葬式・葬儀の流れ
流れ
「お葬式」というと葬式・葬儀と告別式の両方を思い浮かべるのではないでしょうか。
葬式と告別式は、厳密には異なる儀式です。
葬式は正しくは「葬儀式」といい、故人がこの世に生きている人に別れをする儀式です。
故人を葬る葬式は、本来は故人が家族や近親者と別れる宗教的な儀式で、仏教では僧侶が取り仕切ります。
つまりは、葬式は故人のための時間です。
告別式は、友人や知人、会社関係や近所の方など、参列するすべての人が故人にお別れをする、社会的な式典です。
葬式とは違い、一般的には、喪主が主導で行います。
現在はどちらも同じ日の同じ会場で行うことが増えました。
葬式~告別式と式次第が組まれていおり、総称して「お葬式」と呼ぶことが一般的です。
つづいて、告別式を除いた、葬式・葬儀の流れについてみていきます。
①受付開始
②開式
③読経
④弔事朗読
⑤弔電披露
⑥焼香
⑦閉式
そして葬式閉式の後、出棺の前に告別式が行われるのが主流です。
①受付開始
葬式で受付をしたら、焼香の順に並んで着席し待ちます。
進行係の指示に従い、起立して僧侶を迎えましょう。
②開式
進行係が「ただいまより故○○様の葬式を執り行います」と述べます。
③読経
葬式での僧侶による読経は30分~1時間ほど行われます。
読経の間に僧侶が故人に引導を渡します。
④弔事朗読
弔事を読み、祭壇に供えます。
弔事を読む数は、多くても2~3名分程度です。
⑤弔電披露
進行係が2~3通代読し、残りは氏名・会社名・役職などを読み上げ祭壇に供えます。
⑥焼香
僧侶の合図で、喪主から順番に焼香を行います。
友人・知人やそのほかの一般弔問者が焼香するときは、喪主と遺族は目礼を返します。
⑦閉式
僧侶が退場したのち、進行係が「これを持ちまして、故○○様の葬式が終了いたしました」と述べます。
この後告別式が続く場合は、その旨も案内します。
【図解】葬式・葬儀の服装のマナー
義父の葬儀の服装
つづいて、葬式における服装のマナーをみていきましょう。
何を着るのか
女性用の喪服
男性用の喪服
子供用の喪服
何を着るのか
喪主は、遺族の代表として葬式において最も責任ある立場になります。
そのため、 喪主は葬式では正式礼装を着用するのがマナーです。
喪主や遺族でも略礼装で葬式に臨むこともありますが、本来は、故人から三親等以内の遺族の方は、葬式では正式礼装をするのがマナーといえます。
女性用の喪服
女性 平服
正式礼装の基本はワンピースを着用するのがマナーとなりますが、アンサンブルやスーツでも良いでしょう。
上着はシンプルなデザインのものを選び、ボタンが付いている場合は、共布の包みボタンなどの光沢のない黒色のシンプルなものを選ぶのがマナーです。
レースやサテン素材、生地の織模様が目立つものは避けましょう。
スカート丈は正式礼装では、くるぶしまでのロング丈ですが、 座った時にひざが隠れる長さであれば良いでしょう。
葬式で履くストッキングは、喪主側、参列者側ともに基本は黒のストッキングです。
しかし、肌色のものでもマナー違反とはなりません。
冬場だからと言って、黒いタイツを履くのはマナー違反ですので注意してください。
アクセサリーを着けるときは、白か黒の真珠の一連のネックレスと一粒タイプのイヤリングを選びます。
葬式では結婚指輪ははめておいても構いませんが、派手なデザインの場合は外しておく方がマナーとしては良いでしょう。
ロングヘアの場合は低い位置に一つに束ね、ショートヘアであればピンで押さえてすっきりとまとめます。
葬式ではメイクは色味を抑え最低限のみにして、爪のマニキュアは落としておきましょう。
靴は、黒い靴を選びますが、ヒールが高いと派手な印象ですし、逆に低すぎるものはカジュアルな印象になってしまいます。
3~5cm程度の高さを目安にしてください。
また、バッグを持つ場合は、色は黒一色にまとめます。
黒い地味な刺繍やリボンなら、付いていても問題ないでしょう。
留め具が金色や光沢のあるもの、爬虫類の革は、葬式の席ではマナー違反です。
男性用の喪服
男性 平服
男性が喪主を務める場合、 準喪服であるブラックスーツを着用するのが一般的です。
また、遺族や親族、一般弔問者として葬式に参加するときも、ブラックスーツを着て行けばマナー違反になることはありません。
シャツは白無地で光沢のない、レギュラーカラーのものを着用します。
もし、ベストも着るなら黒にするのがマナーです。
葬式では、ネクタイは黒の無地タイプを結び下げにし、ネクタイピンは着けません。
スーツは黒無地のもので光沢のないものを選びましょう。
形には特に決まりはありませんので、シングル、ダブルのどちらでも構いません。
靴は黒のシンプルなものとし、金具など飾りのないものを選びます。
光沢がないのなら天然皮革でもかまいませんが、爬虫類の革は避けます。
併せて、靴下は黒の無地を選びます。
腕時計や貴金属 などは基本的にはつけないのがマナーです。
子供用の喪服
葬式での子ども服装は、制服があれば制服を着用するのがマナーです。
ないときは、以下を参考にしてください。
男の子
喪服 子供
地味な色合いのジャケットとズボンならOKです。
柄や光沢のない白いシャツを着用します。
ジャケットも黒、濃紺、濃いグレーなどのなるべく柄のないものを合わせます。
ズボンの色はジャケットと同様に黒、紺、濃いグレーといった地味な色合いのものを選びます。
なお、 小学校低学年までなら半ズボンでもマナー違反となりません。
靴はなるべく黒いものを履きましょう。
靴下を履く時は黒か紺などの地味な色とし、イラストや柄がはいっていないものを選びます。
女の子
女の子 喪服
黒や紺などの地味な色合いで、光沢のない素材のワンピースやスカートを選びます。
色が地味でもデザインが派手ですとマナー違反になりますので注意しましょう。
あわせるブラウスは白にします。
髪が短いときはすっきりとまとめて、髪が長い場合は一つないし二つにして低い位置に束ねます。
髪ゴムは黒や茶色を使いましょう。
飾りのあるものは控えたほうが無難ですが、使用する場合は地味な色でシンプルなものにしてください。
靴は黒、靴下も黒などの地味な色、装飾のないものを選びます。
葬式・葬儀の持ち物のマナー
マナー
つづいて、葬式での持ち物のマナーを見ていきましょう。
数珠
扇子
ハンカチ
袱紗
数珠
数珠はキリスト教式の葬式以外には必ず持参するのがマナーです。
短いものでも長いものでも構いません。
忘れがちな持ち物のひとつですし、葬式中になくすことも多いです。
使わないときはカバンやポケットに入れておきましょう。
扇子
葬式会場によっては熱気がこもり、蒸し暑く感じることもあります。
そんなときのために扇子を用意しておくと便利です。
葬式の際は黒い扇子を使用するのがマナー。
夏場は暑さ対策として使えますし、冬場は暖房で暑いときに使うこともできます。
ハンカチ
ハンカチは身だしなみのひとつとして欠かせない持ち物です。
特に葬式の場合、その色目に注意しましょう。
葬式では、色物のハンカチはマナー違反です。
白無地や黒のフォーマルなハンカチか、グレーといった地味な色目のハンカチを持参しましょう。
ハンドタオルの場合も同様です。
袱紗
お香典は、香典袋のまま持参せず、袱紗に包んでいくのがマナーです。
葬式に参列するときの袱紗は、不祝儀用のものを用いましょう。
不祝儀用とは、紫、緑、グレーなどの色目のもののことです。
袱紗の形は、台付き袱紗、金封袱紗、ポケット袱紗など、どれでもかまいません。
【図解】葬式・葬儀の香典のマナー
香典
ここでは、葬式での香典のマナーをみていきましょう。
香典の金額相場は故人との関係性で変わる
香典の渡し方
香典の金額の注意点
香典袋の書き方
香典の金額相場は故人との関係性で変わる
葬式での香典の金額相場は、個人との関係や立場で判断します。
以下の表は、個人との関係性と香典の金額の目安ですが、故人が近親者や親友のときは、多めに包むのがマナーです。
また、個人が所帯主や一家の中心的存在だった場合も多めにします。
また、香典を持参する方自身が肩書のある立場ならば多めに包んだ方が良いでしょう。
故人との関係 金額の目安
祖父母 10,000~30,000円
両親 50,000~100,000円
きょうだい 30,000~50,000円
おじ・おば 10,000~30,000円
その他の親戚 10,000~20,000円
勤務先の関係者 5,000~10,000円
仕事上の関係者 5,000~10,000円
知人・友人、またはその家族 3,000~5,000円
隣近所の人 2,000円~
香典の金額に悩んだときは、同じような立場の人と相談して決めると良いでしょう。
香典の渡し方
葬式での香典の渡し方は、受付の有無で変わってきます。
受付がある場合
受付がある場合は、香典を受付へ渡します。
渡す前に受付の方へ一礼し、お悔やみの言葉を述べるのがマナーですが、黙礼だけで済ませている方も多いです。
お悔やみの言葉は、「このたびはご愁傷様です」や「心よりお悔やみ申し上げます」といったものです。
つぎに、袱紗から香典を出し両手で渡します。
このとき、袱紗はたたんで受付のテーブルに置くか、たたんだ袱紗の上に香典を重ねてお苦のがマナーです。
また、 香典の向きは受付係の人が読めるような向きで渡します。
受付がない場合
葬儀会場に香典を渡す受付が用意されていないこともあります。
その場合は、 ご遺族にお悔やみの言葉を述べ直接手渡すか、焼香する時に祭壇に供えるかになります。
ご遺族に香典を手渡す場合は、受付での挨拶と同じようにしましょう。
香典を祭壇に供える場合はご焼香の直前に供えます。
このとき香典の向きは自分が読めるように置くのがマナーです。
これは、香典が故人ではなく、ご遺族へお渡しするものだからです。
香典の金額の注意点
香典には、包む金額に注意した方が良い点があります。
いくつか見てみましょう。
忌み数字は避ける
香典では、忌み数字から始まらないように金額に気を付けるのがマナーです。
忌み数字とは、4(死)、6(無)、9(苦)などです。
受け取り手が不快な思いをしないとも限らないので気を付けましょう。
偶数はマナー違反
香典の金額では、偶数も避けられています。
これは、割り「切れる」、つまり故人とこの世のつながりが「切れる」という意味でタブー視されています。
香典袋の書き方
香典 御霊前
香典袋は、白無地の袋に水引を掛けたものを使います。
仏教の葬式でしたら、蓮の花が入った袋を使ってもOKです。
葬式で使う表書きは、仏式の場合ほとんどの宗派で「御霊前」ですが、故人が浄土真宗系の場合は「御仏前」を使います。
表書きは薄墨の毛筆や筆ペンで書くのがマナーです。
中包みには、金額と自分の住所・氏名を書きましょう。
金額は、「金〇〇圓也」と書き、〇〇のところはアラビア数字ではなく、大字という漢数字を使います。
大字は、「壱、弐、参、伍、七、捌、拾、佰、萬」などです。
表書きでも中包みでも、受け取り手が読みやすいように意識をして、マナーを守り丁寧な楷書で書くようにします。
葬式・葬儀の焼香のマナー
花 焼香
仏教ではそれぞれ宗派により、葬式での焼香のやり方も細かい部分は違ってきますが、基本的な部分は同じです。
香には「抹香」「線香」の二つがあり葬式や告別式では主に抹香を用います。
焼香方法には立礼と座礼があります。
抹香を座礼で焼香する場合は、回し焼香の形式を取ることもあります。
葬式での焼香は、僧侶の合図で喪主から順番にしていきます。
つづいて、抹香焼香と回し焼香の方法について解説しますので、マナーを確認してみてください。
抹香焼香(立礼の場合)
①遺族・僧侶に一礼。祭壇の一歩手前まで進みでる。
②遺影を向いて拝礼し、祭壇に進み出て合掌。
③右手の親指と人差し指、中指の三本で抹香をつまみ、目の高さに押し頂き香炉の中に静かに落とす。(1~3回繰り返す)
④遺影に再度合掌し、一歩下がって一礼し、さらに遺族・僧侶にやや深めの礼をして下がる。
回し焼香(座礼の場合)
①香炉が回ってきたら会釈しながら両手で受け取り膝の前に置く。
②祭壇の方へ合掌する。
③右手の親指と人差し指、中指の3本で抹香をつまみ、目の高さに押し頂き、香炉の中に静かに落とす。(1~3回繰り返す)
④祭壇を向いて再度合掌する。
⑤香炉を両手でもち、次の人に渡す。
抹香を落とす回数は宗派によって決まりがありますが、1~3回が目安です。
喪主の動作を真似ればマナー違反とはならないでしょう。
お焼香の作法①遺族・僧侶との挨拶
喪主
遺族の親族
一般弔問客
喪主
喪主がお焼香をする際は、席から立ったら、まず僧侶へ一礼します。
そして、忙しいなか駆けつけていただいた、弔問客へも一礼するのがマナーです。
また、一般の弔問客のお焼香が始まると、喪主への一礼があります。
このときはその返事として一礼をしていきます。
遺族の親族
遺族の親族のお焼香の順番になったら、親族は僧侶と遺族へ向かって一礼するのがマナーです。
一般弔問客
一般の方は、並びが進み、 焼香台の手前の遺族の方々がいらっしゃるのと同じ距離に来たら、僧侶と遺族の方へむけて一礼をするのがマナーです。
お焼香の作法②数珠を左手にかける
短い数珠の場合は、合掌以外のときは、房を下にして左手で持つのがマナーです。
合掌のと秋は、両手の人差し指の上にかけ、さらに上から親指を添えるようにして手を併せます。
長い数珠の場合は、合掌以外のときは二連にするなどで左手に持ち、房は下にします。
合掌のときは、両手の中指にかけます。
房は中指の外に出るようにしましょう。
これは、一般的な持ち方ですが、宗派により数珠の持ち方も違ってきますので、故人の宗派でのマナーを事前に確認しておくと良いでしょう。
【例文紹介】葬式・葬儀の挨拶のマナー
挨拶
さいごに、葬式での挨拶のマナーを確認していきましょう。
受付との挨拶のマナー
施主・遺族との挨拶のマナー
避けるべき言葉【忌み言葉】
避けるべき言葉【宗教観に合わない言葉】
受付との挨拶のマナー
葬式での受付での挨拶のマナーを紹介します。
まず、受付についたら一礼します。
そして、お悔やみの言葉を述べましょう。
「このたびはご愁傷様です」
「心よりお悔やみ申し上げます」
「このたびは突然のことでお悔み申し上げます」
「お参りさせていただきます」
最後まではっきりという必要はありません。
実際は軽く黙礼して受付を済ます人が多いようです。
施主・遺族との挨拶のマナー
ご遺族へは、まず気持ちを伝えて心を込めた挨拶をするのがマナーです。
「このたびはご愁傷様です。」
「突然のことで大変でしたね。」
「心からお悔み申し上げます。」
最初からいきなり病状や死因などを聞くのはマナー違反です。
また、 「死」を意味する直接的な表現も避けましょう。
次のような言葉におきかえて話すと良いでしょう。
「死ぬ」→「亡くなる」
「死亡」→「逝去」
「生きているとき」→「お元気なとき」
また、 「頑張って」「元気出して」などの励ましの言葉も、悲しみに沈んでいるご遺族にとっては負担になることもあります。
マナーの本質は思いやりです。
ご遺族の立場で考えて、不快な印象を抱くであろう言葉はなるべく避けるように心がけてください。
避けるべき言葉【忌み言葉】
×
葬式のマナーとして忌み言葉を使うのはマナー違反です。
忌み言葉とは次のような言葉です。
「重ね重ね」「たびたび」などの重ね言葉
「再び」「引き続き」など繰り返しを連想する言葉
「死去」「生きる」など生死の直接的な言葉
忌み言葉とは、死があたかも連鎖していくようなイメージを与えるような言葉をいいます。
不吉な言葉を発すると凶事が起こると考えられていたことから、葬式の際は忌み言葉を避けるようになりました。
現代ではそのような感性も薄れてきていますが、不快に思われる方も多いです。
注意しましょう。
避けるべき言葉【宗教観に合わない言葉】
宗教観にそぐわない言葉も注意しましょう。
例えば、「天国」という言葉はキリスト教の言葉に当たるので、仏教としては「極楽」が相応しいでしょう。
また、「ご冥福をお祈り申し上げます」という言葉は浄土真宗や他宗教の場合、注意が必要な言葉になります。
「冥土」は、人は死後すぐに浄土へ行くという考えの浄土真宗でも不適当な言葉となります。
また、仏教用語のため、神道やキリスト教では使いません。
「冥福」のほかにも、「往生」「供養」「成仏」も仏教用語ですので、神道やキリスト教の場合は使いません。
「ご冥福をお祈り申し上げます」ではなく、「哀悼の意を表します」だとどの宗教の葬式でも使えますので覚えておくと良いでしょう。
葬式・葬儀でのマナーをおさえて故人と遺族へ想いを思いやりましょう
葬式・葬儀の流れから、服装や持ち物、香典、お焼香、挨拶などの様々なマナーを見てきました。
葬式でのマナーは初めてだと少々難しく感じるかもしれません。
しかし、葬式のマナーを知識として覚えておけば、突然の訃報にも対応することができます。
分からないで慌ててしまうより、事前に知っておくだけでもできる対応は違います。
また、マナーの根本にあるのは、相手を思いやる心です。
故人やご遺族を思いやり、身だしなみや所作に気を配れば、自ずとその思いが伝わります。
葬式は故人とのお別れができる最後の場所です。
マナーを覚え、故人との最後のお別れでは、落ち着いて故人を偲ぶ時間を作りましょう。
また、ご遺族への弔慰も伝わるよう、丁寧な所作を心がけましょう。