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お金のこと

2024.12.12

自営業の老後資金はいくら必要か?公的年金などの試算と老後の備え

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老後に向けた備えは欠かせませんが、会社員の方よりももらえる年金が少ないと言われている自営業の方は、一体どれくらいの備えをしておけばよいのでしょうか。

この記事では、老後に必要とされている資金や、年金受給を加味した老後資金のシミュレーション、自営業者が老後に備える方法を紹介します。

2019年に金融庁の金融審議会が公表した報告書をきっかけに巻き起こった、老後2,000万円問題。

老後に向けた備えが欠かせませんが、自営業は会社員の方よりももらえる年金が少ないと聞いたことがある方も多いでしょう。自営業の方は、一体どれくらいの備えをしておけばよいのでしょうか。

そこでこの記事では、老後に必要とされている資金や、年金受給を加味した老後資金のシミュレーション、自営業者が老後に備える方法を紹介します。

そもそも老後に必要な資金はいくらか

まずは、実際に高齢者の方の生活費がどのくらいかかっているかをチェックしてみましょう。

総務省統計局の調査によると、 2023年時点の高齢者の消費支出は次のようになっています。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯:250,959円
65歳以上の単身無職世帯:145,430円
参考:「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」

仮にこのまま20年生活した場合、支出の合計は次のとおりになります。
夫婦のみの世帯:250,959円×12ヵ月×20年=60,230,160円
単身世帯:145,430×12ヵ月×20年=34,903,200円
なお、厚生労働省の「令和5年簡易生命表の概況」によると、65歳時点の平均的な余命は男性が19.52年、女性が24.38年となっています。また、平均寿命は男性が81.09年、女性が87.14年です。

平均寿命は、2021~2022年にはやや低下が見られたものの、おおむね右肩上がりに推移しています。先ほどの試算よりもさらに増える可能性があるといえます。

公的年金における自営業と会社員の違い

年金手帳
先ほど試算した老後にかかると想定される消費支出に対して、収入の大部分を担うのが公的年金です。公的年金の基本的な仕組みと、自営業と会社員の支給額の違いを解説します。

年金の基本的な仕組み

日本の年金制度は、3階建て構造になっています。
1階部分は、すべての国民に共通する国民年金(基礎年金)、2階部分は厚生年金です。この2つが公的年金で、3階部分は私的年金(任意)と呼ばれます。

国民年金は、日本在住の20歳以上60歳未満の方すべてに加入義務がある年金で、自営業の方は基本的に国民年金のみ加入しています。高齢になる、障害を負う、亡くなる、というときに備えるものです。

65歳から支給される老齢基礎年金もその備えの一つで、受給資格期間(保険料納付済期間+免除期間など)が10年以上ある場合に支払われます。

自営業(国民年金)と会社員(厚生年金)の年金支給額

公的年金は、自営業の場合は1階部分の国民年金から、会社員の場合は国民年金にプラスして2階部分の厚生年金から支払われます。つまり、自営業のほうがもらえる年金は少ないということです。

「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和5年9月現在)」によると、厚生年金保険における老齢年金の平均年金月額は147,600円、国民年金の老齢年金・25年以上の受給者の平均年金月額は57,602円となっています。

国民年金支給額は厚生年金支給額の2分の1以下です。自営業の方は老後の備えがより求められるといえるでしょう。

自営業者の老後資金シミュレーション

計算する夫婦
ここまで紹介した老後に想定される消費支出と、年金の支給額から、自営業者が老後に備えておきたい資金を世帯別にシミュレーションしてみましょう。

単身の場合

2023年(令和5年)9月現在の平均年金月額を、20年間もらった場合の年金額は次のとおりです。
57,602円×12ヵ月×20年=13,824,480円

これを、最初の見出しで紹介した単身世帯の老後必要額と差し引きすると不足額は以下のとおりになります。
34,903,200円-13,824,480円=21,078,720円の不足

夫婦で二人とも自営業(国民年金)の場合

夫婦二人とも自営業者、または一方が専業主婦(夫)の場合、受給する年金はどちらも国民年金です。

同じように、2023年(令和5年)9月現在の平均年金月額を、20年間もらうと仮定します。
57,602円×12ヵ月×20年×2人=27,648,960円

これを、最初の見出しで紹介した夫婦のみ世帯の老後必要額と差し引きすると不足額は以下のとおりです。
60,230,160円-27,648,960円=32,581,200円の不足

これを一人当たりに換算すると16,290,600円なので、単身世帯よりは不足見込み額が減ります。

夫婦のうち一人が自営業の場合

夫婦のうち一人が自営業で、もう一人が会社員の場合は、一部厚生年金も支払われます。それぞれの20年分の支給額を試算すると次のようになります。
自営業分:57,602円×12ヵ月×20年=13,824,480円
会社員分:147,600円×12ヵ月×20年=35,424,000円
合計:13,824,480円+35,424,000円=49,248,480円


最初の見出しで紹介した夫婦のみ世帯の老後必要額と差し引きすると不足額は以下のとおりです。
60,230,160円-49,248,480円=10,981,680円の不足

一人当たりに換算すると5,490,840円で、国民年金のみ受給の場合よりも不足見込み額が大幅に減ることがわかります。

自営業者が老後に備えるためのおもな私的年金

自営業の方は、会社員の方に比べて年金受給額が少なく、その分備えが必要であることがわかりました。

そこでポイントとなるのが、年金制度の3階部分に当たる私的年金です。
私的年金は任意で加入する年金であり、上手に活用することで老後の備えにつながります。おもな私的年金を3つ紹介します。

国民年金基金

国民年金基金は、自営業やフリーランスの方など国民年金被保険者のみが利用できる、年金システムです。
この制度は、会社員の方が加入する厚生年金と同じ位置付けと考え、公的年金の2階部分としてみなすこともできます。

国民年金とセットで加入することで、掛金と加入年数に応じた年金を上乗せして受け取ることが可能です。

65歳から生涯受け取れる終身年金のため、長い老後生活の支えになるでしょう。掛金の額は自由に選べて、月額の上限は68,000円です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金(国民年金や厚生年金)に上乗せして、自分で老後資金を準備するための制度です。

加入者は、掛金を使って投資信託や定期預金などの金融商品を運用し、その運用結果を60歳以降に受け取ります。

受け取り方は全額まとめて受け取る方法と分割で受け取る方法とがあり、自営業の方にとっては退職金のように用意することも可能です。

掛金は、月額5,000円から拠出限度額までの間で任意の額にすることができます。

また、掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されるのもメリットです。

小規模企業共済

小規模企業共済は、中小企業の経営者や役員、個人事業主が将来の退職金を計画的に準備できる制度です。

受け取る共済金は、一括で受け取る方法と、分割して受け取る方法のどちらかを選べるため、自分のライフプランに合わせて活用できるでしょう。

掛金は、月々1,000円から最大70,000円までの範囲で設定でき、500円単位で金額を調整可能です。掛金を支払うのが難しい月は減額するなどの対応もできます。

さらに、個人型確定拠出年金(iDeCo)と同様に、掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できるメリットがあります。

その他の自営業者の老後資金対策

投資
最後に、私的年金のほかに、自営業の方の老後資金対策となる方法をいくつか紹介します。

国民年金の付加年金

付加年金とは、国民年金の掛金に月額400円を上乗せして納める年金です。金額は月額400円で固定です。200円×付加保険料を納めた月数分が老齢基礎年金に加算され、老後の年金受給額を増やすことができます。

ただし、国民年金保険料納付の免除や、国民年金基金の加入を継続している方は利用できないので注意が必要です。

公的年金の繰り下げ受給

公的年金の繰り下げ受給とは、65歳から始まる老齢基礎年金の受け取りを、最大75歳まで繰り下げる方法です。繰り下げることで受給後の年金支給月額が増えていく仕組みで、繰り下げる期間が長いほど増額率も高まります。

1ヵ月繰り下げるごとに0.7%、最大で84%の増額になります。65歳以降も収入がある方や、65歳時点で十分な貯蓄がある方に特にメリットのある方法です。

リースバック

リースバックとは、不動産を売却して得た資金を受け取りつつ、その不動産を賃貸として借りて住み続ける取引方法です。

思い入れのある家から住み替えることなく、まとまった資金を調達でき、老後資金の補填になります。ただし家賃の支払いが発生します。

リースバックをするのに、年齢や借り入れの有無などの制限はほとんどありません。また、不動産を売却して得た資金の使い道にも制限がないため、事業資金にあてることができます。

老後の備えとしてはもちろん、事業を継続したい自営業の方にもメリットがある方法です。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、不動産を担保に生活資金などを借り入れて、契約者が亡くなったあとに借入金を一括返済する方法です。

借入金の返済は、相続者がその不動産を売却するなどして行ないます。

リバースモーゲージのメリットは、リースバックと同じく、住み替えをせずに老後資金を確保できることです。ただし、リースバックとは違い、借り入れた資金の使い道はある程度限定されています。

また、家賃の支払いは発生しませんが、固定資産税を支払わなくてはなりません。利用する金融機関によっては、利息分のみの返済も月々発生します。

金利の変動や不動産価値の変動の影響を受けるため、計画的な利用が求められる方法です。

新NISA

新NISA(ニーサ)とは、投資の利益が非課税になる税制優遇制度で、2024年1月1日から開始されました。通常、投資で得た売却益や配当金には約20%の税金がかかりますが、新NISAはかかりません。

従来のNISAと比べ、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になり、年間投資額の上限が最大360万円に、非課税で保有できる限度総額が最大1,800万円に拡大しました。

さらに非課税期間が無期限化されたため、長期的に運用することができます。

ただし新NISAは投資の一種ですので、元本割れする場合もあります。
正しい知識を持ち、生活費を圧迫することのないように余裕を持った運用が大切です。

65歳以上も働く

自営業には定年がないため、元気なうちは働くことができます。公的年金の繰り下げ受給を利用しつつ、可能な限り働いて資産を増やすのも一つの方法です。

年金をもらいながら働き続けることも可能です。ただし、ケガや病気などで働けなくなるリスクも想定しておきましょう。

自営業の方もできる資金対策で安心の老後を

自営業の方に支払われる年金は基本的に老齢基礎年金のみで、厚生年金をもらうことになる会社員の方より、年金受給額は少なくなります。

今から積み立てられるさまざまな制度を利用し、老後に備えることが欠かせません。商品によって優遇制度やリスクが異なりますので、自分に合った資産形成の方法を選ぶことが大切です。

不動産がある方はリースバックやリバースモーゲージの活用も視野に入れて検討するとよいでしょう。老後資金対策は早めに始めるほど力強い備えになります。

監修者
金子 賢司(かねこ けんじ)

東証一部上場企業(現在は東証スタンダード市場)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
<保有資格>CFP

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