錫杖とは
錫杖
錫杖とは、かつてインドで山野を遊行するときにも使われた、僧侶や修験者が持ち歩いている杖のことです。
あの有名な『西遊記』に登場する三蔵法師も持っていた杖、というとイメージが沸く方もいるのではないでしょうか。
錫杖について詳しく解説していきます
読み方
錫杖の形
仏教における錫杖の意義
お地蔵様の持つ錫杖
読み方
読み方は 「しゃくじょう」 です。
宗教的な法具ですが、その用途は様々です。
杖の頭部に数個の金属の輪がついており、揺すって音を立てることができました。
この音色が 鈴の音 に似ていることから、「錫杖」の文字が当てられたと言われています。
僧侶が錫杖を手に各地を歩くことを 「巡錫」 といいます。
この際、 錫杖を持つ手は常に右手とされていました。
錫杖は浄化の力があるとされており、不浄手である左手持つことは良くないとされていたためです。
また、高齢者や病気を持つものだけはこれを杖として体を支えることを許されました。
錫杖の形
杖の頭部には五輪塔をかたどった金属製の大きな輪が付いており、そこに複数個の小環が通されています。
この小環のことを 「遊環(ゆうかん)」 と呼びます。
杖の柄の部分は木製のことが多く、長さは160センチから170センチほどのものが一般的です。
短いものだと30センチほどのものもあり、 手錫杖 と呼ばます。
仏教における錫杖の意義
錫杖は実用的な使い道以外にも、修行に不可欠な仏教の教えが隠されていました。
遊環の数によって、その錫杖が示す教えの内容は変わります。
遊環の数 示すもの
4個 四諦
6個 十二因縁
12個 六道
四諦(したい)
六道
十二因縁
錫杖経
四諦(したい)
四諦(したい) とは、苦諦(くたい)・集諦(じったい)・滅諦(めったい)・道諦(どうたい)の4つを指す言葉です。
仏教が説く基本的な教えで、諦(たい)とは 真理(悟り) のことを指します。
六道
全ての人は、6つの苦しみ・迷いの世界を永遠に転生しています。
これを 六道輪廻 といい、六道とはその輪廻転成する 「地獄」・「餓鬼」・「畜生」・「修羅」・「人間」・「天上」 の6つの世界のことを指します。
十二因縁
十二縁起とも言われます。
苦悩を断つための「無明」「行」「識」「名色」「六処」「触
」「受」「愛」「取」「有」「生」「老死」 にあたる十二の事柄のことを指します。
錫杖経
仏教における錫杖の意義は 「錫杖経」 というお経にあります。
錫杖経の内容は、錫杖のその清らかな錫の音によってあらゆる衆生の厄災をも祓い、108の煩悩からと人々を解き放ち、人々を悟りに導くという内容です。
お地蔵様の持つ錫杖
仏像の中でも 大師像 や 菩薩像 は錫杖を持っていますが、如来像が持っているものはありません。
これは 錫杖は修験者が持つものであり、悟りに至った如来が持つものではない からです。
錫杖を持っている仏像は地蔵菩薩です。
地蔵菩薩は、仏教でいう六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)それぞれの世界へ行くため、姿かたちを変えて救いの手を差し伸べてくれます。
この姿を変えた地蔵菩薩を表しているのが六地蔵です。
これを表すため、地蔵菩薩が持っている錫杖は遊環が6つ付いているタイプの錫杖です。
錫杖の使い方
方法
錫杖には様々な使い方がありますが、その中でも主に3つの使い方に分類することができます。
外敵を祓う音を立てる道具として
合図やリズムを取る道具として
宗教の儀式の道具として
外敵を祓う音を立てる道具として
錫杖は、杖を床に突き立てて遊環を揺すりお互いにぶつけることで音を立てることができます。
もともと修行の場の中心は、山中など外の自然の中です。
そのため、野生の猛獣や毒ヘビなどの外敵に遭遇する危険性を伴います。
それらの外敵から身を守るため、錫杖を揺すって音を立てながら歩くことで人間の存在を知らせて外敵を寄せ付けない役割を持ちました。
現代で言えば山に入るために熊除けの鈴を持つのと同じ意図です。
その音は虫なども寄せ付けないため、誤って足元にいた虫を踏みつけてしまうなどの無用な殺生を回避する意味もあったそうです。
合図やリズムを取る道具として
集落に訪問した際に家々の門前で音を鳴らすことで修行僧の訪問を告げる合図の役割もあったそうです。
この訪問は 托鉢(たくはつ) という、僧が修行のために鉢を持って信者の家々の前に立ち、経文を唱えて最低限の食べ物や金銭の施しを受けるための行為です。
また、読経の際にその遊環をしゃんしゃんと鳴らし、調子を整えてリズムを取るために使ったりもしました。
宗教の儀式の道具として
錫杖は宗教的な意味合いも多く持ち、仏具として様々な儀式にも使われました。
例えば密教の儀式である 護摩供養 では、柄の部分が短い手錫杖が儀式中に使用されています。
また、手印・真言呪・観想などの方法で衆生に加護を与える加持祈祷でも錫杖が用いられています。
葬儀や法事などで目にすることもあるかもしれませんので、その際は今一度錫杖の役割を思い返してみると良いかもしれません。
錫杖の購入場所
ネット注文
錫杖は仏具店や法具店でも取り扱われており、インターネット上から注文することも可能です。
錫杖を取り扱っている主な法具店は以下の通りです。
滝田商店
法輪堂
三佛堂櫻井商店
仏具・法具店では柄の部分と先端の金属の部分を別個に購入することができるので、付け替えも可能です。
また、Amazonや楽天などの通販サイトを通して簡単に手に入れることも可能です。
錫杖の相場
錫杖の平均価格は 約6000円 と言われています。
サイズや用途によって値段は変動します。
ストラップやスタンド型のものは数百円〜数千円程度ですが、きちんとした柄の長い法具用だと数万円を超えるものも多数存在します。
錫杖の注意点
! 注意
錫杖は外敵避けの役割を果たしていただけもあり、揺らすと高い金属音が非常に大きく響き渡ります。
本来の目的のように自然の中での修行で鳴らすのなら問題ないかもしれませんが、都心の住宅街などで鳴らすと近所迷惑になったり、周りが驚いてしまったりします。
特に音の響く夜などには極力鳴らさないよう配慮したり、使い方に気をつけましょう。
また、もともとは法具ですから、ご利益を得るためにも大切に使用するようにします。
おすすめの錫杖
ここでは、私たちが手に入れられる錫杖のアイテムの中でも、特におすすめのものを紹介していきます。
一本柄の長柄錫杖
錫杖立て
スタンド型の錫杖
錫杖袋
ストラップ型の錫杖
錫杖をもつお地蔵様の置物
一本柄の長柄錫杖
滝田商店ブランド 長柄錫杖(一本柄) 大型(全長 163.4cm)◆密教で使われる仏具・密教法具・寺院仏具・修験道・托鉢用品【滝田商店発行 証明書付】
滝田商店ブランド 長柄錫杖(一本柄) 大型(全長 163.4cm)◆密教で使われる仏具・密教法具・寺院仏具・修験道・托鉢用品【滝田商店発行 証明書付】
35,970円
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京都の伝統工芸職人による高度な技術で製作された一本柄の錫杖です。
石突金具がついていないため、岩場を巡業する際も滑りにくいのが特徴です。
錫杖立て
滝田商店ブランド 錫杖立(立て掛け式) (高さ17.4cm)◆密教で使われる仏具・密教法具・寺院仏具【滝田商店発行 証明書付】
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7,590円
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錫杖を立てかけておくための錫杖立ても存在します。
家での置き場に困っているが、床や壁に直接置いたり立てかけたりすることに抵抗があるという方は購入を検討しても良いかもしれません。
スタンド型の錫杖
密教法具 錫杖 しゃくじょう 禅杖 法杖 置物 高さ約19.5cm
密教法具 錫杖 しゃくじょう 禅杖 法杖 置物 高さ約19.5cm
3980円
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錫杖には、杖の形のものだけでなく、スタンド型のものも存在します。
これは錫杖が身近に置いておくだけで心身の統一に繋がったり、厄除け・災難除けの御利益があると言われていることから出来たものです。
玄関先に置いたり、交通安全祈願として車のダッシュボードに置いたりすることができます。
錫杖袋
滝田商店ブランド 錫杖袋 中型用(長さ47cm×巾10cm)◆携帯に便利、密教で使われる仏具・密教法具・寺院仏具【滝田商店発行 証明書付】
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4,180円
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大切な錫杖を携帯するのに、裸でそのまま持ち歩くということはできません。
そのような方におすすめなのが錫杖を入れるための錫杖袋です。
携帯用の他に、保管のために袋に入れたいという方にもおすすめです。
ストラップ型の錫杖
滝田商店ブランド 御守り錫杖(携帯錫杖ストラップ) (長さ7cm)◆ミニチュアサイズのお守り錫杖・密教法具【滝田商店発行 証明書付】
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2,640円
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通勤・通学カバンや携帯電話につけておくことができるストラップ型の錫杖も存在します。
お守りとして肌身離さず身に付けて持ち歩きたいという人におすすめです。
錫杖をもつお地蔵様の置物
栗田仏像ブランド 【菩薩】 地蔵地蔵 座像 錫杖持ち (総高約13cm幅約10cm奥行約8cm)桧木製高級木彫り 四角台座付 9077
栗田仏像ブランド 【菩薩】 地蔵地蔵 座像 錫杖持ち (総高約13cm幅約10cm奥行約8cm)桧木製高級木彫り 四角台座付 9077
11,200円
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厄除けや開運の飾り物としての彫刻の仏像の置物も存在します。
木材本来の色味を生かした木彫りのものだけでなく、下のもののような鮮やかな着色が施されたものもあります。
仏像 置物 樹脂 【縁起仏像:地蔵王菩薩 彫工芸品】 車載置物 蓮華座 (サイズ:34/41cm) 彫刻仏像 祈る 開運 厄除け 飾り物
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【コラム】錫杖の仏具以外の使い方
アニメや漫画などの創作世界でも、キャラクターが持つ道具として錫杖は人気があります。
その中では錫杖が宗教的な法具としての意味合いのほか、槍や棍棒などのように武器として使われる様子も伺えます。
実は創作世界だけでなく現実世界でも、錫杖は仏具としての使い方以外に武器として利用されていたことがあります。
日本では平安時代末頃から「僧兵」という武装した下級僧侶の集団が組織され始めました。
僧兵は刀や槍などを持って蜂起するのが一般的でしたが、 偶発的な戦闘では錫杖を手に戦ったと言われています。
この武術は後世に伝えられ、杖術と呼ばれるようになりました。
錫杖は少林寺拳法でも使われる?
仏教と関係が深い憲法である少林寺拳法では、錫杖をアイテムとして用いています。
武道の使い方として槍のように使うこともあり、これを「錫杖伝(金剛伝)」と呼びます。
また、型を覚えて演武として使うこともあります。
少林寺拳法の演武用として錫杖を使う場合は、自分の体格にあった扱いやすいものを選ぶのがポイントです。
演武用としての正式な商品の前に、まずは練習用の棒だけの錫杖から試してみるのも良いでしょう。
錫杖の意味を知って大切に使いましょう
日常生活には馴染みのない錫杖ですが、アニメやゲームなどファンタジーの世界でキャラクターが持つ道具として目にしたことがあるという方も多かったのではないでしょうか。
錫杖とは
錫杖の使い方
錫杖の購入場所
おすすめの錫杖
【コラム】錫杖の仏具以外の使い方
この記事では錫杖について上記の内容を中心に、錫杖の形や仏教的意義などについても触れてきました。
儀式の他に実際に使うときは、少林寺拳法の演武用などがやはり多いそうです。
しかし、錫杖は手元に置いておくだけで災難除けや厄除けの「御利益がある」と考えられています。
また、精神修養にも効果的かもしれません。
基本的に錫杖を使うのは、自分の意識を正していくためということになります。
今は通販サイトなどを通して修験者でなくても簡単に錫杖を手に入れることができるので、興味がある方は紹介したおすすめの商品も併せて是非サイトをのぞいてみて下さい。
❓ 錫杖とは?
僧侶や修験者が歩く時に使う杖のことです。しゃくじょうと読み、右手に持つことが特徴です。詳しくはこちらをご覧ください。
❓ 錫杖の使い方は?
外敵を祓う音を立てる・合図やリズムを取る・儀式で使うといった方法があります。修行の場は山中であったため、へびや小さな虫・熊を寄せ付けず殺生を行わないための意味合いがありました。詳しくはこちらをご覧ください。
❓ 錫杖を買える場所は?
滝田商店・法輪堂・三佛堂櫻井商店などで買えます。相場は6000円ほどです。詳しくはこちらをご覧ください。
❓ 錫杖を扱う際の注意点は?
高い金属音が発せられるため、夜間には使ってはいけません。また、法具として大切に扱いましょう。詳しくはこちらをご覧ください。