現在の定年は原則60歳
現在、公務員や一般的な民間企業の定年は60歳が原則です。
定年制により一定の年齢に達すると退職を余儀なくされます。
30年ほど昔は55歳が定年でしたが、その後定年は段階的にじわじわと延長され今に至ります。
公務員
会社員
定年に変化が生まれる?
①公務員
公務員の定年は、国家公務員法の規定で60歳と定まっています。
しかし、職務によっては例外があり、62~65歳までばらつきがあるのをご存知ですか?
定年の年齢が職務によって細かく分かれているのは公務員ならではです。
一般公務員 には、各地方自治体の役所職員や公立学校の教師、警察官や消防士も含まれます。
事務次官 がの定年が62歳というのは、大臣を補佐する有職者であることが理由でしょうか。
公務員の 技能労務職 とは、ゴミの収集・下水処理作業員、学校用務員、守衛、公用車の運転手などです。
単純な業務や人の躊躇する仕事もありますが、実は長く働けて有利であるといえます。
県立・国立などの 公営病院医師は 定年が65歳までと定まっています。
また、退職金は公務員の中でも多く支給され、3000万前後です。
定年後も希望すればさらに医師を続けられ、働いた年数に応じて再度退職金がもらえる高待遇と言えましょう。
一般公務員 60歳
事務次官 62歳
技能労務職 63歳
公営病院医師 65歳
②会社員
現在、 民間企業の定年は原則60歳 で、これは1998年にはっきりと定まりました。
1998年に国の定める雇用の規則が改定されて 60歳未満の定年が禁止 になったという事です。
それまでは民間企業によってばらつきがあり、55~58歳で定年を決めるところが多かったようです。
制度が決まったおかげで企業が一斉に社規を変更し、その頃55歳で定年に達していた人も思いがけず長く働けるようになったわけです。
③定年に変化が生まれる?
定年制度の推移を見るとわかるように、定年年齢は時代と共に延長され、引き上げられてきました。
労働関係の法律では 努力義務 を挟みつつ、改正されて定年の年齢が推移しています。
現在は民間企業に先駆けて公務員の定年延長が検討されている段階です。
昭和の初め 定年55歳
1980年頃 定年60歳 延長(努力義務)
1990年 定年後の再雇用制度
1998年 定年60歳 定年延長制度確立
2000年 定年後の再雇用制度(努力義務)
2006年 定年後65歳まで再雇用制度(段階的義務化)
2013年 定年後65歳まで再雇用制度(希望者全員)
現在 公務員の定年60⇒65歳定年延長検討中(段階的義務化)
公務員の定年延長の背景
定年 男 女
公務員の定年延長を段階的に実施することが提案されています。
なぜ定年を延長して引き上げなければならないのでしょう。
延長検討に至るには、いくつか要因があるのでご説明しましょう。
再就職を希望する人が多い
定年後にも何かしらの仕事に付きたい人が多いのが現状です。
民間で再就職する場合もあるでしょうが、そのまま 公務員として慣れた仕事を続ける ほうを選ぶ場合が多いでしょう。
公務員は定年後の賃金規定が民間企業よりかなり恵まれています。
大企業に天下りすることがたびたびある上層部以外は、民間企業で再就職するのも容易ではありません。
そのため殆どの公務員は、そのままより良い環境の職場に残るほうを選ぶようです。
年金受取までの無給期間がある
公務員の年金は 退職共済年金 という正式名称で、民間の年金と区別されています。
退職共済年金の支給開始は生まれた年によって変わり、これは民間の厚生年金と同じような形です。
一般公務員の場合、 昭和36年生まれの退職共済年金支給開始は65歳からです。
60歳で定年退職すると5年間の無給期間があるという事になります。
老後の貯えにまったく心配のない人はごく少数派。
公務員は、年金受取までの無給期間に働く方が多いのが現状です。
生年月日 退職共済年金支給開始年齢
昭和28.4.2~昭和30.4.1 61歳
昭和30.4.2~昭和32.4.1 62歳
昭和32.4.2~昭和34.4.1 63歳
昭和34.4.2~昭和35.4.1 64歳
昭和36.4.2~昭和37.4.1 65歳
公務員の定年延長とは
高齢者 学習
一般公務員の定年は、現在60歳ですがこれを65歳に延長し引き上げる検討がされています。
政府は 生涯現役 を着地点にしており、高齢者でも働ける環境の整備を始めました。
高年齢者雇用安定法の内容を改正するべく精査中で、定年延長は過去の事例と同じく段階的に引き上げる提案です。
通常国会で定年延長の議案を検討される日も近いでしょう。
現在、公務員の定年延長は再任用で対応している
会社
政府が段階的に定年を65歳に延長し、引き上げようと検討していますが、実施には至っていません。
今のところは、公務員が60歳定年の場合は、いったん退職して再任用の雇用契約を結びます。
再任用の形での再雇用
賃金・労働時間格差の発生
①再任用の形での再雇用
呼び方が再任用となっていますが、民間企業の再雇用制度と同じ制度とお考え下さい。
定年後はいったん退職しますが、 希望者は全員再雇用 されることが義務付けられています。
ただ、再任用後の職員への対応に関してはは課題も多く出ています。
定年前より軽い職務に補助的な役割で配属になるケースが多く、経験や知識を発揮できないという現場の声が聞かれます。
定年後の職務配置によってはモチベーションが下がり、健全な勤務が困難という事。
勤務時間も短時間で済むような配属の位置づけになり、政府の言う個人の能力活用という目的とは程遠いという事です。
②賃金・労働時間格差の発生
公務員の定年後は現役時代に比べて 給料は7割程度 に下がります。
しかし、年間2.2ヵ月のボーナス支給に始まり、残業手当、東京23区勤務者に支給される地域手当、単身赴任手当などは現役時代と変わらずです。
民間企業では、再雇用後に給料が以前の半分になるとよく聞きます。
これは民間で嘱託になると、ボーナスの支給は対象外、残業代や諸手当は全てなくなり、基本給だけの支給で、25万円ぐらいの給料になる場合が一般的。
民間企業の再雇用後賃金体制に比べて、 公務員は優遇された給料 を支給されているのが現状です。
民間企業の再雇用者から見ると信じられないぐらい羨ましい雇用条件です。
また、労働時間や有給休暇は現役時代と同じで、なんら変わりない勤務形態が約束されます。
勤務時間は 通常のフルタイム と、1日5~6時間の 短縮時間勤務 で選ぶことが出来ます。
公務員は定年後も現役時代とそれほど変わらない条件で働け、希望すれば勤務時間の都合もつくという事でしょう。
定年延長と再任用の違い
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定年延長と再任用では何がどう違うのでしょう。
それぞれにどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
定年延長
現在 検討されている定年延長 とは、定年60歳を65歳に延長し、引き上げる事です。
過去に55歳定年の時代がありましたが、定年60歳推奨 (努力義務)などの段階を挟みつつ1998年に定年60歳制度が開始されました。
同じように段階を経て定年が65歳に延長になる可能性が大きいのです。
まずは公務員から定年延長を始めようと政府が検討を開始しています。
問題点としては、個人差もありますが体力的な問題が出てくるということ。
職務によっては屋外での労働もあるので、部署移動も視野に入れ、考慮してもらう必要が出てくるでしょう。
再任用
再任用とは、定年60歳で一度退職の形を取り、新たに契約を結んで再雇用する事を意味します。
具体的には、再任用を希望する職員は60歳になる年度の5月に再任用申出書で手続きを行わなければなりません。
希望者は 再任用職員として再び勤務に就くことが出来ます。
毎年更新のための審査があり、1年間の実績や勤務態度などを踏まえて更新の可否が決定します。
この毎年の更新が結構なストレスで、更新をして長く勤務し続けるのも大変なことです。
定年延長が実施されるまでは、1年ごとに更新をしながら 再任用 が取り入れられるでしょう。
公務員の定年延長の具体案
書く
政府は公務員の定年延長について既に具体案を掲げています。
2021年から段階的に定年を延長して引き上げる方針です。
さらに、65歳定年が確立した時点で、再任用制度は廃止になるでしょう。
定年延長について国会で審議する日も近いはずです。
それでは定年延長の具体案の概要を詳しく見ていきましょう。
役職定年制の導入
定年前の短時間勤務制導入
給与水準
役職定年制の導入
管理職についている公務員は60歳以降、管理業務から退くという制度が出来ました。
これは、将来65歳定年制を確立するにあたり、 組織内の新陳代謝 を促す意味でもあります。
段階的に定年延長をするための環境整備が様々な角度からなされているという事でしょうか。
定年前の短時間勤務制導入
65歳定年制の準備の一環として、短時間勤務制を導入しました。
60歳以上の公務員は、もし本人が希望すれば短時間勤務で務めを続けられます。
ちなみに フルタイム勤務 の場合は週38時間45分で、1日に換算すると 7時間45分程度 です。
短時間勤務 は週15~31時間の範囲で働く設定で、1日 5時間から3時間 に振り分けられます。
高齢になっても公務員は自分の体力に合わせてペースダウンして勤務を続けることが出来ます。
給与水準
公務員は60歳に達したら 以前の給料の7割程度 に抑えられます。
これは民間企業と足並みを合わせていく方針で決定したという事です。
しかし、実際には全て民間企業並みにしているわけではないのです。
民間企業では定年後は諸手当をすべて廃止しているのが普通です。
一方、公務員の場合はやボーナス、地域手当などが 諸手当が今まで通りに加算 されます。
本当の意味での同一水準にはなっていないのが現状です。
定年延長で退職金はどうなる?
お金
定年延長65歳が確立されると退職金を受け取る時期も先送りになってしまうのか心配かと思われます。
退職金をあてにして、長く勤めてきた人も多いと思います。
定年延長でどういう影響が考えられるでしょうか。
公務員には退職手当が出る
退職手当の計算式
退職手当は減少?
①公務員には退職手当が出る
公務員の退職手当は民間と同じで 自分都合と定年退職 とで大きく計算方法が変わります。
ちなみに地方公務員の定年退職金は、定年60歳大卒で勤務38年の場合、退職金は約2200万円です。
事務系の行政職とは官僚や事務系の国家公務員を含みます。
表は公務員の定年退職金平均額 です。
公務員分類 職員全体、公安職・医療職含む 事務系の行政職
2015年 21,813,000円 22,231,000円
2016年 21,678,000円 21,813,000円
②退職手当の計算式
公務員の退職手当計算式は次の通りです。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額
俸給月額は公務員の雇用規定にある俸給表から割り出します。
民間企業の勤続年数での計算式と同じようですが、公務員には調整額という項目があります。
③退職手当は減少?
公務員の退職金額が民間に比べて高い という調査結果が出ています。
2013年に公務員の退職金額を15%の約400万円減らして民間に近づけた経緯がありますが、まだ十分ではないという事が言われています。
公務員になればリストラの心配もなく年金や退職金の額が高いということが長い間の通説でした。
しかし、今後も民間と合わせていくよう圧力がかかると予想され、少しづつ公務員の退職手当が減額される可能性があります。
退職金の減額云々は単純に民間と合わせるだけの理由ではありません。
これも定年延長を実施するための環境整備の一環です。
たとえば、公務員に定年延長を実施した後に、必ず民間にも定年延長が及ぶはずです。
定年延長は、公務員と民間との間で不均衡があるまま推し進めるものではありません。
公務員の定年延長は検討中
高齢者
公務員の定年延長は実施時期は、はっきりとは決まっていません。
しかし、 政府は60歳定年から65歳に、そしてさらに70歳にと定年を延長して引き上げたい方針です。
出生率の減少、結婚率の低下、団塊世代の定年退職で将来の労働力が低下するのは顕著です。
海外からの労働力も必要になってきて日本の社会も変わりつつあります。
以上のような背景があるため、政府は労働力確保の対策を思案しています。
その一環として定年を延長して元気な老齢者を活用したいと考えているようです。
公務員の定年延長実施までには数年ある
高齢者が増加している日本の社会、年金支給額は減少の方向です。
定年を延長して、なるべく長く働いてもらい、その間の年金は支払わないようにしたいのが政府の本音。
昭和時代に長く続いた 年功序列賃金や終身雇用 のかわりに、 成果主義報酬と雇用の流動化 が顕著な社会になりました。
政府がさかんに言う 生涯現役社会 といっても高齢になると活躍する場は若い人に譲りながら勤務することになるでしょう。
定年延長は段階を経て数年後には実施されるだろうと予測されます。
延長が実施されるまでの間、自分の働き方をじっくり考えることが大切になります。