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お金のこと

2025.04.28

老後が心配でお金が使えない人は多い?老後不安の背景や必要な資金、貯蓄方法をチェック

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本記事では、老後の生活に不安を感じる理由や必要な資金、今からできる備えについて解説します。

老後に向けて貯金してきたものの、いざ老齢となって使うのが怖いと感じていませんか。

実際、老後の生活に不安を抱え、お金を使うことをためらう方は少なくありません。

しかし老後の生活に不安を感じる背景や実際の支出・収入、安心してお金を使う方法を知ることで、その悩みを軽減できる可能性があります。

「老後が心配でお金を使えない」と感じる人は多い?

老後に備えてお金を蓄えてきたものの、「もしものときのために使えない」と感じている人は少なくありません。

実際、多くの人が老後の生活に不安を抱えているという調査結果も出ています。
ここでは、老後の生活に不安を感じる人の割合や理由、実際の資産状況について解説します。

老後生活に不安を感じている人は82.2%

公益財団法人生命保険文化センターが行なった「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、老後の生活に不安を感じている人の割合は全体の82.2%にのぼります。

そのうち、「非常に不安を感じている」と回答した人は17.5%でした。

出典:公益財団法人生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」

なお、男女別で見ると、老後に対して不安感があるのは男性が78.5%、女性が85.1%と、女性のほうがやや高い傾向にあります。

老後生活が不安な理由は?

では、なぜこれほど多くの人が老後の生活に不安を感じているのでしょうか。

前述の「生活保障に関する調査」によれば、最も多かった不安の理由は「公的年金だけでは生活費が足りない」という回答でした。

出典:公益財団法人生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」

そのほかにも、「退職金や企業年金だけでは不十分」「配偶者に先立たれ経済的に苦しくなる」など、経済的な理由から老後の生活に不安を感じる方が多いことがわかります。

実際に60~64歳から85歳までの資産低下は限定的

高齢者がお金を使わずにいることを証明するデータもあります。内閣府が発表した「令和6年度年次経済財政報告」によると、資産のピークは60~64歳であり、それ以降はほぼ減少していません。

実際、60~64歳の平均資産額は1,800万円強、85歳以上でも1,500万円強であり、その差はわずか1割台半ば程度です。

つまり、年齢を重ねても「老後が心配でお金が使えない」人が多い実情が浮かび上がってきます。

「老後が心配でお金を使えない」と感じる人が増えている背景

祖父母と孫
「老後が心配でお金を使えない」人が一定数いることをご紹介しましたが、老後生活に不安を感じる背景にはさまざまな理由が潜んでいます。

ここでは、老後の生活に不安を感じるおもな理由を5つ解説します。

長寿化による「長生きリスク」

日本人の平均寿命は年々延びており、100歳時代が現実味を帯びてきています。

特に、男性の約4人に1人、女性の約2人に1人が90歳以上まで生きるとされ、長寿への備えに対する意識は強まっているといえるでしょう。

実際に、金融広報中央委員会の調査では、60歳以上の高齢者の77%の方が資産を保有する目的として「老後の生活資金」と回答しました。

自分がどれだけ長く生きるか不透明な状況で、将来に備えて資産をできる限り使いたくないと考える人が多いことがわかります。

遺産として残したい

金融広報中央委員会の調査では、60歳以上の約12%の方が「遺産として子孫に残す」ことが金融資産保有の目的と回答しました。

そこまで高い割合ではありませんが、過去の調査と比べて増加傾向にあります。

また、老後の世話を子どもに頼るかどうかに関係なく、「子どもに資産を残したい」という思いがある高齢者が多いのも特徴です。

さらに、財産を持つ方自身が高齢化することで、資産を受け取る側も高齢となり、ますます高齢者間で資産が高齢者層に偏在し、世代間の移転が進みにくい傾向があります。

年金制度の不安と「老後2,000万円問題」

「老後2,000万円問題」が騒がれるようになったきっかけは、2019年に金融庁の「市場ワーキング・グループ」が発表した報告書にあります。

年金だけでは生活費が足りず、平均的な高齢夫婦の場合、老後30年間で約2,000万円の不足が出るという試算内容が大きな話題となりました。

しかしこの試算は、2020年のデータでは「30年間で約40万円余る」、2021年のデータでは「約667万円不足する」と報告されるなど、年によって大きく変動しています。

働き方やライフスタイルによって老後の収支は異なるため、「2,000万円」という数字にとらわれすぎず、自分の年金額と生活費をもとに不足分を試算することが重要です。

インフレと物価上昇の影響

物価の上昇は、同じ貯蓄額なのに実質的な価値は下がる状態を引き起こします。

特に年金生活では、収入が固定されがちでインフレの影響を受けやすいため、対策が必要です。

もちろん、年金額が増額されるなどの一定の調整はありますが、著しい人口減少などの影響もあり、物価上昇分を十分に補えるとは限りません。

こうした背景から、将来に備えてお金を使わずに残しておく選択をする人も少なくないのです。必要に応じて資産運用を取り入れることも、不安感を取り除く一つの方法です。

貯蓄が目に見えて減ることへの不安感

老後に長年かけて貯めてきたお金を使い始めるなかで、徐々に減っていく状況に不安を感じる方もいます。

「子どもに残したいお金が減ってしまう」「万が一の備えが足りなくなるのでは」といった思いから、お金を使うことに慎重になってしまうのです。

こうした不安を解消するには、子どもに残すお金や緊急時用の資金の額をあらかじめ決めておき、それ以外は使ってもよいとする対策が有効です。

老後に不安なく生活するための資金はいくら必要?

年金手帳
ここまで解説してきたように、老後の生活費に不安を抱える人は多くいます。

それでは、実際にいくらあれば安心して老後の生活を送れるようになるのでしょうか。
ここでは、老後に必要な生活資金の目安を見ていきましょう。

夫婦二人暮らしの最低限必要な金額は?

公益財団法人生命保険文化センターが実施した「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」のなかで、夫婦二人で老後を暮らすのに必要と思う生活費について尋ねています。

その結果、月々に最低限必要な生活費は「20~25万円未満」と回答した人が27.5%で最も多く、次いで「30~40万円未満」(18.8%)、「25~30万円未満」(14.4%)と続きました。

平均額は月23万2,000円となっています。

ゆとりある老後生活に必要な金額は?

同調査では、ゆとりある生活を送るために、前述の最低限の生活費にいくら上乗せが必要かも尋ねています。

最も多かったのは「10~15万円未満」(31.4%)で、次いで「10万円未満」(19.3%)でした。平均は月額14万8,000円です。

これに、先述の最低限の生活費23万2,000円を足すと、月38万円程度が理想的と考える人が多いことになります。

なお、上乗せ分の使い道としては、旅行やレジャー、日常生活費の充実などが挙がっています。

実際の老後の支出は?

では、実際老後にはどれくらい支出しているのでしょうか。

総務省の「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、夫婦のみの無職世帯(65歳以上)の消費支出平均は25万959円となっています。

それに対して、高齢単身無職世帯(65歳以上・一人暮らし)の消費支出の平均は14万5,430円でした。

実際の老後の支出は、ゆとりある生活を送るために理想とされる金額よりやや少なく、必要最低限とされる生活費に近いことがわかります。

参照:家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要

実際にもらう年金は?

老後のおもな収入は年金です。

年金には国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)があり、これらをまとめて公的年金と呼びます。

厚生労働省の「生活設計と年金に関する世論調査(主な調査結果)」によると、老後の生活設計において、26.3%の人が「全面的に公的年金に頼る」と回答。

53.8%の人が「公的年金を中心に、個人年金や貯蓄を組み合わせる」と答えています。実に約80%の人が、公的年金を老後生活の基盤ととらえていることがわかります。

国民年金と厚生年金、それぞれの受給額をチェックしていきましょう。

国民年金の場合
厚生年金に一度も加入していなかった人は、国民年金のみの受給となります。自営業者や個人事業主などが対象です。

厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、25年以上の受給資格期間がある人の平均月額は5万7,700円となっています。

また、日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」では、満額支給(40年加入)された場合でも月額6万9,308円です。

夫婦二人とも国民年金だとすると、満額支給を受けた場合でも月13万8,600円程度となるため、生活費全体をまかなうには貯蓄などによる補完が不可欠です。


老齢厚生年金(厚生年金)の場合
厚生年金は、会社員や公務員などで厚生年金に加入していた期間のある人が受け取れる年金です。

厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、老齢基礎年金を含めた平均年金月額は14万7,360円となっています。

また、日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」では、夫婦二人分の標準的な厚生年金額は月額23万2,784円です。

先述した、高齢夫婦二人暮らしに最低限必要な金額に近い数字です。ゆとりある老後生活を送るためには、年金だけでは不十分といえるでしょう。

参照:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
参照:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

70歳以上の高齢者世帯の貯蓄額は約2,400万円

公的年金ではゆとりある老後生活が難しいケースも想定されるなか、大切になるのが貯蓄です。

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2023年(令和5年)平均結果―(二人以上の世帯)」によれば、1世帯当たりの平均貯蓄残高は1,904万円でした。

平均貯蓄額が最も多いのは70歳以上の世帯で、2,425万円です。

なお、50歳未満の世帯では負債が貯蓄を上回っている傾向にある一方で、50代以降は純資産のほうが多くなる傾向にあります。

40代までは住宅ローンや教育費などの支出が続く一方で、50代以降になるとこれらの負担が軽減され、手取り収入を貯蓄に回す余裕が出てくるためだと考えられます。

貯蓄はあるけど使えない・・・。老後に不安なくお金を使うための方法やマインド

話し合うシニア世代
老後に備えて貯めたお金があっても、「いつ病気になるかわからない」「長生きしたら足りなくなるかも」といった不安から、なかなか使えない方も多いでしょう。

ここでは、不安感を軽くしながらお金を使うためのポイントや心構えをご紹介します。

健康管理に気を付ける

老後の不安の多くは、健康に関することから始まります。

少し古いデータですが、厚生労働省「平成18年 高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」でも、60歳以上の人において「健康の問題」が不安のトップに挙げられています。

今は健康でも、「万が一病気になったらどうしよう」という不安感から将来の医療費を心配し、お金を使うことをためらう方もいるでしょう。

将来の不安を軽減するには、健康管理に気を配って罹患のリスクを減らし、安心材料を増やしておくことが大切です。

日頃からバランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠を心がけ、生活習慣病を予防して健康を保つことが不安の軽減につながります。

資産を増やしながら使う

老後のための貯蓄が減ることに不安感や罪悪感を覚える場合は、老後資金を運用して資産を増やしながらお金を使う選択もあります。

例えば、貯蓄1,000万円を20年かけて使うとした場合、運用せずに引き出すと年間で約50万円(月約4万1,600円)を消費します。

これを、年3%で運用しながら引き出したとすると、年間約67万円(月約5万5,800円)と、少し多く消費できるのです。

上記の例では運用する場合としない場合で月に約1万4,000円の差が生まれ、食事や趣味などに使える余裕が広がるといえるでしょう。

運用にはリスクがともないますが、商品を慎重に選び、無理のない範囲で運用することで、お金が減る不安をやわらげる一助として期待できます。

下記記事では、老後資金の貯め方について詳しく解説しておりますので、参考にしてください。

少しでも働き続ける

公的年金や資産運用以外に収入を増やすのも一案です。

定年退職後も、無理のない範囲で働き続けることで収入アップが期待できます。短時間の労働でも収入アップが期待できるので、フルタイムに限る必要はありません。

例えば、時給1,000円で1日4時間、週2回働くだけで月に約3万2,000円の収入になります。

アルバイトやシルバー人材センターへの登録、有償ボランティアなど、自分の体力やライフスタイルに合った働き方を選ぶとよいでしょう。

地域とのつながりや生きがいを得られ、社会貢献にもなるのが魅力です。

下記記事では定年後の働き方について詳しく解説しているので、参考にしてください。

少しずつお金を使う練習をする

お金を使う練習をするのも良い方法です。

例えば、「月に2万円を半年間使う」と決め、その範囲で旅行や外食、趣味など心が満たされることに使ってみましょう。もともとなかったお金と考えることで、心の負担が軽くなります。

もし半年経っても不安が消えなければ、無理してお金を使わないことも選択肢です。自分に合ったタイミングで、無理なく使っていくことが大切です。

老後不安につながる報道などに影響されすぎない

老後のお金に関する報道は、大きなインパクトを持って伝えられがちです。

先述した「老後2,000万円問題」も一例ですが、その後のデータでは年によって不足額が大きく変動しました。こうした報道や通説などに影響されすぎないことが大切です。

また、日本では高額療養費制度や公的介護保険など、いざというときの社会保険制度が整備されているため、過度な心配は不要と考える人もいます。

ただし、今後社会保険制度の内容が変更される可能性は否めません。実際、2025年現在、高額療養費制度における自己負担限度額の引き上げが議論されています。

そのため、老後の不安を解消したいのなら情報を正しく把握しつつ、自分の収支に照らし合わせて必要な生活費を試算することが大切です。

老後に不安なくお金を使う生活をするために!今からできる対策

老後を安心して過ごすためには、少しでも早い段階から準備が大切です。ここでは、老後に向けた貯蓄の対策をご紹介します。

支出を見直す

まず行ないたいのが、収支の見直しです。収入と支出のバランスを把握できていなければ、将来に向けてお金を賢く貯めたり使ったりすることは難しくなります。

具体的には、食費・住居費・水道光熱費・医療費・娯楽費などの支出をリストアップして、月々どのくらい使っているかを確認しましょう。

保険や通信費などの固定費は、プランの見直しで削減できる場合があります。

住宅ローンなど負債が残っている場合には、借入条件の見直しや繰上げ返済の検討も含めて、生活全体の支出を細かく見直すことがポイントです。

財形貯蓄や貯蓄型保険を利用する

毎月一定額を確実に貯めるためにおすすめの方法が、先取り貯蓄です。

給与天引きで積み立てができる財形貯蓄や、自動振替の積立定期預金などを利用し、余ったお金を貯蓄するのではなく、使う前に一定額を貯蓄に回します。

手間なく自然にコツコツとお金が貯まる方法です。

また、満期や解約時にまとまったお金を受け取れる個人年金保険や終身保険などの貯蓄型保険に加入することも選択肢の一つです。

老後の生活費や医療費の備えとして、将来的に受け取れる資金を確保しながら貯蓄できるメリットがあります。

資産運用を行なう

老後に備える方法として、資産を増やす工夫も有効です。

少額から始められて税制上の優遇があるNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、投資初心者でも取り組みやすいでしょう。

ただし、投資にはリスクがともないます。投資額やリスクが高まるほど、十分な投資知識と無理なく続けられる資金が不可欠であることを念頭に置いておきましょう。

年金の繰下げ受給を利用する

公的年金は、65歳からの受給を遅らせることで受け取る金額を増やせます。これを、年金の繰下げ受給と呼びます。

繰下げ受給の場合、年金の支給開始年齢は66歳から75歳までの間で選択が可能です。

繰下げた期間に応じて年金の受給額が増額され、その増額分は生涯変わりません。長寿リスクに備えたい方にとっては、有効な選択肢となるでしょう。

まとめ

老後の不安からお金を使えない方は少なくありませんが、必要な生活費や収入を把握し、支出の見直しや資産運用などを取り入れることで、安心して暮らす準備が整います。

お金を使うことに不安を感じるときは、毎月決めた金額だけを消費する、働き方を工夫するなどの対策も有効です。

多くのお金にまつわる情報や報道に影響されすぎず、自分に合った対策を講じながら、豊かな老後の生活を送れるように心がけましょう。

監修者
齋藤 彩(さいとう あや)

独立系FPとして資産運用や保険提案、ローン、住宅購入などの個人向け相談業務を中心に、中小企業への企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の導入支援も行なう。また、お金の知識をわかりやすく伝えるため、金融メディアへの執筆・監修活動もしている。
<保有資格>CFP、1級FP技能士

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