行年とは
葬儀会場
行年(ぎょうねん)は、簡単に言うと 「人が息を引き取った時に何歳だったか」 を表します。
あるいは、「冥界(あの世)に旅立った年」です。
具体的な概念としては
人間界(現世)に生まれ、いくつまで修行をしたのか
を意味します。
そもそも 行 には、時の流れという意味があり、この観点からでは「現世に生まれ落ちてから生きた年数」といえるのです。
さらに、仏教では行年における「人間界」を、「俗世間」ととらえています。
「俗世間」は、仏教用語では 娑婆(しゃば) と言うんです。
娑婆は、仏教における天国=極楽浄土と対立する世界のこと。
天国の反対の世界、となると地獄が思い浮かびませんか?
娑婆はまさにその 地獄 のことを指しているのです。
人間が生きる世界(現世)はストレスがいっぱいで、みんなが何かしら苦悩しています。
この考えから、 苦しい世界で人間は生きる=修行を積むこと へと結びついたのです。
行年は、その試練の世界での「修行期間」を表しています。
行年の年齢表記の仕方は、享年と同じ= 数え年 です。
ただし年齢を計算する時は、 満年齢の考え方 を用います。
行年と享年の違い
違い
享年
行年と享年における年齢の書き方
行年と享年の違いを理解するコツ
享年
享年(きょうねん)は、 現世に生まれて人として生きていた年数 のことをいいます。
行年との違いを比べると、単純に「どれだけの年月生きたか」を意味するのです。
「享」には 神様から命をたまわった(受け取った) という意味があります。
それを人として生きた年数(数え年)と考えているのです。
享年では、 その人が息を引き取った「当時」の年齢 を表します。
享年は数え年を用いるので、生まれた時の年齢を「1歳」としているんです。
従来の日本のお墓事情では、年齢表記の方法は享年がふつうでした。
長生きすることは縁起がよいのはもちろん、長寿を祝う習慣も多くあったため。
1歳加算する享年の考え方が好まれたのです。
行年と享年における年齢の書き方
行年は「この世で修業した年数」で、わかりやすく言うと「生きた年」です。
よって満年齢の方法で 「行年○○歳」 と書き記します。
享年は、この世に生を受けてから永眠するまでの年数=「生きた年月」です。
年数を書く時は 「享年××」 となります。
行年と享年の違いを理解するコツ
上記の概念をふまえて、行年と享年二者の違いを明確にするコツをご紹介。
行年→ 「あの世」サイドから見た年齢の数え方
享年→ 「この世」サイドみた年数の数え方
けれど近年は、享年であっても数え方に満年齢の考え方をベースにする場合が多いのです。
昔は違っていたとしても、現代は満年齢のほうが浸透しているためだと考えられます。
こうした事情から、享年(数え年)と行年(満年齢)両者の境は曖昧です。
お互いの違いがあまり目立たなくなっています。
享年に関しては、こちらも参考にしてください。
享年とは?意味は?数え方や行年、没年との違い・使い分けも解説
第三人生編集部
行年と没年齢の違い
疑問
行年も没年齢も、年齢を書き記す時に「○○歳」と歳をつけます。
共通した表記方法なのでややこしく思えるんですね。
カギは、没年齢について正しい知識を得ておくことです。
没年齢とは
没年齢または没年は、 人が「他界した年」 をいいます。
没年齢での年数の概念は、2通りあるのです。
息を引き取った「年齢」
「年次」 (西暦または元号○○年)
よく聞いたり目にしたりする「没年月日」は、亡くなった人が何年何月かに他界したのかをいいます。
これらが不明だと、「生没年不詳」と表記されるわけです。
他界した年を記す時は、 「没年△△歳」 。
行年と同様、「歳」が必要です。
行年に関するQ&A集
O, 位牌に記すのは行年?享年?
Q, 喪中はがきに記すのは行年?享年?
Q,位牌に記すのは行年?享年?
結論として、 どちらでないといけないということはありません 。
一昔前は、享年の数え年が主流でした。
現在は、行年で年齢を示しても、問題ないとされています。
なぜ明確な境界線がないかというと、以下のような背景があるのです。
遺族や参拝しに来た人が位牌を見た時、 「何歳で亡くなったか」(何年生きたか)が一目でわかるほうが望ましい ため。 行年および満年齢を選ぶ人もいる。
昔のしきたりに100%従うことが減ったため。享年より行年で年齢を記す人が増加傾向にある
また、享年と行年の使い分けは、かつて納骨場所によってかなりはっきりしていました。
享年であれば、お寺の墓地で使用される傾向が高く、行年は霊園の墓で記されていたのです。
これもここ数年の間に変わってきています。
宗派は関係しますが、お寺の墓であっても満年齢(行年)表記が増加しているのです。
Q,喪中はがきに記すのは行年?享年?
喪中はがきも、先述の質問と同様、厳密な決まりはありません。
ですから、**行年(満年齢)で書いても、享年(数え年)であっても大丈夫です。
しかし、ケースによって「どちらにすべきか明示してもらわないと困る!」という声もあるでしょう。
そうした場合、実際には自分で判断するより、外部の情報に頼っていることが多くみられます。
先祖から代々位牌に享年を使ってきた場合は、 一人だけ満年齢だとまとまりがないという事情 があるのです。
ほかには、印刷店に喪中はがきのプリントを依頼する時、企業の資料を見るとこんなことが書いてあります。
喪中はがきの年齢は数え年(享年)で印刷します
印刷店が何かのルールに従って明記したというより、単に馴染んでいるから享年を選んでいるのでしょう。
そのため、新しい「行年による表記」を推奨するより、世間一般に通用した 享年を選んだほうが業務上支障がなくなります 。
また、喪中はがき作成者が若い人の場合。
享年(数え年)の概念をそもそも知らなくて、馴染みのある満年齢を選ぶことが圧倒的に多いのです。
ですから、先祖や先人のやり方を守りたいという方は享年を。
年齢表記にこだわりはないという方は、行年をおすすめします。
【コラム】数え年や満年齢の数え方は?
方法
知っておくと便利な知識として、数え年や満年齢の数え方を解説します。
数え年の数え方
数え年は、以下のようなポイントから成っています。
誕生した時点で1歳と数える
年が明けて、元日(1月1日)に歳が上がる
例をあげて考えてみます。
1993年8月8日生まれの人は、その時点で1歳です。
それが1994年1月1日になると、2歳になります。
2019年に繰り下がると、現在27歳で、2020年が到来すると28歳という計算です。
数え年による年齢の算出は、ちょっと頭がこんがらがるかもしれません。
そういった人のために、よい計算のコツをご紹介します。
誕生日を迎える前の年齢は、1月1日から誕生日前までの年齢に2歳加算する
誕生日を迎えた日から大晦日(12月31日)までの間は、誕生日以降の年齢に1歳加算する
満年齢の数え方
満年齢は、ご存じのとおり 生まれた日から0歳を基準に年齢を数え ます。
それから1年後の誕生日が来るたび、1歳、2歳、3歳……と年を重ねていくのです。
履歴書などでは、「満○○歳」と表記してあるのを見ますね。
ふつうの日常生活を送る分なら、満年齢は「誕生日を経て年を取っていく」と解釈して大丈夫です。
ですが、実は満年齢については法による規定があります。
法律では、あなたが 生まれた日は1年間のうちの「初日」=「1日目」にあたる のです。
年齢が上がるのは、 1年間の最終日(365日目) 、つまり誕生日の前日になります。
ちょっとややこしいですよね。
この概念を理解するのに役立つのが、「4月1日生まれの人」の例です。
よく4月1日生まれの人は、「子どもの頃は誕生日が一番遅いのが嫌だった」と言います。
これは、上記の法概念にのっとると 4月1日より1日前=3月31日に歳を重ねる のです。
3月31日は、世間では学期末。
学生であれば1年生ではなく、2年生の級に入ります。
この考え方から、4月1日生まれは「1年で一番遅生まれ」。
4月2日生まれが「早生まれ」と言われるのです。
行年の年齢表記は満年齢で歳をつける
行年の年齢の数え方は、享年の数え年と同じです。
けれど、位牌などに彫刻するとなると、 満年齢で「行年○○歳」 と記します。
享年と没年との違いは、
前者2つは 「どれだけの年数生きたか」「何歳で亡くなったか」
行者は 「何歳で亡くなるまで修行をしたか」
です。
現在では位牌や喪中はがきの年齢表記は、行年が享年に取って代わっています。
どちらを取っても問題ありませんから、ご自身の意図に合わせて使うようにしてください。
ご参考になれば幸いです。