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お金のこと

2025.01.27

自己破産の1/4は60代以上の高齢者であるなど、老後破産が増えているといわれています。

自分たちも60代になると老後破産するのではないだろうかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

老後破産をする人はどれくらいいる?

「老後破産なんて大げさなのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、老後破産する人は数多くいます。

日本弁護士連合会などが2020年に調査した結果では、自己破産者のうち、60代以上の高齢者は4人に1人を占めているほどです。

老後破産していない世帯でも生活は楽ではありません。

令和6年版高齢社会白書では、高齢者世帯のうち約1/3はゆとりがない、あるいは家計が苦しいと回答しています。

いずれにしても、十分に対策をしておかなければ、老後で苦労する可能性は高そうです。

参照:日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会 2020年破産事件及び個人再生事件記録調査
参照:令和6年版高齢社会白書

老後破産をしたらどうなるのか?

生活保護費
老後破産をすると、具体的にどのようになってしまうのでしょうか。まず、破産すると持っている財産が差し押さえられます。

ただし、年金や生活必需品など最低限の財産は差し押さえられません。

破産後は財産がほとんどない状態で年金だけで暮らしていかなくてはならず、非常に厳しい生活が予想されます。

子どもなど親族の支援で暮らしていくか、それが難しければ生活保護を受けなければならないかもしれません。

生活保護を受けるためには、原則として持ち家や車などを売却する必要があります。

すでに破産しているため、それらの財産は差し押さえられている可能性が高いものの、生活保護を受けるハードルも低くないことをあらかじめ知っておいたほうがよいでしょう。

いずれにしてもお金に困る生活になる可能性が高く、エアコンも満足に使用できなかったり、人付き合いも断らざるを得ないことが増えたりするでしょう。

人付き合いが減ったために、生きがいを失ってしまうケースも考えられます。

老後破産をしてしまう原因

老後破産はいくつかの原因が引き金になって起こります。ここでは4つの原因を解説します。

老後資金が足りない

1つ目の原因は資金不足です。
収入より支出が多い状態が続くと、老後資金が底をついて破産します。

本人にぜいたくをしている自覚がない場合でも、支出が収入を上回っていると、破産する可能性が高くなるため注意が必要です。

負債を返済できなくなった

2つ目は負債が返済できないケースです。
特に定年後も住宅ローンの返済を続けていると、返済できなくなる場合があります。

返済計画に退職金を充てている場合も注意が必要です。
期待した退職金が得られないケースもあり、当初の計画どおりに返済できなくなるケースがあるからです。

退職金による返済が不十分な場合は、その後の返済が苦しくなる可能性が高いでしょう。

医療費や介護費の増加

3つ目は医療費や介護費の増加です。
高齢者は医療費の自己負担額が少ないものの、通院や入院が長引くと家計に与える影響を無視できなくなります。

また、本人だけでなく親の介護も見逃せません。親の介護は突然始まるケースも多く、また終わりが見えないため想定外の出費となりやすいでしょう。

詐欺被害にあった

最後は詐欺、特に最近増えている特殊詐欺による被害です。
特殊詐欺被害のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は78.4%にものぼります。

1件当たりの被害額平均は243.8万円と高額で、なかには数千万円の被害にあうケースも。

一度だまし取られたお金は、「振り込め詐欺救済法」などで戻ってくる場合もありますが、ケースバイケースのため期待はできません。

苦労して老後資金を用意したのに、詐欺被害にあったために一気に生活が苦しくなる可能性があります。

老後破産しやすい60代の共通点

頭を抱えるシニア女性
老後破産しやすい60代の方にはいくつか共通点があります。ここではよくある共通点を紹介します。

生活水準を下げられない

よくあるのが、老後に生活水準を下げられないケースです。
定年退職後は収入が減るため、生活水準を下げて支出を減らす必要があります。

生活水準を下げられなければ支出が収入を上回る可能性が高く、老後破産する可能性も高まるでしょう。

本人はぜいたくをしている自覚がなく、生活水準を下げる必要がないと思っている場合もあるため注意が必要です。

貯蓄が少ない

次に多いのは、貯蓄が少ないケースです。
年金だけですべての生活費をまかなうのは難しく、足りない部分は貯金を切り崩さなければなりません。

貯金が少なく底をついてしまうと、不足分を補えなくなり破産する可能性が高くなります。

特に、現役時代に高収入だったにもかかわらず貯金が少ない場合は、生活水準が高すぎる傾向があるため要注意です。

生活費以外にも、医療費や家の修繕費など、想定外の出費もあります、突然必要になるまとまった出費も考慮して、貯金をしておく必要があります。

定年後も負債が残っている

定年後も負債、特に住宅ローンが残っていると老後破産しやすくなります。

定年後は収入が減るため、ただでさえ生活水準を落とさなければならないところへ、さらに負債の返済があると負担が大きいでしょう。

持ち家は固定資産税や修繕費などの維持費が必要なところも負担になりがちです。

非正規雇用や自営業

公的年金制度において、会社員や公務員は第2号被保険者ですが、自営業は第1号被保険者です。

非正規雇用でも、従業員数51人以上の企業での就労などの条件を満たさなければ第1号被保険者になります。

第1号被保険者は第2号被保険者と比べて受給できる年金額が少ないため、生活が苦しくなりがちです。

また、会社員などの場合は給料から天引きされるため未払いは起こりにくい一方で、自営業者などは自分で払い込むため未払いが発生する可能性があります。

未払い期間があると、さらに受給額が減るため注意が必要です。

健康面で不安がある

健康面で不安があると、病院に行かなければならなくなり出費がかさみます。また、病気を抱えていると思うように働けなくなり、その分収入が減ることもデメリットです。

高リスクで資産運用をしている

退職金を利用して資産運用をする方もいますが、リスク管理ができていないと失敗することもめずらしくありません。

退職金で一時的に資産が増えたとしても、リスク管理をしながら計画的に使っていかないと、大きな損失を出すおそれもあります。

子どもや孫にお金をかけすぎている

子どもが無職や非正規雇用のため、老後も金銭的支援が必要な場合は、家計の収支バランス維持が難しくなります。

また、子どもをずっと私立に通わせるなど教育にお金をかけすぎることも、老後資金不足につながる可能性があります。

子どもだけでなく、孫の教育資金などを支援している場合も、家計に負担がかかりやすいでしょう。

一人暮らしをしている

夫婦2人で暮らすよりも1人で暮らすほうが生活費は高くなりがちです。

特に、熟年離婚で一人暮らしになった場合は年金受給額も減るうえに、慰謝料の支払いが必要な場合は負担も大きく、老後の生活設計が崩れてしまう可能性もあります。

一人暮らしになると外出機会が減りがちになり、運動不足になりやすいほか、食事の栄養バランスも崩れやすくなるなど、健康上のデメリットも生じます。

さらに、一人暮らしで人とのつながりが減ることで相談できる相手がいなくなり、詐欺などの被害にもあいやすくなる点にも注意が必要です。

早期退職した

会社員が定年前に早期退職をすると、厚生年金の加入期間が短くなるため受給額が少なくなります。

また、退職後も60歳までは国民年金を納めなければならず、家計への負担が大きくなることもデメリットです。

晩婚だった

晩婚した場合、定年退職後も子どもが高校や大学などに通っている可能性があり、家計への負担が大きくなります。

特に、私立に通っている場合や子どもが一人暮らしをしている場合は出費が増えるため苦しくなるでしょう。

60代での老後破産を防ぐ対策

笑顔で腕を組むシニア男性
これまで老後破産しやすい60代の共通点を紹介してきましたが、これらを踏まえて老後破産を防ぐ対策を考えてみましょう。

働く

老後破産を防ぐには働くことが非常に有効です。
定年退職後も再雇用制度やアルバイトなどでできるだけ働くようにしましょう。自分のスキルや趣味を活かした副業なども考えられます。

できるだけ長く働くほか、夫婦共働きにより収入や貯蓄を殖やしていけば、破産のリスクは下がり生活水準を上げることも可能です。

働き続ければ年金の繰下げ受給も受けやすくなります。繰下げ受給についてはのちほど詳しく説明します。

働くことで人や社会とのつながりができる点もメリットです。

社会とつながり人の役に立っている実感が得られ、生きがいを感じやすくなります。また、働くことが健康維持につながる点もメリットでしょう。

家計を見直して貯蓄する

次に家計を見直してできるだけ貯蓄に回しましょう。

老後にいくらお金が必要なのかシミュレーションすれば、貯蓄しなければならない金額が具体的にわかります。

一般的に50代は収入も多く、子どもが独立していれば貯蓄しやすい年代です。少しずつでも貯蓄を始めて続けていれば、そのうち習慣となり貯蓄を増やしやすくなります。

また、定年後に急に節約を始めることは難しいかもしれませんが、節約も現役時代から少しずつ始めて習慣づけていけば、無理のない支出削減が可能です。

定年後も住宅ローンが残っている場合は、繰り上げ返済などを利用してできるだけ現役時代に返済しておけば、老後の生活がグッと楽になります。

返済が難しい場合は、資産価値が高いうちに売却するのも一つの方法です。

年金の受給額を増やす

年金は繰下げ受給を選択すると受給額を増やせます。

定年退職後も働ける場合や、自営業者のように長く働く場合など、年金がなくても生活が維持できるのであれば、繰下げ受給も選択肢の一つです。

会社員などの方は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類を受給できますが、どちらか一つだけを繰下げ受給することもできます。

逆に繰上げ受給を選択すると受給額は減るため要注意です。
特に、一度繰上げ受給を始めると取り消しはできないため、よく考えて選ぶ必要があります。

健康面に気を付ける

健康面に不安があると医療費が負担になるほか、思ったように働けず収入面でも不安が生まれます。

バランスの良い食事や適度な運動を習慣にして健康な心身を維持しましょう。
また定期的に健康診断を受けていれば体の異常に早く気付けるため、医療費も少なく済む可能性があります。

健康診断は自治体の助成制度を利用すると安く受けられるため、一度お住まいの自治体の制度を調べてみることをおすすめします。

また、心の健康を保つためには周囲の人とのかかわりをもつことも大切です。地域コミュニティへの参加により、老後の生きがいが見つかるケースもあるでしょう。

また、生活などに関して周りに相談できる環境は心の支えになるほか、詐欺被害を予防する効果も期待できます。

適正なリスクで投資する

過剰なリスクで投資を行なうと老後破産の可能性が高まります。しかし、適正なリスクの範囲内で投資を行なうことは大切です。

現在日本ではインフレが進んでおり、銀行預金だけでなく投資信託なども購入することでインフレ対策になるからです。

投資信託は元本割れなどのリスクはありますが、長期運用すればリスクをある程度減らせます。

上手に投資をするためには、市場の動きやリスク管理など投資の基礎を勉強したうえで、できるだけ早く投資を始めて長期運用していくことが必要です。

リバースモーゲージ・リースバックの活用

持ち家があれば、リバースモーゲージやリースバックの利用もできます。リバースモーゲージとは、自宅を担保にしてお金を借るサービスです。

本人が生きている間は金利分のみを支払い、本人の死亡時などに自宅を売却して元本を返済します。リースバックは自宅を売却して、その家に賃貸として住み続けるサービスです。

ただし、これらのサービスにはメリットだけでなくデメリットも存在します。
例えば、リバースモーゲージの契約内容によっては、想定よりも長生きした場合に家を失う可能性もあります。

メリットとデメリットをよく検討してから利用することが大切です。

家族と話し合う

夫婦や子どもなどとの関係がうまくいっていない場合はよく話し合いましょう。熟年離婚をすると一人暮らしになり収入面や健康面などで不安要素が多く生じます。

また、熟年離婚まではしなくても、夫婦仲が悪いと資産状況が把握できなくなるケースもあるでしょう。

日ごろからコミュニケーションをとり、老後の生活設計を話し合っておくことが大切です。

夫婦などの問題を当事者同士で解決できない場合は、カウンセリングなど第三者の立場から支援を受ける方法もあります。

また、子どもが自立しておらず支援が必要な場合では、自立を促すことも必要です。引きこもりであれば、自治体の支援センターや相談窓口などが用意されています。

家族だけでの解決は難しいケースが多いため、悩んでいるのであれば一度利用してみてはいかがでしょうか。

また、子どもが独立している場合でも、子どもと良好な関係を築いて日ごろから頻繁に連絡を取り合っていれば、特殊詐欺被害にもあいにくくなります。

60代で老後破産しそうになった場合の対処方法

実際に老後破産しそうになった場合でも、上手に対処すれば老後破産を防げる可能性もあります。

各自治体では生活困窮者向けにさまざまな支援制度が用意されているので、一度調べてみるとよいでしょう。

例えば、生活福祉資金貸付制度では、無利子または低利子で生活資金を借りられます。

借金返済など貸し付けの対象外となる事例もありますが、一時的に生活に困ったときには相談してみてください。

まとめ

自己破産者の1/4は高齢者が占めており、老後破産は他人事ではありません。老後破産は老後資金不足や返済できない負債などによって起こりえます。

それらが起きやすい共通点は生活水準を下げられない点や健康面に不安がある点、高リスクで資産運用をしている点などです。

老後破産を防ぐには、家計を見直して貯蓄をすることや働くこと、家族とよく話し合うことなどが有効です。老後破産を防ぐために、早めに対策をとっていきましょう。

監修者
齋藤 彩(さいとう あや)

独立系FPとして資産運用や保険提案、ローン、住宅購入などの個人向け相談業務を中心に、中小企業への企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の導入支援も行なう。また、お金の知識をわかりやすく伝えるため、金融メディアへの執筆・監修活動もしている。
<保有資格>CFP、1級FP技能士

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