部屋の片付けのコツ 60代からはじめる、遺族に負担をかけない暮らしの整理
定年退職し、自分の時間がたっぷりとあるという人も出てくる60代。まだまだ元気で活動的な毎日を送っている方が多いと思いますが、将来への備えを考え始める大切な時期でもあります。
特に、家の中の整理整頓は、自分自身の快適な暮らしのためだけでなく、いずれ訪れる別れの時に遺族の負担を軽減するための準備にもなります。
そこで、60代から始める片付けについて、実践的なアドバイスをご紹介します。
これまでの人生を振り返りながら、大切な思い出を整理し、これからの暮らしをより快適にしていくための前向きな作業として捉えていただければと思います。
終活としての片付け
終活とは、死を迎えるにあたり自分らしい終わり方をどうするべきかを考え準備することです。
終活に関してこちらの記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
「まだ元気だし、終活は早いのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、体力のある今のうちから少しずつ始めることで、焦ることなく、丁寧に整理することができます。突然の事態に備えることで、家族の不安や負担を大きく減らすことができるのです。
片付けのコツ
片付けは一朝一夕にはできません。計画的に、無理のない範囲で少しずつ行いましょう。
例えば、 1日30分程度の作業時間を設定する、毎日ではなく 週に片付けをする曜日を決める(2~3日のペースで実施する)、1つの場所や種類ごとに区切って進めるなど
自分のやりやすい方法で片付けしましょう。
家族と協力しながらから片付ける
60代になると、若い頃と違って意外と疲れやすくなっています。家具など大きいものを片づける場合、あるいは自分ひとりで行うのが大変と思う場合は、家族に協力してもらうのも良いでしょう。
片付けをきっかけに、家族とのコミュニケーションを深められるかもしれません。
片付けを家族に手伝ってもらうにあたって、片付けの意図を家族に説明し、 思い出の品についても話し合いましょう。
大切にしたいものを確認しながら断捨離すると、あとになって「やっぱりあれは残しておくべきだった…」などのトラブルを避けられるでしょう。
ただし、家族にはあまり見られたくない物もあるかもしれません。
元気に動けるうちに自分の手で片付けておくことをおすすめします。
どこから片付ける?片付けの進め方
書類の整理
重要書類の仕分け
まずは、以下のような重要書類を整理しましょう。
- 保険証書、年金手帳
- 不動産関連書類
- 預貯金通帳、株券
- 医療関連の書類
- 戸籍謄本、印鑑証明書
どこに何をしまっているのか自分でわかるようにしておきましょう。
クリアファイルで種類ごとに分類する、 インデックスを付けて見やすく整理するなどの工夫も良いでしょう。耐火金庫や金融機関の貸金庫の利用も検討してください。
そして大事な書類の保管場所は家族に伝えておきましょう。口頭で伝えると家族が忘れてしまう場合もあるので、エンディングノートに記載することをおすすめします。
各種会員証・カード類の整理
いつの間にか増えているポイントカードや会員証。使用していないものは処分しましょう。
利用していないサービスは解約する、使用していないクレジットカードがあれば解約してから破棄しましょう。
運転免許証を持っていて長年運転していない、そして今後も運転しないのであれば
早めに返納することをおすすめします。
思い出の品の整理
写真・アルバム
紙のアルバムはかさばりますが、最近ではスリムに収納できるアルバムもあります。必要に応じて入れ替えてみたり、デジタル化してみましょう。
子供の思い出の品
子供の作品や賞状をたくさん残している方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこれもスペースをとりますので、子供と相談しながら片付けしましょう。
捨てるもの、とっておくものを分け、とっておくものについては保管方法を工夫しましょう。
お気に入りの作品は写真をとっておき、作品自体は処分するなどです。
子供と相談しながら進めることによって、あとになってから保管している・していないについて揉めることがなくなります。
衣類・日用品の片付け
衣類の整理
衣替えのタイミングで整理すると一番良いですが、これまであまり整理できてなかったという方はこれを機に整理してみましょう。
買ったものの着ていない服はないか、直近1年間で着用しているか確認してみてください。
使用頻度が低いもの、未使用品などはリサイクルショップやフリマサイトで売れる可能性があります。ちょっとしたお小遣い稼ぎにもなります。
他にサイズがあっているか、傷みや劣化がないかも確認しましょう。
着古したものやサイズがあわないものは手放しましょう。
日用品の整理
基本ですが、もし期限切れのものがあれば処分しましょう。予備として保管しているものがあれば、その量が適切な量か確認してください。意外とストックしすぎであることもあります。
使用頻度によって仕分けをして、よく使用するものは手が届きやすい場所へ、使用頻度が低いものは別の場所へ収納するなど工夫しましょう。
収納ボックスを活用したり、ラベリングをしてどこに何をしまっているか把握しておきましょう。
デジタル関連の整理
デジタル機器の普及により、パソコンやスマートフォンのデータ整理も重要になってきています。写真や動画、重要な書類のデータは定期的にバックアップを取っておきましょう。また、不要なデータは削除して、容量を圧迫しないようにすることも大切です。
メールアドレスやSNSアカウント、オンラインサービスの契約状況なども把握しておく必要があります。パスワード情報は別途記録して安全な場所に保管し、必要な場合に家族が確認できるようにしておきましょう。
遺族への配慮事項
将来、遺族が困らないように、重要な情報は整理してまとめておく必要があります。
具体的には、重要な連絡先、定期的な支払い、資産の保管場所などの情報です。これらの情報は、いわゆる「エンディングノート」としてまとめておくとよいでしょう。
また、葬儀やお墓についての希望、財産の所在、思い出の品の取り扱いなどについても、可能な範囲で記録しておくことをお勧めします。これにより、遺族の精神的な負担を軽減することができます。
暮らしやすい住環境づくり
片付けを進めながら、同時に暮らしやすい住環境を整えていくことも大切です。
家具の配置は、日常の動線を考慮しながら決めていきましょう。特に通路となる場所は広めにスペースを取り、つまずきの原因となるものは置かないようにします。
必要に応じて転倒しやすい部屋や階段への手すり設置も検討すると良いでしょう。まだ早いと思うかもしれませんが、元気に動けるうちに準備できることは済ませておくと安心です。
片付けは一度行えば終わりというものではありません。季節の変わり目や年末年始など、定期的に見直しの機会を設けることが大切です。
特に書類の更新状況や衣類の状態、収納状況などは、定期的なチェックが必要です。デジタルデータのバックアップも忘れずに行いましょう。
まとめ
片付けは、決して後ろ向きな作業ではありません。むしろ、これまでの人生を丁寧に振り返り、整理することで、新たな発見があるかもしれません。また、この作業を通じて家族との対話が深まり、より良い関係を築くきっかけとなることもあります。
焦らず、無理せず、でも着実に。そんな姿勢で片付けに取り組んでいただければと思います。この作業が、ご自身の充実した生活と、大切な家族への最後の思いやりとなることを願っています。