この記事の結論
霊供膳は仏壇に供える精進料理のことで、法要の時に故人の霊に感謝してもてなします。宗派によって並べ方が違います
霊供膳には親碗、汁椀、平椀、壺椀、高坏があり、それぞれに決まった料理を載せます。
霊供膳(りょうぐぜん/霊具膳)とは
御膳
霊供膳とは、仏壇に供える小型のお膳のことで、一汁三菜と白飯から成る精進料理です。
霊供膳はお葬式や故人が亡くなってから初七日、四十九日、新盆、お盆、春と夏のお彼岸などの法要で供える飲食供養具(おんじきくようぐ)です。
仏壇を新調した際にも「開眼供養」として霊供膳を供えます。
お盆に供えるならば8月13日の夜から16日にかけて仏壇前に置きます。
供養膳(くようぜん)、仏膳椀(ぶつぜんわん)、御霊供膳・御霊具膳(おりょうぐぜん)など呼び方は様々です。
開眼供養に関しては、こちらを参考にしてください。
霊供膳の意味
法事では故人の霊が私たちが生きるこの世に帰って来ます。
霊供膳を供える目的は、帰ってきた故人の霊をもてなし感謝と供養の気持ちを表すことです。
実際には仏壇から下げた後私たちでいただき、食事の楽しみを故人と共有します。
お盆では、16日の夜に送り火で故人の霊を送り出すまで毎食後にいただきます。
宗派によって霊供膳に関するきまりには違いがあり、故人は死後に仏になると考えられている 浄土真宗では霊供膳を用いません 。
飲食供養(おんじきくよう)
飲食供養とは、仏壇に食べ物や茶湯を供えて感謝の気持ちを表しご冥福をお祈りすることです。
香供養・花供養・灯供養とともに大事な供養の形式です。
仏飯器(ぶっぱんき)
霊供膳の料理を盛り付ける入れ物は仏飯器と呼びます。
高坏以外の仏飯器には蓋がついています。
大きさは私たちが普段使う食器よりも一回り小さいです。
仏飯器は4種の椀と5つの杯から成っています。
親椀(おやわん)/ 飯椀(めしわん)
汁椀(しるわん)
平椀(ひらわん)
壺椀(つぼわん)
高坏(たかつき)/ 腰高 (こしだか)
親椀(おやわん)/ 飯椀(めしわん)
深さがあり一番大きい器です。
ごはんを盛ります。
汁椀(しるわん)
深さがあり二番目に大きい器です。
味噌汁や吸い物をよそいます。
平椀(ひらわん)
底の浅い器です。
野菜の煮物を3品程度盛ります。
壺椀(つぼわん)
底が深く一番小さい器です。
煮豆や和え物などの副菜を盛ります。
高坏(たかつき)/ 腰高 (こしだか)
浅く脚の長い器です。
脚の長さは仏様を敬う心を表しています。
香の物を盛ります。
香の物を一汁三菜に数えない地域では、高坏に副菜を、親椀の蓋を裏返したところに香の物を盛り付けます。
東型高坏や中京型高坏、京型高坏、などいろいろな種類の高坏があります。
霊供膳(りょうぐぜん/霊具膳)の宗派ごとの並べ方
方法
宗派や地域によって異なりますが、仏様が召し上がりやすい 仏壇側にお箸が来るように置きます。
ご先祖様と仏様の両方を供養する場合には、箸を二膳置きます。
仏飯器の蓋を取った状態で置きましょう。
霊供膳のうち、親椀と汁椀の配置は宗派に関わらず同じです。
飯椀は左下、汁椀は右下に並べます。
平椀、壺椀、高杯の並べ方は宗派によって異なります。
ご自身の宗派の並べ方をきちんと確認し、間違えないように注意が必要です。
宗派ごとに詳しくご紹介します。
臨済宗、曹洞宗、禅宗
天台宗、日蓮宗、真言宗
浄土宗
浄土真宗
臨済宗、曹洞宗、禅宗
お膳の左上に平椀、右上に高坏、中央に壺椀を配置します。
天台宗、日蓮宗、真言宗
お膳の左上に平椀、右上に壺椀、中央に高杯を置きます。
日蓮宗では朱色の仏膳を用います。
浄土宗
お膳の右上に平椀、左上に壺椀、中央に高杯とるなるように並べます。
浄土真宗
浄土真宗の場合、霊供膳を供えません 。
浄土真宗では、故人は仏様のお力ですぐに極楽浄土へ生まれ変われると信じられています。
そのため他の宗派と違って故人の霊を供養したり冥福を祈ったりすることはありません。
霊具膳(りょうぐぜん/霊具膳)の費用相場
費用
霊供膳の費用相場はデザインや販売場所などによって異なります。
楽天市場では、 千円台から五万円台のものまで非常に幅広い価格帯で販売されています。
霊具膳(りょうぐぜん/霊具膳)の購入場所
購入
霊供膳はほかの供養具と同様に仏具店で購入できます。
また、アマゾンや楽天などのインターネット通販サイトでも販売されており、気軽に購入できます。
お膳、蓋つきの仏飯器、お箸はセットで販売されている場合がほとんどです。
デザインや価格はものによって様々ですのでぜひたくさん見比べて購入してみてください。
霊具膳(りょうぐぜん/霊具膳)の選び方
選択
霊供膳はデザインや価格などが非常に豊富です。
目的や予算、仏壇の雰囲気、ご自身の好みなどを考慮してたくさん比較検討することをお勧めします。
材質
霊供膳もほかの供養具と同様で、材質の種類が豊富です。
各材質にはそれぞれ特徴があるので紹介します。
素材 特徴
プラスチック製 安価で手入れが簡単
陶器製 軽量で見栄え
アルミ製 質感・デザイン性
真珠性 高級感
木製 柔らかい印象
色
色にはとくにきまりがなく赤、青、黄色、ピンクなどさまざまです。
ものによっては模様が描かれているものもあります。
漆器の場合、全体を朱く塗った総朱塗や外側は黒く内側は朱く塗った黒内朱塗などがあります。
総朱塗や黒内朱塗のふちだけを金色に塗ったものもあります。
色を付けなくても問題ありません。
霊具膳(りょうぐぜん/霊具膳)のお手入れ方法
お線香あげ方 手順
霊供膳は、仏壇に供えるものであると同時に、故人が召し上がられるのに使う供養具です。
丁寧にお手入れをし、常に清潔に保つ必要があります。
プラスチック製や陶器製の霊供膳は手入れが簡単なのに対して、木製や漆器、金属製の霊供膳の手入れにはきちんとした手順を踏まなければなりません。
お手入れを始める前に、まずお持ちの霊供膳の材質を確認しましょう。
木製・漆器の霊供膳のお手入れ方法
金属の霊供膳のお手入れ方法
保管方法
木製・漆器の霊供膳のお手入れ方法
洗う時には中性洗剤を用い、クレンザーや研磨剤が入った洗剤は不可です。
すばやく優しく洗浄し、決してこすってはいけません。
洗い終わったら柔らかい布で水気をふき取ります。
耐水性は低いので自然乾燥はやめましょう。
また、乾燥機にかけてもいけません。
金属の霊供膳のお手入れ方法
洗う方法は木製・漆器の霊供膳の場合と変わりません。
しかし、金属製の霊供膳は時間がたつと黒ずんだり錆びたりしてしまいます。
黒ずみや錆びを落とすには金属磨きを使います。
市販の金属磨きを用いて磨き、柔らかい布で優しく拭くときれいになります。
ただし、金メッキが施してあるものにはメッキがはがれてしまうため金属磨きを使ってはいけません。
乾いた布で優しく拭くだけにしましょう。
保管方法
収納する際は直射日光を避けてください。
適度な湿気も必要なので棚の上よりも下の方にしまいましょう。
器を重ねて保管する場合には、間に紙や布を挟むと傷がつきにくくなります。
霊供膳(りょうぐぜん/霊具膳)の料理の内容
精進料理
霊供膳は、精進料理です。
精進料理を食べる目的は殺生や煩悩を避けることです。
そのため、肉や魚、卵などの動物性の食材は使わず、野菜や穀物などの植物性の食材のみ使います。
野菜の中でもニンニクやネギ、ラッキョウ、ニラなど五辛と呼ばれる香りや刺激が強い食材は使いません。
基本的な構成は 、一汁三菜にご飯を加えた5品です。
以下では器ごとの料理と現代の霊供膳の特徴を紹介します。
親椀/飯椀
汁椀
平椀
壺椀
高坏
現代の霊供膳
親椀/飯椀
主食となる白飯を山盛りによそいます。
汁椀
お味噌汁やお吸い物などの汁ものをよそいます。
汁物に使う具やダシにもきまりがあります。
具としては豆腐やおふ、わかめ、油揚げなどを入れます。
また季節の野菜を入れると良いです。
ダシについてはシイタケや昆布などの植物性の食材からとります。
カツオや煮干しなどの動物性の食品からとってはいけません。
平椀
野菜の煮物を3種類ほど盛り付けます。
ニンジンや高野豆腐、コンニャク、イモ類、油揚げ、豆類などの食材を使います。
具体的なメニューは
がんもどきの煮物
さやいんげんの煮物
むすび昆布の煮物
などが考えられます。
献立を決める際には彩りを重視すると良いでしょう。
壺椀
煮豆や和え物など軽めの料理を盛り付けます。
具体的なメニューは
小松菜のナムル
わかめときゅうりの酢の物
ひじき
ほうれん草の胡麻和え
などが考えられます。
高坏
お漬物を盛り付けます。
具体的なメニューは
たくあん
キュウリの塩もみ
ニンジンのぬか漬け
梅干し
などが考えられます。
奈良漬けや京都の千枚漬けのように地域色の強い漬物を盛り付ける場合もあります。
現代の霊供膳
現代では、調理の手間を省くためにフリーズドライにした霊供膳の材料や電子レンジで温めるだけで出来上がる霊供膳が販売されています。
伝統を重視すると抵抗感がありますが、現代のライフスタイルに合ったいまどきな霊供膳と言えます。
霊供膳(りょうぐぜん/霊具膳)の盛り付け方
霊供膳の料理は、基本的に山盛りに盛り付けるのが良いとされています。
仏様が飢えを表す「餓鬼道」に落ちてしまわないようにしっかり食べていただく、という仏教の考え方に由来します。
以下では器ごとに料理の盛り付け方と注意点を紹介します。
親椀/飯椀
汁椀
平椀
壺椀
高坏
注意点
親椀/飯椀
白飯を大盛りによそいます。
上の部分が丸くなるように整えて盛り付けます。
汁椀
通常の汁もののよそい方と変わりません。
平椀
野菜の煮物を 彩りを意識 して盛り付けます。
壺椀
煮豆や和え物を小さな山を作るように、高さが出るよう盛り付けます。
高坏
漬物を2切れ盛り付けます。
3切れは「身を切る」ことを意味するためマナー違反です。
注意点
漆器は熱にあまり強くないため、高温の料理をすぐに器に盛り付けてはいけません。
霊供膳(りょうぐぜん/霊具膳)を下げるタイミング
時間
食べ物が痛む前に下げる
霊供膳は、毎食食事をするときに仏壇にお供えし、食べ物が悪くならないうちに下げるのが基本です。
夏場など暑い時期は特に食べ物が傷みやすいため早めに下げます。
また、食事が冷めた段階で下げる場合もあります。
故人にお供えするものなので、食事が冷めた時を故人が召し上がり終えた時と捉えるのです。
霊供膳を下げる際には仏壇に対して「お下げします」と一言添えましょう。
下げた食事は家族でいただく
下げた食事は家族全員でいただくのが基本です。
故人にお供えした食事を私たちがいただくことで喜びを共にできるからです。
食事が傷んでしまった場合は塩でお清めし、手を合わせて一礼してから捨てるのがマナーです。
霊供膳(りょうぐぜん/霊具膳)で故人とつながる
霊供膳を供えすることで私たちは故人に感謝の気持ちをあらわせきます。
そしてお下げした食事を私たちがいただくことで、食事の楽しみを故人と一緒に感じることができます。
つまり、霊供膳を供えることは私たちの心と故人の心をつなげることなのです。
この記事で霊供膳について知り、故人と心を通わせるきっかけにしましょう。