考えられます。

なお、この老後に必要な追加費用は前回(2019年)の調査結果よりも1.1万円増加しているそうです。背景には物価上昇などさまざまな影響が想定されますが、今後もさらに増加するかもしれません。

参考:生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」

“ゆとり”部分の内訳で大きいのは「旅行・レジャー」

では実際に、ゆとりとしての資金は何に使われるのでしょうか。

同じ調査で、老後に必要な追加費用の使い道を尋ねたところ、最も多かったのは「旅行やレジャー」でした。

次いで「日常生活費の充実」や「趣味や教養」などが挙げられています。具体的な上位5つの項目は以下のとおりです。
・旅行やレジャー
・日常生活費の充実
・趣味や教養
・身内や友人との交際費
・テレビや冷蔵庫、自動車などの買い替え
老後は自由な時間が増えるため、「旅行を楽しみたい」「趣味を充実させたい」と考える方が多いようです。こうした希望を叶えるためにも、計画的な貯蓄が大切であることがわかります。

参考:生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」

老後生活のおもな収入は「年金」

老後の生活費をまかなうためには、それに見合う収入が必要です。多くの方にとって老後生活の収入の中心となるのは、年金です。

年金は、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)の2段階構造になっており、これらをまとめて公的年金と呼びます。

どの年金を受け取れるかは、これまでの働き方によって異なります。それぞれの特徴や受給額について、詳しく見ていきましょう。

老齢基礎年金(国民年金)

老齢基礎年金(国民年金)は、自営業やフリーランスの人がおもに加入している年金制度です。

会社員や公務員として厚生年金に加入した実績がない場合、この老齢基礎年金のみが支給されます。

厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、老齢基礎年金の月額平均は57,700円です。

また、日本年金機構の発表によると、令和6年度の満額支給(40年加入)でも月額68,000円となっています。

仮に夫婦二人とも老齢基礎年金のみを受給する場合、月額平均11万5,400円です。

しかし、これは生命保険文化センターの調査による最低限必要な老後生活費(約23.2万円)にも届かず、ゆとりある生活にはさらに大きな差があることがわかります。

参考:厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
参考:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」

老齢厚生年金(厚生年金)

老齢厚生年金は、会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間がある人が受け取れる年金です。

これは老齢基礎年金に上乗せされる形で支給されるもので、加入期間が長いほど受給額も増えます。

厚生労働省による「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、老齢厚生年金の平均月額は、老齢基礎年金を含めて14万7,360円となっています。

また、日本年金機構の発表では、夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金の受給額は、令和6年度で23万483円とされています。

これは生命保険文化センターの調査による夫婦二人の最低限の生活費(23.2万円)にはやや足りません。

さらに、ゆとりある老後に必要な月額38万円には大きく届かないため、年金以外の収入源、または将来に備えた貯蓄が重要となります。

参考:厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
参考:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」

ゆとりある老後生活に必要な資金をシミュレーションしてみよう

将来の生活資金をシミュレーション
実際の年金受給額は、現役時代に加入していた年金により異なります。そのため、年金収入のみではゆとりある老後生活に不安がある方も多いでしょう。

老後の生活費が年金収入だけでどのくらいまかなえるのか、不足額はどの程度か、シミュレーションしてみましょう。

夫婦二人世帯、老齢基礎年金のみの世帯、独身の場合に分けて解説します。

老齢厚生年金受給の夫婦二人世帯

夫婦二人で老齢厚生年金を受給する場合、日本年金機構の発表によると、標準的な年金額は令和6年度で月額23万483円です。

一方、前述の総務省の調査によると、65歳以上の夫婦二人世帯の生活費は月に28万2,497円です。

そのため、毎月約52,000円が不足する計算となり、仮に65歳から90歳までの25年間で試算すると、約1,560万円の不足となります。

さらに、夫婦二人がゆとりある老後生活に必要とされている金額は、毎月38万円です。

この場合は月約15万円が不足し、25年間では約4,500万円が不足する計算になります。老後資金の準備が重要であることがわかります。

老齢基礎年金受給の夫婦二人世帯

老齢基礎年金のみを受給する夫婦の場合、月額平均受給額は夫婦合わせて11万5,400円となります。

しかし、夫婦の平均支出28万2,497円には約16万7,000円不足し、25年間で約5,010万円の不足になります。

また、夫婦二人がゆとりある生活を送るためには毎月38万円が必要なため、月約26万5,000円が不足し、25年間での不足額は約7,950万円です。

老齢基礎年金のみでは、厚生年金受給世帯よりも不足額が大きくなるため、より多くの貯蓄や資産運用が必要です。

ただし、自営業の場合は定年がなく、健康であれば年金以外の収入を得られる可能性もあります。

独身の場合

独身で老後を迎えた場合、65歳以上の単身無職世帯の平均生活費は月15万7,673円です。老齢厚生年金の月額平均受給額は14万7,360円なので、約1万円が不足になります。

一方、老齢基礎年金のみを受給する場合、月額平均受給額は57,700円となり、最低限の生活を送るためには毎月約10万円が不足します。

この場合、25年間で約3,000万円の不足が生じます。独身の場合も、豊かな老後を送るためには、年金以外の資金を準備しておくことが大切です。

意外な落とし穴?ゆとりある老後生活に影響する出費

車いすの男性を介護する介護スタッフ
老後生活の消費支出では、食費の割合が大きいことをご紹介しましたが、そのほかにも予想外の支出が発生する可能性があります。

それらを考慮しておかないと、ゆとりある老後生活に影響するかもしれません。

孫などの家族にまつわる出費

老後は家族との時間を楽しむ大切な時期ですが、その分、思わぬ出費が増えることもあります。

特にお孫さんがいる場合、誕生日や入学祝い、結婚資金の援助などの負担が想定され、人数の分だけ増加する可能性があります。

また、二世帯や三世帯住宅へのリフォームが必要となった場合、その費用を負担することもあるかもしれません。

家族旅行や外食の機会が多い場合には、その諸経費が日々の生活費を圧迫する可能性もあります。

修繕費など自宅にまつわる出費

持ち家の場合、築年数が経つにつれて屋根や外壁、水回りなどさまざまな箇所の修繕が発生する可能性があります。

また、高齢化に応じたバリアフリー化や手すりの設置など、安全面のリフォームも想定され、そうした自宅の維持管理にかかる費用が必要になります。

住み替えを検討する場合は、新居の購入や引越し費用も考慮が必要です。一方、賃貸に住んでいる場合は、毎月の家賃が継続して発生します。

どちらの選択肢でも、住まいに関する費用は長期的に見据えて準備しておきましょう。

医療費や介護費など健康にまつわる出費

年齢にともない、医療費の負担が増える可能性があります。

持病が悪化したり、突然の入院や手術が必要になったりすると、高額な医療費がかかることもあるでしょう。

また、健康寿命と実際の寿命には差があり、要介護状態になると介護サービスの自己負担が発生します。介護施設や老人ホームの入居費も、想定以上にかかることがあります。

公的な支援も利用しつつ、ある程度の自己負担を見越した準備が必要です。

お墓の購入など終活にまつわる出費

老後を迎えると、お墓や葬儀の準備も考えなくてはなりません。お墓にいたっては墓石などの購入費だけでなく、維持管理費も発生します。

反対に、遠く離れた実家のお墓など、訪問が難しくなり墓じまいの対応が必要になることもあるでしょう。

生前に葬儀を手配する場合は、葬儀一式の費用がかかるため、予算を決めておくことが大切です。配偶者を見送る際の葬儀費用も考えておいたほうがよいでしょう。

さらに、相続対策や遺言書の作成を依頼する際には、弁護士や司法書士などへの費用がかかる場合も考えなくてはなりません。残された家族の負担を減らすためにも、早めの準備が安心につながります。

増税や物価上昇など情勢の変化による出費

社会の変化によっても、生活費が左右されます。物価上昇により食費や光熱費が増えるなど、年金だけでは暮らしが厳しくなる可能性の考慮も必要です。

例えば、2024年に導入された森林環境税のように、今後も新たな税負担が増えることも考えられます。将来の支出を見越して、余裕をもった資金計画を立てておくことが重要です。

ゆとりある老後の生活費を確保するためにおすすめの貯蓄方法

老後の生活費確保のためにおすすめの貯蓄方法をご紹介します。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

iDeCoは、自分で掛金を設定し、投資信託や定期預金などで運用する年金制度です。

メリットは、掛金が全額所得控除の対象となるため、節税しながら老後資金を増やせる点です。また、運用益も非課税で、受け取るときにも税制優遇があります。

掛金は月5,000円から始められ、65歳まで積み立てが可能です。ただし、途中で引き出せないため、当面使わない資金を活用することが大切です。

NISA

NISAは、少額から長期的に資産を増やせる投資制度で、運用益が非課税になるのが大きなメリットです。

2024年には新制度に移行し、年間投資枠は最大で360万円(つみたて投資枠と成長投資枠の合算)、非課税期間は無期限と、さらに利用しやすい仕組みとなりました。

つみたて投資枠の投資対象は金融庁が選定した投資信託に限定されているため、初心者でもリスクを抑えながら運用しやすいのが特徴です。

インフレ対策としても有効で、物価上昇に備えた資産形成が可能です。

終身保険

終身保険は、一生涯にわたる保障を受けながら、貯蓄を兼ねることができる生命保険の一種です。

加入期間の長さに応じて途中解約時に支払われる解約払戻金を多く受け取ることができ、老後資金の補填として活用できます。

また、死亡保障があり、死亡保険金は相続税の非課税枠があります。万が一の際には現金で保険金と同額を残すよりも課税対象となる金額が少なくなるのも特徴です。

保険料は長期的に支払う必要があるため、余裕をもって計画を立てることが重要です。

個人年金保険

個人年金保険は、老後に備えて保険会社に一定期間掛金を払うことで、将来年金として受け取るものです。

契約時に受取開始年齢や受取方法(一括・年金形式)を選べるため、ライフプランに合わせた設計が可能です。

公的年金だけでは不安な方にとって、安定した収入源を確保できるのが大きなメリットです。

契約内容によっては、終身で受け取れるタイプや、一定期間のみ受け取るタイプなどがあります。節税効果も期待できるため、長期的に安定した老後資金を確保したい方に適しています。

定期預金・積立預金

定期預金や積立預金は、元本保証があり、確実に貯蓄を増やしたい方に向いている貯蓄方法です。

定期預金は、一定期間資金を預けることで利息を受け取る仕組みで、預入期間が長い方が金利が高くなる傾向があります。

一方、積立預金は毎月決まった金額を積み立てる方式で、コツコツと貯められるため計画的な資産形成に適しています。

定期預金より金利は低めですが、投資のリスクを避けたい方にとっては安心できる貯蓄方法です。

投資信託・株式投資

投資信託や株式投資は、長期的に資産を増やすことに対し有効です。NISAやiDeCoでも投資信託(NISAではさらに株式も)を購入して運用します。

NISAやiDeCoで投資信託を購入した場合もリスクは同じですが、長期的な視点で適切に分散投資を行なえば、リターンを得られる可能性もあります。

市場に左右され、価格変動リスクがあるため、慎重な運用が求められます。また、NISAと異なり運用よって得た利益は課税対象となるのが注意点です。

不動産投資

不動産投資は、賃貸収入を得ることで老後の安定した収入源を確保する方法です。

マンションやアパートなどを購入し、貸し出すことで定期的な家賃収入を得られます。また、土地や建物の価値が上がれば、売却益を得ることも可能です。

不動産は現物資産として残せるため、相続対策としても活用できます。ただし、空室リスクや修繕費、管理費などの負担もあるため、事前にしっかりと計画を立てることが重要です。

まとめ

老後の生活費は単身か夫婦かによって異なりますが、夫婦二人暮らしでゆとりある老後生活を過ごすためには、毎月約38万円が必要と考えられています。

公的年金だけではまかなえない可能性があり、貯蓄や資産運用が重要です。予想外の出費や物価上昇にも備え、iDeCoやNISA、個人年金保険などを活用して計画的に準備しましょう。

安心して老後を迎えるためには、今のうちから資金計画を立て、無理のない範囲でコツコツと備えることが大切です。

■監修者
齋藤 彩(さいとう あや)

独立系FPとして資産運用や保険提案、ローン、住宅購入などの個人向け相談業務を中心に、中小企業への企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の導入支援も行なう。また、お金の知識をわかりやすく伝えるため、金融メディアへの執筆・監修活動もしている。
<保有資格>CFP、1級FP技能士

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