シニアの一人暮らし もしもの時でも自信がつく!実践的防災ガイド
昨今では高齢者の一人暮らしが増加傾向にあります。読者の皆さんの中にも、一人暮らしの方はいらっしゃるのではないでしょうか。
一人暮らしをされている方の中には、最近大きな地震が各地で相次いで発生しているので「もしも自分が住んでいる地域に地震が起きたら…」「一人で何かあったら…」と心配になる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。あるいは「離れて暮らしている高齢の家族が心配…」と漠然とした不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。
でも大丈夫です。きちんと準備をすれば、一人暮らしでも安心して暮らせます。この記事では、災害時に役立つ準備や心構えをご紹介します。
身近なところから始める防災準備
災害はいつ起こるかわかりませんが、「もしも」の時のことを少し考えておくだけで、いざという時に落ち着いて行動できます。
では具体的にどのような準備をすればよいのでしょうか?
避難場所を確認する
お住まいの地域の避難場所を確認しましょう。
避難場所の確認は、自治体から配布されているハザードマップを見るのが一番確実です。もし手元にない場合は、近所の方や自治会に聞いてみるのもいいでしょう。
ハザードマップを通じて、自分の住む地域の特性を知ることもできます。海の近くにお住まいの方は津波の可能性を、山の近くにお住まいの方は土砂災害の可能性を考慮に入れておく必要があります。
自分の住む地域でどのような災害が起こりやすいか、事前に調べておきましょう。
避難経路がわかったら、実際に歩いてみることをおすすめします。すると、道路の状況や所要時間がわかります。車いすをお使いの方は、段差や坂道にも注意を払ってください。
また、災害時には冷静さを保つことが重要です。パニックに陥らないよう、深呼吸をする、自分の名前や生年月日を声に出して言うなど、簡単なリラックス法を知っておくと良いでしょう。
非常時の持ち出し袋を用意する
リュックサックなど、両手が使える形がおすすめです。中身は以下のようなものを入れておきましょう。
飲料水(500mlのペットボトルを2〜3本)
乾パンやカロリーメイトなどの非常食
懐中電灯(電池式がおすすめ。予備の電池も忘れずに)
携帯ラジオ(災害情報の入手に役立ちます)
常備薬(普段飲んでいる薬があれば必ず入れておきましょう)
眼鏡や入れ歯など、日常生活に欠かせないもの
笛(軽くふくだけで音がでるので、いざという時に助けを呼ぶ手段として使えます)
現金(小銭も含めて)と身分証明書
使い捨てカイロ(寒さ対策に)
軍手(けがを防ぐため)
マスク(感染症対策に)
携帯用トイレ(数回分)
雨具(折りたたみ傘よりも、レインコートやポンチョなど両手があくのでおすすめ)
これらを1つのバッグにまとめて、玄関近くなど、すぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。
定期的に中身をチェックし、賞味期限が切れたものは新しいものと交換することを忘れずに。
また、お薬手帳のコピーや、かかりつけ医の連絡先なども入れておくと安心です。持病のある方は、薬の名前や用量を記したメモも用意しておくと良いでしょう。
非常用の持ち出し袋を用意すると、「あれも必要、これも必要かもしれない…」と、つい色々なものを入れてしまいがちです。詰め込み過ぎた結果、重すぎて運べなくなってしまっては意味がありません。
必要なものを見極めて、自分の力で運べる重さになるよう心がけてください。
備えるべき物については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご確認ください。
自宅での備蓄や安全対策
避難所に行かずに自宅で過ごす「在宅避難」という選択肢もあります。そのためには、最低3日分、できれば1週間分の食料と水を備蓄しておくことが大切です。
水は1日1人3リットルが目安です。飲料用だけでなく、調理や洗面にも使用することを考えると、多めに用意しておいた方が安心です。水の備蓄が難しい場合は、浴槽に水を貯めておく習慣をつけるのも一つの方法です。
食料は缶詰やレトルト食品など、調理せずに食べられるものを選びましょう。普段から少しずつ買い置きを増やしていけば、負担も少なくて済みます。缶詰は種類を多めに用意すると、食事に変化をつけられます。また、お菓子類も少し入れておくと気分転換になります。
高齢者の方は、咀嚼や嚥下に配慮した食品も用意しておくと良いでしょう。レトルトのおかゆや、やわらかい副菜などがおすすめです。
また、電気やガス、水道が止まった時のために、以下のものも用意しておくと安心です。
簡易トイレ(水が使えない時に重宝します)
ウェットティッシュ(体を拭いたり、物を清潔に保つのに使えます)
ポータブル充電器(携帯電話の充電用)
カセットコンロと燃料(お湯を沸かしたり、簡単な調理ができます)
LEDランタン(部屋全体を明るくできます)
乾電池(各種サイズ)
ラップ(食器に巻いて使えば洗い物が減ります)
アルミホイル(調理や保温に使えます)
使い捨て食器(水が使えない時に便利です)
保温・保冷袋(食品の保存に役立ちます)
これらの備蓄品は、普段使いしながら補充していく「ローリングストック法」がおすすめです。使った分を買い足していけば、常に新しいものを備蓄できます。
住まいの備え
災害時の安全を確保するには、普段の生活空間を見直すことも大切です。以下のような点に注意しましょう。
家具の固定
倒れやすい家具は壁に固定しましょう。特に寝室や普段よく過ごす場所の家具は要注意です。
避難経路の確保
部屋の出入り口や廊下に物を置かないようにしましょう。
ガラスの飛散防止
窓ガラスに飛散防止フィルムを貼ると、割れても破片が飛び散りにくくなります。
こちらは台風接近に際しての備えにも役立ちます。詳しくはこちらで解説していますので、確認してみてください。
照明器具の固定
天井から吊り下げている照明は、落下防止ワイヤーなどで補強しましょう。
寝室の安全確保
就寝中に地震が起きた場合を想定し、ベッドの周りには倒れやすいものを置かないようにしましょう。
また、火災対策も忘れずに。消火器の設置場所を確認し、使い方を把握しておきましょう。住宅用火災警報器の電池切れにも注意が必要です。
日頃からのコミュニケーション
一人暮らしだからこそ、近所の方々とのつながりは大切です。挨拶を交わしたり、地域の行事に参加したりして、顔見知りを増やしておきましょう。災害時には、お互いに助け合える関係が心強い味方になります。
特に、同じマンションや近所に住む一人暮らしの方とは、日頃から声を掛け合う関係を作っておくと良いでしょう。災害時に互いの安否を確認し合えます。
また、遠方に住む家族や親戚とも、定期的に連絡を取り合っておくことをおすすめします。
災害時の安否確認がスムーズになりますし、心配してくれる人がいるというだけで安心感が違います。家族との間で、災害時の連絡方法を事前に決めておくのも良いアイデアです。例えば、LINEやFacebookなどのSNSを使う、災害用伝言ダイヤル(171)を利用するなど、複数の手段を確認しておきましょう。
情報収集の方法を知っておく
テレビやラジオはもちろん、最近では自治体がSNSで情報発信することも増えています。普段からこれらの情報源をチェックする習慣をつけておくと、いざという時に役立ちます。
携帯電話やスマートフォンをお持ちの方は、緊急速報メールの設定を確認しておきましょう。地震や津波、気象警報などの緊急情報を素早く受け取ることができます。
また、お住まいの地域の防災無線の聞こえ具合も確認しておくと良いでしょう。聞こえづらい場合は、自治体に相談してみてください。防災ラジオを貸し出している自治体もあります。
地域の防災活動への参加
多くの自治体や町内会では、定期的に防災訓練や防災講座を開催しています。これらに参加することで、実践的な知識や技能を身につけることができます。また、地域の方々と顔を合わせる良い機会にもなります。
防災訓練では、避難経路の確認や消火器の使い方、応急救護の方法などを学ぶことができます。実際に体験することで、いざという時の行動がスムーズになります。
ペットと一緒に暮らしている方へ
ペットと暮らしている方は、ペットの防災対策も忘れずに。ペットフードや水、トイレ用品などの備蓄も必要です。
また、ケージやリードなど、避難時に必要なものも用意しておきましょう。
避難所によってはペットの同伴が難しい場合もあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。ペットのための避難所情報も把握しておくと安心です。
遠方で一人暮らしをしている親が心配。どう対策をとる?
ここまでは一人暮らしをしている方向けに解説を進めましたが、中には「高齢の親が遠方で一人暮らしをしている」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方はぜひ家へ訪問したタイミングだけで構いませんので、これまで述べた家具の固定や避難する際の導線確保のため、玄関や廊下などを中心に物を整理するなどしておくと良いでしょう。
本人は気が進まない場合もあるかもしれませんが、家族の動きをきっかけに防災意識が変わるかもしれません。
その他、「避難行動要支援者名簿」へ申請・登録するなど、自力で避難することができない人向けのサポートをしてもらえるように手配をしておくと安心です。こちらの登録条件はお住まいの自治体によって異なるので、あらかじめご確認ください。
最近では高齢者の一人暮らしが増えていることを受け、警備会社が見守りサービスを提供していることもあります。何か起きた場合にパトロール員がすぐに駆けつけてくれるので、このようなサービスに頼るのも一つの手でしょう。
様々なサービスを上手く活用し、ひとりで抱え込みすぎないようにしましょう。
まとめ
一人暮らしだからこそ、防災対策は特に大切です。でも、決して難しいものではありません。この記事でご紹介した準備を少しずつ進めていけば、きっと安心感が増すはずです。
災害はいつ来るかわかりません。でも、備えがあれば怖くありません。今日からでも、できることから始めてみませんか?
最後に、お一人で不安を感じたり、対策に迷ったりした時は、遠慮なく周りの方や地域の支援サービスに相談してください。一人で抱え込まず、助けを求めることも大切な防災対策の一つです。
皆様の安全で穏やかな暮らしを心からお祈りしております。