もうすぐ定年、あるいは定年を過ぎて働いている方で、「何歳まで働くべきか」と悩んでいる方も多いと思います。老後資金への不安があっても、せっかくの老後を楽しみたいという気持ちや、働くことが体力的に負担になってくるケースもあるでしょう。
この記事では、データをもとに働く高齢者の現状をお伝えするとともに、安心して生活できる老後資金の目安もご紹介します。ぜひ参考にしてください。
60歳を過ぎても働きたい高齢者が8割以上
内閣府のデータをみると、全国の60歳以上の男女に対して行われた調査で、60歳を過ぎても働きたいと思っている人は、全体の8割以上という結果に。多くの方が、定年を越えて働くことに意欲的だということがわかります。
ここでは、内閣府および総務省のデータをもとに、みなさんが何歳まで働くことを考えているのかをご紹介します。
参考:内閣府 令和元年度・高齢者の経済生活に関する調査
参考:総務省 統計からみた我が国の高齢者(令和5年)
参考:総務省統計局|令和5年版高齢社会白書
60歳を過ぎても働きたい人の割合(男性/女性)
近年の調査によると、60歳を超えても働きたいと考える人は80%以上にのぼります。特に男性は経済的な理由から、女性は生きがいや社会とのつながりを求める傾向が強いです。
60歳~65歳の就労割合(男性/女性)
60歳から65歳の間では、男性の約8割、女性約6割が就労しています。再雇用制度を活用しながら、引き続き同じ会社で働く人が多く見られます。
65歳~70歳の就労割合(男性/女性)
65歳を超えると、就労率は徐々に低下しますが、それでも男性の約6割、女性の約4割が何らかの形で働き続けています。パートや契約社員、個人事業主としての働き方が増加しています。
65歳以上の就業率は年々増加傾向にあります。
70代の就労割合(男性/女性)
70代になると、働く人の割合はさらに減少しますが、それでも20%以上の人が働き続けています。健康維持や社会とのつながりを保つために、柔軟な働き方を選ぶ人が多いです。
70代前半で、男性が2割、女性が4割の人が就業しており、70代後半になると男性が1~2割、女性が1割程度と就業率は下がります。
これらのデータから、多くの高齢者が60歳を過ぎても積極的に働いていることがわかります。特に65~69歳の年齢層では、男女ともに半数以上が就労しており、高齢者の労働参加が顕著です。
「何歳まで働く?」回答は65歳が最多|働く理由
内閣府のデータでは、「何歳まで働きたいと思っているか?」という質問に対し、最も多かった回答は65歳です。これは、老齢年金の受給開始年齢が65歳からであるためと考えられるでしょう。
参考:内閣府 令和元年度・高齢者の経済生活に関する調査
実際には、65歳を越えても働き続ける高齢者が半数以上という実情があります。みなさんの働く理由はなんなのでしょうか?
ここでは、高齢者が定年後も働き続ける理由をご紹介します。
参考:総務省統計局|令和3年版高齢社会白書
経済的な理由
令和3年版高齢社会白書によると、日本で高齢者が働きたいと考えている理由の1位は収入が欲しいから(51%)でした。
ドイツ・スウェーデンの結果をみると、理由の1位が「楽しい、活力になる」であったことから、日本は老後資金に関する不安が高いことがうかがえます。
実際に、年金だけでは生活費を賄えないと感じる高齢者が多く、追加の収入を得るために働き続けます。特に貯蓄が不十分な場合、定年後も仕事を続けることで安定した生活を維持しようとする傾向があります。
健康維持と活力のため
仕事をすることで身体を動かし、健康を維持できるというメリットがあります。また、キャリアを積んできた高齢者の中には、仕事が生きがいや自己実現の手段となっている人も多くいます。
特に専門的な知識やスキルを持つ人は、定年後もそれを活かして社会に貢献したいと考える方も多いようです。
社会とのつながりをもつため
職場での交流を通じて社会とのつながりを保つことができるため、孤独を避ける手段としても働くことを選ぶ人がいます。
「何歳まで働くのがベストか」は貯金額による
日本では老後資金への不安が強いことからもわかるように、個人の資産状況によって、何歳まで働くのが最適かは変わります。
十分な貯金がある場合は早めの引退も選択可能ですが、資産に不安がある場合は働き続けることで老後の経済的安定を確保できます。
仕事を辞めても安心できる貯金額は?
収入面に不安があるとはいえ、元気なうちに老後の生活を楽しむことも、人生において重要と考える人もいると思います。
どれだけ貯金があれば安心かは一概には言えませんが、いつまで働くかの目安に、一度老後資金を計算してみるのもいいでしょう。
ここでは、一般的な老後資金の計算方法をご紹介します。
老後資金の計算方法
生活費、医療費、介護費用などを考慮し、老後に必要な資金を試算しましょう。一般的に、老後に必要な資金は夫婦で2,000万円~6,000万円、単身で2,000万円~5,000万円程度といわれています(※65歳からの25年間を想定した場合)。
必要な貯金額は、年金の種類と金額によって変わってきます。
夫婦の場合
・ 2人とも厚生年金 → 約2,000万円必要
・ どちらかが厚生年金 → 約4,000万円必要
・ 2人とも国民年金 → 約6,000万円必要
単身者の場合
・ 厚生年金 → 約2,000万円必要
・ 国民年金 → 約5,000万円必要
老後に必要な資金は、「生活費×年数」+「医療・介護費」+「予備費」 で考えると分かりやすくなります。
老後の年金額の確認方法
自分が受け取れる年金額を把握することは、退職後の生活設計において重要です。一般的な年金の受給額は以下の通りです。
年金の平均受給額
・ 厚生年金 → 平均約14万円
・ 国民年金 → 平均約5万円
なお、年金の受給額は、個々の加入期間や収入状況によって変わります。
ご自身の年金受給額を正確に知るためには、「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」を活用することをおすすめします。
退職金も確認
退職金と年金で老後資金をまかなえればいいですが、勤続30年の場合の平均的な退職金は1,000万円~2,000万円ほどです。
厚生年金加入者の場合は贅沢をしなければ足りる場合もありますが、経済的安心を得るためには働き続ける選択もせざるを得ないでしょう。
高齢者雇用の社会的な傾向
働き続ける選択をする高齢者が増えていますが、社会的にも高齢者が働き続けやすい環境に変わってきています。
ここでは、高齢者雇用の社会的な傾向をご紹介します。
人手不足により高齢者の雇用は積極的な会社が多い
少子高齢化の影響で、企業の人手不足が深刻化しています。そのため、高齢者の労働力を活用しようとする企業が増えています。
特に専門性の高い業種では、高齢者の経験や知識が評価される傾向があります。
定年を定めない会社も増加傾向
国としても、2013年に「65歳までの雇用確保措置」が義務付けられ、2021年には「70歳までの就業機会の確保」を努力義務としたことで、高齢者が希望すれば同じ会社で働き続けられる環境が整ってきています。
高年齢者雇用安定法の改正を受けて、定年制度を廃止し、年齢に関係なく働ける企業も増えています。
参考:厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要
65歳以降は非正規雇用となる傾向が多い
65歳以降も働く場合、正社員ではなく契約社員やパートとして雇用されるケースが増えています。これは企業側が人件費を抑えるための措置でもあります。
65歳以降も同じ会社で働きたい人は就労規則を確認
65歳以降も働きたい場合は、勤務先の再雇用制度や就労規則を確認しておくことが重要です。
正社員ではなく、嘱託社員・契約社員・パート社員などの非正規雇用としての再雇用が一般的ですが、企業によっては、一定の条件を満たせば継続雇用が可能な場合もあります。
まとめ
何歳まで働くかは個人の状況や希望によって異なります。貯蓄や年金の状況を考慮し、無理のない働き方を選ぶことが大切です。
高齢者の雇用環境は改善されつつあり、働く意欲があればさまざまな選択肢があるといえるでしょう。