介護破産とは?
そもそも介護破産とは、
介護を原因として、その親だけでなく、介護をしていた子供の世帯までが貧困化していき、やがて破産に追い込まれる
という 介護をきっかけとした破産 のことをさします。
介護生活はいつまで続くかわからないものです。
お金のかかる施設を利用した施設介護だけでなく、施設の費用を節約するため家族が離職して介護にあたるなどといった介護生活を続けていくことで、気付いた時には介護破産へと追い込まれてしまうケースが多く見られます。
そういった介護破産を防ぐためには、可能な限り家族は働き続けて収入を確保するとともに、介護保険サービスなどを上手に使って、支出をできる限り抑えることが必要となってきます。
社会問題化する介護破産
上記のような介護破産ですが、日本においては一つの社会問題へと発展してきています。
現在の日本は、世界の中でもトップの超高齢化社会であり、 国民の4人に1人は65歳以上の高齢者となっています。
高齢化の増加だけでなく、それに伴う要介護(要支援)認定者数の増加も見られています。
要介護(要支援)認定者数の増加
【図1】
要介護度別認定者数の推移 社会問題
2017年4月末の約633.1万人という数字は、調査開始当時(2000年度)の約3倍の数字です。
要介護(要支援)者は今後も増え続けると見込まれており、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年では、667万人までになるとも予測されています。
加えて、核家族化も同時に進んでいることから、家族の高齢者介護の負担は大きくなっています。
主な介護者の続柄
【図2】
上のグラフを見てみると、介護が必要になった際の主な介護者は、配偶者26.2%、子21.8%、子の配偶者11.2%となっています。
加えて、介護者を年齢別で見てみると、40~50代が男女とも3割ほどを占めていることがわかります。
昔は、介護といえば女性が担うものといった考えが浸透していましたが、 近年では男性が介護に専念せざるを得ないといったケースが増えており、その中には仕事先で管理職として働いている会社員も少なくないのが現状です。
さらに、少子化の傾向によって兄弟姉妹が少なくなっていたり、未婚や離婚のために配偶者がいなかったりなど、ひとりで介護を引き受けざるを得ない人も多くなってきています。
介護を機とした離職
【図3】
介護や看護を理由に離職した人数 社会問題
上のグラフから見て取れるように、介護を理由として離職した人は平成23年(2011年)10月から24年(2012年)9月の1年間で10万人以上となっています。
多くの人が身内の介護をきっかけとして自身の職を離れていることがわかります。
介護破産に陥りやすい人の特徴
介護破産に陥ってしまう人の多くは、 資金プランの見積もりの甘さから、介護生活が想定以上に長く続いた場合に手持ちの資産が底をついてしまうわけです。
もっと安い施設に住み替えなければと再住み替えプランの相談をしたり、悪い場合にはすでに施設への支払いができなくなっているという状況から介護破産へと繋がるわけです。
ここでは、上記のようなことに陥ってしまう人の2つの特徴について説明していきます。
施設の見学の経験がギリギリまでない
親の介護の希望を事前に聞いていない
1.施設の見学の経験がギリギリまでない
施設に入居する直前まで、施設の見学の経験がないというのは避けた方が良いでしょう。
もちろん、自身で進んで見学に行く高齢者の親が少ないのも事実ですし、子供に誘われても嫌がる親も多いはずです。
しかし、 結果的に在宅介護では対応することができず、住み替えを検討する家庭が多く見られます。
この場合、施設の見学の経験が少ないため施設の知識が乏しいにも関わらず、急いで慌てて住み替えてしまうことが多くなります。
在宅介護を行うか施設介護を行うかの検討は、親が要介護状態になってから考えても問題ないでしょうが、施設見学はあらかじめ行なっておく必要があります。
それによって、入居者自身が納得しての住み替えとなるため、入居した後の気持ちの面でも好ましいはずです。
2.親の介護の希望を事前に聞いていない
要介護となった際に、どのような介護を望んでいるのかを事前に親に聞いていないことも望ましくありません。
介護を受ける側の人の気持ちを聞いていない場合、 いざ、介護をしなくてはならない状況になるとせわしなく目の前の用事に追われがちになってしまいます。
例えば、介護認定や介護プラン作成などの具体的な業務に追われ、資金プランへと気を配ることが難しくなってしまうわけです。
また、親が認知症になってしまうと、親が施設に入居して空き家になった家を賃貸に出そうとしても難しい現状があります。
しかし、あらかじめ親との話し合いで施設への入居が検討されているのであれば、家の名義を子供の名前にしておくことで、賃貸へ出すことも可能となります。
あらゆる面から、親が元気なうちに、自身の介護の希望を聞いておくことは重要なことなのです。
介護破産にならないためにできること
ここでは、介護破産を防ぐためにできる以下のことについて紹介していきます。
地域の情報を集める
公的サービスの利用
1.地域の情報を集める
親との相談の結果、民間の介護付き有料老人ホームへの入居は難しいとなることもあるでしょう。
その場合には、 地域周辺の特別養護老人ホームについて調べておくことをおすすめします。
特別養護老人ホームの待機者は40万人以上といった声がよく聞かれますが、実際に地域格差はあります。
加えて、 特別養護老人ホームには、原則として要介護3以上でなければ新規の申請ができない という決まりがあります。
そのため、親の介護度が2以下の場合には、それまでどこかで待機しなければならないことになります。
自宅での待機が難しい場合には、介護型ケアハウスなどを探す手もありますが、それについもきちんと情報を集めることが需要です。
いずれにしても、介護破産を防ぐためには、利用可能性のある施設についての情報を知っておくようにしましょう。
2.公的サービスの利用
介護破産にならないためには、 公的サービスの利用 ・ 支出の抑制 の2点を抑えておくことも重要です。
要介護者の状態や家族の経済状況など、生活パターンに合わせた介護保険サービスを選択することはもちろん重要ですが、加えて各種の公的制度も利用すれば、負担を大幅に減らすことも可能となります。
介護破産を防ぐために効果的な公的サービスには、以下のものが挙げられます。
補足給付(特定入所者介護サービス費)
高額療養費制度
高額介護サービス費制度
高額介護合算療養費制度
社会福祉法人の減免制度
無料低額介護老人保健施設利用事業
リバースモーゲージ(不動産担保型生活資金)
生活福祉資金貸付制度
住宅改修(介護保険)
福祉用具の購入、レンタル(介護保険)
しかし、このような制度は利用者が申請しなければ適用されません。
申請することによって、かなりの金額を支払わなくて済んだり、還付されることもあるため、各制度の適用対象をこまめに確認するのが良いでしょう。
介護破産が多発する社会
現在の日本では、介護に追われ、離職して甲斐甲斐しく介護を続けた結果、親が亡くなった後の自身の生活をも緊迫させてしまうケースが多発しています。
介護生活を終えてから自身の老後資金を貯めることは難しいものです。
自身の生活のことも含め、きちんとプラン立てした介護生活を送るようにしましょう。