相続が発生したとき、民法で財産の相続権利が認められている人のことを「法定相続人」といいます。 この記事では、法定相続人の範囲や順位、相続分の割合、確認方法などをわかりやすく解説します。
法定相続人とは
法定相続人とは、民法で定められた『相続する権利を持つ人』を指します。
法定相続人には、亡くなった人(被相続人)の配偶者と血族が該当し、民法により相続順位や相続割合が定められています。
【法定相続人の順位】をわかりやすく解説
法定相続人には順位が決まっており、先順位の人がいない場合に、次の順位の人が法定相続人になります。
なお、配偶者は必ず相続人になり、配偶者以外の相続人は民法で決められた相続順位で決まります。
法定相続人=配偶者+順位が上位の人
(先順位がいない場合に次の順位の人が相続人になる)
配偶者以外の相続順位
第1順位 子ども(または孫)
第2順位 直系尊属(父母・祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(または甥姪)
【法定相続人のポイント】
・ 先順位の人が1人でもいる場合、後順位の人は相続人になれません
・ 同じ順位の人が複数いる場合は、全員が相続人となります
・ 相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます
・ 内縁関係の人は相続人に含まれません
・ 第4順位はありません
遺言書と法定相続人の関係
遺言書がある場合、基本的には遺言の内容が優先されます。そのため、法定相続人の確認と同時に、遺言書の確認も必要です。
ただし、遺言書がある場合にも、法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の財産相続割合が認められています。
法定相続人の確認方法
法定相続人を確認するには、被相続人の戸籍謄本を取り寄せて正式な血縁関係を確認する必要があります。
例えば、離婚相手との間に子どもがいるような場合には、子どもも法定相続人となる可能性があるため注意が必要です。
故人(被相続人)の戸籍謄本を取り寄せる方法
故人(被相続人)の戸籍謄本を取り寄せる方法は以下の通りです。
請求先
被相続人の本籍地の市区町村役場
※郵送での請求も可能
請求できる人
必要なもの
・相続人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
・印鑑(認印可)
・手数料(戸籍謄本1通につき450円(改製原戸籍は750円))
・委任状(代理人が取得する場合は必要)
相続前に理解しておきたい相続の用語
相続では聞きなれない用語もでてきて混乱しやすいかと思います。以下に、基本的な相続の用語の意味をご紹介します。
法定相続分とは
法定相続分とは、民法で定められた相続人が取得する相続財産の割合の目安です。遺言書がない場合などの基準として用いられます。
ただし、法定相続分はあくまでも基準であり、強制力はありません。
実際には、遺言書のほか、相続権を持つ法定相続人全員の協議により相続割合を変更できます。
遺留分とは
遺書等で任意の相続人に相続をする場合でも、法定相続人に最低限保証される相続分のことをいいます。関係により、配分が決められています。
代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)とは
代襲相続人とは、本来の相続人が死亡などにより相続権を失った場合に、その人の代わりに相続する人を指します。
代襲相続人は、本来の相続人の子(孫やひ孫など)や兄弟姉妹(甥や姪など)がなります。
ただし、本来の相続人が相続放棄をした場合には、代襲相続は発生しません。
直系卑属(ちょっけいひぞく)とは
直系卑属とは、自分より後の世代で、直通する系統の親族のことを指します。
例えば、子、孫、父母といった関係で、養子も含まれます。
法定相続人と相続人の違いとは
法定相続人は相続する権利を持つ人、相続人は実際に財産を相続する人のことを指します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議は相続人全員で遺産の分割方法を決める話し合いです。
法定相続分以外の割合で遺産を分割する場合には、遺産分割協議を行い、遺産の分割割合を記載した書類「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
相続における【法定相続分】の割合
法定相続分とは民法で定められた相続における財産分配の割合です。以下に、状況別の割合例をご紹介します。
配偶者+子
・ 配偶者 1/2
・ 子(直系卑属) 1/2
※子が複数の場合は均等に分割
配偶者+父母
・ 配偶者 2/3
・ 父母(直系尊属) 1/3
※両親がいる場合は1/6ずつ
配偶者+兄弟姉妹
・ 配偶者 3/4
・ 兄弟姉妹 1/4
法定相続分の割合の例
例① 相続人が配偶者と子ども
配偶者 1/2
子ども 1/2
※子どもが複数人いる場合は、2分の1を子どもの人数で割ります。
例② 相続人が配偶者と故人の母(もしくは父)
配偶者が2/3
母(もしくは父)は1/3
例③ 相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹
配偶者が3/4
被相続人の兄弟姉妹が1/4
例④ 相続人が子ども3人(配偶者なし)
3人がそれぞれ1/3ずつ
直系尊属の法定相続分について
直系尊属である故人の親が2人とも存命の場合は、直系尊属の法定相続分3分の1を均等割して計算します。
よって、1人あたりの法定相続分は1/6になります。
代襲相続人の法定相続分について
代襲相続人の法定相続分は、本来の相続人の法定相続分をそのまま引き継ぎます。
同一の本来の相続人に対する代襲相続人が複数人いる場合は、人数で均等に分割します。
相続前に理解しておきたい相続のポイント
これから相続の可能性がある方は、法定相続人の知識とともに、以下のポイントを抑えておくといいでしょう。
【相続の基礎知識】
・ 遺言書がある場合、原則として遺言が優先される。
・ 法定相続分とは異なる分割を行う場合は相続人全員で『遺産分割協議』を行い、『遺産分割協議書』の作成が必要
・ 相続税の申告期限は相続開始から10か月以内
・ 相続税には基礎控除(3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数))がある
・ 基礎控除の範囲の相続であれば相続税はかからない
相続問題の相談先
相続は複雑でわかりにくく、判断に迷うケースもあると思います。不要なトラブルを防ぐために、税理士、司法書士、弁護士、行政書士などの専門家に相談することもおすすめです。
どの専門家にも相続の相談は可能で、状況に応じて必要な職種の専門家を紹介してもらえるケースが多いです。
まとめ
法定相続人となるのは、配偶者は必ず、他は民法に定められた順位に従います。遺言書がある場合は法定相続人も相続分も遺言書が優先となります。
相続トラブルで困らないよう、専門家の力も借りながら相続手続きを進められるといいですね。