自宅墓とは
仏壇
自宅墓 とは、遺骨を骨壷に詰めたのちに、さらに骨壷よりも少し大きいサイズの石棺に入れて、自宅で供養するお墓のことを言います。
自宅の庭から仏間、床の間、家具の上まで好きなところに置くことができるという魅力とともに、新しい供養のかたちとなっています。
自宅の庭に墓はたてられる?
はてな
自宅の庭に、大切な方のお墓を作りたいと考える方も多いのではないでしょうか。
ここでは、実際に自宅の庭にお墓を建てるという行為自体に問題はないのかという疑問について説明していきます。
「墓地、埋葬等に関する法律」
墓地の許可申請はできるか
遺骨を埋葬せず墓碑を建てる
「墓地、埋葬等に関する法律」
自宅の庭にお墓を建てることを考える上で、避けて通れないのが、昭和23年に制定された「 墓地、埋葬等に関する法律 」です。
この法律は、 墓地、納骨堂または火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること を目的として制定され、その中の「埋葬等に関する原則」には「 埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない 」という記述が存在します。
そのため、現代の日本において、遺骨を埋葬してよいのは正式に墓地として認可を受けている場所だけであり、それすなわち 自宅の庭へ勝手にお墓を作ることはできない ということです。
地方などで稀に見かけることのある、自宅の敷地内にお墓を設けているケースは、この法律が制定される前、戦前からのもので 屋敷墓 と言われています。
墓地埋葬法に関しては、こちらも参考にしてください。
墓地埋葬法とは?火葬や埋葬の規定を解説!散骨は違法?合法?判例も紹介
第三人生編集部
墓地の許可申請はできるか
先ほど紹介した「墓地、埋葬等に関する法律」を見ると、墓地としての許可さえ得れば、自宅の庭にもお墓を建ててもよいのではないか、と考えるのも自然です。
墓地の経営をする際には都道府県都知事の許可が必要で、中核市であれば市長の許可が必要になります。
ですが、これは誰でも許可を得ることができるというわけではなく、ほとんどの自治体は宗教法人か公益団体に限定しているようです。
そのため、NPOでもお寺でもない個人が、 自宅の敷地を墓地として許可を得るのは難しい と言えるでしょう。
遺骨を埋葬せず墓碑を建てる
どうしても故人を供養する対象としてのお墓を自宅の庭に設けたいという場合には、実際に遺骨を埋葬するお墓を別の場所に作り、自宅の庭には墓碑だけを設置する、という考え方があります。
故人のイメージに合ったものや、戒名を刻んだ墓碑などを自宅の庭に建てて、身近に供養先を用意するというものです。
そこに遺骨が存在しなくとも、故人を偲ぶことは十分に可能で、個別の弔い場所として、実際の遺骨の埋葬先に永代供養墓を選んだ人などに多く選択されています。
この方法は、西日本においてかつてから存在する「 両墓制 」という習俗に
近くなっています。
両墓制とは、実際に埋葬する墓を 埋め墓 、お参りを行う墓を 参り墓 として分けて弔う方法のことで、参り墓の方には何も埋葬されていないものの、魂が宿るとされていました。
この考えに沿って、遺骨を納骨した場所を埋め墓、自宅の庭に設置した墓碑を参り墓として捉えると、弔い方としては問題なく、むしろ伝統的な形式であると考えられます。
自宅墓にかかる費用
お金
自宅墓として供養を行う、という中にも以下の2パターンが存在します。
遺骨の全てを自宅墓へ入れる
遺骨の一部を自宅墓へ入れる分骨
自宅墓とする際にも、遺骨の全てを自宅保管しなくてはいけないわけではなく、遺骨の一部のみを自宅保管するという選択肢もあるということです。
遺骨の全てを自宅墓へ入れる
故人の遺骨を全て自宅墓に入れる際には、全ての遺骨が収められた骨壷が入る、大きめの石棺を設置する必要があります。
遺骨を収めた骨壷ごと収蔵できる石棺は、縦・横・奥行きが全て30cm程度のもので、 20万円程度 での購入が可能です。
石棺のデザインは様々あり、自身の好みや、故人の生前のイメージや趣向に沿ったものを選ぶことができます。
また、将来的に追加で骨壷を収蔵する予定があれば、さらに大きいサイズの石棺の購入を検討しても良いでしょう。
10万円程度のものから数百万円 するものまで、価格は幅広く、数多くあります。
遺骨の一部を自宅墓へ入れる分骨
自宅で故人の供養をしたいものの、先祖のお墓に入れたり、新しくお墓を建てて入れたい、という方にオススメの方法です。
仏教においては、昔から 分骨 と呼ばれる形式で、一部の遺骨を各宗派の大本山に納骨するという行為が行われていたため、分骨が故人の成仏や供養に影響を与えることはありません。
そこで、故人の生前の宗派や考え方に合わせて、遺骨の一部を散骨したり、樹木葬を行ったりして供養し、残りの一部の遺骨を自宅墓に入れるという人が増えてきています。
遺骨の一部を自宅墓に入れるという際には、 2万円〜5万円程度 で販売されている小さいサイズの骨壷を用いることができます。
自宅墓とは少し異なりますが、一部の遺骨の手元供養には、遺骨アクセサリーやダイヤモンド加工などの選択肢もあります。
分骨に関しては、こちらも参考にしてください。
分骨とは?費用や分骨証明書の手続き、おすすめの骨壷も紹介!
第三人生編集部
自宅墓のメリット
メリット
これまで自宅墓について紹介してきましたが、では自宅墓にするメリットとは何なのでしょうか。
ここでは以下の4点のメリットについて説明します。
気楽に供養を行える
費用が抑えられる
故人を身近に感じられる
継承者への負担が少ない
メリット①気楽に供養を行える
遺族も当然のことながら歳を重ねます。
足腰が弱ってきたり、体調の変化なども避けられません。
体力の衰えなどを感じ始める中、故人の遺骨を埋葬しているお墓が遠くの霊園や墓地であると、頻繁のお参りはもちろん、命日やお盆などの節目でのお参りも難しくなってくるでしょう。
ですが、自宅墓であれば、お墓までの長時間の移動の煩わしさや、お参りにいく日程の調整などを気にすることなく、気楽に供養を行うことができます。
メリット②費用が抑えられる
霊園や寺院に新しくお墓を購入する場合、暮石などの購入費用は全て合わせると数百万円程度まで上ることも珍しくなく、それに加えて管理費も必要になります。
ですが、自宅墓での遺骨の保管方法や管理の際に必要となる物品は、国の法律や地方自治体の条例などによって定められていないため、供養方法の選び方によっては費用を大きく抑えることが可能です。
メリット③故人を身近に感じられる
例えば、配偶者などを亡くされた際には、その最愛の相手を暗いお墓の中に閉じ込めるイメージに疑問を抱く方も少なくないと思います。
死生観や信仰心によっても異なりますが、最愛の人が自分のもとを離れて違う世界へ旅立った、という考え方よりも、亡くなった後も変わらず自分のそばにいてくれている、という考え方を好む人もいるでしょう。
そのような考え方の元では、故人を常に身近に感じることのできる自宅墓は、心の支えになる供養方法と言えるでしょう。
メリット④継承者への負担が少ない
2つ目のメリットでも紹介したように、自宅墓はお墓自体の費用が抑えられることに加えて、管理費がかからないことが特徴として挙げられます。
霊園や墓地にお墓を建てた場合には、自身が亡くなった後など、後継者の方がそのお墓を引き継ぐことになります。
ですが、自宅墓の場合には、遺骨及び骨壷、石棺を引き継ぐため、後継者の方への管理料などの負担がありません。
お墓の承継に関しては、こちらも参考にしてください。
お墓の相続は誰がするの?承継者の決め方や費用・手順を解説!
第三人生編集部
自宅墓のデメリット
デメリット
さて、先ほど自宅墓のメリットについて紹介してきましたが、ではデメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは以下の3点のデメリットについて説明します。
衛生上の問題
※粉骨による対策
遺族からの反対
遺骨の行き先
デメリット①衛生上の問題
日本には四季があり、1年を通して乾燥した気候というわけではありません。
雨が多く降る梅雨があり、気温が極めて高くなる夏もあり、大雪の降る寒い冬もある 温暖湿潤気候 に属します。
そのため、自宅墓を設置する場所の環境にも気配りが必要です。
風通しが良く、湿気が多くない場所が好ましく、うっかり湿気の多いところに放置してしまおうものなら、焼骨を済ませた遺骨であってもカビが生えてしまうなど、衛生上良くない状態になってしまいます。
※粉骨による対策
故人の遺骨を自身で管理することを決めたのであれば、故人の供養のためにも適切な管理と保管を心がけたいものです。
この問題の解決策として一般的なのが、遺骨をパウダー状にする 粉骨 を行っておくことです。
粉骨にしてしまえば、保存がしやすい上に清潔なまま管理を継続することができます。
粉骨した遺骨を、小分けにして真空パックへ詰めてから桐箱や骨壷へ収納します。
遺骨が入っていた元の骨壷よりも小さいサイズの骨壷での保管が可能になることに加えて、真空パックに詰めたことによって外気に触れることもなくなり、カビが生えて衛生状態が悪化することも防げます。
粉骨は大体2万円前後で代行を依頼することができるため、自宅での長期保管を考える場合には検討してみるのが良いでしょう。
粉骨に関しては、こちらも参考にしてください。
【口コミ有り】粉骨の手順や業者ごとの料金と選び方!その後の遺骨の供養も
第三人生編集部
デメリット②遺族からの反対
故人が自分の配偶者や両親など、自分にとって最愛の人であり、遺骨の手元での保管を望む場合にも、他の遺族の方が好ましく思わない可能性も無いとは言い切れません。
自宅墓自体、供養方法として例外的なものではありませんが、世間一般としては、寺院や霊園にお墓を設けて納骨するのが当然といった風潮があります。
自身が自宅墓での遺骨の埋葬を強く望む場合には、その後のトラブルを防ぐためにも、反対する遺族の意見をそのまま押し切るのではなく、妥協点を探るような努力を行うべきです。
例えば、 分骨 と呼ばれる方法で、故人の遺骨の大部分は墓地に納骨し、分骨してもらった残りの一部を自宅で供養する形をとるなどして、反対している遺族との調整を行う手があります。
先祖代々の墓地が遠方に存在し、お参りに行くことの煩わしさなどを訴えるなども、反対する遺族を納得させることに繋がるかもしれません。
デメリット③遺骨の行き先
手元供養の場合、生きている間は、自身で管理すれば良いので問題ないのですが、自身が亡くなった後の遺骨の行き先が不安というデメリットが存在します。
故人が自身の配偶者であれば、手元供養の場合には遺骨が取り出せるため、故人と自身を同じ1つの骨壷にまとめて永代供養してもらうなども良いでしょう。
その際には、事前に夫婦で話し合って供養先を探し、自らの遺骨の扱いについて、親族らへ意思表明しておくことが重要になってきます。
事前の話し合いや、意思表明を怠ると、遺族の方々を悩ませてしまう他に、自らの望まぬ形で遺骨を扱われてしまうこともあるので注意が必要です。
ペットの自宅墓
犬
ペットの場合は、人間と異なり、自宅の庭に実際に遺骨を埋葬してお墓を建てることが可能です。
一般的なサイズの暮石を用いた、立派なお墓を自宅の庭に設けても、法律に触れることはありません。
ですが、ペットの遺体をそのまま埋める土葬を自宅の庭で行うのは、あまり好ましいとは言えません。
土葬の場合には、うっかり浅く埋めてしまっては、匂いを嗅ぎつけた野生動物が集まってきて掘り起こしてしまったり、動物の遺体から放たれる独特な匂いが近隣の方に不快感を与える可能性もあります。
そのため、これといった理由がない場合には、火葬を済ませた遺骨を埋葬するのようにしましょう。
法律には触れないものの、近隣住民な方々や近くを通る方への配慮を欠かしてはいけません。
ペットの供養方法に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
【専門家監修】ペットの供養方法は?寺・霊園、納骨堂、手元供養、散骨別に解説
第三人生編集部
自宅墓で身近な供養を
自宅墓は、故人を身近に感じられたり、費用が安く抑えられるなどのメリットが存在する反面、デメリットも存在します。
また、自宅墓で供養するという行為自体が、法や宗教上の問題とならずとも、親族からの賛成を得られない可能性も往々にしてあるでしょう。
あらかじめ、関係者との話し合いをしっかりと済ませた上で、みなさんにとって悔いのない供養ができることを祈っています。