無宗教の葬儀とは
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日本人は仏教に入っている方がほとんどの割合を占めますが、中には 無宗教 の方も少なくはありません。
無宗教の方も例外なく、他の宗教と同じく葬儀を行うことになりますが、手順や方式が他とは異なります。
葬儀について調べても、ほとんどは仏教向けの葬儀が提示されてしまうため、無宗教の方は混同してしまう、ということもあるでしょう。
今回の記事では、主に「葬儀」に着眼点を置きながら、無宗教について解説していきます。
無宗教とはどういうことを指すのか
無宗教の葬儀をどう呼ぶのか
仏教と無宗教の葬儀の違い
無宗教とはどういうことを指すのか
無宗教 は、ある一定の考え方に寄らず、宗教そのものに関心がない、そもそも宗教を信仰していない状態のことを指します
似たような名称で 「無神論」 も存在しますが、そちらは宗教を支持しないのではなく「神の存在自体を支持しない」考え方なので、無宗教とは異なります。
無宗教が成り立つ背景
無宗教は一般的にどの国にも存在するわけではなく、 あまり類を見ない宗教の形 として見なされております。
そのため、無宗教が当たり前のように存在する日本はとても珍しい国だとも言えます。
では、どのような地域で無宗教が成り立つのでしょうか。
主に2つの理由があります。
信仰の自由を容認していること
幅広い知識を得ることができる環境が備わっていること
1つ目の理由として、 国家が特定の宗教に所属しないことを含めた、信仰の自由を容認していることです。
地域や風習によって特定の宗教の信仰を強制させられることが無く、信仰を要求された際に拒否しても、社会的な制裁が与えられない生活が国家によって保証されている、というのが第一条件です。
無宗教でいること自体が罪として認識されるケースも多々ありますので、これらの基盤を作ることは不可欠です。
次に2つ目の理由として、 ある一定の宗教に束縛されることのないような、幅広い知識を得ることができるような環境が備わっていることです。
知識がない故に、選択肢も与えられないような状況ですと無宗教という自由もまた見出すことができません。
結果的に自らが意識しているかどうかに限らず、文化的な慣習に縛られ、そこから離脱することを拒否されることもあります。
無宗教の葬儀をどう呼ぶのか
無宗教の葬儀は 「無宗教葬」 や、 「自由葬」 などと呼ばれおります。
「自由葬」という名称からも想像がつかれると思いますが、無宗教に
おける葬儀は形式に縛られず行えるため、故人の理想を叶えるのに適しています。
宗教的な慣習に従う必要もありません。
そのため、以下のような方には適した葬儀です。
「宗教をそもそも信じていない」
「自分の好きな葬儀を行いたい」
ですが今までの無宗教の例は数少なく、 「自由がゆえに何をしていいのかわからない」 、 「料金はどれぐらいかかってしまうか」 など、参考できる部分が少ない、葬儀をするまでの準備に時間がかかってしまう欠点も存在します。
仏教と無宗教の葬儀の違い
無宗教の葬儀の特徴としては、 形式に縛られない自由な葬儀をすることができる ことが特徴です。
一般的な仏教の葬式をする際は、供養をする際にお経を読んでもらうため、僧侶様をご自宅、または葬儀場にお呼びする必要があります。
一方で無宗教の葬儀の場合は、 仏教的な段取りを組む必要はもちろんありません。
一部を除いてほとんど全てを喪主が自由に決めることができます。
無宗教葬儀の具体例
具体例を挙げるとすると、 「音楽葬」 や 「ホテル葬」 と呼ばれるような、故人の趣味に合わせたものから場所の選択まで、幅広く行えることが特徴です。
また、 必ずしも宗教的な慣習を取り入れてはいけないという決まりはなく、部分的に残すことも可能です。
例をあげるならば、お焼香をする、数珠を持つなどが実際の無宗教の葬儀でも見られます。
無宗教の葬儀の流れ
葬儀
どのように進行されるのか
無宗教は葬儀も自由に行われるため、決められた流れというものは存在しません。
ここでは、一般的に行われているような行程を説明したいと思います。
①参列者の入場
②喪主の言葉
③黙とうをする(お経を読む代わりに)
④演奏をしてもらう(故人の生前好きだった曲など)
⑤故人の紹介(スライドショーなどを用いて)
⑥弔電を読み上げる
⑦謝礼を述べる(親族が参列者に向けて)
⑧献花(親族や参列者が捧げる)
⑨お別れの言葉
⑩出棺
このような順番で葬儀は行われます。
献花の代わりにお焼香が焚かれたり、無宗教である場合も僧侶様を呼んでお経を読んで頂くといったケースもあります。
無宗教の葬儀にかかる費用
費用
費用はいくらかかるのか
無宗教は人によってプランが大きく異なりますので、これと言う相場を割り出すことは困難です。
ですが、 お布施をする必要がなく、費用を抑えることが容易です。
範囲がとても広いのであまり参考にならないかもしれませんが、およそ 30万円~50万円 とみて良いでしょう。
無宗教の葬儀の服装
一般的な葬儀とは異なる無宗教ですが、服装にも違いが生じるのでしょうか。
基本的には葬儀でイメージされるような「礼服」を着用すれば問題ありません。
男性の場合
喪服 メンズ ダブル 準喪服
男性の場合は目立たない 黒のスーツやネクタイ、 を着用し、髪型も長すぎないように切るかまとめるかしておきましょう。
靴やバッグなどの小物類も黒などの地味な色で統一した方が良いでしょう。
また、時計を着用することは通常の葬儀においては無礼であると見なされてしまうため、外しておくことが無難でしょう。
女性の場合
女性 準喪服
女性の場合も 黒や紺色の目立つことのないスーツやワンピース を着ると良いでしょう。
時計と同様、ピアスやネックレスなどを付けている場合は外した方が無難です。
服装が自由な場合も
上記で説明させて頂きましたが、無宗教は自由さがウリの葬儀であり、通常の葬儀と比較すると明るめな印象があります。
主催者の意向にもよりますが、葬儀よりもお別れ会に寄っているような場合ですと、 カジュアルな服装でも問題ない場合があります。
むしろ、「スーツで参加することによって周りから浮いてしまう」という可能性もあるでしょう。
主催する側は必ず葬儀の招待状を送る際に、葬儀内容を明示した上で服装に関する指定をするべきでしょう。
また、 無宗教の葬儀に参列する側も、もし服装に関して不明瞭な場合は一度、喪主に連絡することをおすすめします。
喪服に関しては、こちらの記事でも取り上げていますので、参考にしてください。
【図解】葬儀・通夜の服装を女性・男性・子ども別に!夏冬や平服の時も解説
第三人生編集部
無宗教の葬儀のメリット
メリット
メリット
無宗教の葬儀はあまり例は聞かないものの、存在自体が容認されている現在において、年々葬儀件数は増加しております。
「自身が宗教を信仰していないのだから、わざわざ形式に従う必要もないだろう」という考え方ももちろんありますが、それとは別に 無宗教の葬儀自体にもメリットがいくつかあります。
葬儀を考えている、知見を広めようとされている方は是非、無宗教の葬儀のメリットを確認してください。
メリットにはこのようなものがあります。
お布施の必要がない
比較的自由な葬儀を行える
お布施の必要がない
お布施というものは、 お坊さんにお経を読んでもらう、法事を任せるなどをした後にお礼としてお金を包むこと を言います。
これらは仏教的な慣例ですので、宗教にとらわれない無宗教の葬儀では当たり前ですがする必要もなく、 お布施としてお金を払う必要もありません。
お布施は一回の料金は 20,000円~30,000円 ほどでそれほど高額な訳ではありません。
しかし、葬儀以外にも初盆(故人が四十九日を終えた初のお盆)などで僧侶様をお呼びし、お布施を支払わなければならない場合があったりと、出費のタイミングは数多くあります。
費用を抑えるという意味でも、無宗教の葬儀は選ばれております。
比較的自由な葬儀を行える
何度も説明さえて頂きましたが、 別名で「自由葬」と呼ばれている無宗教の葬儀は自由さが特徴です。
他の宗教の葬儀は、長年培われた風習のもとで、あまり選択肢は与えられず決められた方式に従う以外の方法がありません。
さらには葬儀におけるマナーも徹底されており、つい堅苦しい、しめやかな葬儀を行わざるを得ない状況が生まれてしまいます。
一方で無宗教の葬儀は制限はあるものの、 規則に縛られない葬儀をすることができます。
誰に案内状を出しても問題はありませんし、葬儀会場の場所や内装も自由に決めることができます。
ほとんど全てを喪主が決めることができるのです。
「お別れ会」という形で参列者に挨拶をしてもらったり、演奏家をお呼びした「音楽葬」という葬儀方式も可能です。
故人の趣味があれば、葬儀にそれを反映することで参列者からの支持を得ることもできます。
お別れの会に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
お別れの会・偲ぶ会とは?流れや会場、時間!葬儀との違いも解説
第三人生編集部
無宗教の葬儀のデメリット
デメリット
一方で、デメリットが存在することは言うまでもありません。
日本では「仏教での葬儀」が習慣として色濃く残っていることもあり、無宗教で葬儀をすることは親族や参列者から冷ややかな視線を送られてしまう可能性もあります。
メリットとあわせてデメリットを確認しておき、本当に自分に向いた葬儀形式なのか確認してみましょう。
デメリットにはこのようなものがあります。
理解を得られない場合も
自由度の高さから生じる選択肢の多さ
納骨問題
理解を得られない場合も
全く新しいタイプの商品ですとか習慣というものは、最初の内は批判の対象となってしまいます。
無宗教の葬儀も例外なく、むしろ葬儀というナイーブな行事ですので 「受け入れがたい」とする声が多く聞こえてきます。
親族と話し合うことなく無宗教の葬儀を開いてしまっては、トラブルの種にもなり得ます。
一度、無宗教の葬儀を開く場合は周りの方と相談することを強くおすすめします。
自由度の高さから生じる選択肢の多さ
ほとんど全てを自由に決定できることは裏を返すと、 「多様な選択肢の中から適切なものを選ばなければならない」非常に時間がかかる作業をしなければならない場合があります。
仏教という葬儀のメジャーな枠組みから離れて行うため、参考にできる点も少なく、金額や段取りを設定することが困難になってしまいます。
納骨問題
葬儀を終えた後にも問題は残ってしまいます。
通常の場合ですと、自分の家系が代々お世話になっているお墓に納骨をしますが、無宗教の葬儀をした場合ですとどうなるでしょうか。
僧侶様を呼ばずに葬儀を終え、お寺に「納骨してもよろしいですか」と聞いても 「葬儀をやり直してくれませんか」と言われてしまうケースも存在します。
お寺側からすると先祖代々の魂を、正式な葬儀で供養を済ませてから
お墓に納骨をすることをしてきた訳であって、今まで通りの変わらないお付き合いをするはずだったと思います。
しかし、急に「納骨だけお願いしたい」と言われるのは、話しが違うと思われても無理もありません。
もしも、 「無宗教の葬儀を行いたいがお墓には納骨したい」 と希望される場合は葬儀の途中に法事をして頂くか、一度お寺に相談してみましょう
無宗教の葬儀の注意点
注意点
時間をどのように配分するか
仏教の葬儀と違い、僧侶様をお呼びし、お経を読んでもらうことをしないので、 結果的に時間が余ってしまう場合があります。
時間調整をしなければ、あっけなく終わってしまう場合もあり、葬儀をしたという実感が沸きません。
時間を有効活用する方法としては、参列者にお願いして故人に哀悼の誠を捧げてもらう、故人の好きだったものを紹介する(または音楽を演奏する)などがあります。
菩提寺との連絡を取る
無宗教の葬儀をする場合であれ、先祖代々がお世話になっている仏教の菩提寺は必ず存在すると思われます。
無宗教で葬儀をすることをきっかけに、菩提寺との関係を終わりにするという選択肢もありますが、 その場合は納骨先を新たに探さなければなりません。
もしも、同じ菩提寺にお願いしたい場合も無宗教の葬儀をしてからでは手後れとなってしまう場合もあります。
一度、菩提寺に確認を取るようにしてみましょう。
檀家と菩提寺の問題に関してはこちらも参考にしてください。
檀家制度とは?メリット・デメリット、問題点や檀家離れも解説
第三人生編集部
しきたりに縛られない「無宗教の葬儀」
無宗教の葬儀は 自由さ と 費用が他の葬儀と比べ少額 といったメリットもありますが、 葬儀として受け入れられるにはまだ早い 、 納骨をどこにするか問題が発生する というデメリットもあります。
今後を見据えると、故人の希望に沿った自由な葬儀ができるという点で人気を博すようにも思えますが、それを批判する声が多くあることも覚えておきましょう。
また、代々関係を築いてきたであろう 菩提寺との関係性 も無宗教の葬儀をする場合には無視できません。
親族やお寺に迷惑をかけないように、事前に無宗教について知識を得た状態で葬儀をして頂ければと思います。