京都五山とは
僧侶、坊
京都五山とは 京都にある臨済宗の五大寺のことを言います。
室町時代に足利義満の代に定められました。
中国の宋の五山官寺制度(禅寺の官寺化と中央集権制度)に習い、当初鎌倉に移植されましたが、徐々に形を変え、京都の5つの臨済宗の寺もまた格付けされ、京都五山とされたということです。
京都五山は 別格南禅寺、第一天竜寺、第二相国寺、第三建仁寺、第四東福寺、第五万寿寺 と格付けされています。
京都五山は別格の南禅寺も含め、6つの寺のことを指します。
京都五山のお寺の場所はいずれも京都市内にあるものの、上京区、東山区、左京区に点在しており、一日ですべてを巡ることは難しいです。
京都五山の歴史
お寺の蓮
京都五山はどのようにしてできたのでしょうか。
歴史は中国宋の時代に遡ります。
五山とは中国の制度を移植したもの
五山とは中国の宋の時代に禅宗の寺院の保護や統制を図るために設けられた制度です。
これにより、禅寺は国家の監督を受ける代わりに国から経済的な保障を受けていました。
また、五山制度は統制を取るために寺に格付けをしていました。
日本では鎌倉時代にこの中国の五山の制度を移植し、鎌倉を中心とした寺を格付けし、 「鎌倉五山」 としました。
政治の中心が鎌倉から京都へ
鎌倉時代から室町時代になると、 政治の中心は京都に移りました。
そのため、京都でも同じよう京都の寺に格付けをし、「京都五山」としたのです。
その後も京都五山は幕府による寺院の統制に大きな役割を担いました。
別格:南禅寺(なんぜんじ)
京都の南禅寺と言えば、観光名所としても大変有名で、桜の季節や紅葉の季節には大勢の参拝客で賑わいます。
境内は見所が多く、 石川五右衛門に「絶景かな、絶景かな」と言わしめた山門 はあまりに有名です。
方丈と呼ばれる建物より眺める庭園(方丈庭園)は江戸時代に活躍した小堀遠州の作で、見所の一つです。
6つの石で虎の親子が川を渡っている様子を表している 「虎の子渡し」 も有名です。
寺の開創と歴史
南禅寺がある地には1264年に後嵯峨天皇が建てた離宮の禅林寺殿がありました。
その後、亀山上皇(後嵯峨天皇の皇子)が1289年に出家して法皇になりました。
そして、1291年、禅林寺殿の場所に亀山上皇により、 無関普門禅師 を迎えて南禅寺が開山されました。
南禅寺は京都五山の中でも「別格」の格付けとなります。
開山の僧
開山の僧は 無関普門禅師 です。
当時禅林寺殿(現在の南禅寺の地)にいた亀山上皇とお付きの官人達は、夜な夜な出没する妖怪変化に悩まされていました。
その後、無関普門禅師が弟子とともに禅林寺殿に入り、座禅を組むと、妖怪変化はたちどころに退散したという言い伝えがあります。
情報
基本情報
住所 京都府京都市左京区南禅寺福地町
電話番号 075-771-0365
拝観期間 拝観時間
12月1日~2月28日 8時40分~4時30分
3月1日~11月30日 8時40分~5時
(拝観受付は拝観時間終了の20分前、(年末(12月28日~12月31日)までは拝観できません)
拝観料 一般 高校生 小中学生
方丈庭園 500円 400円 300円
三門 500円 400円 300円
南禅院 300円 250円 150円
京都五山1位:天龍寺(てんりゅうじ)
嵯峨嵐山に位置する京都五山第1位の天龍寺ですが、かつては嵐山や渡月橋、亀山公園までもが境内だったそうです。
天龍寺は桜や紅葉はもちろんのこと、四季折々の表情があります。
また、 達摩図や八方睨みの龍の天井画 などもあります。
こちらの絵を目当てに天龍寺を訪れる人も多いです。
寺の開創と歴史
平安時代初期に壇林寺がありました。
その約400年の後には荒廃していた壇林寺を後嵯峨天皇とその子、亀山天皇が離宮とし、「亀山殿」と称していました。
さらに時は流れその約100年後の1339年、足利尊氏の時代に尊氏は後醍醐天皇の菩提を弔うべく、亀山殿を寺に改め、天龍寺としたのが始まりです。
開山の僧
天龍寺の開山の僧は 夢窓疎石 です。
後醍醐天皇や足利尊氏など当時の国の中心人物よりの信頼が篤く、後醍醐天皇からは「夢窓国師」という国師号を授けられました。
2度の南禅寺の住持を勤め、日本全国多くの寺の開山に携わっています。
天龍寺もその一つです。
情報
基本情報
住所 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
電話番号 075-881-1235
拝観期間 拝観時間
10月21日~3月20日 8時30分~5時
3月21日~10月20日 8時30分~5時30分
拝観料 一般 高校生 小中学生
庭園(曹源池、百花苑) 500円 500円 300円
諸堂(大方丈、書院、多宝殿) 上記に+300円 上記に+300円 上記に+300円
京都五山2位:相国寺(しょうこくじ)
京都五山2位の相国寺は観光名所としてはそんなに有名ではありませんが、 足利義満により建てられ、金閣寺、銀閣寺の総本山である由緒あるお寺です。
相国寺には画僧が多くおり、かの有名な雪舟もその一人でした。
そのため、境内には美術館があるほどです。
相国寺には龍の天井画やふすま絵など思わず息をのむ素晴らしい絵画がそこかしこにあります。
寺の開創と歴史
相国寺は14世紀末に足利義満により創設されます。
相国とは国を助ける、治めるという意味 があり、日本ではこの呼び名は左大臣を意味しています。
このお寺は左大臣である足利義満が創建したため、相国寺と名付けられました。
開山の僧
足利義満は当初禅の師である花屋妙葩に開山を依頼するも固辞され、花屋妙葩の師、 夢窓疎石 が開山するのであれば、花屋妙葩は二代目の住職になると言われたため、夢窓疎石が開山の僧となりました。
情報
基本情報
住所 京都府京都市上京区今出川通烏丸東入る
電話番号 075-231-0301
拝観料 一般 中高校生 小学生
相国寺内 800円 700円 400円
京都五山3位:建仁寺(けんにんじ)
京都五山3位の建仁寺は祇園に近く、周囲は観光客でごった返していますが、境内に入ると周りの喧噪が嘘のような落ち着いた空間です。
お寺の入り口を入るとすぐに、教科書でも登場する 俵屋宗達の「風神雷神図」 があります。
そのまま進んでいくとふすまに美しい水墨画の絵が描かれている部屋などを見て回ることができます。
外に目をやると、白い石が敷き詰められた美しい庭園も心をいやします。
お堂には天井に龍が描かれていて、こちらも圧巻です。
寺の開創と歴史
建仁寺は1202年、源頼家の援助を受けて、京都に建立が難しいと言われた禅寺が開山されました。
建仁寺の名前は当時の元号「建仁」 からつけられています。
開山の僧
開山の僧は 栄西禅師 です。
栄西禅師は二度当時の中国である宋に渡り、日本に臨済宗を広めた僧です。
当時の京都は延暦寺の勢力が強く、とても禅寺を開山するのが難しい状況でした。
しかし、栄西禅師は当時の鎌倉幕府の二代将軍である源頼家の援助を受け、禅寺である臨済宗の建仁寺を開山することができたのです。
情報
基本情報
住所 京都府京都市東山区大和大和通四条下る小松町
電話番号 075-561-6363
拝観期間 拝観時間
年間通して 10時~17時
拝観料 一般 中高校生 小学生
建仁寺内 500円 300円 200円
京都五山4位:東福寺(とうふくじ)
東福寺
京都五山4位の東福寺は京都市の南に位置しています。
紅葉のシーズンには観光客でごった返します。
それほど美しい景観のお寺なのです。
建物のスケールに驚き、周囲の自然に感動できる場所です。
3つの橋(臥雲橋、通天橋、偃月橋)からの景観は美しく、思わずカメラを向けずにはいられません。
特に秋の 通天橋 からは高い場所から紅葉を眺めることができ、その美しい景観に多くの観光客が訪れます。
寺の開創と歴史
鎌倉時代の摂政であった九條道家が九条家の菩提を弔うために創建しました。
奈良の東大寺と興福寺から一文字ずつ取って「東福寺」と名付けられました。
開山の僧
聖一国師 が開山の僧です。
臨済宗の布教に尽力をした僧です。
その名声から九條道家に迎え入れられ、東福寺の開山に尽力しました。
宗派にとらわれることなく、禅の道を説いており、東大寺勧進職につくなどの活躍をしました。
情報
基本情報
住所 京都府京都市東山区本町15-778
電話番号 075-561-0087
拝観期間 拝観時間
4月~10月末まで 9時~16時
11月~12月第一日曜日まで 8時半~16時
12月第一日曜日の翌日~3月末まで 9時~15時半
拝観料 一般 高校生 中小学生
通天橋、開山堂 400円 400円 300円
東福寺本坊庭園 400円 400円 300円
京都五山5位:万寿寺(まんじゅじ)
京都五山5位の万寿寺は 京都五山の中で唯一一般公開していません。
明治19年よりお寺としての立ち位置は東福寺の塔頭です。
塔頭とは禅宗の高僧のお墓を祀るために設けられた小寺院のことです。
万寿寺はかつてはかなりの規模のお寺であったが、1434年の火災より衰退しました。
寺の開創と歴史
元は白河上皇が建てた六条御堂が始まりです。
その後、1258年に改称し、万寿寺となりました。
万寿寺はかつては大きな寺であったが、 1434年の火災により衰退し、規模が縮小していきました。
開山の僧
開山の僧は東福寺の聖一国師に帰依していた 十地覚空とその弟子の東山湛照 です。
情報
基本情報
住所 京都府京都市東山区本町15-786
電話番号 075-561-1341
拝観期間 拝観時間
年間通して 非公開
京都五山の覚え方・語呂合わせ
チェック
京都五山は合計6つの寺がありますので、別格の南禅寺をのぞき、第1から順番に覚えるのも大変です。
ここでは、覚えやすい語呂合わせを3つご紹介します。
天から愛する国を建てに東へ行ったがなぜかまんじゅうを食べた
((天龍寺)から愛する国(相国寺)を建て(建仁寺)に東(東福寺)に行ったがなぜかまんじゅう(万寿寺)を食べた
天竜さんは壮行会で役を兼任し、豆腐とまんじゅうを食べた(天竜さん(天龍寺)は壮行会(相国寺)で役を兼任(建仁寺)し、豆腐(東福寺)とまんじゅう(万寿寺)を食べた)
天国で建てた福を呼ぶ卍(天(天龍寺)国(相国寺)で建てた(建仁寺)福(東福寺)を呼ぶ卍(万寿寺))
京都五山と京都送り火は別物
送り火
京都五山と京都五山送り火は全く別物です。
京都五山送り火は 毎年8月16日に京都にある5つの山に文字や形を火によって浮かび上がり、精霊送りをする京都独自の風習です。
京都五山送り火は東から「大」「妙法」「船型」「大」「鳥居型」が現れます。
【コラム】京都で京都五山以外で人気なお寺3選!
ここまで京都五山のお寺についてご説明しましたが、ご存じの通り、京都には他にも有名な神社、仏閣が数多くあります。
その一部をご紹介します。
清水寺
清水寺
京都五山ではありませんが、清水寺は京都の観光地としてはあまりに有名なお寺です。
お土産物屋さんの並ぶ少し急な中を上った先にお寺があります。
清水寺と言えば 「清水の舞台」 を思い浮かべる方も多いですが、それ以外にも見所はおおく、六根清浄、所願成就などに御利益のある 音羽の滝 などもあります。
伏見稲荷神社
千本鳥居でも有名な伏見稲荷大社は 全国のお稲荷さんの総本山です。
主祭神は宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)で、 商売繁盛、家内安全、交通安全、芸能上達の御利益 があるとされています。
社殿の裏の稲荷山は山全体が神域となっています。
稲荷山は標高233メートルで、かなり広いですし、アップダウンもあります。
稲荷山を巡る予定の方は、運動できる服装と靴で参拝した方がいいでしょう。
鹿苑寺(金閣寺)
こちらも京都五山ではありませんが、足利義満が創設しました。
金閣寺の総本山は京都五山の第二位相国寺になります。
金閣寺として有名ですが、 「鹿苑寺(ろくおんでら)」 が正式名称です。
お寺が金箔で覆われているその荘厳なたたずまいは誰でも知っていることと思います。
事前に建物の景観を知っていても、実物のお寺を目の前にすると、思わず感嘆のため息が漏れます。
京都五山を巡って日本の歴史にふれる
京都五山は日本の寺院の歴史に大きく関わっているんですね。
実際に訪れてその壮大な歴史の一端に触れるために京都五山を巡ると改めて日本の素晴らしさを学ぶことができるでしょう。