65歳に定年が延長される?公務員・民間企業での施工はいつ?退職金はどうなる?
みなさんは定年を延長することで、どんな注意点があるのかご存知ですか?
そこでこの記事では、定年を延長するにあたりどんな法律が関係しているのか、どんなメリット・デメリットがあるのかを説明しています。
日本でも定年を延長したり、定年制を失くしたりする企業が増えているため、参考にしていただけますと幸いです。
働き方改革で定年は65歳に延長?
2019年4月1日に働き方改革が改定され、 従来までの定年60歳から65歳に延長させるという考え が浮上してきました。
働き方改革ってなに?
日本の抱える労働者の減少、高齢者の増加、介護や育児との両立などを改善するために生まれた改革です。
絶対に65歳まで働かなければらないのではなく、 働く方の置かれている状況に応じて、さまざまな働き方が実践できる というものです。
働き方改革の問題点は?
高齢化社会で労働者の人口が足りておらず、 出生率も減少傾向にあるため、必然的に今働いている労働者は長時間労働・残業を余儀なくされます。
つまり、定年を65歳まで延長することで、60歳から65歳の労働者の力も借りたい状況なのです。
民間企業の定年延長はいつから?
民間企業の定年は、およそ30年前までは55歳でした。
しかし、少子高齢化、労働者人口の減少などによって、現在では60歳、ないし65歳以上まで雇用を延長させる労働者も増えているというのです。
そのため、 60歳以上の定年制を導入していない企業はわずか だといいます。
役職定年制とは?
企業には次長・部長・課長など役職のついている方がいます。
役職定年制とは、 これら役職のついている人が一定の年齢になると、管理職からは外れる といったものです。
一般的に50代後半から60歳が目安の年齢で、全企業のおよそ40%がこの制度を採用しています。
高齢者雇用安定法はどんな法律?
役職定年制と並んで注目されるのは、高齢者雇用安定法というものです。
++平成25年4月1日より施行され、高齢者の能力や意欲によっては勤務期間を延長できる**というのです。
もちろん、体力・意欲がないといった理由で退職するという選択肢もあります。
給与面での考慮はある?
役職を外れることによって役職手当がなくなるため、給与面ではフルタイムで働いていた時よりかは減額します。
しかし定年延長を第二の人生と捉え、自分で起業したり別の手当が与えられたりと、総合的に見れば激しい減額は少ないといわれています。
定年延長のメリット
定年を延長することによってどのようなメリットが生まれるのでしょうか?
手慣れている優秀な人材が確保できる
高齢者は体力的には若者に劣るものの、今まで継続的に勤務してきたことで要領良く作業をこなす ことができます。
同じ人に長期で働いて貰うことで、会社としても人材育成・若者の指導といった手間が省けます。
若者を新規採用した場合には、1から指導しなければならないため、仕事の効率化を考えると高齢者の方がスムーズなのです。
その上、高齢者と一言で言ってもまだまだ元気な方を多く見掛けます。
長年勤務してきた経験があるため、その知識と技術で会社の業績アップに貢献できるわけです。
年金受給直前まで十分に貯蓄できる
令和元年11月現在、年金受給者の年齢は65歳からです。
仮に60歳で定年を延長せず仕事を辞めたとすれば、年金受給まで5年のブランク があり、収入面で不安が残るでしょう。
年金を予定通り貰えるのかという心配もあります。
それならば、自分の力で仕事を継続して給料を貰う方が良いと考える人が多いというのです。
今後、定年が70歳まで延長されるという話もあり、 体調と相談しながら雇用形態を考え直して働くケースが多い というわけです。
高齢者のモチベーションが増す
今まで何十年と働いてきた高齢者が途端に仕事をしなくなると、心にぽっこり穴が開いたように落ち込むことも多いそうです。
しかし、定年を過ぎても仕事を続けることによって、 日々の生活に達成感が生まれてモチベーションも高くなります。
同じ会社で続けなくても、パートやバイトで短時間勤務でも良いでしょう。
自らが人に必要とされていると感じることが大切なのです。
定年延長のデメリット
物事は良いことばかりではありません。
以下で説明するデメリットも考慮した上で、定年を延長するのか再検討していただければ幸いです。
職場の社員の年齢が高齢化する
高齢者社員の健康面が心配である
高齢者社員に同様の報酬を払うために人件費がかさむ
職場の社員の年齢が高齢化する
仕事に慣れている高齢者が長期間継続することによって、 若者の採用枠が少なくなります。
企業で働く社員の平均年齢が高くなり、高齢者が退職した際には会社が回らなくなることもあるかもしれません。
それを防止するために、高齢者だけでなく若者を育てることにも目を向ける必要があるでしょう。
若者を積極的に雇ったとすれば、長い目で見ることで高齢者顔負けの成長を遂げる可能性もある からです。
高齢者社員の健康面が心配である
高齢者で60~70歳ともなると、体力が落ちてきたり大きな病気をしたりと、若者よりもハプニングが多い ことでしょう。
会社側の意向もありますが、それ以上に社員の体調を気配り、双方納得いく勤務形態を提案すべきです。
また、手遅れにならないように、 健康診断や通院の際に時間休をとりやすい環境作り も大切です。
高齢者社員に同様の報酬を払うため人件費がかさむ
定年を超えて働いている高齢者は、 今までの継続年数や仕事上のスキルによってある程度納得できる報酬を提示する必要がある でしょう。
時短勤務をするとしても、若者の時短勤務とは異なり、会社への貢献度で給料を設定するわけです。
すると若者を雇うよりも人件費がかさむことになるのです。長年継続して働いていた高齢者に対してあまりにも安い報酬を提示するわけにはいかないので、企業側としても考える部分はあるかもしれません。
民間企業における定年延長の進捗
では実際に、民間企業における定年延長について、数年前からどのように変化を遂げてきたのでしょうか?
平成21年~平成29年の移り変わりをみていきましょう。
平成29年における高齢者の定年は?
厚生労働省の調査によると、 定年65歳が約15%、定年65歳以上約2%、定年制廃止は約2.5% と、まだまだ定年を延長して高齢者を積極的に雇っている企業は少ないと考えられます。
65歳以上になっても全員再雇用して貰えるかは、会社との話し合いやこれまでの業績に依るのでしょう。
その一方で 70歳以上まで働ける労働者は、全体の約22%と高齢者が年齢を気にせず活躍できるようにと配慮する企業の動き も目立ちます。
高年齢者雇用措置の年ごとの移り変わり
厚生労働省の調査によると、平成21年から平成29年までの高年齢者雇用確保措置は平成25年を除き増加傾向にあります。
平成25年には制度の改正があったため、ガクッと数値が減少していますが、正確な数値は出せない とのことです。
平成21年には95.6%だった割合も、平成29年には99.7%になり、従業員31人以上の企業では100%に迫る勢いになっています。
高年齢者雇用措置とは?
自社の定年を65歳未満に定めている企業は、以下の3種類いずれかの措置を実施しなければなりません。
定年を65歳まで延長させる
希望者には65歳以上まで継続して雇用する
定年制を廃止する
再雇用制度として、本人の希望によっては定年後も仕事を継続できる ようになっています。
実際には平成25年の法律改正に当たり、希望者全員が雇用されるのが一般化しているわけです。
民間企業における定年延長
次に、民間企業の定年延長に関連する取り決めを説明していきます。
再雇用制度
再雇用制度としては、上記定年延長の項でも説明しました。
60歳の定年を迎えた後に、延長したいという希望があれば65歳まで、雇用契約を改めながら継続していく ものです。
一般的には、個々の希望に合わせて1年毎に雇用契約を更新しながら働いているのが普通です。
高年齢者が正社員ではなくても、極端に報酬・手当てを低く設定するのは良くないために、 しっかり雇用契約を読み返して みてください。
勤務延長制度
再雇用制度と似た制度に勤務延長制度があります。
勤務延長制度とは再雇用ではなく、現在の仕事を同じ条件で働くことを指します。
労働条件・報酬共に変わりなく働き続けられるため、企業側としてはマイナスになる可能性が高いです。
しかし、 良い人材をお金を払ってでも雇いたいという企業 であれば、定年を延長することに躊躇しないでしょう。
ちなみに、定年となる年齢を定めている企業の場合、再雇用制度のように、社員に継続して働いて貰うのかを検討させることとなります。
助成金
厚生労働省が管理している、雇用に関する支援金のことを助成金といいます。
助成金は高齢者雇用のみならず、若者の雇用・障碍者雇用など幅広く該当 します。
助成金が支給された場合、高齢者に極力賃金を落とさず働き続けることができたり、若者の新人育成にかかる費用を工面できたりするわけです。
ただし、 助成金の多くは申請してから1年から1年半後に支給されるため、支給されるまでの期間で資金繰りが厳しくなる 企業も多いといいます。
企業ごとに1年先...など先を見据えた計画を立てておく必要があるでしょう。
公務員における定年延長
公務員における定年延長は、他の国に比べて検討中の企業が多い です。
周辺諸国を例に挙げると、アメリカ・イギリスは定年制を設けてなく、生涯現役という考えが強いのでしょう。
ドイツ・フランスも定年を67歳に延長しており、60歳定年の日本は他国よりもはやく定年を迎えることが分かります。
日本では定年延長を検討している最中
日本では定年延長を検討している最中
我が国日本では、定年延長はまだまだ検討段階です。
これには年金の受給年齢が深く関わっているといいます。
周辺諸国の年金受給年齢を比較
アメリカ・イギリス・ドイツについては、既定の年齢になったら年額1000万円以上もの年金を受給 できるそうです。
これに対してフランス・日本については500万円前後とまだまだ貰える年金額が少ないと読み取れるでしょう。
年金受給年齢については、アメリカが20年以上勤務で60歳、イギリスでは2020年に66歳→2046年までには68歳、ドイツでは2029年までに67歳 です。
しかしこれらの国は、日本の2倍もの年金を受給できるため、定年制排除したとしても60歳前後で退職する人が多いといいます。
再任用による再雇用
平成25年に年金受給年齢が60歳→65歳に引き上げられたことで、 60歳で定年退職した社員の年金を貰えない期間が5年ある ことになります。
そのため、定年を過ぎても働きたいという再任用の希望を出す人が増えているのです。
再任用するには基本的にフルタイム勤務が原則であって、高齢者の体力を考えると不安に思う方も多いでしょう。
定年延長による退職金への影響
退職金とは勤めていた会社から退職した際に、勤務していた会社から支払われるもの をいいます。
退職金の支払いについては、退職一時金制度と企業年金制度の2通りに分けられ、 各企業の取り決めによって退職金の額が決定 されます。
退職一時金制度とは、退職した際に一度に退職金が貰えるというものです。
これに対して企業年金制度とは、一定の期間に渡って小分けに年金として支給されるものを指すのです。
定年を迎えた時に、退職一時金制度として退職金を貰う例が多い 傾向にあります。退職金一時金制度と企業年金制度は双方実施している企業もあり、 企業によって退職規定をしっかり確認しておく 必要があるでしょう。
日本でも定年は年々延長して再任用する人が増えている
この記事では定年延長に関して、以下の点にスポットを当てて説明してきました。
少子高齢化で人手が足りず、分野によっては60歳以上の人の手も借りたいほどである。
働き方改革により定年が60歳から65歳に延長する 考えが発表された。
定年を迎えたとしても、65歳までは希望者のみ定年を延長できる。
条件を満たせば、厚生労働省が管理する助成金が支給される。
周辺諸国に比べて日本の定年は速く、 定年を定めない国も増えてきている。
定年を延長すれば、 年金受給直前まで給料を貰える メリットがある。
退職金は定年を迎えた時に一括支給される企業が多い。
このように定年延長にはさまざまなメリットがありました。
ただ、定年を延長することで若者を雇用することに躊躇したり、高齢者の体の健康が心配となったりする一面もみられます。
これらデメリットも踏まえた上で、定年を延長するのか考える良い機会となれば幸いです。