退職金なしとは?不支給条件・メリット・デメリット・対策をご紹介
退職金はほとんどの会社が支払ってくれるものです。
しかし、まれに退職金制度を採用せず、辞めても退職金がなしとなる会社もあります。
また、退職金制度があっても、辞めた時の状態によってはもらえない可能性もあるのです。
今回は、退職金がなしになる原因と、対策を解説します。
退職金制度とは?
退職金制度とは会社を辞めた従業員に支払われる企業年金等の事です。
従業員が在職中、病気や事故で無くなった場合にも支払われますが、これは遺族が受け取ります。
退職金の金額や支払いの形態は会社ごとに採用している方法が違うので、より多い金額を受け取りたい場合は、その違いを理解しておく必要があります。
退職一時金制度
働いた年数や役職、仕事内容の条件によって金額が設定されており、それに合わせた一定額の退職金が支払われる方法です。
金額は会社の辞め方によって変化します。社内規定をしっかり確認しておきましょう。
企業年金制度
退職金が年金方式で支払われる方法です。こちらも支払いの有無や金額の条件が、会社の規定に沿って決められています。
会社によっては、退職金の受け取り方を選択できる場合があります。多くの場合、確定給付企業年金か、退職一時金の形から選ぶことになります。
退職金共済
会社の規模によっては退職金を用意するのが難しい場合があります。
中小企業退職金制度は、中小企業に勤める人でも退職金を受け取れるよう、国が作った制度です。
独立行政法人勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部が運営しており、中小企業の事業主はこの共済と契約し、毎月掛け金を支払います。
退職する時には、共済から規定の金額がもらえます。
これは一時金でもらえますが、条件を満たせば一部、または全部を年金の形で受け取る事も可能です。
また、この共済に加入している企業間で転職する場合は、前職の掛け金納付月数を通算できます。
退職金なしは違法ではない?
実は、退職金は国が定めている制度ではありません。退職金がなしでも、法律違反にはならないのです。
実際に退職金なしで運営している企業もあります。多くの企業が採用している為、存在しているのが普通に思えてしまう退職金ですが、なしとなる可能性もあります。
退職金がない会社は2割
退職金制度は実に多くの企業が採用しています。50人以上100人未満の小さい会社でも、約87.1%もの企業が退職金制度を導入しているのです。
しかし、数字が100%ではないことからも分かるように、必ず採用されている訳ではありません。2割程の企業は、退職金なしで運営しているのです。
就業規則への記載義務は必要
退職金はなしでも法律違反にはなりません。しかし、制度がある場合は、その旨を就業規則や労働契約書に記載しなくてはなりません。
退職金があるのにしかるべき書類に記載されていない
しかるべき書類に記載されているのに、退職金がなしだった
といった場合は、法律違反になります。退職金は就業規則に記載された時点で給与と同じ扱いになります。
給与を支払わない事は法律違反になりますから、罰せられるという訳です。
制度はあるが退職金を受け取れない事も
制度があっても、辞める時の状態によっては退職金がなしの場合もあります。
退職金がなしの状態で仕事を辞める事態を避けるためにも、支払われないケースを覚えておきましょう。
退職金制度があっても退職金がなしになる?
退職金制度があっても、退職金がなしになる場合があります。よくあるケースをまとめると、以下の様になります。
退職金が支払われる条件を満たしてなかった
懲戒免職や会社に大きな損害を与える様な行為をした
会社が倒産した
雇用形態が派遣社員や契約社員だった
退職トラブルで支払われなかった
退職金は多くの場合、企業が支払う条件を決めています。これを満たさなければ、当然なしになります。
会社やプライベートで問題を起こしたり、会社に大きな損害を与えたりした場合も、退職金がなしになるケースが多いです。
また、退職金を支払う会社が倒産した場合も、なしの可能性があります。
雇用形態が派遣社員や契約社員だった場合、会社の規定等の関係で退職金がなしになる場合があります。
しかし、最近は正社員以外の雇用形態の人達にも退職金を支払うべきだという声が上がっています。
派遣社員や契約社員だから退職金はなし、という風潮は少しずつなくなり始めているようです。
他のケースとは少し違いますが、退職トラブルが原因でなしになる場合もあります。
無理矢理退職したせいで会社に損害が出たので支払わない
理不尽な理由で懲戒免職処分を受けた
ブラック企業等、問題のある企業の場合、この様な一方的な理由で退職金がなしになる場合があります。
この様な行為は違法行為に当たりますので、専門家等の相談して下さい。
勤務年数
会社は退職金を支払う条件を定めている事が多いです。その中でも多いのが、勤続年数に関する決まりです。
退職金の条件の中に勤続年数を盛り込み、それによって金額を決めている場合、条件を満たさないと退職金は発生しません。
働いた期間によって退職金の発生を決める会社はたくさんあります。退職を考える時は、退職金が無しになるかどうかも考えておきましょう。
自己都合による退職だと条件が狭まる
退職金の条件は、年数だけではありません。会社の辞め方も退職金の発生や金額を決める条件となります。
会社都合退職
自己都合退職
この2つの辞め方によって退職金のありなしや、金額が変わってくるのです。
多くの場合、自己都合退職の方が厳しい条件や低めの金額に設定されている傾向にあります。
就業規則の確認が重要
退職金がある場合、就業規則や労働契約書等に退職金に関する内容が必ず記載されています。
退職する前に、これらの書類にある退職金の項目を確認しましょう。
退職金のありなしは、働いた期間や辞め方だけでなく、契約内容も深く関わります。
確認の際は、自分の条件と就業規則の内容を良く見比べるようにして下さい。
その他、退職金制度に関しては以下もご覧ください。
退職金なしのメリット
会社を辞めた後や老後の備えとなる退職金。なしとなると不安に感じる方も多いかと思います。しかし、退職金なしの状態にも、メリットはあるのです。
確定申告の手間が減る
退職金はもらったその年に確定申告をしなくてはなりません。退職金がなしの場合は、当然確定申告の手間がありません。
確定申告は決まった時期に決まった書類を提出しなくてはなりませんが、とても大変です。
領収証等確定申告に必要な書類を用意・保管しなくてはならない
もらった退職金から控除額を計算する必要がある
決められた書類に正しい金額を記入し、自分の住所を管轄する税務署に届ける必要がある
この様に、自分一人で確定申告の提出をやろうとすると、とても大変なのです。税理士等のプロの手を借りる方法もありますが、お金がかかります。
退職金がなしなら、この手間は発生しません。この点はメリットといえます。
退職金にかかる税が発生しない
そもそも、なぜ退職金をもらったら確定申告をしないといけないのでしょうか。
これは、退職金に所得税がかかる為です。
退職金をもらったら、税金を支払わなくてはならないのです。
退職金がなしなら、納税の必要はありませんから、これもメリットといえます。
給料がより高い場合も
退職金制度を採用していない場合、給料にその分を上乗せする形で支払う会社があります。
給料を多めに出して、社員が各自で退職金の準備をする形を取るのです。
退職金がなしである代わりに、給料を元手に自分で辞めた後のお金を準備できます。上手くいけば、退職金の相場を大きく上回るお金を準備する事も可能です。
退職金なし、と聞くと不安に感じてしまいますが、メリットもちゃんと存在しています。
退職金なしのデメリット
退職金なしのメリットがあっても、見逃せないデメリットもあります。就職や転職で退職金なしの会社に入社する場合は、両方に目を向けておく事が大切です。
老後の貯蓄が減少に
退職金は定年まで勤めあげれば、かなりの金額になります。老後の生活資金を支える重要なお金です。
老後を支える退職金がなし、という事は、老後の貯蓄も大幅に減少するという事でもあります。当たり前と言えば当たり前ですが、見逃せないデメリットです。
転職活動を考える必要性
ライフプランの立て方によっては、退職金の様にまとまったお金を老後までに用意しておいた方が良い場合もあります。
この様な場合、退職金なしの会社で働いていると、ライフプランを大幅に変えなくてはなりません。
これを避けるには、退職金がある会社に転職する必要があります。
退職金なしだけど働きやすい、という会社に勤めている人にとっては、これは大きなデメリットです。
退職金がない時の老後の資金対策
退職金なしの会社で働いている場合や、制度は合ってももらえない場合、老後の資金対策をする必要があります。
代表的な対策方法を紹介しますので、参考にして下さい。
老後生活を送るのに必要な金額は?
会社を60歳で定年退職した場合、60歳からは退職金をはじめとした老後の為の貯蓄を使っていく事になります。
実際のデータを見ていきましょう。総務省統計局のデータには、夫が65歳以上、妻が60歳以上の過程の家計収支データがあります。
収入 222,834円 (内203,824円分は社会保障)
消費支出 235,615円
非消費支出 29,092円
収入から総支出を引くと、以下の様になります。
222,834 – (235,615 + 29,029) = 60,883
この計算上、毎月約61,000円の不足が出ている事が分かります。これを補うためには、年金に頼らず、他の形でお金を残さなくてはなりません。
60歳時点の平均余命は大体25~30年ほどですから、この年数に不足分の金額をかければ、不足分の具体的な金額が分かります。実際に計算してみましょう。
61,000 × 12 × 30 = 21,960,000
計算した所、約2,200万円分必要だと分かりました。退職金があっても、この金額に到達していない場合は、その分を別の方法で補う必要があります。
老後の資金対策
では、足りない老後の資金はどうやって集めればいいのでしょうか、代表的な資金対策を紹介します。参考にして下さい。
確定拠出年金
確定拠出型年金は、会社や個人が払った掛け金を元に、外部機関が年金として運用する仕組みです。
もらえる金額は運用実績によって変動しますが、転職の際に積立金を持ち運ぶ事ができます。
転職しても転職前の運用実績を新しい会社に持ち越せるので、退職金の運用期間を延ばす事が可能です。
国民年金基金
国の年金基金は、国民年金に上乗せできる年金です。
会社に勤めていれば厚生年金をもらう事ができますが、自営業等自分でお店を開き、仕事をしている人は厚生年金を利用出来ません。
そこで、国民年金のみの人でも老後資金を準備出来るよう作られたのが、国民年金基金です。
国民年金基金を利用すれば、その分支払う保険料は上がりますが、それに合わせて将来受け取れる年金も大きくなります。
自営業やフリーランスの方が良く利用している老後対策となります。
年金保険の利用
年金は公的な物だけでなく、保険会社の年金保険によっても用意できます。
年金保険は毎月決まった保険料を支払い、保険金を受け取れる年齢になった時に、年金方式で受け取れる保険です。
年金保険は商品によって利率や特典が違うので、自分に合った物を選べます。
また、複数加入も可能なので、収入に合わせて保険を増やして対策する事も可能です。
積み立て可能な預金口座の利用
銀行の口座の中には、預けた分利息が付くタイプもあります。こうした預金口座を利用して、老後資金を貯めるのも良い方法です。
銀行や預金の仕組みによって、利率や預けられる期間が違っていきます。
基本的に、長く、大きな金額を預けた方が利息も大きくつきますので、まとまったお金を用意できる場合にオススメの方法です。
その他、老後資金の貯め方に関しては以下もご覧ください。
退職金がなしの場合は老後資金の対策を
退職金がなしの状態で仕事を止めたり、老後を迎えたりすると、後の生活が困難になりがちです。
退職金のありなしに関係無く、老後資金対策をしっかり行いましょう。
老後資金の対策は色々な方法があります。自分や働いている会社から出る給料に合った方法を賢く選ぶようにして下さい。