この記事の結論
戒名は必ず必要ではありません。事前に家族や寺院の了承を得ておき、宗教的な儀式を行いづらいことに注意します。
戒名の費用は20万円から100万円です。位号のランクによってより高額になります。
戒名はいらないの?
お墓
戒名 とは、故人が仏の世界で持つ名前であり、仏門に入り、戒律を守る証になります。
基本的には故人が亡くなった後に僧侶から授けられ、位牌に彫られます。
しかし、 戒名は絶対にマストではありません 。
たしかに 戒名がないと宗教的な儀式が行えないことが多い です。
特に菩薩寺で葬儀や納骨を行う場合には戒名が必須となります。
しかし、最近では供養の仕方は様々で、先祖代々のお墓に入る以外に永代供養や海洋散骨などの無宗教葬儀もあります。
位牌に関しても、戒名ではなく、故人の生前の名前を入れることができます。
この場合、名前の後に「之霊位」とつけます。
こうすることで戒名と同様の扱いになります。
最近では「之霊位」さえつけずに、故人の名前だけを入れることもあります。
また、菩薩寺を除き、葬儀社や僧侶の派遣サービスなどを通じて、戒名がなくても僧侶を呼ぶことができます。
絶対に必要ではないことから「戒名はいらない」と判断しても良いのです。
戒名に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
戒名はいらないと思う主な理由
理由
ではなぜ戒名はいらないと思う理由としては主に以下の二つが挙げられます。
信仰心がない
費用が高い
信仰心がない
戒名はいらないと思う理由の一つに信仰心がないことが挙げられます。
仏式には基本的に戒名が必要ですが、仏式にこだわりがない人は戒名はいらないと考えます。
宗教的な供養ではなく、永代供養や海洋散骨など無宗教儀式が良いと考えるなど、特に信仰心のない人は戒名はいらないと感じるのです。
費用が高い
戒名はいらないと考える理由には費用が高いことも挙げられます。
仏式では僧侶に対してお布施を払うのがマナーですが、戒名を授ける際に発生する戒名料がお布施の大部分を占めています。
戒名料は戒名のランクを表す位号によって異なり、位号は故人の社会的地位や菩薩寺への貢献度などによって変わります。
戒名のランクと費用
費用
以下は代表的な位号とそのランクです。
信士(しんし)、信女(しんにょ)
居士(こじ)、大姉(だいし)
院信士(いんしんし)、院信女(いんしんにょ)
院居士(いんこじ)、院大姉(いんだいし)
信士(しんし)、信女(しんにょ)
最も多く一般的な位号です。
仏弟子に授けられます。
戒名料の相場は 20~30万円 です。
居士(こじ)、大姉(だいし)
昔は貴族や武家の家柄だけに許されていた位号です。
今は特に信仰心が篤い人や菩薩寺に貢献した人に授けられます。
かかる費用は 30~50万円 が相場です。
院信士(いんしんし)、院信女(いんしんにょ)
社会的地位が高い人や社会に大きく貢献した人だけに許されていた位号です。
「院」がつくとランクの高い戒名になります。
かかる費用は 50~80万円 が相場です。
院居士(いんこじ)、院大姉(いんだいし)
最高位の位号です。
実際に必要な金額は 100万円以上 となります。
以下が戒名と戒名料の相場の一覧表になります。
位号 戒名料
信士(しんし)、信女(しんにょ) 20~30万円
居士(こじ)、大姉(だいし) 30~50万円
院信士(いんしんし)、院信女(いんしんにょ) 50~80万円
院居士(いんこじ)、院大姉(いんだいし) 100万円~
ただし、戒名料の相場は地域や宗派によって異なるので注意してください。
戒名はいらない?①【無宗教葬にする】
null
信仰心がないために戒名料はいらないと思うならば、 無宗教葬 をお勧めします。
無宗教葬は文字通り宗教色のない葬儀のことです。
永代供養 や 海洋散骨 は無宗教葬にあたります。
永代供養とは、ご遺族や子孫の代わりに霊園が寺院などが故人を供養することです。
海洋散骨とは、細かく砕いた故人のご遺骨を海に撒く供養の方法です。
宗教や宗派にこだわりがない人に向いています。
戒名はいらない?②【自分でつけることも可能】
予算の都合で僧侶から授かる戒名はいらないと考えても、戒名自体はほしい方もいいます。
この場合は、菩薩寺がある場合を除いて一定のルールに従ってご自身で戒名をつけることができます。
菩薩寺があるならば、ご自身のをつくると納骨を拒否される可能性が高いです。
しかし、公共の霊園や民営の墓地などに入るならば問題ありません。
あらかじめ菩薩寺に相談してみるのも良いでしょう。
戒名のルール
戒名は 院号 、 道号 、 戒名 、 位号 の4つで構成され9文字となるのが基本です。
院号
道号
戒名
位号
院号
仏教に深く帰依した証となる部分です。
菩薩寺に大きく貢献した場合以外ではつけないのが一般的です。
「院」が基本的な院号で、位が高くなると「院殿」とつけます。
最近では「軒」や「庵」も増えています。
道号
元々は仏の道を究めた者の別名でした。
今では 故人の人柄や趣味、仕事などに関わる文字をつけて個性を出す部分です。
例えば一休さんの「一休」は実は道号です。
これは悟りの境地を開いている彼の姿を表しています。
故人が優しい人物だったならば「優雲」、真面目な人物だったならば「誠岳」など字面を見ただけで故人について分かるようになっています。
戒名
本来「戒名」と言えばこの部分を指します。
2文字が基本で、故人の名前から1文字、故人が尊敬していた人の名前から1文字とるのが最も簡単方法です。
その他にも故人の人柄や趣味、仕事など故人の人となりを表す文字や、御仏や経典からとる事もあります。
御仏の場合、大日如来ならば「照」、阿弥陀如来ならば「慈」、真言宗ならば「真」、浄土宗ならば「浄」などが考えられます。
浄土真宗では戒名ではなく「法名」と言い、「釋」の字を2字の前につけます。
位号
ランクを示す部分であり、これによって戒名料の相場が変わります。
成人男性の場合は 「信士(しんし)」「居士(こじ)」「院信士(いんしんし)」「院居士(いんこじ)」。
成人女性ならば 「信女(しんにょ)」「大姉(だいし)」「院信女(いんしんにょ)」「院大姉(いんだいし)」 が一般的です。
後になるほどランクが高くなります。
未成年の場合は、3歳くらいまでは「嬰子(えいし)」「嬰女(えいじょ)」、5歳くらいまでは「孩子(がいし)」「孩女(がいにょ)」、15歳くらいまでは「童子(どうじ)」「童女(どうにょ)」とつけます。
有名人の戒名を参考にする
ご自身で戒名をつける際には有名人の戒名を参考にしてみてください。
樋口一葉:「智相院釋妙葉信女」
美空ひばり:「茲唱院美空日和清大姉」
樹木希林:「希鏡啓心大姉」
福沢諭吉:「大観院独立自尊居士」
ジャイアント馬場:「顕峰院法正日剛大居士」
桂歌丸:「眞藝院釋歌丸」
樋口一葉:「智相院釋妙葉信女」
女性らしくしなやかな雰囲気の文字が人柄を表しています。
美空ひばり:「茲唱院美空日和清大姉」
芸名がそのまま入っています。
また、「唱」の字から歌手であったことが分かります。
樹木希林:「希鏡啓心大姉」
芸名と本名から1文字ずつとっています。
また、「希」の字は故人が役者として「希(まれ)」な存在であったこと、「鏡」の字は「役者は人の心を映す鏡」という故人の口癖からとっています。
この戒名は故人のご家族が相談して決めたと言われています。
福沢諭吉:「大観院独立自尊居士」
「独立自尊」は故人が生前に唱えていた言葉です。
ジャイアント馬場:「顕峰院法正日剛大居士」
「顕峰」の2文字によって長身という故人の特徴が表れています。
桂歌丸:「眞藝院釋歌丸」
「眞藝」の2文字には真摯に落語に取り組んだ姿勢を表しています。
また「眞」には故人の生まれ育った町が横浜市の真金町であることも示しています。
「戒名はいらない」の注意点
! 注意
戒名は供養に必須ではありません。
また、ご自身でつけても構いません。
しかし、「戒名はいらない」と決める際には以下の点に注意が必要です。
無宗教葬で良いのか
親族の同意を得られるのか
寺院の同意を得られるのか
無宗教葬で良いのか
「戒名はいらない」と仏式葬儀をしないはほぼ同義であり、無宗教葬を選ぶことです。
信仰心がない場合は構いませんが、迂闊に戒名はいらないと決めると大変です。
十分理解したうえで判断してください。
親族の同意を得られるのか
ご自身が「戒名はいらない」と決めたとしても、親族が同意するとは限りません。
お墓は先祖代々の霊が眠っている場所です。
戒名はいらないと考えた際、はお墓に入れない可能性が非常に高くリスクのある事項です。
また、習慣的にも戒名がないと世間体が立たないと考える方もいるため、戒名はいらない事に反対する家族もいる事が考えられます。
その際、 戒名はいらないと考える理由をきちんと説明して納得してもらう必要があります。
お墓に関する問題はご自身だけで決める事は避けて下さい。
寺院の同意を得られるのか
親族の同意を得られたとしても寺院の同意を得なければきちんと供養することはできません。
基本的に戒名がないと菩薩寺で納骨することは不可能です。
寺院と対立した場合、離壇(りだん)や訴訟につながる危険もあります。
離壇料に関する明確な法律はありませんが、離壇の手続きには菩薩寺の過去帳や埋葬証明書などいくつかの証明書が必要になり手間がかかります。
深い悲しみの中、葬儀や法要に追われているいるときに厄介なトラブルは避けたいものです。
穏便に進めるためには、戒名はいらないとする旨を寺院にきちんと説明し、同意を得ることが大切です。
菩薩寺ありの供養を望む場合でも望まない場合でも絶対に必要になります。
故人が「戒名はいらない」と表明していたら
戒名 墓石
ご家族や親族が戒名は必要だと考えていても、故人が生前に「戒名はいらない」と表明している場合もあります。
このときは 故人の意思を優先するのをお勧めします。
ただし、お墓は一人のものではなく家に関わるものなので、故人の意思を尊重しつつ、戒名は本当にいらないのかご家族や親族でしっかりと話し合うのが重要です。
戒名がいるかいらないかは一人の問題ではない
以上のように戒名は絶対にマストではありません。
様々な理由から「戒名はいらない」と判断する人がいます。
重要なのは、戒名の必要性の有無は、ご自身だけの問題ではないく、家族全体に関わる事項です。
ご自身が「戒名はいらない」と決めたとしても、周囲の人が賛成してくれるとは限りません。
また、寺院の同意も得なければ、後の供養の際のトラブルにも繋がる可能性があるため周囲の人や菩薩寺との相談は欠かせません。
「いらない」とする場合には、しっかりとした理由を持ち、関わる人全てで「いらない」という事に対し、意見を一致させていく事が重要です。
❓ 戒名はいらない?
戒名は絶対に必要になるものではありません。しかし、菩提寺での供養などの宗教的な儀式を行えない場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。
❓ 戒名にかかる金額相場は?
戒名をもらうには20万円から100万円ほどかかります。位号としてランクがあり、名称と相場が変わるのが特徴です。詳しくはこちらをご覧ください。
❓ 戒名がいらない場合葬儀はどうする?
無宗教葬として永代供養や海洋散骨などの自然葬を選べます。また、公共の霊園を選ぶ場合戒名を自分で付けることもできます。詳しくはこちらをご覧ください。
❓ 戒名の付け方はどんなもの?
院号・道号・戒名・位号という4つの言葉を組み合わせて付けます。浄土宗では誉号など、宗派によって付け方が変わるのも特徴です。詳しくはこちらをご覧ください。