在宅医療とは、自宅で医療を受けられる仕組みです。通院の負担を減らし、自宅で治療を続けたいと考える方にとって、在宅医療は大きな選択肢となります。
この記事では、「在宅医療を利用してみたい」と思っている方へ、在宅医療の概要や仕組みを分かりやすく解説します。
在宅医療とは?意味・定義
在宅医療とは、医師や看護師が自宅を訪問し、必要な医療サービスを提供する制度です。
在宅医療の定義は「医療を受ける者の居宅等において提供される医療」とされます。
主に、病院への通院が難しい高齢者や持病のある方が対象となり、自宅で治療を受けることができます。
参照:在宅医療ネットワーク|全国在宅療養支援医協会
在宅医療のポイント
・自宅で診察や治療が受けられる
・通院が困難な方が対象(寝たきりの方、要介護者など)
・定期的に訪問診療を受けられる
・介護サービスと組み合わせることが可能
・医療保険・介護保険の適用があり、費用負担が軽減される
在宅医療の仕組み
在宅医療は、通院が困難な方が自宅で適切な医療を受けられる制度です。医療機関や訪問医師、看護師、薬剤師、理学療法士などがチームを組み、患者の健康状態を管理します。
在宅医療の流れ
在宅医療は、以下のような流れで提供されます。
①初回相談・診察
患者または家族がかかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、在宅医療の適用可否を判断。
②訪問診療の計画
医師と患者で相談し、定期的な訪問診療のスケジュールを決定。
③訪問診療の実施
医師が患者宅を訪問し、診察や必要な処置を実施。
④料金の支払い
利用した訪問サービスに応じた費用を支払う。
在宅医療のニーズ
厚生労働省の調査によると、「最期を迎えたい場所」として「自宅」を選んだ人は54.6%と最も多く、在宅医療の重要性が高まっています。医療技術の進歩により、自宅でも適切な医療を受ける環境が整ってきています。
参照:厚生労働省 在宅医療に関する調査
在宅医療でできること
在宅医療では、さまざまな診療やケアが可能です。以下に、在宅医療でできることをご紹介します。
在宅医療で可能な医療・サービス一覧
在宅医療では、主に以下のようなサービスを受けることができます。
・定期的な健康チェック(血圧測定・血液検査・診察)
・薬の管理(服薬指導、点滴)
・床ずれや傷の処置
・カテーテル管理(尿道カテーテル、胃ろう)
・終末期ケア(緩和医療)
・訪問リハビリテーション
在宅医療に関わる人々と役割
在宅医療ではさまざまな職種の医療従事者が関わり、医師による診断と計画のもと、必要な医療や介護を提供します。
在宅医療に関わる医療従事者は、主に以下のような職種です。
①実際に訪問する人
医師:診察、薬の処方、病状管理、治療を担当。状態悪化時は主治医と連携。
歯科医師:口腔ケアを担当。
看護師:点滴、傷の処置、健康状態の確認、リハビリ支援。
薬剤師:服薬指導、薬の準備、薬の管理。
リハビリ専門職(理学療法士など):日常動作や会話機能の回復支援。
ホームヘルパー(訪問介護員):食事準備、掃除、入浴や排泄の介助。
②計画を立てる人
ケアマネジャー(介護支援専門員):介護プラン作成、サービス調整。
管理栄養士:食事・栄養指導。
③相談・調整を行う人
医療ソーシャルワーカー:経済・心理的相談、入退院支援。
保健師:健康相談、医療スタッフとの調整。
在宅医療の対象者・利用条件
在宅医療の利用条件は、「通院が困難な状態であること」です。病気名や年齢などは関係なく、医師から必要性が認められれば在宅医療を受けることができます。
通院が困難な状態とは、例えば以下のような方が対象となります。
・寝たきりの高齢者
・要介護認定を受けた方
・慢性疾患を抱え、通院が困難な方
・がんや難病の終末期医療を希望する方
在宅医療の費用は月2~5万円が目安
在宅医療の費用は、医療保険・介護保険が適用されます。自己負担額は通常、かかった医療費の1割~3割で、収入に応じて変動しますが、目安は多くても月2~5万円です。
ここからは覚えていただきたい在宅医療費のポイントをご紹介します。
1. 支払いは自己負担限度額の範囲
日本の医療保険制度には、自己負担限度額が設定されており、『高額療養費制度』により、限度額を越えて払った医療費は申請により払い戻しされます。
限度額は収入や年齢により異なりますが、一般的な世帯(医療費の自己負担が1~2割負担)の方の場合だと、月額18,000円が上限となります(入院費は除く)。
そのため、訪問診療の費用が高額となった場合にも、上限額以上に自己負担額が発生することはありません。
2. 限度額適用認定証で負担を抑える
高額療養費制度は、一度支払った医療費が申請により還付される制度ですが、一時的な費用負担を心配される方も多いです。
そうした場合、『限度額適用認定証』を発行してもらうことで、月々の支払いを限度額までに抑えることができます。
限度額適用認定証の申請先は、お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口または各健康保険の窓口です。
3. 自己負担額は世帯で合算できる
医療費の自己負担額は、世帯内に複数の被保険者がいる場合、合算して高額療養費制度の対象とすることができます。
これにより、世帯全体の医療費負担を軽減することが可能です。
在宅医療のメリット・デメリット
在宅医療を利用すべきか迷っている方もいるかもしれません。在宅医療を利用するメリット・デメリットは以下の通りです。
在宅医療のメリット
・自宅で安心して治療を受けられる
・移動負担がないため、体力の消耗を防げる
・定期的に診察にきてもらえる
在宅医療の最大のメリットは、自宅でリラックスしながら医療を受けられることです。特に高齢者や要介護者にとって、移動負担を減らせる点は大きな利点です。
また、定期的な訪問診療により病状の悪化を防ぐことができ、家族の負担軽減にもつながります。
在宅医療のデメリット
・緊急時の対応が限られる
・医療機器の制約がある
・一部の高度医療は受けられない
在宅医療は、病院のように24時間体制ではないため、緊急時の対応に限界があります。
また、手術や高度な検査が必要な場合は病院に行かなければならず、家族の協力が必要になるケースもあります。
在宅医療を受けられる条件
在宅医療を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
・医師の判断により通院が困難と認められること
・家族のサポートが可能であること(単身者でも利用可)
・在宅医療を提供する医療機関が近くにあること
医師が「通院が困難」と判断した場合、在宅医療の対象となります。高齢や病気、障害がある方が主な対象ですが、単身でも利用可能です。
ただし、在宅医療を提供できる医療機関が近くになければサービスを受けられないため、事前に確認することが重要です。
在宅医療がおすすめな人・おすすめしない人
在宅医療を受けるか判断に迷う方へ、在宅医療がおすすめな人・おすすめしない人の目安をご紹介します。
在宅医療がおすすめな人
在宅医療は、自宅で安心して療養したい方や通院が難しい方に適しています。また、家族と一緒に過ごしながら治療を受けられるため、精神的な負担を軽減できます。
在宅医療をおすすめしない人
・高度な医療を継続的に必要とする方
・24時間の医療対応を希望する方
在宅医療は、高度な医療処置を継続的に必要とする人には向いていません。例えば、手術や集中治療、透析などを必要とする場合は、病院での治療が優先されます。
また、24時間の医療対応を希望する方にも不向きです。在宅医療では医師や看護師の訪問頻度に限りがあるため、常時医療スタッフがそばにいる環境は提供できません。
緊急時に迅速な対応を求める方は、病院での入院治療を検討するのが望ましいでしょう。
在宅医療と入院治療の比較
入院か在宅医療かを迷っている方へ、両者の比較をご紹介します。
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在宅医療
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入院治療
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治療環境
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自宅で生活しながら治療を受ける
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医療機関で24時間体制の治療を受ける
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適用対象
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病状が安定しており、通院が困難な方
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高度な医療が必要な方
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対応可能な医療
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訪問診療・看護・リハビリなど
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集中治療・手術・透析などの高度医療
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緊急時対応
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医師の訪問には時間がかかる
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すぐに高度医療を受けられる
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費用(一般世帯/月額目安)
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月額上限は2万円程度
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月額上限は5~6万円程度
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在宅医療
病状が安定しており、通院が困難な方に適しています。
医療費負担の上限額は、一般世帯で月2万円程度。
入院治療
医療機関で24時間体制の治療・集中治療・手術・透析などの高度な医療を受けられます。
医療費負担の上限額は、一般世帯で月5~6万円(外来診療費と合算)。
まとめ
在宅医療とは、通院が困難な方が自宅で医療を受けられる制度です。対象者や費用、メリット・デメリットを理解し、最適な選択をすることが重要です。
まずはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、利用可能か確認することをおすすめします。