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終活

2024.04.30

多死社会では火葬場が足りない?2040年問題と医療・社会への変遷を解説

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近年日本は少子高齢化社会とよく言われますが、同時に次期に多死社会を迎えるとも言われています。
多死社会とは言葉の通り、多くの死を迎える社会。つまり、年間の死者の数が莫大な数となる社会の事を指します。

あまりご存知ない方も多いと思いますが、今回はこの多死社会に関して解説を行ってきます。
2040年問題や、特に気になる医療や社会面での変化も述べてきますので、一参考にして頂ければ幸いです。

多死社会とは
手すり 高齢者
多くの死が存在する社会とあるように、年間の死亡者の数が多くなる社会を多死社会といいます。
どの段階になれば多死社会となるのかについての明確な基準はありません。

年間死者数が150万人を超えるのを一つの指標的に定めて、多死社会を紹介する所もあります。

現在日本では少子高齢化社会が問題となっていますが、その行く先としても多死社会は見なされています。

人口の遷移
2005年度付近を分岐点として、死亡数が出生数を上回り、 年間を通じて生まれてくる子供の数よりも亡くなる方の人数が多いのが今の日本の現状です。

2019では出生数は90万人程、死亡数は130万人程と予想されてます。

死亡数の増加が見込まれるため、 このまま少子高齢化の影響が続けばゆくゆくは多死社会となると考えられています。

少子高齢化から多死社会へ
高齢者 杖
先ほど多死社会は、少子高齢化の未来像とも言えると述べましたが、実際の所はどうなのでしょうか。

ここでは以下の項目に分け、解説を行ってきます。

少子高齢化の現状
なぜ多死社会になるのか
少子高齢化の現状
少子高齢化の度合いを現す基準の一つに高齢化率が挙げられます。

総人口当たりの高齢者の人口割合、 つまり、国民の総人口における65才以上の方の人数割合を示すのが高齢化率です。

現在日本は少子高齢化が進み、高齢率が21%を超えた超高齢社会となっています。

今後も、高齢化率は上昇していき、ゆくゆくは2025年度には30%を超過すると見なされています。

なぜ多死社会になるのか
多死社会の最も大きな要因としては以下の二つが挙げられます。

少子高齢化に伴う高齢者の割合の増加
長寿命化
少子高齢化 社会問題
参考:高齢社会白書
このグラフにもあるように、65歳以上の人口が1960年代以降、急激に増加している事がわかります。
特に、人口における高齢者の割合に関しては2005年時点で20%となり、現在は超高齢化社会を迎えています。

また、この少子高齢化に関して強い影響を与えているのが平均寿命の長期化です。

人生時計「平均寿命の年次推移」
戦後、医療技術の発達や衣食住を始めとした日常生活の質向上により、平均寿命は緩やかに上昇しています。

また75才以上の方の人口に関してもここ20年間で二倍近くの約2000万人にまで増加しているとのデータがでています。
現在の総人口の中でも比較的多い割合を占める戦後に生まれた人々が高齢者となっているのが今の日本の実状です。

2040年代には年間の死亡数が最大に
日本の総人口に置いて最も多くの割合を占める世代の一つが団塊の世代です。
1947年から1949年の間に生まれた人の事をさしますが、現在200万人を超えているとされています。

なお、団塊の世代に関してはこちらもご覧ください。

団塊の世代とは?現在の年齢や就労状況、働き方に対する価値観も解説!
第三人生編集部

人口の多い団塊の世代が平均余命寿命に達する2040年代には死亡者数はピークに達すると見られています。

多死社会を迎える日本はどう変わる?
高齢者 手押し車 シルバーカー
日本における多死社会は高齢社会の未来像といえます。
多死社会に伴う変化として特に着目すべき所は少子高齢化の問題と同じく人口減少 です。

主に人口減少に伴う変化に着眼点を置きながら、以降では以下の順に解説を行ってきます。

医療ニーズの増加
働き方の変化
看取る仕組みの変化
①医療ニーズの増加
多死社会となる事は、それだけ高齢者の方が社会の中の割合としても多くなる事を意味します。

高齢者の数が多くなる分、医療や介護サービスの需要が高くなります。

国民医療費も右肩上がりに
国民医療費の推移に限っても、厚生労働省によると、見てもここ数十年で右肩上がりに上昇しています。

国内総生産(GDP)に対する国民医療費の割合もここ10年で約2倍近くとなっており、 経済規模においても、医療需要は大きな高まりを見せてると言えます。

治療の体制の変化
従来の日本の医療の形は、病院にて患者に対して効果のある治療を行い、短期的な回復を行う事を目的としていました。

しかし、高齢化に伴って長期間の治療を求められる慢性的な病気や持病を持つ方が増加してきました。

こうした形に対応するには病院のみで完結させるのではなく、より広い形での治療体制の確立が重要です。

在宅でいながら治療を受ける事が可能になるよう、地域全体での治療体制の確立が求められています。

②働き方の変化
多死社会において特に顕著になるのは人口減少です。
人口が減る事により、働き手となる労働可能な人の数が減ってしまう事から、今後は働き方が見直されていくと予想されます。

より長く働く時代へ
60才近くになると定年を迎え、その後は老後生活にシフトしていく。

これはキャリア設計において揺るがない形でしたが、 定年の年齢自体はここだんだんと引き上げられています。

また、現在、 定年を65才未満で定めていた際には、従業員が望めば65才までの安定した雇用を確保する事が事業主に定められています。

少子高齢化に伴う影響は今後も続くと予想されます。

そのため、60才近くで終了するのではなく、人生100年時代に挙げられるように、70や80才をキャリアの終結点としてみた人生設計が求められています。

人生100年時代に関しては以下の記事もご覧ください。

人生100年時代をどう生きる?政府の取り組みや老後に与える影響は?
第三人生編集部

効率さがより重視される形へ
繰り返しになりますが多死社会では人口が減少するため、これまで通りの経済的な発展を望むには、 より効率の良い働き方が求められます。

従来の終身雇用形態だけでなく、転職の頻度も高まったり、副業等を認める形が広まる事も予想されてます。

③看取る仕組みの変化
多死社会となる2025年度には2019年度よりも約20万人程度増加し、年間の死亡者が150万人を超える見込みです。

現在は、亡くなった方の8割近くが病院で息を引き取っています。
しかし、 20万人程度の増加を現在の病院全てで賄う事は不可能であり、より自宅や介護施設での看取りが求められます。

多死社会で火葬場が足りない?遺体ホテルとは?
火葬場 遺骨処分
多死社会では年間の死者数が約150万人近くになりますが、その中で 深刻化すると目されている問題が火葬場の不足です。

現在の状況
火葬場の不足が特に深刻化しているのは大都市圏です。

人口10万人に対する火葬場の数は一部ですが特に少ない所を中心に県別にすると以下の通りです。

火葬場の数(人口10万人当たり)
都道府県名    施設数(数)
東京都    0.19
神奈川県    0.21
埼玉県    0.29
愛知県    0.4
全国平均    1.13
全国平均が1.13施設となるため、上に述べた都市部では特に火葬場の数が少ないと言えます。

なぜ火葬場が不足?
主な要因は火葬場自体に対しての迷惑施設から建設に反対する運動が起きやすい点です。

死を取り扱うもののため、 火葬場を地域に設置をすると、地価が下がる事や遺体が近くに存在する事の心理的なストレスを与える結果となる 可能性があるからです。

遺体保管所も不足
火葬場不足により不安視されるのが、火葬するまでの遺体の保管場所です。
自宅でも安置自体は可能ですが、3~4日近くなれば腐敗を鑑みると厳しいものがあります。

その際の 遺体の安置先として目されるのが遺体保管所です。
通称、 遺体ホテル とも呼ばれます。

保冷設備や面会の仕組み等も整っていたり、簡易的な葬儀を行う事もできます。
特に都心部などで需要が増加してますが、依然として建設不足なのが現状です。

火葬場が混雑している際などに空きがあれば利用するのも手の一つです。

多死社会で変容する死の価値観
死に対する考えは時代で変化します。

特に現在の特徴として、 弔事関係の行事の簡略化や、病院で息を引き取る形での死の増加などで、「日常から遠ざけた形の死」が多いのが指摘されています。

上の事を踏まえつつ、この項目では移り変わる死の価値観に関して述べてきます。

自分の人生は自身が決めるべき事項ですが、考え方の一つとして捉えて頂ければ幸いです。

自分の家で最期を迎えるという形
現在、 日本での死亡に関し、 病院で亡くなる形が全体の約8割近い件数に上っています。

これは世界的に見ても多い水準です。

病院で最期を迎える形が上記のように一般的になったのは1970年代付近からです。

理由としては以下のような事が挙げられます。

最後まで治療をしたという安堵感
自宅で息を引き取る際に介助等を引き受けなければならない面倒さ
最近の傾向
なお、近年は以下のように老人ホームなどの 自宅外の入居施設等で息を引き取る方の数も増えています。

ですが、大多数を病院死が占めている事には変わりがありません。

亡くなる前に過ごしたい場所
厚生労働省の意識調査によると、 亡くなる前の病気の進行具合や認知の度合い により、 最後の場所として希望する場所は異なっていく 方が多いです。

また、同様の調査によると最期を迎える場所に関して以下の内容を重視する方が全体の五割を超えました。

家族等の負担にならない
肉体的負担、心理的な苦痛がなく過ごせる形
また、家族との時間を十分に過ごす、自分らしく日々を過ごすという形を求める方も四割近くとかなりの方が重視していると言えます。

自身や周りの負担なく過ごせる事を重視する方が多く、一方、積極的な治療や長生きを重視する方は少ないのが、実状と言えます。

安楽死・尊厳死なども議論の対象に
より多くの死が社会的にみられる中で、 延命治療ではなく、より安らかに息を引き取る形として、安楽死や尊厳死なども議論の対象 となっています。

しかし、安楽死や尊厳死は死という重大な問題に対し、本人や周囲の了解を得ないまま行われる可能性があるなどの問題点があります。

変化する葬儀・埋葬の形
死者の数の増加と共に、葬儀や埋葬の件数も増加しているのが現状です。
現代の特徴として、葬儀や埋葬をより簡単にし、費用や時間を抑える傾向があります。

具体的には以下の内容が挙げられます。

緑あふれる木々の周りにお墓を作成可能な自然葬の増加
一人一つのお墓という形ではなく、集団で一つのお墓に入る集合葬
家族葬や直葬などで葬儀に訪れる方の人数を減らした形に
2040年の日本の姿、2040年問題とは
多死社会と関連して言われる言葉に2040年問題が挙げられます。

団塊ジュニア世代が65才以上の高齢者となる年が2040年 であり、一つの転換点として目されてます。
この2040年に高齢化が進んだ日本が直面すると予測される問題であり、政府なども社会保障政策の課題を行うにあたっての一つの展望点としています。

2040年の一つの 人口統計的な特徴としては、75才以上の世帯が全体の1/4を占める という事が挙げられます。

団塊ジュニア世代と2040年
団塊の世代の子供世代にあたるのが団塊ジュニア世代です。

1971年から1974年にかけて起こった第二次ベビーブームの時期に生まれた世代です。

2040年代には65才以上になり、高齢者の人口がピークに差し掛かると考えられています。

高齢世代の困窮化
団塊ジュニア世代に関して特に言われているのが貧困世代の増加です。

就職氷河期に正雇用されなかった人々が、高齢に伴い以前と同様の働きができない、むしろ医療費の負担増などにより生活が苦しくなる事が予想されてます。

団塊ジュニアに関しては以下の記事もご覧ください。

団塊ジュニアとは?言葉の意味や世代が抱える注意点もご紹介
第三人生編集部

1.5人の働く世代が1人の高齢世代を支える形に
 高齢者 生産年齢人口
参考:内閣府
2040年は高齢者の人口がピークに達する年だとされています。
高齢者の増加と共に年金を始めとした必然と医療費等の社会保障関連の費用は増加します。

その際の負担を担うのは現役の働く世代です。

しかし、 2040年には1人の高齢者に対し1.5人の働く世代が支える形となります。

また、政府は出生率の回復をしたとしても、2060年となれば上の画像にあるように1.6人の働き世代が1人の老人を支える事となると推定されています。

地方と都市部の人口格差が進む
少子高齢化による人口減少に伴い、地方に居を置く人々が都市部に移転していきます。

2040年にはこの傾向が加速化し、半数近くの地方自治体が存続自体が危うい状況になると考えられてます。

都心部にも問題が
人口が集中するとみなされる都心部でも問題が生じています。

都心部は特に出生数が低いのが特徴であり、多くを高齢者が占めると想定されてます。

そのため、 急激な人口減少の局面を迎えるため、都心部も現状の体制を維持する事が難しいと考えられています。

多死社会に求められる医療・社会 
病院
急激な人口減少を迎える多死社会。
人口減少の要因としては少子高齢化が主ですが、それは必然的に高齢者自体の数の増加も意味します。

では、多死社会を迎えるにあたって理想的と目される医療像や社会像はどのような物でしょうか?

ここでは、 主に病床数の不足という観点から元来の日本の医療の特徴、そして現状を述べた上で未来的に求められる社会像に関しても述べてきます。

将来的に病床数は不足する
ここまで繰り返し、多死社会を迎えるに辺り、亡くなる方の数が大幅に増えていく事を述べてきました。

しかし、今の現状から鑑みると 将来的に病床数は不足する と見られています。

実際、多くの方は病院で亡くなっているのが現状です。

多くの方が病院亡くなる形が主流となった原因は日本の従来の医療体制に起因します。

日本の医療体制は過渡期に入っている
病院で適切な治療を受ける事によって早期での社会復帰を目的 として構成された形が従来の日本の医療制度です。
しかし、医療の発展により長寿命化が進み、 認知症を始めとした長期的な治療が要される患者の数が多くなりました。

そのため、 社会保障の関連費用を始めとした財政的な負担が多くなり、国だけでなく働く世代までも重い負担となっているのが現状です。

必要なのは病院だけで完結しない地域的な医療
必要とされる医療とは病院完結型ではない、地域と関わった形です。

つまり、病気を完全になくすのではなく、 病気と生活を共存させる形が現状に合うあり方 とされているのです。

そのため、 在宅医療などの医療と介護が連携した形が求められています。

具体的な地域的医療と現状
先ほど、地域的な医療の形として医療や看護が連携する必要があると述べました。

具体的な形としては主に以下の3つが挙げられます。

在宅医療
訪問看護
介護施設での看取り
ですが問題点もあるのが現状です。

特に在宅や訪問はまだ社会的に浸透しているという形ではないため、 医師や病院毎で在宅形態に関しては大きな差がある 事が問題視されてます。

また、 介護面に関しても日本は民間の介護等を担う事業者が少なく、あっても小規模な形が多い 事が挙げられます。

より規模を大きくし、世帯ではなく地域全体をまとめられるように

現在ある民間の小規模な介護関連事業者の規模を拡大
福祉や介護を含めた総合的な支援が可能なセンターなどの設立
等が提案として挙げられています。

より地域的な医療を加速化するために、政府は赤字が続く病院の統廃合も進めていますが、問題も生じているのも事実です。

地域の体制が未完全
地域的な医療の体制は急務ですが、実際はそう簡単に進んでないのが現状です。

主な理由としては、

医師や看護師等の医療関係者の不足
家族-病院間のみで個人の医療や終末期の事を済ませてしまう傾向
等により、自治体や個人レベルまであった形にするのが難しいためです。

医療関係者の数は統計上は増加の方向にありますが、少子高齢化の波に対応した形とは言えません。

そこで現実な解決策となるのが、 後者に対する意識的な改善です。

予め先々の事を話す社会に
多死社会となり、医療的な問題等様々な社会問題が露出していく事を述べてきました。

私たちの意識的な問題が多くあるのも事実です。

これから迎えるであろう様々な問題を抱え込む多死社会に対して、 社会の一人として可能な事は、より将来に意識を向ける時間を持つ事です。

特に一般国民関しては 家族間でさえ「将来の医療や介護に関して具体的な事が話せられてない」というのが実状です。

ですが、 終末期や亡くなった後の事は家族に任せる傾向があるのも事実です。

確かに死に関わる事は話すのを躊躇うのも事実ですが、 より死が身近になる社会となる事が見込まれる事からも、一人一人が先々に関して明確な方向性を持つ必要があります。

例えば延命治療をどこまで続けるか、葬儀の形はどうするか、等を予め生前から定めて置くとその後の対処がずっとやりやすくなります。

適宜、家族間で時間をもったりする事が重要です。

多死社会を迎えるにあたって
この記事では多死社会に関して主に以下の内容を述べてきました。

多死社会とは
少子高齢化から多死社会へ
多死社会を迎える日本はどう変わる?
2040年の日本の姿、2040年問題とは
多死社会に求められる医療・社会
多くの死を迎える多死社会。
現状の少子高齢化に伴う問題が目の前に出てくるのが多死社会と言い換える事もできます。

今回は定義から社会面での変化、求められる医療の形や関連して述べれられる2040年問題に関しても述べてきました。

人口減少に伴う様々な問題を直視するのは困難です。

しかし、より身近に感じ現状から先々を見据えて、 いずれ迎えるであろう多死社会に対して自分でも可能な事を模索する姿勢が求められていると言えます。

まずは家族間でもいいので、軽く先々の事ごとに関して話し合ってみてはいかがでしょうか。

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