そもそも孤独死とは?
言葉としては多くの人に認識されている「孤独死」の意味ですが、一般的的になされている解釈は
自分の部屋で、誰かに看取られることなく孤独に死亡すること
といったものでしょう。加えて、孤独死の多くのケースでは親族の方や第三者が発見に至るまでに長い時間が経過しています。
しかし、覚えておきたいのは 孤独死には法的な定義が存在しない ということです。
それゆえに、警察での死因統計上の扱いは”変死”、行政での扱いは”孤立死”という言葉が用いられることも多くなっています。
実際、日本における年間死亡者数約125万人の中の 約3万人 を占めているのが孤独死となっており、今後はこの比率がさらに大きくなっていくことも予想されています。
しかし、孤独死は高齢者のみに限って起こる訳ではなく、若年層の孤独死、なんらかのハンディキャップを負った親子が社会的に孤立した状態で亡くなるといったケースも確認されます。
この孤独死の割合の上昇は社会問題としても捉えられており、ボランティア団体を初め、行政でも様々な対策が検討されています。
孤独死保険が生まれる社会的背景
上記で孤独死について説明しましたが、ここではそこから孤独死保険が生まれるに至った社会的な背景について説明していきます。
孤独死件数(2017) 社会問題
冒頭で説明した通り、孤独死には明確な定義が存在しないため、「孤独死」を題とした統計はあまり存在しません。
そこで、東京都監察医務院による統計データを見てみましょう。これは東京都に限られたものであること、65歳以上の高齢者に限られたものであることから、正確な統計とは言い難いですが、大まかな傾向を読みとるには十分参考になります。
グラフの推移を見てみると、 自宅で亡くなった65歳以上の単身世帯の男性の大幅の増加 が特徴的に見られるでしょう。
数値的に見てみると、東京都内にて単身で亡くなっている65歳以上の高齢者の人数は過去15年の間に 約2倍 となっており、女性が 1.8倍 、男性においては 3.2倍 といった数字が得られます。
このような孤独死の割合の増加には、以下のような原因が考えられます。
生涯未婚率の上昇
家族親族との疎遠
近隣住民と関わりの機械の減少
貧困者数の増加
ソーシャルネットワークサービスの普及
このような社会的背景を受けて、孤独死保険は誕生しました。
孤独死保険の種類
孤独死保険は、加入する人の立場によって大きく2つに分けることができます。
その種類は以下の通りです。
家主が加入する孤独死保険
入居者が加入する孤独死保険
孤独死保険の種類【家主タイプ】
これは、マンションやアパートを住民の方に貸し出している家主の方などが加入する保険で、住民の方がその部屋で孤独死してしまった際に備える目的があります。
一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会が発表している『第4回 孤独死レポート』では、孤独死した人が誰かに発見されるまでにかかる平均日数は 17日 と記載されています。
亡くなってから17日という日数はとても長いもので、とりわけ夏場などであれば、遺体の損傷はより激しくなってしまいます。
そのため多くの場合で、 床の張り替えや壁紙の取り替えといった部屋の修繕費が必要となってしまったり、修繕中の家賃収入が入ってこなくなることに備え 、家主の方が孤独死保険に加入しておくのです。
孤独死保険の種類【入居者タイプ】
対してこちらは、アパートなどの賃貸住宅にて一人で暮らしている 入居者本人 が加入するものです。
仮に賃貸住宅の部屋内で孤独死をした場合には、遺品整理費用や原状回復費用といった様々な費用を亡くなった住民の方の遺族が支払わなくてはならないケースが往々にしてあります。
つまり、万が一自身が孤独死してしまった際、 家族に負担をかけないため に入居者本人が加入しておく保険ということです。
一般に、入居者が加入するタイプの孤独死保険は、その家を借りるタイミングで加入する「 火災保険 」もしくは「 家財保険 」の一部となっていることが多く、その場合にはそれらの保険料に含まれています。
賃貸住宅に住んでいるという方は、一度内容を確認してみるのが良いでしょう。
孤独死保険選びの選び方
では、孤独死保険はどのように選ぶのが良いのでしょうか。
現在、孤独死保険を提供している企業は20社を越えるほどで、各保険会社によって内容に細かい違いが存在します。
ここでは、孤独死保険を選ぶ際に押さえおきたい以下のポイントについて説明していきます。
補償範囲
補償期間と内容
補償金額
加入条件
孤独死保険選び①補償範囲
保険には、それぞれ 補償される範囲の違い が存在します。
先ほど説明した入居者タイプの保険は、家財保険の特約であるため、火災・落雷・風災・水災といった、孤独死以外の理由によって引き起こされた損害もカバーしてもらえます。
家主タイプのものの中にも、自然災害が原因でリフォームが必要になった際に、修繕期間中得られなかった家賃収入を補償してくれるといったものもあります。
また、孤独死保険は契約された住居内で居住者が亡くなった際に保険金が支払われるのが原則となっています。
しかし、病室で亡くなった場合など、住居の外で亡くなった場合であっても遺品整理費用の支払いは発生します。
以上のことも含めて、 現在加入している保険との兼ね合いから検討してみる ことをオススメします。
孤独死保険選び②補償期間と内容
家主が加入するタイプの孤独死保険を選ぶ際は、 家賃の補償期間 を確認しておくようにしましょう。
補償期間は保険によっても様々で、事故発生日から最長12ヶ月間、のものであれば事故発生日から最長6ヶ月のものもあります。
さらに、 家賃の減額による損失 まで補償している保険も存在すれば、 リフォームが完了するまでの家賃損失のみ を補償対象とした保険も存在します。
事故物件となってしまった場合には、一般的に家賃を下げることになってしまうため、そのリスクに備えるためには家賃の値引きによる損失まで補償対象としている保険を選ぶべきと言えるでしょう。
孤独死保険選び③補償金額
保険による補償金額には限度額が存在し、保険会社それぞれ限度額に違いがあります。
『第4回孤独死現状レポート』によると、孤独死が発生した際の残置物処理費用は 平均21万円程度 、原状回復費用は 平均36万円程度 とされています。
最大額では、残置物処理費用で 410万円程度 、原状回復費用で 180万円程度 とされています。
自身が対策すべきと考えるリスクの大きさによって、保険を検討する必要があります。
孤独死保険選び④加入条件
孤独死保険を選ぶには、加入条件も検討する必要があります。
家主が加入するタイプの場合、基本的に 1棟単位もしくは保有物件全てでの加入 が必要となっていたり、 戸室数を一定数以上所有 していなければ加入できないものもあります。
このように、1棟単位での加入が条件になっている理由には、孤独死が高齢者だけの問題ではなくなっていることが挙げられます。
孤独死保険の取り扱い会社
孤独死保険を取り扱っている会社は様々ありますが、大きく分けて 大手損保会社 と 少額保険会社 が挙げられます。
大手損保会社
①損害保険ジャパン日本興亜株式会社
損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、2018年8月から『事故対応等家主費用特約』という、個人用住宅向けの火災保険に「事故対応等家主費用特約」を新設したものを発売しました。
賃貸の住宅内で死亡事故が発生した場合に、家主の方が被る 家賃の損失・清掃費用・遺品整理費用・葬祭費用 などを補償する内容となっています。
②東京海上日動火災保険会社
東京海上日動では、家主の方向けに『孤独死対策プラン』を発売しています。
『家主費用・利益保険』と「企業総合保険」を合わせたもので、建物の火災保険とは別に加入することが可能です。
③三井住友海上火災保険株式会社・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
2015年10月から、火災保険の特約・付帯サービスとして『家主費用・利益保険』を家主の方向けに共同販売しているものです。
これは、賃貸住宅内での死亡事故によって家主の方が被る 収入の損失・清掃・改装・遺品整理等の費用 を補償してもらえるというものです。
死亡事故が発生した部屋のほかに、上下左右の隣接した部屋も補償の対象となっている特徴が挙げられます。
少額保険会社
①アイアル少額短期保険株式会社
家主の方の経営リスクを減らすことを目的とした『無縁社会のお守り』といった保険が発売されています。
賃貸住宅の部屋内にて発生した死亡事故を原因として、家主の方が損失を被った際に補償してもらえるものです。
保険料は1室あたり 300円/月 となっていますが、 4室以上を保有している建物 が対象となっており、 全戸の加入 が条件となっています。
②エイ・ワン少額短期保険会社
エイ・ワン少額短期保険会社は、『あんしん住まいるオーナー保険』という名の、孤独死へと対応した保険を販売しています。
この保険は、建物の家主の方のみならず、行政関連団体へ向けたプランの存在が特徴的です。
孤独死後の片付け・葬儀費用 といったものが補償してもらえます。
孤独死保険という選択
現在の日本において、孤独死は決して珍しいものではなくなっています。
そのような状況を受けて生まれた孤独死保険というものを、きちんと理解した上で、自身に合わせて利用できるようにしましょう。
当記事が、そのお手伝いをすることができると幸いです。