認知症の初期には、同じことを何度も話す、約束を忘れる、忘れ物が増えるなどの変化が現れます。また、財布や通帳をなくすことが増えたり、季節に合わない服装をしたりすることもあります。このような変化に気づいたら、まずはかかりつけ医に相談することをお勧めします。
受診の際は、日々の様子や気になる変化をメモにして持参しましょう。かかりつけ医との相談を通じて、必要に応じて認知症専門医を紹介してもらうことができます。
なお、認知症の初期症状についてはこちらでも解説しています。あわせて参考にしてください。
また、お住まいの地域の地域包括支援センターにも早めに相談することをお勧めします。介護保険制度の説明や、地域の医療機関、介護施設についての情報を得ることができます。
専門家からのアドバイスを受けることは、今後の方針を考える上で大きな助けとなります。
認知症と診断されたら、まず介護保険の申請を行いましょう。
市区町村の介護保険窓口で要介護認定の申請を行います。要介護認定の申請方法や認定までの流れについては、こちらの記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
かかりつけ医の選定も重要です。できれば認知症サポート医がいる医療機関を選びましょう。自宅からのアクセスのしやすさや、往診対応の有無なども確認しておくとよいでしょう。
認知症の進行に備えて、財産管理の準備も必要です。成年後見制度の仕組みを活用し、親の財産管理を法的にサポートできるようになります。
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」がありますが、親の判断能力があるうちに「任意後見制度」の契約を結んでおくことをお勧めします。既に判断能力の低下が見られる場合は、「法定後見制度」の利用を検討しましょう。
また、通帳や印鑑、保険証書などの重要書類の保管場所を確認し、定期的な収支の把握も始めましょう。将来の生活費や介護費用についても、概算で把握しておくことが大切です。
住環境の安全確保も重要です。手すりの設置や段差の解消、照明の増設など、転倒予防のための対策を講じましょう。火災やガス漏れの危険に備えて、警報器の設置も検討します。
手すり設置についてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
また、家族だけでなく、近隣住民の協力も得られると心強いです。認知症についての理解を求め、見守りの協力をお願いすることも検討しましょう。
介護保険サービス
介護保険では、在宅でのケアを支援する様々なサービスが利用できます。デイサービスは日中の通所介護で、入浴や食事、レクリエーションなどのサービスを受けることができます。自宅での介護や家事援助が必要な場合は、ホームヘルプサービスを利用できます。
デイサービスについての詳細はこちらをご覧ください。
また、介護者の休養のためにショートステイを利用したり、医療的なケアが必要な場合は訪問看護を利用したりすることも可能です。認知症の症状が進行した場合は、グループホームや特別養護老人ホームなどの施設サービスの利用も検討できます。
経済的支援
認知症の方は、障害者手帳を取得することで各種の割引制度を利用できます。また、介護用品の支給や住宅改修費の補助など、経済的な支援制度も用意されています。
自治体独自の支援制度も多くあります。介護タクシー券の発行や配食サービス、紙おむつの支給など、地域によって様々なサービスが用意されています。
詳しくは、お住まいの自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
認知症の介護では、介護者自身の生活も大切にすることが重要です。仕事との両立を考えながら、無理のない介護計画を立てましょう。介護保険サービスを上手く活用し、家族での分担も検討します。
また、介護者自身の心身の健康を保つことも大切です。定期的な休息を取り、相談できる相手を持つことで、介護の負担を軽減することができます。地域の介護者の集いに参加することで、同じような立場の人々と情報交換することもできます。無理をすると共倒れ状態になり、介護放棄や虐待につながりかねません。
そして、認知症の方とのコミュニケーションでは、否定せずに受け入れる姿勢が大切です。短い文章でゆっくり話しかけ、できるだけ選択肢を示して決めてもらうようにします。日課や生活リズムを整え、できることは自分でしてもらうなど、その人らしい生活を支援することを心がけましょう。
認知症の介護は長期戦となります。本人と家族の生活の質を保つためには、利用できる制度やサービスを積極的に活用することが重要です。一人で抱え込まず、専門家や支援機関に相談しながら、無理のない介護計画を立てていきましょう。
症状や進行状況には個人差があるため、定期的に支援内容を見直し、状況に応じて適切なサービスを組み合わせていくことが大切です。早めの準備と対応が、その後の介護生活を大きく左右します。まずは地域包括支援センターに相談し、具体的な支援の手続きを進めていきましょう。