「社葬」について、どんな葬儀のことを指すのか、一般葬や家族葬との違いは何なのか、お悩みの方はいるのではないでしょうか。
社葬とは、創業者や企業のトップが亡くなった際に、企業が主体となって執り行う葬儀のことです。
この記事では、社葬の意味や開催の目的、事前準備から当日の流れなどを解説します。
そのほか、服装や持ち物についてもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
社葬とは
社葬とは、創業者や企業のトップが亡くなった際に企業が主体となって執り行う葬儀のことです。一般葬や家族葬に比べて大規模な葬儀となる場合が多く、事前準備に時間を必要とします。
そのため、親族やごく親しい友人のみで密葬を行い、その1〜2ヵ月後に本葬儀を行うことが一般的です。また、葬儀にかかる費用は、原則として会社が負担します。
社葬を行う目的
以下の表は、社葬を行う主な目的についてまとめたものです。
目的 |
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故人の死を悼む
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社葬の一番の目的は、故人の死を悼み、その意思を継承すること。 |
広報活動
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企業の重要人物が亡くなれば、業績に影響する可能性も考えられる。ぐらついた地盤を再び固めるためにも、企業力が安定していることを社内外にアピールしなければならない。 |
会社全体の結束力を高める
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企業の重要人物である故人を悼み、敬うことで今まで以上に「会社の発展に貢献しよう」という気持ちが社員それぞれに生まれる可能性がある。後継者は、故人の志と事業を継承する意思が高まる場にもなる。 |
社葬は、一番の目的である故人の死を悼むほか、広報活動や今まで以上に企業の結束力を高める点でも執り行う意味のあるものです。
社葬で弔われる方
・ 創業者や企業のトップ
・ 殉職者
・ 目覚ましい功績を残した社員
創業者や企業のトップ
多くの企業では、企業の創業者・会長・社長・副社長・専務・常務などのトップ層が亡くなった場合に社葬が執り行われます。
また、現在は役職から離れていても、以前このような立場にいた人が亡くなった場合に社葬が執り行われることがあります。
殉職者
業務中の事故などで殉職者が出た場合、役員会の決定のもと、社葬が執り行われます。
目覚しい功績を残した社員
一般社員の中でも、目覚しい功績をあげて著しく企業に貢献した方が亡くなった場合にも、社葬が執り行われることがあります。
施主と喪主
社葬では、一般葬と違って、施主は企業で喪主が親族の代表者となります。
一般葬や家族葬の場合、施主と喪主は主に親族の代表者となるため、大きな違いといえるでしょう。
施主
施主は、「お布施をする主」という名の通り、葬儀の費用を担う人を指します。
喪主
喪主は、葬儀を仕切ったりまとめたりして、参列者や僧侶の対応を行う遺族の代表者のことです。主に故人の配偶者・両親・子供・兄弟姉妹などの家族が務めます。
参列者と社員の参列について
社葬では、一般葬と比較して参列者などにも違いが生じます。
参列者・社員の参列がどういったものか詳しく解説します。
参列者
社葬には、参列者としてどこまでの範囲を呼べば良いのかお悩みではないでしょうか。結論、取引の大小に関わらず、全ての関係者が参列の対象です。
・企業関係者
・取引先の担当者
・部長以上の社員
・故人の友人
・親族
上記のようにさまざまな方が社葬で参列します。
社員の参列
社葬は業務時間内に執り行われる可能性が高いため、多くの場合、一般社員は参列せず、部長以上の役職者が参列します。
弔電を送る場合の注意点
個人葬で弔電を送る場合の宛先は、喪主である親族の代表者となります。
一方で社葬の場合、弔電の宛先は施主である企業の葬儀委員長など、その社葬の責任者です。
弔電を送る際、宛先には十分に注意しましょう。
社葬の種類
社葬といっても種類はさまざまです。以下の表は、社葬の種類をまとめたものです。
種類
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社葬
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お別れの会
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合同葬
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概要
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亡くなった企業のトップの貢献を社内外に示して称え、ご遺族に対しても弔意を示したい場合に選ばれる方法
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おもてなしの会食を中心とし、故人や会社の以降を尊重した自由な形式としたい場合に選ばれる方法
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会社と遺族の両方が費用を負担してお通夜から葬儀・告別式、火葬までの全てを一度に執り行う方法
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参列者の規模
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数百人~何千人
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数百人~何千人
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数百人~何千人
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葬儀の費用
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企業が担う
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企業が担う
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企業と遺族で担う
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社葬とお別れの会は、先に密葬を行い、その1〜2ヶ月後に本葬儀が執り行われます。一方で合同葬は、一般葬や家族葬と同様に、逝去から5日〜1週間程度で全てを執り行います。
それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
厳粛な雰囲気で執り行われる社葬
社葬は、亡くなった企業のトップの貢献を社内外に示して称え、ご遺族に対しても弔意を示したい場合に選ばれる方法です。
現社長の顔が広く、各業界との繋がりを大切にし、新体制を広く知らしめたい場合にも、社葬が執り行われます。
葬儀にかかる費用は企業が担います。参列者は数百人〜何千人規模になる場合もあり、会場は主にお寺やセレモニーホールなどです。
お別れの会や合同葬と比べ、厳粛な雰囲気で執り行われるのが特徴です。
自由度の高いお別れ会
お別れ会と社葬の大きく異なる点は、無宗教形式で自由度が高い点です。
おもてなしの会食を中心とし、故人や会社の以降を尊重した自由な形式がお別れの会となります。また、故人の功績や思い出を映像や展示物で伝えることも可能です。
社葬と同様、葬儀にかかる費用は企業が担います。参列人数は何百人〜何千人規模になる場合もあり、会場にはセレモニーホール・ホテル・レストランなどが選ばれます。
合同葬
合同葬は、会社と遺族の両方が費用を負担してお通夜から葬儀・告別式、火葬までの全てを一度に執り行う方法です。
一般的な社葬・お別れの会は、密葬と社葬の2回に分かれますが、合同葬は1度で完了します。
執り行う時期は、逝去から5日〜1週間以内が目安です。企業と遺族にとっては準備期間が短く、迅速な準備と対応が必要となります。
一方で、1度に全て執り行われるため、遺族にとっては精神的・体力的な負担が少ない点がメリットです。
また、企業と遺族で葬儀費用を負担するため、両者にとって経済的なメリットもあります。ただし、参列者の拘束時間は長くなるため注意しましょう。
社葬の流れ
ここまで、社葬について概要などを解説しました。社葬には綿密な準備が必要になることをお分かり頂いた上で、どう進めていけば良いか気になる方もいるのではないでしょうか。
社葬の主な流れは、以下の通りです。
1. 病院からご自宅までのご遺族対応
2. 社内通知
3. ご遺族と密葬の打ち合わせ
4. 密葬を執り行う
5. 1~2ヵ月後、社葬を執り行う
まず、訃報を受けた担当者が直ちにご遺族のもとへ向かいます。
社葬を執り行う場合は、ご遺族の意思に基づいて了承を得ましょう。その後、社葬全体のスケジュールを決めて、社内外の関係者へ連絡・通知します。
合同葬を除いて、基本的には密葬と社葬に分けて執り行います。密葬(親族やごく親しい友人のみで行う小規模な葬儀)は、ご遺族が主体となって執り行うものです。
必要に応じて密葬をスムーズに進められるようサポートしましょう。
基本的に社葬を執り行うのは密葬の後なので、1〜2ヶ月間の準備期間が設けられます。準備が完了した後は、社葬を実施するという流れです。
社葬で必要な事前準備
・ 社葬の準備
・ 葬儀委員会の選定
・ 渉外担当者の選定
・ 会場担当
それぞれの内容について詳しく解説します。
社葬の準備
社葬に向けた準備としてまず必要なのは、葬儀社の決定です。葬儀社によって得意分野が異なるため、執り行いたい社葬の雰囲気や会場、規模に合わせて慎重に選びましょう。
中には、社葬取り扱い規定の作成やご案内状の準備まで、全てをプランニングしてくれる葬儀社もあります。
葬儀社が決定した後は、社葬取扱規程を作成します。
社葬取扱規程に明記するのは、以下の内容です。
・社葬となる対象者の基準
・費用負担の基準
・葬儀委員選定の基準
など
日々の業務が忙しい中で、スムーズに事前準備を行えるようにすることが大切です。
葬儀委員会の選定
基本的な枠組みが決まったら、葬儀委員会のメンバーを決定します。葬儀委員会は、葬儀委員会と葬儀実行委員会に分けて考えると良いでしょう。
適任の方法の例として以下の表を参考にしてください。
担当 |
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葬儀委員長
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社葬の最終責任者。故人が社長以外の場合は社長、故人が社長ご本人の場合は会長・副会長・専務などが担う。また、故人とごく親しい友人や社会的地位のある外部の人が務める場合もある
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葬儀副委員長
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葬儀委員長の候補が複数いる場合、無理に一人に絞るとトラブルにつながる恐れがある。その場合に葬儀副委員長を設ける
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葬儀実行委員長
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葬儀全体の中心人物となって葬儀を実行する。人選によって社葬の成否が分かれるため、実務に強い、総務部長・次長・部長クラスの人が適任。
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葬儀実行副委員長
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葬儀副委員長同様、葬儀実行委員長の候補が複数人いる場合に設ける
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葬儀委員
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基本的に役員全員が務める
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渉外担当者の選定
葬儀委員会以外にも、社葬では各担当者の選定が必要です。社葬をスムーズに執り行うためにも、慎重に人選を行いましょう。以下の表は、各担当者についてまとめたものです。
担当 |
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親族係
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喪主となる親族の代表者と実務的な話し合いを行う
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文書係
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社葬の通知や挨拶状・広告の手配、弔電の管理や弔辞の作成を行う
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受付係
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当日に来賓を出迎えて、芳名長の記帳を促したり、供花や香典の受け取りを行う
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会場担当
渉外担当以外にも、社葬当日の運営を補佐する会場担当者を設けることで、よりスムーズに執り行いやすくなります。以下の表は、主な会場担当者をまとめたものです。
担当 |
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式場係
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会場の下見から座席の決定、駐車場や控室の手配を行う。
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車両係
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来賓や関係者の送迎を行う。
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通信係
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無線を利用して全係との連絡を担当し、葬儀を円滑に進める。
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接待係
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来賓やご遺族のおもてなし、控室でのお茶出しや救護などを担当する
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社葬での服装
社葬のご案内状を受け取ったら、どのような服装で参列するべきか迷うこともあるでしょう。
ご案内状には「平服」と記載される場合もありますが、私服で良いというわけではありません。
「平服」と記載されている場合でも、黒・濃紺色・ダークグレーなどの暗い色のスーツやワンピースを選びましょう。
男女別に服装のポイントを詳しく解説します。
男性の服装
黒または濃紺色の上下セットのスーツに、白いYシャツ、黒のネクタイを着用します。ネクタイピンは光物のため、外しておきましょう。
また、清潔感のある短めの髪型にし、明るいヘアカラーの場合は黒に染め直してから参列してください。靴や靴下も黒で統一しましょう。
女性の服装
黒または濃紺色のスーツ、もしくはワンピースを着用します。裾は長めのもの、スカートは膝下丈がおすすめです。
長い髪の毛はシンプルに下の方でまとめ、メイクは薄めを心がけてください。アクセサリーは結婚指輪以外はつけないことが基本ですが、真珠などの1連のネックレスのみなら大丈夫とされています。
また、靴やバッグも黒で統一しておくと良いでしょう。
平服に関しては、下記の記事でもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
社葬での挨拶
葬儀委員長に選ばれた際、社葬での挨拶はどのように行えばよいのか迷う人もいるでしょう。葬儀委員長の挨拶文について、例を以下に記載しましたので参考にしてください。
▼例文
葬儀委員長を拝命しております、株式会社○○ 代表取締役の○○でございます。
会社を代表し、一言ご挨拶を申し述べさせていただきます。
おかげ様をもちまして、株式会社○○ 会長 故 ○○殿の社葬葬儀、ならびに告別式は、滞りなく終了いたしました。
ご遺族に代わり、ご会葬の皆様に心より御礼申し上げます。
○○会長はとても温和で誠実なお人柄でございました。
素晴らしい決断力で我々社員を常に率いてくれた、かけがえのない存在です。
そのブレのない強さと志に、我々社員だけではなく、ここにいらっしゃる多くの皆様も魅了されたことと思います。
それだけに、私たち社員は、大きな衝撃を受けております。
ですが、この悲しみを乗り越え、○○会長の志を受け継ぎ業務を全うすること。
これが私たち社員にできる唯一の道だと思っております。
ご参列の皆様、本日はご多忙にも関わらずご参列をいただき、誠にありがとうございました。
社葬に参列する際の持ち物
もし、参列者として社葬に参列する場合、持ち物は主に以下の通りです。
1. 数珠
2. 香典袋(不祝儀袋)・袱紗
3. 名刺
1. 数珠
社葬が仏式の場合は、数珠を必ず持参しましょう。ホテルやレストランで開催されるお別れの会では不要ですが、何かあった時のために持参しておくと安心です。
2. 香典袋(不祝儀袋)・袱紗
参列する社葬で香典を受け付けている場合、必ず香典を持参しましょう。香典袋に現金を入れ、袱紗に入れて持ち歩くのが一般的です。
香典袋に関しては、下記の記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。
3. 名刺
社葬の場合には、名刺も忘れずに持参しましょう。代理として参列する場合には、自分の名刺と、参列できない代表者の名刺2枚を持参します。
名刺を持参する際の注意点
名刺の右肩に「弔」(代理の場合「代」)の文字を黒のボールペンで書くことが礼儀です。代理の場合、参列できない代表者の名刺には、右肩に「弔」と書きます。
社葬に関してよくある質問
ここからは、社葬に関してよくある質問をご紹介します。
社葬と一般葬の違いは何ですか?
一般葬は喪主と施主を遺族が兼任するのが一般的ですが、社葬の場合は遺族が喪主、会社が施主として葬儀を執り行います。
参列者の規模や役割などが大きな違いといえるでしょう。
一般人は社葬に参列できますか?
一般の方も個人葬と同様に参列可能です。故人が会社の社長や役員の場合「社葬」という形態で執り行われるということなので、参列者の条件などは特にありません。
ただし、社葬とは別に執り行われる密葬は、故人の親族やごく親しい友人のみで実施されます。
社葬のお布施の相場はいくらですか?
社葬では、香典を辞退するケースがあります。辞退された場合、香典を包む必要はありません。
一方で、辞退の案内がない場合は香典を用意します。
社葬の香典の相場は30,000〜50,000円ですが、具体的な金額は相手との関係性で異なります。
社葬は殉職した社員にも行うのですか?
殉職した社員も社葬の対象です。殉職した社員に対して功績を称え、社葬で弔うこともあります。
まとめ
社葬の執り行いは、人生の中で大変貴重な経験になるかと思います。多くの方が参列する大規模な葬儀となるからこそ、故人を悼む気持ちを大切に、後悔のない執り行いをしたいとお考えでしょう。
また、社葬の成否が、今後の業績に影響する可能性もあることでしょう。ご遺族の気持ちに寄り添いながら、入念な下調べと事前準備を行うことで、社葬は滞りなく進められます。
この記事が、これから社葬を執り行う方、参列される方のご参考になれば幸いです。