グリーフケアとは?
葬儀会場
グリーフケア(grief care)のグリーフとは「深い悲しみ」「悲嘆」を意味し、ケアは「世話」「配慮」という意味です。
グリーフケアとは、 家族や大切な人と死別した喪失の中で打ちひしがれ、そこからの回復との間で揺れ動き、不安定な状態となった人に、さりげなく寄り添いながら援助することで、つらい心と体を癒すことです。
人は配偶者、親、子ども、友人、ペットなど大切な存在と死別すると、喪失と同時に立ち直ろうとすることから、精神状態も不安定になり、身体的にも違和感や不調を感じるようになります。
グリーフケアの役割は、喪失の中にいる人の話に耳を傾け、そっと寄り添うことです。
特別に何かをするのではなく、 その人に寄り添う存在でいることが回復には最も大切です。
話を聞くということは簡単ではありません。
実はこの寄り添うということがとても難しいのです。
グリーフケアの必要性
喪服の女性
グリーフケアが必要な症状と単なる気の落ち込みとの区別は難しいのですが、 一般的には次の3つの症状が表われた場合、グリーフケアを受けるべきといわれます。
精神的な反応
身体的な反応
日常生活や行動の変化
では、この3つの症状について詳しくみていきましょう。
①精神的な反応
精神的な反応では、 長期にわたる故人への思慕の情を核として、感情の麻痺、激しい悲しみや怒りを感じたり、無気力感、罪悪感、孤独感、自責感、抑うつ、不安などといった状態が表れます。
②身体的な反応
身体的な反応では、 睡眠障害や食欲減退、体力や健康感の低下、体重減少、免疫機能低下、疲労感や体の不調を覚えます。
③日常生活や行動の変化
日常生活や行動の変化では、 集中力の低下、ぼんやりする、涙があふれてくる、落ち着きがなく なる、より動き回り働こうとする、故人の所有物を遠ざけたくなったと思えば愛おしむようになるなどが起こります。
上記の3つの症状が表れているにも関わらず、ケアせずにいると、外傷ストレス障害(PTSD)、うつ病、不安障害疾患的症状などを発症する可能性もあります。
グリーフケアの方法
方法
人は大切な人との死別に直面すると4つのプロセスを経験します。
この過程は必ず越えなくてはならないものであり、「グリーフワーク」と言われます。
グリーフワークには個人差があります。
順番 過程 内容
1 ショック期 心の麻痺の段階
2 喪失期 切望と悲しみの段階
3 閉じこもり期 混乱と絶望の段階
4 癒し・再生期 回復の段階
グリーフワークを経験している人を側で支え、立ち直るまでの過程を見守るのが「グリーフケア」です。
この期間は1年程とされますが、グリーフケアにも期間や内容に個人差があります。
つづいて、その方法を見ていきましょう。
悲しむことを肯定する
悲嘆を表現させる
儀式を利用する
専門家や団体に相談する
方法①悲しむことを肯定する
グリーフケアのひとつめのポイントは、悲しみを肯定することです。
日本人はとりわけ自己表現が苦手といわれており、悲しみを感じても人目を気にして抑えこむ傾向があります。
まずは、 「悲しいと感じていることは、自然な感情だ」ということを肯定してあげましょう。
方法②悲嘆を表現させる
悲しみを乗り越えるために、感情を吐き出すことも必要です。
思い出を語ったり、故人に宛てた手紙を書いたりすることも効果的です。
自分の気持ちを表面に出すのが苦手な人は、写真や遺品などを手元に置くと表現しやすくなることあります。
また、 身内や知人に想いをぶつけるのが難しいときは、同じような境遇の人が集まり、思いを語り合う会に参加するのも有効です。
お互いの気持ちが理解しやすく、素直に気持ちを話すことができ、悲しみを乗り越えやすいでしょう。
方法③儀式を利用する
儀式
葬儀やお別れ会といった、故人との別れの儀式も、グリーフケアのひとつに当たります。
ほかにも、故人の遺品整理やお墓への納骨なども儀式になります。
儀式は、故人の死を現実として受け止めることにつながるからです。
儀式を行うときに最も重要なのは、感情を表に出すことです。
感情を押し殺すほど、悲しみを乗り越えることから遠ざかってしまいます。
グリーフケアでは、ケアを必要とする人が、悲しみの気持ちを素直に吐き出せるようにサポートすることが大切です。
また、 納骨や遺品整理も気持ちの整理につながりますが、無理に行ってはいけません。
ケアが必要な人の状態に合わせて、区切りになりそうなタイミングで行いましょう。
方法④専門家や団体に相談する
グリーフケアは家族や友人などの身近な人が行うことが多いです。
しかし、 感情を表に出せないまま、強い絶望感や不安感に襲われているのであれば、専門家や団体に相談する方法も有効です。
専門家が在籍する機関でカウンセリングを行っていることもありますし、中には電話やテレビカウンセリングを行っていることもあります。
専門家のカウンセリングは、利用する機関によって費用にはばらつきがありますが、面談時間に応じて60~90分で10,000~20,000円程度です。
グリーフケアの具体例
お墓
では、具体例を3つ見ていきましょう。
葬儀
お墓
故人について語り合う
例①葬儀
葬儀
ひとつめは、葬儀といった儀式です。
お通夜や葬儀など、故人とのお別れの儀式を行うことは、それ自体がグリーフケアです。
こうした儀式を通して、亡くなったということを現実として受け止めます。
大切なのは素直に感情を吐き出すことです。
周囲の視線を気にして感情を押し殺してしまうことは良くありません。
素直に自分の感情を吐き出せるよう、サポートしてあげましょう。
葬儀に関しては以下をご覧ください。
【図解】葬儀・葬式のマナーまとめ!香典や服装、お悔やみを宗教別に解説
第三人生編集部
例②お墓
墓
ふたつめは、お墓です。
お墓への納骨もグリーフケアには有効です。
納骨すると、故人が離れた場所に行ってしまうような気がして、決心がつかない方もいるでしょう。
しかし、 お墓へ納骨することは、思いに区切りつけるきっかけとなり、新たな第一歩に進めるでしょう。
ご本人がつらい中、無理に納骨をするのではなく、納骨後にお墓参りをすることが故人を身近に感じ、自分の支えになると伝えることが大切です。
納骨に関しては以下をご覧ください。
納骨の仕方!準備や費用、納骨式の流れと仏教以外の納骨も解説
第三人生編集部
例③故人について語り合う
みっつめは、故人について語り合うことです。
大切な人を失ったとき、その死を受け入れる行程において、「あの時こうしていれば…」という後悔や、「どうして突然いなくなってしまったの?」という怒りなど、悲しみ以外にも様々な感情が複雑に入り乱れます。
こうした思いを外へ吐き出すとことも、グリーフケアに効果があります。
身近な人へ自分の思いを吐き出すことに対して、戸惑いを感じる方もいます。
そうした方は、 地域や病院などで開催される家族や遺族の会へ参加すると良いでしょう。
同じような境遇同士でお互いの気持ちがわかるからこそ、思いを素直に吐き出すことができ、それが悲しみを乗り越える第一歩となります。
グリーフケアに関する資格
浄土真宗墓
グリーフケアに関する資格は公的資格ではありません。
日本グリーフケア協会、グリーフ・カウンセリング・センター(GCC)、日本電話カウンセリング協会など、各協会や民間スクールなどで養成講座が開催され、それぞれが資格認定を行っています。
認定資格を持つ人からグリーフケアを受けた方が、より専門的なため立ち直る可能性は高くなるといえます。
ここでは、グリーフケア・アドバイザーとグリーフ・カウンセラーについてみていきましょう。
グリーフケア・アドバイザー
グリーフ・カウンセラー
資格①グリーフケア・アドバイザー
一般社団法人である日本グリーフケア協会が認定している民間資格がグリーフケア・アドバイザー。
グリーフケアに関しての知識とアプローチ方を習得したスペシャリストです。
グリーフケア・アドバイザーには、2級・1級・特級の3種類があります。
各級で段階的に死別による悲嘆の反応とその悲しみを緩和する方法を学びます。
グループワークなどを通して実践法を学びます。
資格②グリーフ・カウンセラー
グリーフ・カウンセラーの資格は、グリーフ・カウンセリング・センター(GCC)で取得できます。
GCCのグリーフ・カウンセラーの資格講座では、死別による喪失とグリーフについて系統的に学習していきます。
基礎編、上級編、トレーニング・コースの全過程修了者に、グリーフ・カウンセラーの資格が与えられます。
専門家にグリーフケアを依頼できる?
墓
大切な人を亡くした方のなかには、深い悲しみのため心身に不調をきたすこともあります。
食事量が一時的に落ちたり、ずっと泣いていたりという状態は、比較的多くの方に見られます。
しかし、負の感情を表に出せずに、絶望感や不安に襲われている方。
また、そういった状態にあると周囲の人が危惧したときは、専門的なグリーフケアを受けましょう。
人によって悲しみを受け入れられる期間は異なります。
大切な人の死を乗り越えられない自身に対して悲観的になっている方は、専門的なグリーフケアを受けましょう。
また、専門家によるグリーフケアカウンセリングの費用相場には、日本でのグリーフケアがまだ確立されていないために、かなりばらつきがあります。
金額に関係なくカウンセラーの質にも差があるようですので、専門家を訪ねる場合は、十分に比較検討してから申し込みましょう。
【コラム】海外のグリーフケア
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グリーフケアという言葉は元々アメリカ・イギリス・ドイツ・オーストラリアなどで使われはじめました。
海外では、病院やNPO団体などで積極的に遺族の心のケアに取り組んでいます。
海外では患者が亡くなってからも、定期的に遺族に病院を訪問してもらい、その後の状況を確認するところもあります。
配偶者に先立たれて孤立している人など、立ち直れずに体調を崩し、自暴自棄になり、最悪の場合は自殺してしまう可能性があるからです。
ほかにも、オーストラリアでは、身内を亡くした子どもたちのために「グリーフケアキャンプ」が開催されることもあります。
このようなキャンプは、日本でも各地で開催されるようになってきています。
グリーフケアを知り、悲しみから立ち直っていきましょう
人はみな、いつか亡くなります。
最愛の人が突然目の前から居なくなってしまったときでも、遺された人は生きていかなくてはなりません。
もし、深い悲しみに包まれてしまったとしても、 周囲の人々に支えられながら、失った悲しみを乗り越えて、自分の生きる意味を見つめて前を向いて生きていければ、故人も安心して見守っていてくれるでしょう。
日本では今後さらに高齢化社会が進み、多くの方が大切な人との死に直面することでしょう。
そのため、今よりも大きくグリーフケアが広がっていくことが期待されます。