この記事の結論
檀那寺とは、世間の人からの寄付で成り立つお寺を指す言葉です。檀家から寄付を募り、葬礼を請け負う関係があります。
檀家と檀那寺の歴史は鎌倉時代から明治時代まで続き、現在は希薄になりました。しかし個人としての利用は増えています。
檀那寺とは
檀那寺とは
檀那寺(だんなじ、だんなでら) について、何かの縁で調べたことがありますでしょうか。
菩提寺(ぼだいじ)について調べているときに同時に見つけたり、意味を混合している方も多くいると思われます。
仏教関連の用語はサンスクリット語が元になっているものが多いですが、檀那寺も例外ではありません。
サンスクリット語で檀那(だんな)は「お布施」を意味します。
「お布施」と「寺」が合わさり、 世間の人々から寄付を募ることで成り立つお寺を「檀那寺」と呼ばれいます。
一方で、そのような檀那寺に属して金銭的援助をする家のことを 檀家(だんか) と言います。
こちらも「ダーナパティ」というサンスクリット語から由来してまして、「支援する者」という意味で使われます。
これらは相互の信頼関係によって構築されており、檀家からお布施を受け取ったお礼として、葬礼に関する一通りのことを受け持ってくれます。
現在における檀那寺
以前は、何らかのお寺に在籍することが義務付けられていましたが、 「檀家に所属しない」選択肢も人々は持つことができるようになりました。
つまりは自由度の高い、形式にとらわれないやり方をすることが可能となりました。
しかし、現代においても檀那寺と親密な関係を持つ家庭も少なくはありません。
檀家としてお寺に従事する場合、規約の範囲内ではありませんが、暗黙の了解のようなものが存在します。
葬礼のような行事を全て、 家庭が加入している檀那寺に任さなければいけない、そのお礼としてお布施を支払わなければならないといったルールが言葉にせずとも存在するのです。
江戸時代にこの制度の原型が作られ、今日まで根幹は変わらず残り続けてきました。
しかし、ご想像された方もいるかと思われますが、 檀家に所属しない という選択肢を選ぶ人が非常に多くなり、21世紀になってから多くの寺院が経営不振に陥りました。
日本における深刻な少子化や地域の過疎化が進行した影響は、寺院にも及んでいたのです。
そのような中で、 新たに寺院側が檀家となった人に多くのサービスを提案するようになったり、そもそもの檀家制度を撤廃し、会員限定で新たな層を取り込もうとする動きも見られます。
時代の波にのまれまいと、あらゆる点に工夫を施そうとしている 檀那寺 は、この先も長く人々との信頼関係を築いていくでしょう。
檀家制度とは?メリット・デメリット、問題点や檀家離れも解説
第三人生編集部
檀那寺の歴史
清水寺
いつから存在したのか
檀那寺の歴史は古く、言葉が使用され始めたのは 鎌倉時代 からであるとされています。
実際に葬儀を依頼したお礼にお布施をする、近代のような関係性が生まれたのは 室町時代 からでした。
江戸時代における檀那寺
本格的に檀那寺の利用が始まったのは 江戸時代 からです。
幕府がキリスト教徒を日本にとって有害な宗教であると見なした キリシタン禁制 を実施したことから檀那寺の需要が高まります。
当時、禁制されたキリスト教に所属しているか判断する材料が少なく、新たに制度を発足し、誰がどの宗教に入信しているかを知る必要がありました。
そこで現れたのが 寺請制度 であり、 檀那寺がここに大きく関わっていたのです。
檀那寺に在籍している市民は、邪道な宗教に入っていないことが一目でわかりますし、お寺がこれを証明したからです。
江戸市民はこれをするためには必ず、 いずれかのお寺の檀家になる必要がありました。
寺請制度が実施されて以降、宗教だけではなく戸籍や個人情報までお寺が管理しており、 公共機関のような役割 を檀那寺は担っていました。
明治時代から近年にかけて
檀家と檀那寺という関係は 明治時代 まで続きました。
この時点において、長年の付き合いということもあり 葬儀を超えた関係性 というものが檀家と檀那寺の間で生まれていました。
ですが、現代においては 檀家制度は残っていません。
その理由としては様々ですが、一言で言うならば利用者が激減したからでしょう。
今の日本においては都心の一極集中化が進み、実家から離れて家庭を持つことが一般的なりました。
その関係上、親族を尊重する考えが消え始め、次第に 檀那寺と檀家の関係性も希薄になりました。
このように、利用者は減り続けているように思えますが、 一方で個人として利用することは年々増加しています。
寺院が先祖代々のお墓を管理していたり、近年では散骨を代行してくれるサービスがある、終活についてアドバイスをもらえる等、多くのメリットがあるからです。
少子高齢化でますます葬儀が増えていくご時世ですが、こうした 檀那寺と密接な関係になることで、円滑な葬儀が行うことが期待されています。
檀那寺と菩提寺の差異
違い
似ている点、違う点
檀那寺 と 菩提寺 は類似性を持つ箇所が多く、混同して覚えられている方も中にはいると思います。
この2つの共通点として、 「一つの家庭が世代を超えて、葬儀などを一つのお寺に任せること」 という意味合いで使われていることが挙げられます。
檀那寺と菩提寺の違いは、檀那寺は 自らを「檀家」として、在籍しているお寺に寄付と言った経済的援助をし、最終的には 協力関係**を築くことが目的とされています。
菩提寺はというと、自分が 檀家に所属していなくとも、葬儀を必要とする場合にのみ依頼するお寺のことを指します。
菩提寺に関しては、こちらも参考にしてください。
菩提寺とは?入檀のメリット・デメリット!檀那寺との違いも
第三人生編集部
日本の歴史から読み解く違い
2つの違いを読み解くには、日本の歴史を参考にするとわかりやすいでしょう。
室町時代や江戸時代に、菩提寺は主に 上流貴族によって建てられたお寺 で、檀那寺は 多くの一般市民により建てられたお寺です。
江戸時代の寺請制度により、寺院に所属しなければ自らの安全を確保できない状況下で、市民が一丸となって多くの檀那寺が建てられたのです。
これらのお寺は地域住民との 関係性を重視 していました。
一方で貴族の建てたお寺は、蘇我氏が6世紀末に建てた 「飛鳥寺」 や聖徳太子が建てた 「法隆寺」 など、歴史的に有名なお寺が多いです。
こうした菩提寺は、世間の人々との関係性というより、 一つのシンボルとして、多くの人間と携わることの方が主流となりました。
これら二つの成り立ちを見ると、菩提寺と檀那寺の違いが理解されたかと思います。
檀那寺を変更する場合
洋型墓
墓石を移動させるという考え
檀那寺はこれまでの説明の通り、 檀家となり、過去のご先祖様と同じお墓の中に入るお寺 のことを指します。
しかし、ご家庭の中で長年関係が続いた場合であっても、何らかの事情で変せざるを得ない場合もあるかと思われます。
例えばですが、都心の一極集中化が進む現代において、遠方の地にわざわざお墓参りに行くことが困難になることは無理もないでしょう。
また、檀那寺と関係を持続する場合には多少なりとも 金銭的な負担 も生じますし、そうした不安からもお墓の移動を検討されるケースも増えています。
そのような場合は、親族の方と相談の上で 檀那時を変更することも視野にいれて良いでしょう。
変更する場合に必要な手続き
お墓の移動先を決める
自身が希望するお墓の移動先を検討することから変更の手続きを始めます。
移動先を決めるにあたって、目に見える立地だけで決めるのではなく、様々な箇所に目を配りましょう。
寺院の場所によって宗派を細かく問う場合や値段も上下します。
自分自身の身勝手な判断に寄らず、 なるべく多くの人との話し合いの上で決定するようにしましょう。
墓石をどのように扱うか
長年使用されていた墓石をどうするかも検討しなければいけません。
墓石をそのまま移すことができたら楽なように思えますが、運送の手続きや石材店と連携をするなど、必要な手順は新しく墓石を建てるよりも多いです。
さらに、宗教上の問題もここで発生する場合があります。
無暗に墓石を移動することが、不可能であると言った規制が設けられている宗派もあるのです。
これらを踏まえて、移動することを決める前に必ず、お近くの寺院に相談することを忘れずにしましょう。
墓じまいとは?費用相場や手続きを解説!永代供養・散骨を選ぶ人が多い?
第三人生編集部
檀那寺に連絡する
長年、親密な関係を保ち続けてきた檀那寺に連絡をすることを最後に必ずしましょう。
自分の代で関係が途絶えてしまうとはいえ、今までのご先祖様がお世話になった訳ですから、代表して無礼のないようにお礼を言い残しましょう。
古くから、そして今でも残る檀那寺
今回の記事では檀那寺について解説しました。
現代では様々な理由により、かつてほど、「檀那寺」が利用されていないように思われます。
実際にはそのようなことはなく 、時代に適応して新たな関係を結ぶことに成功しています。
葬儀に関して自由になりすぎた今だからこそ、法事のプロである寺院に所属することで、将来の安心を約束することにも繋がるでしょう。
終活に関する自由度は高まりましたが、もう一度、日本の古くから存在する制度を利用してみるのも良いのではないでしょうか。